なぜ中堅企業は「コングロマリット」を目指すべきなのか

3月の特集テーマである『コングロマリット的企業のすすめ』本地域コングロマリットセミナーの基調講演として船井総合研究所 代表取締役社長 真貝大介の講演内容をご紹介します。

なぜコングロマリットなのか

複数の事業体を持つ経営。

別名「コングロマリット企業」を目指す理由とは何か。

その理由として、ひとつ挙げるのであれば「トップ１％になろう」ということです。新規事業を立ち上げ、第二本業として会社の次の核にしようという提案です。

違う軸として聞こえるかもしれませんが、「今ある事業に集中するのか、多角化経営を行うのか」それは、答えはない経営テーマです。

デービッド・アトキンソン氏の語ったこの言葉をご存知の方も多いと思います。言葉の選び方は非常に刺激的です。この言葉の裏側は、「中小企業の生産性が上がることが、日本を救う」ということなのです。

「あなたの経営する中小企業が躍進することは、日本全体の成長へとつながる」というのが私の認識です。

2020年代以降、多くのネガティヴな言葉が満ち溢れています。人口減少、コロナ危機、気候変動。そして戦争。中小企業の躍進の足枷となるものが満ち溢れています。

だからこそ、事業を多角化し、地域の中でコングロマリット化することを真ん中に置くことで、適正な事業、産業構造、今の産業構造の見直し、変革をしていくことが大切です。

そうして成長する企業の、最終的な目標というのは大きく躍進し「上位１％」を目指すということです。

私が担当している士業において年商100億円を越えるのは一社か二社ぐらいです。粗利100％とも言われる世界のため、売り上げで表現するのは非常に難しい。

ですが、大まかに言えば日本の中小企業の構造上トップ１％に位置しています。

この１％に入ることができれば些細な環境変化に心配せずに、経営に集中することができるのです。

元気な地方にあるもの

船井総合研究所が、こうした多角化経営を推し進める理由として金融庁のOBの日下さんと意見交換した際に一つ気づきがありました。

それは、日本の地方都市で、元気な都市と、元気じゃない都市の違いがあるということです。

エビデンスのある調査をした結果明確な違いが見えたのです。その答えとは、

「元気な地方都市には優秀な地域コングロマリットが存在する」

ということでした。

顕著になったのは、コロナ後でした。コングロマリットがある事業があると、コロナショック、オイルショックの時など他の事業で企業の危機的状況を回避できるといったメリットがありました。

地域に雇用の受け皿があり、コングロマリット企業が複数輩出する都市圏から経営者が広く出ていくことで、都市部から地域全体が素早く復活しました。

日下さんの説によると。10万人の都市で50万人、50億ぐらいのコングロマリットが成立するといいます。

地域内需要を面で獲得していくと、このエリアの顧客が就職先にまで成長し、東京や大阪に出ずにその地域で完結していくといいます。コングロマリット化することで、お客様獲得、人材採用までできるのです。

100億企業が全企業のトップ１％ですが、地域コングロマリット企業は100億以上が15％を占めており、日本の平均企業の15倍です。複数事業を展開していれば、自然とそうなります。

理屈で考えれば、複数事業化することによって、100億企業を輩出できることになります。

コングロマリットの種

地域コングロマリット化セミナーでは、新規事業として24業種※をご紹介しています。※社長onlineではそのうち３業種を3月連載にて紹介予定です。

全てのコングロマリットの事業に挑戦するのは、リソースや実現性において難しい点もあるでしょう。そこで、セミナー主催のコンサルタント主観にて、整理いたしました。

どれが一番儲かっているのか、どれが一番伸びるのとか、という軸でまずは興味のあるビジネスや、自社とのシナジーを軸に検討してみてください。

まず収益性順で言うと、下記になります。

三位が交通誘導警備、二位がコーヒー専門店、一位がインドアゴルフ。主力事業の規模は大きいですが、利幅が薄いといった企業は利益率が高いビジネスに参入したいという声をよく伺います。収益性を軸に考えてみるのは大切です。

次は成長性です。主力事業が伸び悩んでいるときに、大きく伸びるビジネスにこそ参入したいというお声も頂きます。三位がコンパクト分譲、これは住宅不動産業界の方も多いので注目度があるのかなと。

それからコンパクトリゾートホテルも引き合いが多いテーマです。また、工場倉庫建築、競争がそれほど厳しくないと非常に伸びています。

収益成長性を軸に新規事業を選ぶというのも一つの手です。

なぜ新規事業を行うのか

新規事業を会社で始める目的は、単に目先の数字を追っているからではありません。たとえば、地域の中で人気のある企業に成長していくために始める方もいらっしゃいます。今行っている主業が、人を集めるのにあまり向いてない業種という場合もありますよね。

障害福祉施設とか、就労継続支援A型・B型とかスイーツや観光回りなどをやっていうことで人気企業化していくアプローチもございます。

もう一つの軸として社会貢献で新規事業を始めたい方もいらっしゃいます。みなさんの地元が過疎化していて、活性化していきたいというモチベーションで始められるということは、社会的な価値を産んでいきます。

更に分化してマトリックス化したのが上記図です。みなさんの事業の新規事業を選ぶ軸にしていただきたいです。

さいごに

コングロマリット化は、新規事業なので創出していく力もさることながら、調達力も大切です。

既存資産、既存事業の中から伸びているもの中から、伸びてなくても地域で圧倒的に強いもの、たくさん持っているものを投資対象にして、スピンアウトをどうするかというみたいな発想が事業の芯となります。

その一方で、資金調達は大がかりな資金みたいなものだったり、優秀な経営人材も入ってくる、今持ちえない経営リソースが引っ張る、投資対象にすることなども戦略として必要となってきます。

補助金やM＆Aなども活用しつつ、皆さん商圏でどんなチャンスがあるんだろう、コングロマリットに何が必要かということに、まずは頭を巡らせてみてください。

以下の関連記事もご覧ください。

頼れるNo.2が入社し大きく成長した会社の軌跡と行ったこと

経営者にとって重要なことの１つに「優秀な右腕、No.2を持つ」ことがあります。いくら社長の能力が高くても、より大きな組織にする、規模を拡大するためには、自分以外のメンバーの働きが重要になります。 優秀なNo.2に入社してもらったことで、会社の成長を加速させている企業の話を聞きました。愛知県名古屋市の不動産投資会社、株式会社フィリックスは上場という大きな目標に向けて、成長を続けています。

話を聞いたフィリックスのNo2である常務執行役員の佐藤翔氏は元々、同社の取引先の担当者でした。佐藤氏はフィリックスという会社と一緒に仕事をしていくうちに、代表取締役、水野秀則氏の仕事に対する理念や会社の勢い、掲げている目標に魅力を感じ、「取引先の相手としてではなく、いつかこの人と一緒に仕事をしてみたい！」という気持ちが芽生え始めたといいます。

株式会社フィリックス　常務執行役員佐藤翔氏

「社長の人柄以外にも、参加した経営方針発表会では20代の若い人たちが中心となって、皆さんがしっかりした発表をしている、ビジョンを持って仕事をしている様子も非常に好印象でした」

佐藤氏はそう語ります。同時に、水野氏も

「自社のメンバーと佐藤さんがやりとりをしている様子を見ていて、“うちのメンバーがかなわない”と感じることがよくありました。もう圧倒的だなと」

と、佐藤氏の能力の高さを認めていました。

そのため、佐藤氏から入社したいと相談を受けたときも、最初はとても信じられなかったそうです。

それでも何度も話し合いを重ね、佐藤氏が本気だと感じたあとで「ぜひ来てほしい」と伝えました。

「これまでのやり方はすべて捨てた」

画像提供：PIXTA

佐藤氏がそれまで勤めていたのは大手企業で、また管理職もしていたので、どんな環境でも会社に貢献し、すぐに結果を出せる自信があったといいます。

その同氏が入社直後に感じたのが「外から見ていたのと中は全然違う」ことでした。

「経営方針発表会で立派に話している若い人がたくさんいると感じていましたが、それはものすごく練習をしていたからで、やりとりをしていると、一般的な20代の若い人という感じでした。なので基本的な業務の進め方やビジネスマナーなどを、手取り足取り教えることから始めて、学校みたいでしたね（笑）。創業間もない会社はまず社員の教育や社内フローから構築していく必要があるなと、改めて感じました」

