社長の器以上に会社を大きく成長させる経営者、止まるトップの違い

会社経営は「目的」か？「手段」か？

「社長」と一言でいっても、大きく分けて2つのタイプが存在します。

「社長になりたい」がモチベーションの社長：自身が社長になることを目的に会社を興すタイプです。会社が扱うものやその手段は問わないので、柔軟で儲かることに敏感なことが多い傾向です。

「私的、個人的な欲求」は強い力を生むものですから、社長の求心力の下に、急成長することが多いのも特徴です。

その一方で、売上がたとえば5億～10億円ほどに達し、会社もある程度安定すると「社長として一定の成功は収めた」となり目標を見失い、成長が止まってしまうケースが見られます。

目的達成のための手段として経営者になることを選ぶ社長：「自分はこれをしたい、これで社会を、世の中をよくしたい」という目指すものがあり、それの達成のためには会社を興し、自身が経営していくのがベストと考え社長になるタイプです。

前者は社長が「目的」であるのに対し、後者の社長は「手段」です。そして後者の社長は、自身がよいと思ったものが世の中に受け入れられるのには時間がかかることもあるため、すぐに成長しないことも珍しくありません。ただし、成長が始まったならば、会社が大きくなっていく可能性を秘めています。

社長が「手段」の経営者にとって、目指す先は「世の中、社会をよくする」ですから、目指すゴールはまだまだ先です。決してたどり着けないものと言ってもよいでしょう。だからこそ、一定レベルの成長をしても、常にさらに先を見据えて、会社を大きくしていくことができるのです。

売上200億円を超える、地域で一番大きな規模のタクシー会社の例をご紹介します。この会社は自社の売上・利益、拡大を経営の目的としておらず「業界の地位向上」がその目的です。
タクシー運転手を進んで選ぶ人が出てくる職業にしたいと、AIをタクシーに導入したり、接客術を取り入れたりと、働く人の待遇や提供するサービスの内容をよくすることに力を入れています。

経営を「会社の売上・利益を増やす」のではなく「業界の地位を上げる」ために行ってきた結果、会社もこの規模に大きくなったのです。

このように考える社長にとって、業績はもはや「成績表」。目指す目標に対してどこまで成長という形でコミットできたかです。

別の会社の例です。売上が10億円ほどでしたが、経営者は病気になり、余命宣告をされたことをきっかけに、まったく関係ない仕事をしていた娘さんが後継者に指名されました。

その方は「何としても会社を存続させないといけない」と経営に力を入れ、売上を2倍以上にしたのです。売上は現在30億円を超え、50億円を目指しています。

やはり「目的」があり手段として経営を行っていると感じます。

目的が明確だからこそ、ブレない

事業を承継してから売上を2倍以上にした社長は「次のステップは売上50億を達成する」という目標に向けて、具体的な経営戦略を立てています。その特徴を以下にまとめます。

明確な目標設定と逆算思考：50億円の売上目標を達成するために必要になる、具体的なステップを逆算して計画しています。この会社がしっかりしていると感じるのは「目標達成のために最善の手を打つ姿勢」です。

一定レベルに大きくなった会社は、そこからは「勝ち方」にこだわり始めて泥臭い手段を取らなかったり、本業に直接関係ないことを始めたりして、会社の本来の目的に忠実でないものを選ぶことがよくあります。「カッコいい自分たち」が目的になってしまうのです。

しかしこの会社は成長してもブレがありません。カッコ悪くても一番良い手段を選びます。

目標達成に不要なものは切り捨てる: 掲げている方針に従わない社員に対しては、シビアに対処しています。先代の社長が重用していた、会社の売上の3割、4割をつくっていたような社員に対しても、今の方針に合わないならば退場してもらうことも厭いません。

「優秀だが会社の方針に従わない人材」を、そのときの売上が大事だからと放置してしまうと、そのような人は全体への影響力がある分、会社の求心力を阻害することにもつながります。

とはいえ売上も大事で、できるようでできないことですので、それをしっかりできるのはすごいことと感じます。

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