規模も歴史もあり働くための環境が整っている大手企業と、勢いがあり成長しているとはいえ、設立から歴史の浅いベンチャー企業はさまざまなところが異なりますから、佐藤氏が描いていたような「すぐ会社に貢献し結果を出す」のは、想像以上に難しかったといいます。

困難な状況においてもモチベーションを維持できた一番の決め手は、社長の信念と情熱でした。

「企業としては未成熟でしたが、トップにいる社長が一切ブレずに『大手企業になる』『上場する』という目標の達成のために日々活動していました。現実を目の前に突きつけられて、幻滅したり意欲をなくしたりする人もいるとは思いますが、自分は30代半ばで、人生を賭けて転職してきたわけであり、またこのようなやりがいのある環境を求めていたので、『やってやろう』という感じでした」

とはいえ、そうすぐに切り替えはできなかったといいます。

「入社して半年ぐらい経ったときですね。過去の自分をすべてぶっ壊してイチから学ぶ姿勢にならなければ、期待に応えられない、迷惑をかけると悟りました。社長とも話し合い、考えと行動をシフトしましたね」

そう心に決めた佐藤氏は、今までの会社で培ってきたものも、大企業で管理職をしていたというプライドもすべて捨て、完全にゼロから学ぶ、取り組むことを決意します。

社長に社長以外の仕事は一切させない

画像提供：PIXTA

ゼロからの挑戦を決意し、行っていった佐藤氏が自分の役割と考えたのが、社内文化、経営体制の改善＆社長との信頼関係の構築です。

社内文化、経営体制の改善とは、言い換えれば「大きな会社になるためにあるべき形を整える」すべてのことに社長が関わらなくていい組織にする、すなわち社長から社長以外の仕事を奪う役割をこなすことにしたのです。

「私が入社したころのわが社は、社長を中心としたベンチャー企業でしたから社長が一番能力が高く、社員たちは皆社長に頼り、すべてを決めてもらっている状態でした。そして社長も、自身の会社を経営するために必要と考えて、すべての業務に関わってしまう。創業初期の場合はそれでもなんとかなるかもしれませんが、そのような社内環境では組織の成長にはつながらない上に、社員も努力を怠るかもしれません。

社長には会社のあらゆることに関わるのをやめ、社長が集中すべき業務である経営判断をすること、アイデアを生み出すことに専念してもらうようにしました。かつては、顧客からクレームを受けた際も、最後は社長が出ることで収めていましたが、クレーム対応は、社長がすべき仕事ではありません。

私が指示をして、社員たちにはクレーム対応を最後までやらせ切る、どうしても収まらないとしても自分で止めるようにして、社長は絶対に出させない、社長業以外をさせないようにしました」

佐藤氏は、社長に社長業以外のことをさせないようにしたのと同時に、社長には「“やりたい”と思ったことはなんでも言ってください。できるための形を整えます。結果を出します」と言いました。社長に社長業に専念させると同時に、経営者として実現したいことは、なんでもできるようにする。そして結果につなげる。それが佐藤氏の目指した役割です。そこに至るまでにも葛藤や心の変化はあったといいます。

「最初はどこか『社長と勝負をする』気持ちがありました。クレーム対応に社長を出させず、自分で収める。社長にできないことを自分がするんだ、と。ただそれでも何回かはどうしても収まらず、社長に出てきてもらいました。いずれも僕にない選択をして、最高の形で収めてもらったのを見て、『これはお手上げだな。勝負云々のレベルじゃない』と感じました。そこからは『自分が果たすべき役割は何か』を考えるようになりましたね」

「毎日昼食を一緒に取る」社長との関係性構築

佐藤氏ならびにNo.2の役割について、フィリックスの社長、水野氏は語ります。

「自分は創業者なので、もちろん創業当時からのメンバーもたくさんいます。私の考えは、“創業メンバーと一緒に成功したい”ではありません。成功したときに創業メンバーもその中にいたらよいなという考えです。会社の成長に応じて各人が果たす役割、したい仕事も異なりますから、創業時から会社が成長したらメンバーも次のステージへ、となることはあるでしょう。これは縁の話ですから、私が決められることではありません。

その都度ごとに、必要な役割を果たしてくれる優秀な人材を見極めるのも重要なことです。時には苦楽を共にした創業メンバーであったとしても、今の自分にとって右腕の役割を必ずこなせる人材がいれば、新たなメンバーを選びます」

株式会社フィリックス代表取締役、水野秀則氏

会社が新たなステージに上がるためのNo.2の役割を果たすことになった佐藤氏。佐藤氏自身が大きく自身のあり方を変えたのと同時に、社長の水野氏との信頼関係構築、密なコミュニケーションは意識したことだといいます。

そのために、佐藤氏の入社後、長い期間を水野氏と佐藤氏はランチを毎日一緒に取ったといいます。何があっても絶対にランチは一緒で、月に１回夕食も共にする。多くの時間をともに過ごすことで、お互いについての理解を深め、しっかりした関係性構築に努めました。

「相手のことがよくわからなければ、信用したくてもできないわけです。信用は行動で培われますから、『信用したければ、小さな約束を守る』と決めて、ランチの約束は何が何でも守りました」（水野氏）

「No.2は攻め、社長は守り」さらなる成長のための役割分担

佐藤氏が入社してNo.2としての役割を果たすことで、社長が会社のあらゆる業務から離れ、さらに成長する、その先の上場を本気で狙える環境が整ってきました。

それに伴い水野氏と佐藤氏が決めたのが、新たな役割分担です。

佐藤氏がオフェンス面（売上・利益を上げる）を担当し、社長がディフェンス面（内部体制の管理）を担当することにしました。

上場するためには、売上・利益以外にもしっかりした組織としての形が整っていることも求められます。そこで、トップの２人がメイン業務を完全に分担して行っていくのが最適だという結論にたどり着いたのです。

ただし、この役割分担はよい意味で明確に分かれていません。「No.2との役割分担」としてよくある「お互いの仕事については完全に任せていて口を出さない」わけでも「社長の暴走を止めるNo.2」の関係でもありません。

お互いのメイン担当はいながらも、常に意見を交換し、仮に思うような結果が出ない時期があったとしても、お互いを支え合います。

「よく『社長に反対できる、社長を止められるのは俺だ』というようなNo.2も多いと思いますが、私たちに関してはそのような関係ではまったくないと感じています。『何のためにやるのか』『世の中に対して何を提供していきたいか』を互いに共有し合いながら、その難攻不落な目標に向かって一緒に行くようなイメージです。なので、お互いに『否定する』はありません。同じ場所に向かおうとしてるわけですから、否定する理由がないんです。否定することは、すでに各人が済ませたうえで話し合っているイメージです」（水野氏）

優秀なNo.2を生かすために、社長が考えるべき2つのこと

１．外部から入る No.2 には「これまでのやり方をすべて取り去る」つもりで入ってもらう

誰もが「これまでのやり方」「今まで勤めた会社での進め方」が自分の基準になっています。

新たに入ってもらうからには、社内の空気を変えてもらうだけでなく、既存のやり方にも固執してはいけません。むしろ、No.2には新たに入った会社のやり方も取り入れてもらい、最適な方法を考えるということにマインドチェンジをしてもらうことが重要です。「前の会社だと『A』だった」という固定化された状況だと、新たな会社に幻滅したり、意欲を失ってしまったりしがちです。固執せず、新しい会社の方法を取り入れ、「B」あるいは「C」など見つけに来たといった気持ちで入ってもらうことで、会社への適応力や変化を生み出しやすい環境作りが実現できます。

２．信頼関係構築は、社長からの歩み寄りが大事

No.2 も新たに入社するからには、会社や社長の期待を受け、成果を出そう、活躍しようという意欲を持っています。

「これまでうまくいったやり方を続ければ、新しい会社でもうまくいくはず」と思っているでしょう。しかし、既存のやり方をいわば否定するわけですから、簡単にはいきません。優秀な方には多かれ少なかれプライドがあります。新しいやり方を受け入れてもらうためには、社長からの働きかけや歩み寄りが欠かせません。

そしてそれを納得してもらう、腑に落ちて実現してもらうためには、社長への信頼が欠かせません。そのためには、水野氏が佐藤氏と行ったように、ランチを通じてコミュニケーションの回数を増やしたり、小さな約束を守ることを繰り返すなどの実のアクションが必要です。

信頼できるNo.2を入れたから社長の仕事は終わりではありません。中途や新卒の社員と同じあるいはそれ以上に、No.2と密に接する時間を増やしていきましょう。

尊敬するNo.1がNo.2を育てる

優秀なNo.2に出会った。けれども育たなかった、期待を超えなかった。長く経営をしている中でそのような体験も多いかと思います。

最後に、一番大切なことをご紹介します。

それは、No.2 が活躍できるのは、やはり社長のあり方に敬意を表するからです。

社長が一貫してブレない方針を出す、No.2 に「やはり社長は違う」と感じさせる。それは力を誇示することでも、マウンティングすることでもありません。あくまで行動で示すべきことです。仮に専門分野が違い、No.2 に任せている業務内容を社長はくわしくわからないこともあるかもしれません。そのようなときでも、No.2 からの報告を受けてフィードバックをする際などに、納得させられるようなものを示す。そのような行動や、その精度の高さが、尊敬と信頼へとつながります。

それらは簡単ではありませんが、No.２がその能力を生かすことができるようになったとき、会社は大きく成長していくことでしょう。

不確実・不安定な時代に経営者が持つべき考え

ロシアのウクライナ侵攻やそれに伴う物価高騰。不安定、不確実の時代と言われるなかで、企業経営はどうあるべきか悩む経営者の方々も多いはず。 8000社以上の企業を視察し、「よい会社」「正しい経営」についての提言や経営者へのアドバイスを行っている人を大切にする経営学会会長の坂本光司氏に経営者にとって持つべき考え方、ブレない経営方針について話を聞きました。

成長を続ける企業に共通する「ブレないあり方」

『好景気・不景気に関係なく成長を続ける会社に共通するのは『自分たちの“あり方”』が明確であるということです。

自分たちがどうありたい、会社はどうあるべきだというのが『あり方』で、『目的』とも言い換えられます。

そして、そのあり方を具体化するのが『やり方』手段です。

• ・あり方：自分たちの会社がどうありたい、あるべき姿、会社が存在する目的
• ・やり方：あり方を具体化、実現するための方法・手段

常に成長を続ける会社はどこもあり方がしっかりしている、言い換えれば『ブレない経営』をしていて、あり方、目的を大事にしています。

逆に、あり方、目的が間違っていると、どのような手段、やり方をしてもうまくいきません。

好景気ならば右肩上がりの業績が、昨今のコロナなど会社を取り巻く環境が変わったことで一気に低迷。業績のよかった頃に雇った従業員に長時間残業や違法なサービス残業をさせたり、しまいには解雇したりする。

そのような行動を取るのが『ブレる経営』です。大きな自分たちの『あり方』が定まっていないために、簡単に時代や環境の変化に流されてします。まさにブレている状態です。

ではどのようなあり方が大事かと言うと、少し大きな言い方になりますが『正しい経営をする』ことです。『お天道様に顔向けできる経営』『世のため人のためになる経営をする』『人様から後ろ指を指されないような経営をする』と言い換えることができるでしょう。

私が『ブレない、正しい経営をしている会社』として取り上げる企業を『普通の会社にそんなことができるわけがない。できるのはあそこのビジネスモデルが優れているから、規模が大きいから、財務力がいいところだから』といったことを言う人がいますが、それらはすべて、結果論です。

やはりそもそもの正しい経営をする姿があり、ブレずに続けてきたからこそ成長した、利益率の高い経営をすることができた、財務力が向上したという今の姿があります。

私の定義する企業経営の目的は『関係するすべての人々の幸せの追求・実現』です。その中でも特に重視しなければならないのが以下の５人です。

１人目は社員とその家族
２人目は社外社員とその家族
３人目は現在顧客と未来顧客
４人目は地域住民、とりわけ障がい者など社会的弱者
５人目は株主・支援機関

そして、この順番で重視することが求められています。

不安定な時代にブレないために必要なのは『非効率』

ロシアによるウクライナ侵攻、それに伴う諸物価の高騰・値上げなどなど、会社を取り巻く環境は一層厳しさを増し、企業経営においても難しい判断を迫られることが多々あります。

『あり方』『目的』を大切にするという原理原則は変わりませんが、時代の変化や状況を踏まえて、企業経営の『やり方』は新たな形が求められていると感じています。

これまでの経営学では『中小企業は専門に特化。いろいろなことをするのは効率を下げる』が定石とされてきました。

これは右肩上がりの時代、その特化する内容がこの先も需要があり続ける、増えていくことが前提での考え方です。右肩上がりを前提にしていれば、幅広く行う、それを実現する多様な人材を育てるのは効率が悪いでしょう。

しかし、現在のような先行き不透明、不確実な時代では、右肩上がりという前提は成り立ちません。それどころか、特化したものの需要が完全になくなるといったことも考えておかなければなりません。

１つの商品・サービスしかない、というような会社は、そのニーズがゼロになった、となればブレが生じてしまってもおかしくありません。

ブレない会社は、そのようなリスクに備えて多種多様な商品を持っている、多種多様な市場に属している、多種多様なことができる社員がいるなどしていると感じます。

歴史を見ると、世界的な経済ショックは何年かに一度起こってきました。現在のコロナやウクライナ侵攻の以前も地政学的なことや、東日本大震災のような災害、リーマンショックなどなど、その種類もさまざまです。この先も、どんな大変動が起こるかわかりません。

世界は変動している、不安定な状態こそがもはやノーマルな状態であり、安定しているほうがノーマルでないと考えたほうがいいでしょう。

今の時代に経営者が近くに置きたいのは多角・多面・多重・多層型人材

愛知県にある会社は、生産の仕事がなくなったときに『お客さんの喜ぶ新商品を開発しよう』と、総務などバックオフィスの人材も開発に関わることになりました。普通はバックオフィスの人材が関わったところで新たな商品をつくれるのか？と思いますが、その会社はメインではない部門の人も当たり前のように戦力として機能しています。

逆に、その会社は開発・設計の社員も営業力があり、販売に行くことができます。製品にもっとも詳しい人が売りますから、話に説得力があります。営業の人が『詳しいことは開発担当者に聞いてみないと……』となることがありません。

このような会社はいわば“不沈艦”そのときメインでつくっているものが売れなくなることはあっても、新たな製品をつくり、売る力がある。

私は『正しい経営をしよう』と再三お伝えしていますが、それだけではきれいごとに聞こえる方もいらっしゃるでしょう。正しい経営をどのように行っていくか？その方法が今お伝えしたようなことです。

自分たちのあり方、目的を実現するために、小手先でない努力をする。それが必要です。

そのようなマルチな働きをする人材はどのようにすれば獲得でき、また育てられるのか？その会社は、社内の人事ローテーションを頻繁に行っています。

現在の人事課長はその前は設計課長であり、それよりも前は工場長を務めるなどしていました。

現在は『ジョブ型雇用』がよいもののようにされていますが、この会社がしているのはジョブ型雇用とは真逆です。

その会社での仕事がなんでもできる、困っている部門があればみんなが助けに行ける、いろいろな武器を持っている社員が集まっています。

私はそのような人材を「多角・多面・多重・多層型人材」と呼んでいます。

そのような人材がどのように育成されているかというと、会社が多角・多面・多重・多層型人材を『わが社の理想とする社員、あるべき社員の姿』として掲げ、また頻繁な社内のローテーションにより、さまざまな仕事ができる社員になれるよう教育しているのです。

採用においても、『多能な仕事ができる人を募集する』と明記していて、そのような素質、成長を望む人を集める。そして社内のローテーションで多くの仕事を経験し、身に着けてもらえる環境を整えている。

社内の様々な経験することの前提に『社員の会社とのつながり・絆』があります。その会社は社員が200人ほどいるのですが、週に２回『今日はカレーの日』『今日はすき焼きの日』というように、全社員が社員食堂に集まり昼食を一緒に取る場を設けています。

その中に社長も加わり、社員と食事をしながらコミュニケーションを取る。また、カレーに使うジャガイモやニンジンなどは、会社の中にある畑でつくっているものです。

その会社の社長さんは、誰よりも早く起きて、１日の中で全社員に声をかけることを徹底しています。

声をかけるといっても、ただ『おはよう』とか『こんにちは』『ご苦労さん』といったものではなく、『娘さんの大学卒業おめでとう』『お父さん退院してよかったね』『奥さんの身体は治った？』といったことを話しかける。

やはり社員は感動します。そんなことも覚えてくれている、心配してくれているんだと思い、社長を好きになるものであり、強い絆、つながりが生まれます。

そのような関係が出来上がっているので、『会社の危機だ、新しいことをしよう』となったとき、社員はみんな進んで協力してくれます。協力できる素質のある人が集まっていて、技術も知識もローテーションで身に着けていますから、実際にできることもある。

多角・多面・多重・多層型人材を会社が『わが社の理想の人材』として掲げ、社内のローテーションで様々な仕事を経験し、スキルを積む場を提供する。

そして社長が社員１人ひとりをしっかり見て、承認することで、強い関係性をつくる。大きな“思い”と、日々学びや技術を得る場を提供する。その両輪が、ブレない経営を実現するための社員の育成方法です。

その会社は、当然のように定年もありません。80歳を超える社員もたくさんいて、その人たちは若い社員の先生の役割を果たしています。もう年齢も年齢ですから、ほかの社員と競争になるようなことはさせていません。

経営判断は『歴史観』で考えよう

経営判断のために様々な指標やデータを用いるのは、どの経営者も行っていることでしょう。

それらも、正しく見なければ逆効果です。

多くの人が気づいていませんが、日銀短観のように短期的な比較をしていると、何が問題なのかがわかりません。

私は時代を見るとき『短観ではなく歴史観、短い目ではなく長い目で見よう、鳥瞰で見ましょう』と言っています。

どんなデータでも、５年前では短い。10年前、20年前、30年前、100年前のデータを見るのです。すると何がわかるかというと、ほとんどの変化が上下のジグザクを繰り返しながら下がっているか、ジグザグを繰り返しながら横ばいか、ジグザグを繰り返しながら右肩上がりになっているかです。

ですから、短い期間で区切ると、たまたまそのときは上がっているように見えることがあります。ですが十数年の数字を見ていると、上がっているときはあっても大きな流れとしては下がっていることがわかる。

私が相談を受ける経営者に『数字を見ると成長可能性があります』と言われても私は『確かにここ最近は伸びているように見えても、長い目で見ると将来性はないからこの仕事はやめたほうがいい』とアドバイスをしています。

これからの時代、経営者はやはりアンテナを普段から高く張っておく、それと同時に多くの人脈、さまざまな知見を持つ必要があります。

経営者も人間ですから、すべてを完璧にするのは不可能です。自分ができなくても、やはり周りにそういった能力のある人を確保する。そのような人材を直接確保できればベストですが、難しい場合は間接的にでも行っておきたいところです。それができていないと、情報が絶たれてしまいます。立派な技術があり、実際に注文があっても、それを売上につなげられないといったことになりかねません。

先程も申しましたように、不安定・不確実、不透明が今後は激化する、そのような状態がむしろ日常になるという前提で、会社経営のあり方・進め方を考えていくことが大事です。『今が苦しいのは不況のせい。また好況になればよくなる』なんて環境に依存しないことです』

0.8億円→８億円を５年で達成した２つのポイント

2012年に北海道の北斗市で創業したアイーナホーム（代表取締役　山下史昭氏）は、函館・北斗市を中心に空き家再生や中古住宅＋リフォームで成長を続けています。 時流に乗ったビジネス展開に加えて、2020 年末より属人的な販売・管理体制を解決するために全社でDX を推進し、１人あたり粗利1600万円超えと高生産性を実現。年商も５年で10倍（0.8億円から８億円）と急成長しています。そのポイントをお伝えします。

アイーナホーム　過去５年の業績推移

• ５期（2016年度）：年商7965万円、社員２名
• ６期（2017年度）：年商1億319万円、社員３名
• ７期（2018年度）：年商２億2987万円、社員５名
• ８期（2019年度）：年商３億163万円、社員８名
• ９期（2020年度）：年商５億6384万円、社員17名　※デジタル化開始
• 10期（2021年度）：年商８億円、社員24名

※各期は７月～翌年６月まで

アイーナホームの大きな成長を支えた３つのポイント

３つのポイントについて、詳しく説明します。

１）伸びている市場環境の時流ビジネスに取り組む

これは大きく成長している企業が必ずしていることです。アイーナホームは空き家再生のほかに中古住宅＋リフォームといったことに力を入れてきました。そのさらなるポイントについては後述します。

２）デジタル化で高生産性＆集客強化

ポイントがさらに３つあります。

①MAとチャットボットで集客強化

MAとは「マーケティングオートメーション」マーケティング活動を自動化、効率化するための方法論、技術のことで、自社のHPやポータルサイト、チラシなどから得たお客様情報をもとに、メール・SMS・テレアポなどで来店を促すデジタル施策のことです。

MAにより、お客様が自社サイトのどこを見ているかを追跡できるようになるので、リフォームに関するページを多々閲覧しているならば、リフォームを検討中であるというように、その方の興味関心を知ることができます。

MAツールで顧客の興味関心を知ることができるようになったので、その条件別に自動メール（SMS）によるアプローチが可能になりました。リフォームへの関心が高いお客様には「リフォームのお得な情報をお届けします」「リフォームのキャンペーン中です」といったメールを送ると、見てもらえる可能性が高まります。

また、許可を得た顧客のアドレスにメルマガを配信し、その開封状況やメルマガをどのくらい見ているかなどで見込み客の度合いをスコアリング。

ある一定のスコアランクに達したお客様向けに、営業社員あるいはインサイドセールス担当が電話をかけ、来店を促しています。

お客様にしても、興味関心が高まっているときなので「より詳しく説明します」と言われれば「行ってみようか」と考えやすくなり、営業担当者にしてもやみくもに電話をかけるよりも効率の高い営業が可能になるのです。

次に「チャットボット」の説明をします。

パソコンやスマートフォンからホームページを見ていると、以下の画像のような「お問い合わせ内容を教えてください」という表示がされることがあります。

これが「チャットボット」です。いくつか選択項目があり、それをクリックすると、回答が得られたり、新たな質問が自動で送られてくるものです。

このチャットボットが、お客様の来店を促す、営業を効率的にするとして効果を上げるようになっています。

不動産に限らず、2022年は様々な業界でチャットボットが効果を上げるようになりました。チャットボットのメリットの１つは、一度設定すれば人が関わらなくてもその後機能することです。

HPを見ているお客様も、人からいきなり「問い合わせをどうぞ」と言われても身構えてしまうかもしれませんが、自動送信ならばそのハードルは下がり、また項目も提示されていて選ぶだけなので、興味のある人は何かしらのアクションをしてくれる可能性が高まります。

また、

1. お問い合わせ内容は？→「物件探しを手伝ってほしい」を選択

2. 物件を探すうえで重視する点はどちらですか？→「予算」を選択

3. いくらぐらいでお探しですか？→「○○○万～○○○万円」を選択

というようにお客様の回答が多くなるほど、お客様のニーズやお客様についても明確になります。

お客様にしても、チャットボットで回答を得られるほど商品やサービスに関する理解が進みますから、成約の可能性が高まるのです。

よほどの興味・関心を持っていない限り「問い合わせをする」アクションを人は起こさないものです。それはお客様も同じで、興味・関心はあっても問い合わせにハードルを感じている客層は多いもので、自動応答に回答するだけで必要な情報が得られるチャットボットは、お客様の問い合わせのハードルを下げることにつながっています。

また、チャットボットでのやりとりしたあとに「ホームページに掲載していない情報がありますので」「より詳しい説明ができますから」という形で「お店にお越しになりませんか？」「お客様のお名前やご連絡先をご入力ください」とご案内すると、名前やメールアドレスを教えてくれたり、来店へとつながる可能性が上がるのです。

チャットボットは、問い合わせにハードルを感じている潜在顧客からの売上をつくるのに機能します。

現在、同社は月に約15件チャットボット経由の反響があるといいます。

また、商談にならなくともメールアドレスを取得できた人には１日おきにメルマガを自動送信。接点を保つと同時に、そのメルマガを開いているかなどから、温度感も把握できます。

②SFAを活用して契約率向上

SFAとは「セールス・フォース・オートメーション」日本語では「営業支援」のデジタルツールです。営業進捗を可視化することで、契約率を高めていくのに機能します。

これまで各営業担当者の営業活動状況は営業会議の日までわからなかったのが、リアルタイムで可視化でき、マネージャーが営業に同席せずとも個別の営業案件を把握し、指示を出せるようになりました。

③データ経営で経営判断が早い

リアルタイムで実績などについて把握できると、データに基づいて経営判断をすぐに行うことができるようになります。明確な判断材料があるので、スピードだけでなく精度も上がります。そうしてPDCAサイクルを早く回すことができ、成果につながりやすくなるのです。

データ経営で把握できる主なデータは

・全事業の予実実績管理

・種別ごとの契約、決済の業績管理

・当月の契約済み、見込み実績状況

・営業社員別ランキング（実績確認）　など

です。

社員の営業成績や契約見込などのプロセスもすべて可視化することで、社員がデータをもとに「成績を上げるために足りないのは何か」を自分の頭で考え、 主体的に行動できる環境になっていることも、非常に効果が大きいと言えます。

「主体性に勝る生産性向上はない」そのような社員の主体性を生かしながら、会社として営業のロールプレイングや営業資料の見直しなどを行い、主体性と教育を組み合わせて早期育成を実現。さらにマネージャーが当月・次月の見込み案件を確認し、見込み案件に対する対応の指示を行う。それがアイーナホームの営業成績、ひいては会社の売上増加を実現している大きな理由です。

④業務のデジタル化で高生産性

同社がデジタル化を進めたことで、ほかにも効率化できた部分があります。例えば、顧客に関するあらゆる情報がすべてデータとして入力されているため、契約書の作成が大幅短縮できるようになりました。

契約書を作成するうえで必要な情報を新たに取得する、管理するといった工程が減ったからです。そうして社員の残業時間も削減できました。

アイーナホームは顧客に関するあらゆることを情報として自動で取り込むシステムを導入したことで、これまでは手で行う必要があった反響入力・帳票入力の手間を軽減できるようになりました。

自動取り込みなので案件の入力漏れもなく、また媒体別で反響数がどのように異なるかの管理もできるようになっています。反響に対する対応がされていない案件に対しては担当者にアラートが送られ、対応の忘れを防止するようにしています。

会議資料の作成にかかる時間を減らすことができました。数字や情報はデジタル化されてすでに存在するため、それらを見ての分析や課題の改善施策のために、時間を活用できるようになったのです。

３）生産性高く売れる仕組みづくり

①デジタル活用したテレアポ専任

現在、アイーナホームの新規来店客の45％がテレアポ経由と、集客の柱になっています。テレアポといっても、闇雲に数多くの電話をかけているわけではありません。テレアポで高い効果を出すために、デジタルツールを活用しています。使用しているのが「ZOHO」です。

これは最初に紹介したMAをさらに発展させたようなもので、自社のサイトを訪れたお客様の滞在時間・所在地・閲覧ページなど様々な情報をリアルタイムで確認できるデジタルツールです。

そして、そのような情報をもとに、お客様をスコアリング。スコアの高い顧客ほど、受注の確率が高いと判断されます。

アイーナホームのテレアポスタッフは、PCで常に管理画面を開いており、スコアの高い顧客がHPを閲覧しているとわかったならば即架電するようにしています。サイトを見ている温度感の高いユーザーに架電することで、アポ獲得率が格段に高くなっているのです。

ZOHOの実際の画面。滞在時間や閲覧ページを把握することができ、温度感の高いお客様に電話して来店を促す

②リフォーム実例の可視化で単価増

アイーナホームは不動産仲介業から始まりましたが、経営幹部などトップだけでなく、営業担当者も「不動産仲介時の手数料単価だけでは食べていけない」という共通認識を持っており、仲介にとどまらないリフォームをお客様に提案していく方針の下、不動産仲介の初回接客時にもリフォーム提案をすることが当たり前になっています。

以前は「リフォーム」の提案が中心でしたが、最近ではリノベーションの事例も増えており、それらについても実例を見せることで顧客のイメージもわきやすくなり、単価アップにつながっています。

リフォームを考えていなかった顧客にもそのような提案をするわけなので、リフォームに関しては実例をもとに相場観をお伝えします。費用を抑えようと中途半端なリフォームをすると、５年後、10年後などのそれほど先でなく新たなリフォームが必要になるからと、費用に関しては顧客に多めの予算を取っていただけるよう話しています。また、リフォームの予算を確保していただくために、提案する物件そのものの価格を下げるなどの調整を行っています。

そのようなやりとりはテクニックが必要で、店長クラスの力量がある人でなければ難しいのですが、営業担当者全員が店長レベルの話ができるよう、アプローチブックに文言を追加し、ロールプレイングを徹底しています。

そのようなプロセスにより、各営業が1000万円以上のリフォーム予算を積極的に取得できるようになりました。

③デジタル教育で早期戦力化

アイーナホームがデジタル教育を導入した背景としては、会社の成長に伴い未経験者の営業社員が増え、早期育成が急務となったことがあります。社内のナレッジ共有、ロープレ習慣、個々の課題改善をする中で、デジタルを導入したほうが圧倒的に効率がよいという経営判断を下しました。

マニュアルをスマートフォンでも学べる動画にまとめ、何度でも見てもらうことで、未経験者でも早期に実力がつくようにしました。また、Z世代は特に動画に慣れているので、動画で学ぶことに吸収力があるといいます。

また、ロープレの徹底をし「新人の業務はロープレ」と意識づけをし１日８時間ロープレしているといいます。そして、社長・店長テストを合格しなければ絶対に初回接客に出させないことをルールとし、店長陣の新人へのフィードバックはほぼ毎日行われているのです。

また、 店長は、“結果に対して褒める”マネジメントを徹底しているといいます。結果を重視しつつも、安定して業績を上げるためには営業担当者のモチベーション管理が重要と、こまめに声掛けをしています。

これらの細かい施策のほかにも、1on1ミーティングを社長・店長２名で２カ月に１回実施し、デジタルとアナログを組み合わせた人材育成が、アイーナホームの行っていることです。

デジタル施策の総まとめ

アイーナホームの行っているデジタル施策について、以下の通りまとめました。

デジタルで効率化を図る、情報の共有を進めながらも、デジタルで分析した結果スコアが高いとわかった顧客には電話をかける、営業担当者の研修も最後は人のテストを合格するまでフィードバックを繰り返すなど、デジタルとアナログをうまく組み合わせて成果につなげているのが、成功の理由と言えます。

売上を大きくしたい、生産性を高めたい、デジタル導入を考えているという会社の参考にしていただければと思います。

「非効率に特化」し、とことん人を大切にする「逆張り経営」で成長する運送会社①

船井総研ロジ取締役常務執行役員の橋本直行が、特徴的な経営で成長を続ける運送会社とその優れたビジネスモデルをご紹介します。 価格競争が激しく高コストで非効率になりがちな大型トラックの長距離輸送という事業にあえて特化し、成長を続けているのが「フジトランスポート」です。

フジトランスポートは、早期売却を前提とした最新の大型トラックを一括購入して原価を抑えつつ、その機動力を背景に様々な輸送コストの低減を行い、IT管理によって空車率を激減させた結果、グループのトラック保有台数約2420台、全国に116カ所の拠点を持つ近畿最大の運送会社へと成長している会社です。

この会社の秀逸なポイント

●短期サイクルの車両売買と輸送の「見える化」で輸送ビジネスの新たな可能性を切り拓く
□敬遠される大型・長距離に特化し、競合が少ない分野で圧倒的ナンバーワンを獲得
□新車の大量一括購入と短期での売却サイクルを構築し、車両取得原価を抑え、価値があるうちに中古車として売却することにより安定的に収益を確保
□全車GPS装備により輸送中のトラック位置を公開
□メールによる空車状況を取引先に公開し、空車率を劇的に低減。拠点を全国規模まで増やすことでビジネスチャンスをアップ

企業プロフィール

フジトランスポート株式会社 業務内容：運送業、貨物取扱業、新車トラック・中古トラックの販売 所在地：奈良県奈良市 創業：1978年 代表者：松岡弘晃氏 資本金：3000万円従業員数：約2240名（グループ全体は2850名）2022年７月時点

「大型・長距離輸送」にあえて特化

日本の物流を支えるトラック運送業の営業収入は全国で約14兆5000億円（2015年度国土交通省調べ）で物流業界全体の６割以上を占め、実際の輸送量も、トンベース（輸送した貨物の単純な総重量）では国内全体の９割以上を担っています。

大型車両による長距離輸送は価格競争になりがちで、仕事を受けようと思えば競合よりも安く引き受けることになり、利益率が非常に低くなってしまいます。

さらに、長距離運行では企業の管理の目が行き届かず、ドライバーのコンプライアンスが守られにくくなるという問題も見すごせません。

こうした理由から、うまみが少なくリスクが高いと業界内で敬遠されがちだった「大型・長距離輸送」に、フジトランスポートはあえて特化し、独自の方法論で見事に成功を収めました。

顧客ニーズに迅速に対応するトラック大量保有や国内に広がる多数の拠点ネットワークを背景に、価格競争による利益率低下やドライバーのコンプライアンスといった問題を解決し、うまみが少ないと敬遠され競合が多い市場で、屈指の運送会社となったのです。

時流に反して、順調に採用数を伸ばす

トラック運送業界には、「車両不足」と「人手不足」という課題が常に付きまといます。、貨物車の保有台数推移（自動車検査登録情報協会データより）を見ると、車両の数は1992年の約2114万台をピークに、2000年では約1842万台、2010年には約1553万台、そして2018年では約1438万台まで減少しました。

さらに深刻なのは人手不足、ドライバー不足で、人数そのものというよりも、平均年齢が上がっていることに問題があります。

10〜30代のドライバーが激減し、40 代と60代が年々増え続けています。少子高齢化の影響もありますが、近年はワークライフバランスを重視する若い世代が、長時間労働になりがちなトラック運送業界、特に長距離輸送を敬遠していることが大きな要因になっていると考えられます。

実際、厚生労働省の統計（2017年６月）によれば、トラック運送業を中心とした道路貨物運送業（男子）の賃金水準は　31万133円と全産業（男子）の平均35万7774円よりも低く、逆にトラックドライバー（男子）の総労働時間は全産業（男子）平均168.0時間に対して204.6時間と長時間になっています。

人手不足解消のため、大手運送事業者では、事業がうまくいっていない中小零細企業を吸収合併する動きが活発化。

「新規参入企業の増加」の時代から「大手への人員集中」時代へとゆるやかな業界再編が進んでいるのが現状で、今後まだまだその動きは続き、最終的には現在の６万2000社から半分程度まで減っていくといわれています。

そんな時流のなかフジトランスポートでは、ホームページやSNSの活用による企業PRや、IT活用による空車率低減と効率化による充実の賃金制度などにより、順調に採用数を伸ばしています。

「運送業界にイノベーションを起こす」理念とビジョン

フジトランスポートでは、次のビジョンを掲げています。

1. 2035年には車両台数を5000台にします。

2. 常に新規開拓を行います。

3. お客様より従業員を大切にしています。

4. 関係法令を守って運行します。

１のトラックを増やしていく点については業界内でも夢を感じる人が多く、人材吸引力につながっていると考えられます。

特徴的なのは、３の「お客様より従業員を大切に」を明確に打ち出している点でしょう。従業員ファーストの姿勢は、使用するトラックを見てもわかります。

全車両にエアバッグを装備、ABS（アンチロック・ブレーキ・システム）も４トン車を含めたトラック全車に装着。衝突被害軽減ブレーキを1800台以上に装着完了し、2026年までに長距離を走る大型トラックのすべてが装着車両になる予定です。

同社の中枢では、24時間の運行管理を実施。常に運行管理者が安全な運行のサポートを行う体制を整えています。

また、効率的に荷物が積み下ろせるカゴ台車などの運搬用資材を投入することで、作業を行う乗務員の労働時間短縮や省力化、作業中の労働災害防止に努めています。

４つのビジョン以外にも、フジトランスポートがこだわっていることがあります。それ は、運送業界にイノベーションを起こすことです。

例えば、航空業界のLCCのように「やらないこと」をしっかり決めている点。LCCは、航空機の機種を絞り込み、サービスを絞り、路線を絞り、整備の効率を上げることでコスト、ひいては運賃を下げて競争力を高めています。

同社は大型トラックに特化して運ぶ荷物の種類を絞り込み、整備工場に十分な投資をして整備力を上げることで整備コストも低減し、顧客に貢献しています。

通常、大型トラックの長距離輸送という業態では、顧客側の立場が圧倒的に強いものですが、フジトランスポートは「やらないこと」を決めて、顧客を選んでいます。これは従来この業界になかった画期的な出来事です。

ビジネスモデル―４つのストロングポイントで他社、顧客に優位に立つ

フジトランスポートは、「長距離の大型トラックによる運送」に特化したビジネスを行っていて、個人宅の引っ越し、小型トラックでのスーパーやコンビニの店舗配送などはせず、宅配便のような小口配送にも広げる予定はありません。企業規模が拡大してくると始めがちな倉庫ビジネスや海外展開もせず、本業以外の多角経営もしない方針としています。

本業に徹しながら全国に拠点を広げ、ゆくゆくは国内最大の都市間輸送ネットワークインフラ企業になることを目標としているのです。

「長距離の大型トラックによる運送」という枠のなかでフジトランスポートが突出しているポイントの１つは、顧客の要求にすぐ応じられるトラックが用意できることです。

大型トラックが一度に複数台必要な大口荷物を顧客が運送業者にオーダーするような場合、その準備には時間がかかります。

運ぶ荷物の内容と運賃が決まる
→積み荷に合わせてトラックをトラックメーカーに発注
→トラックが納車されてはじめて輸送が可能になる

こういう段取りになるのが一般的です。

一方、フジトランスポートは、車両一括購入によって取得原価を下げるだけでなく、いつでも動かせるトラックを常に何十台も用意しています。保有する車両の多くは特定の荷物に合わせたものではなく、様々な荷物が運べる汎用性の高いモデルなため、たとえやむを得ず取引先との運行の契約が終了した場合も、運ぶ荷物を選ばないのですぐ別の仕事に回せます。

さらに、６つの用途に対応する独自開発の「スーパーマルチトラック」のような、様々な貨物に対応可能なトラックを増やしており、いつでも顧客ニーズを満たす準備を整えています。

１日でも早く荷物を運びたい荷主としては、すぐに運んでもらえるフジトランスポートに頼みたくなるのは当然でしょう。突然の輸送依頼に対しても「今日からでも運べる」という強みは大きく、それは同社の発言力にも影響してきます。

例えば、大型トラック 20台分の荷物を運びたい場合、荷主はリスクを分散するため「５台分はＡ社、10台分はＢ社、残り５台分はＣ社」と割り振るものですが「すぐに稼働できるので20台全部当社に運ばせてもらえませんか？」と交渉できます。

また、その車両が最新型ばかりというのも優れたポイント。現在のトラックは最新型であればあるほど安全性が高くなるからです。

これを可能にしているのは、一般的な運送会社の約半分の期間でトラックを入れ替えてしまう仕組みにあります。

いわば、「販売用のトラックが荷物を運んでいる」というユニークな発想で、車両価値が高いうちに同業他社やトラック専門のオークションで中古車として売却し、また大量に新車を一括購入する、というサイクルを繰り返すことで成り立っています。

もう１つ特筆すべきポイントは、IT活用によって自社のトラックの空車率を30％から 14％にまで激減させたことです。

営業用トラックの平均積載効率を調べた国土交通省データによると、全国平均は1993年の54％から、2016年で40％にまで下がっていると報告されています。つまり、 60％が空いた状態でトラックが走っているということになります。

厳密には「積載効率の逆＝空車率」とはなりませんが、平均60％が無駄になっているところを、フジトランスポートでは14％に抑えられている点は驚異的と言っていいでしょう。

フジトランスポートの歩んできた道―社内外の困難を乗り越えることで強みに変える

フジトランスポートの開業は1978年で、初代代表である松岡日出夫氏が２トントラック５ 台で富士運輸をスタートしました。当時の主な業務は、大手運送業者からの集荷集配の委託でしたが、 1985年には集荷集配から撤退し、チャーター輸送や幹線輸送へとシフトする。1997年に現在の代表である松岡弘晃氏が入職し、専務に就任します。

フジトランスポート　代表取締役　松岡弘晃氏

弘晃氏は、将来、義父である日出夫氏から会社を引き継ぐことを想定して、専門学校卒業後は三菱ふそうに入社しています。社会人１年目は自身の希望によりトラックの整備部門に勤務。その後、トラック販売の営業マンとして能力を発揮していましたが、同社社内で労働問題が起きたため、日出夫氏から急きょ呼び戻されました。

その問題とは、組合問題。長距離輸送のドライバーが待遇に不満を募らせ、1996年に従業員30名中24名が自交総連という労組に加入したことです。会社を立て直すために弘晃氏が呼ばれ、富士運輸に入社することとなったのです。

入社後は組合との労働紛争や４件の労働裁判の対応をし、４年間の係争ののちにその紛争を収めています。

組合問題は長引いたため、同社は2000年にリスクヘッジとして名古屋に２つ目の拠点を設立しますが、同年12年に組合と和解して実質的に労使紛争は終結。最大の逆境を乗り越えた瞬間でした。

弘晃氏が社長に就任したのは2001年で、この前後から同社はIT強化を図るようになります。

1999年に自社ホームページ立ち上げや日本ローカルネットワークシステム加入、さらに2003年にはトラック全車にデジタルタコメーターを装備して運送管理を行いました。この運送管理システムは、のちに業界初となる「GPSによる全車両管理システムの自社開発」へとつながっていきます。

同社が大型トラックによる長距離輸送に特化し始めたのは、弘晃氏が入社した年の1997年頃からです。様々な調査の結果、データ的に業績好調な大企業が多かったこと、トラックの回転率がよいこと、奈良県内での競合が少ないことなどの理由から、広島県にある西部運輸グループをモデルに、大型トラックによる長距離輸送に絞り込んだのです。

1998年以降は、「これからは航空貨物が増加する」と見込んで空港拠点を増やす意識を持ちつつ猛烈な営業活動を開始し、2001年には関西空港営業所、2003年には成田営業所を立ち上げました。

短期サイクルのトラック売買事業については、もともと「トラックを持っているものが勝つ」という思想を持っていた弘晃氏だけに、専務時代から中古トラックを積極的に購入していました。

その後、2005年ごろから新車を買い始め、それがきっかけとなって現在の短期売買サイクルへと発展しています。

組合闘争以外は順風満帆に見える同社ですが、実際には相当な困難がありました。

１つは、弘晃氏が専務時代、なかなか努力が実らなかったのは営業。関西から東京に出ての営業では、慣れない土地ということもあって特に苦労したといいます。毎月１週間ほど泊まり込んで日々10～20件の飛び込み営業に悪戦苦闘するものの、社内や身内からも「東京で何をしているんだ？」と不審な目で見られていたそうです。

もう１つは資金面。リーマンショックの影響が残る2011年に総額約20億円もかけて投資したスーパーマルチ車両を100台購入するものの、仕事がとれなかった時期はかなり苦労したといいます。

決算で２億円の赤字を出した年もありましたが、銀行に頭を下げ資金を工面しながらも従業員にはきちんと賞与を支払い、解雇者も出しませんでした。

「これがのちの飛躍を生んだ」と弘晃氏は話します。

トラック５台からスタートした同社だが、2016年以降は積極的にM＆Aを行い、静岡運送、東和運送、関汽運輸など６年間でグループ化・部門譲受をした数は12社にのぼります。

今やトラック2400台、グループ従業員数2850人を抱える全国区の運送業者にまで成長。今後はトラック5000台、事業所200カ所を2035年までの目標として突き進んでいくのです。

後半記事に続きます。

【人気記事：再公開】200億円企業をゼロから作った男の流儀（株式会社リバティ前編）

本日お届けするのは京都を中心に中古車・軽自動車販売・修理業を営む株式会社リバティの代表取締役社長、蓮尾耕司氏のインタビュー映像です。21分の動画です。

リバティは自動車販売という成熟業界でも増収増益を続け、グループ連結の年間売上高は230億円に達しています。グループ会社４店舗含めて15店舗を出店し、いずれの店舗も収益化しているほか、業界平均と比べても低い離職率７％（リバティ単体）、社員が辞めない会社として、人材育成、マネジメント手法も注目されています。

同社はこれまで多々M&Aを行ってきたなかでも、異例と言える「超友好的買収」を実施。買収されるオーナー経営者も希望者は残留し、引退希望者には買取金額増額を提示し、「リバティだけでなく、買収先のオーナー、従業員も幸せなグループ」として、さらなる成長の加速を実現しています。

社長の蓮尾氏に、そのような成長を実現するために行っていることや、蓮尾氏の経営者としてのマイルールなどを聞きました。どうぞご覧ください。前半後半に分かれ、前半動画では以下についてお話しいただいています。

出店した場所すべてで成功している　それを実現した新規出店の決め方

画像提供：PIXTA

成功するのは「成功するビジネスモデル」が確立したからです。「このモデルで新たに出店すればうまくいく」ができあがったことで、それを繰り返しています。

とはいえ、出店時の立地の選定などは、最初の出店をした当初は「感覚」でした。

よいところは「ここは成功する、この場所はいい」という「におい」がするものです。

今は立地調査をし、会議を経て役員会で出店を決断しています。

とはいえ今でも「感覚」は大事じゃないか、数字で出てこない部分はあると考えています。

今は無茶な出店はしていませんが、当時を振り返ると「直観」「経験」度胸」で判断していました

出店を始めた当初は、成功している小売業（ニトリ、イオン、ヤマダ電機）が近所にあるかを見ていました。

それらは「大きな会社がリバティよりも深く分析した結果出店した場所」ですから、大いに参考になったものです。

土地を見たときに、たくさんのお客さんが来店している姿がイメージできるか？

それに加えて大きな企業の立地調査、それが判断の基準です。

うまくいってはいるものの、その度合いが低いケースの特徴は、「地域一番店になれる」ことを前提の条件で出店しなければならなかった、が今思うと反省点です。

潤沢な資金、人材が整うならば、「絶対にその地域の一番店になれる」器からスタートするほうが、勝率は高くなります。

投資（銀行の借入）のマイルール

私は「事業規模を拡大したい」欲求があるかないか、から考えます。

「上がった利益を貯めてから新たに出店」が安全な拡大の方法でしょう。

ですが人生は１回、現役の時代が100年も200年もあるわけではありません。

現役でいられる時代は、せいぜい30年しかないのです。その中で「自分はここまで成長したい」と思っているならば、借入しかありません。

「利益の中での成長」では、大きな成長はありませんから。

現在は「ビジネスモデル上絶対にうまくいく、ほかの場所でもできる」という確証を概ね得ています。

ならばお金を借りるのを怖がって事業規模拡大の欲求を抑えるよりも、欲求のままにお金を借りてやりたいことをやる、という意思決定になります。

10億円の融資を受けた際も、まったくと言っていいほど不安を感じませんでした。

それよりも「大きくできる」わくわく感、楽しみのほうが大きかったですね。

交友関係、人付き合いにおいて決めていること

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事業の規模に関係なく「自分が将来こういう風になりたい」という欲求、思いを持っている人と付き合うことにしています。

運のある人と付き合っていると、自分にも運が引き寄せられるものです。

将来成長したい、こんな夢があるという欲求を持っている方と付き合うと、楽しい。

楽しいから、本音で付き合える。

互いに切磋琢磨し、一緒に成長していける、一緒に遊べる、いい意味でぶつかりながら、ともに成長していける。

プラス思考の人は絶対にツイているものです。そういう人には勝手にツキがきます。

話しをしていて、本人は「こういう風になりたい」と言いながらも「自信がない」「失敗するのが怖い」と言う人は、本当はそうなりたいと思っていない。それが本音です。

経営者同士で友だちになるならば、夢を語り合える人がいいですね。

夢はプラス発想からしか生まれないですから。

交友関係を円滑にするために行っているプレゼント、贈り物

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損得で考えるよりも「お天道様は見ている」「神様は見ている」と思うようにしています。

わが社を辞める人とは、その後二度と会わない可能性が高いです。ですがその人に世話になっているならば、その人の幸せを願って見送るようにしています。

その人に次の職場で活躍してもらいたいと思い、ネクタイを贈るなどしています。

担当してくれた保険会社の人が転勤する際にも、これまでの感謝を伝えることが大事。そう思っています。

「思う」ことも大事ですが、言葉にして伝えないと伝わらないこともありますから。

そして、たまに感謝の気持ちを形にして、プレゼントをすることもあります。

自社を辞めた社員に対しても、何かのきっかけで「元気にしているかな」と思ったときは連絡をする。

「気にかけてくださってものすごく感動しました」と受け止めてくれています。

それが「人と人」そういうものです。

社長が店舗視察にあまり行かなくても、なぜ業績がよいのか？なぜ細かい情報まで把握できているのか？

画像提供：PIXTA

各店の今日の成果を報告させる仕組みを通じて上がってくる数字には、逐一目を通しています。

数字は毎日、頭に刻み込んでいます。

合計で15店舗ほどになっている現在も、15店舗の数字を答えられるくらい、しっかりチェックしています。

そして出店するときに「この人しかいない」という人に店舗を託すのです。

たとえば３店舗出店する際は、上位３人の社員を店長にして、任せる。

任せないと、人は成長しません。

指示、命令を実行させ、報告させる、社長がしょっちゅう店舗に行き細かく指示をしているでは、一時的には速く進むかもしれませんが、店長は成長しません。

人が成長してくれるほうが、最終的には会社の成長スピードも速くなります。

成長の一番の近道は「任す」「権限移譲」です。

権限移譲なくして人の成長はあり得ないです。

ただし「任せて任さず」です。常にどこかで気にかけ、数字は常にチェックするようにします。

店舗の調子が悪そうと感じたらば、店長を電話やLINEなどでフォローします。

「あの店舗は調子が悪いな」とフッと気になるものです。そして数字を確認すると、エース、トップと言われる営業担当者が成果を出していないことがわかります。

「どうや、最近？調子悪そうだけど」とLINEを入れてみると、いろいろな形で返事があるので、それに応じて本人が前向きに、やる気になるような言葉を投げかける。

そのような連絡は「社長が見てくれている」と意気に感じてやってくれている効果があるものです。

蓮尾式人材育成術

人間誰でも、潜在能力があるものです。

その人が持っている能力を引き出したら、まだまだできる、それは全員にあります。

そして、人の能力が発揮されるかどうかは、環境により決まります。

成長する環境をどんどん与えていくことが大事です。

成長という意味で、休みを与えないことです。

もちろん物理的な休みは取ってもらいますが、次なる成長のためのステップを常に踏み続けてもらうこと。それが重要と考えています。

そして、本人が経験したことのないことにチャレンジしてもらい、最終的に成功することで自信になる。

「俺はこんなことできるようになった」と気づき、新しい能力が引き出されるのです。

わが社の規模が小さいうちから勤めてくれている社員は、与えられたそのポジションと一緒に成長してきてくれました。

最初の中古車販売店のみを経営していたとき、社員は全員営業担当者でした。

それが、整備工場を建てるとなった際、社員に整備の経験者はいませんでしたが、ある社員に「君、整備工場の責任者をやってくれ」と頼んだのです。

その人にすればやったことのないことでも、社長に任されたと思うとやってくれる。「人間、やればできる」のです。

その後も、人員がいなくても新たな出店を決めたこともあります。担当者には「来年４月に新卒が８人初めて入ってくる。その子たちと出店したらいい。なんとかなるからやってみろ」と言った

担当者にしてみれば、この出店を失敗するわけにはいかない、会社は10億円投資している。そう思い、車の売り方を知らない入社１年目の社員たちを率いて、あの手この手で必死に頑張ってくれました。

人間にはもともと能力があるのです。何とかするものです。

経験化されるとその精度が上がるだけで、まず何とかなるのです。

そして精度が上がると「何とかなる」から「安定」へ。安定が続くと、ものすごく収益の出る店舗に化けていくのです。

大事なのはまずチャレンジ、挑戦すること。

「今までやってきたことを繰り返すだけ、できる」と任せました。

任せる際も「この社員たちは絶対にやってくれる」と思っていました。

当社は常に人材不足でも、どんどん新しいことをしています。

初めてM&Aをした際は、その会社に本部長２人を立て直しのために送り込みました。

「リバティをうまくやってきたのだから、同じことをやってこい」と買収先企業の立て直しに送り出したのです。

そして、見事にやってくれました。

新卒と中途の人材、育て方の違い

中途社員は「即戦力」のイメージがありますが、それは人によります。

実は新卒のほうがうまくいくケースが多いと思っています。

新卒のほうが、成長が速いことが多いのです。

当社は採用は新卒のみに絞っていましたが、数年前から中途も採るようになりました。

能力なんて、働いてもらわないとわからないものです。

大事なのは、視点、思考がプラス思考かマイナス思考かです。

そのような点を、面接を重ねていくなかで、感じる部分があるがあるか。

そして、できるだけプラス思考な部分をマイナス思考より多めに持っている人を、意識して採用するようにしています。

学歴も関係ありません。学歴が高いから能力があるとも限らないですから。

むしろ、高学歴でもマイナス思考の人なら、学歴が高くないプラス思考の人のほうが採用の優先順位は上にいきます。

後半は以下です。