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ブルーオーシャン開拓する意味を理解し売り上げ3倍へ(解説記事)

2023.05.17
少子高齢化に伴い市場規模が縮小する中、これまでの「事業」と並行させながら収益性の高い「新事業」を開拓しようとする経営者が増えています。
一方で、技術の発展による安全規制などの緩和により、新たな市場が開いてきています。
建築基準法の改正により開かれた「中小規模木造非住宅建築」という新市場が開拓された建築業界を例に「ブルーオーシャン」市場を開拓する方法を探ります。

ブルーオーシャンなき建築業界の課題

建築業界に共通する課題はブルーオーシャンがないことです。

「受注棟数減少よる住宅建設の頭打ち」と「既存の住宅事業と並行できる新事業の発掘」ではないでしょうか。建築業界に限りませんが、少子高齢化に伴う市場規模の縮小により既存事業の収益性は下落していくため、既存事業と並行できる新事業開拓の必要性は高まらざるを得ません。

そこで、中小規模の建築会社が新事業モデルとして業績を改善させた「非住宅木造建築」のケースを紹介しながら、中小企業こそができる「ブルーオーシャンの開拓」について解説していきます。

ブルーオーシャンの発見

①規制の緩和―建築基準法の大規模緩和

規制緩和に伴うブルーオーシャンを示した表

建築基準法が2018年、2021年の2回大規模緩和されたことにより、建築物の木造施工が幅広く許容されました。大手ゼネコンでは木材使用が急増し、環境配慮を目指す“木質化”が進んでいます。

一方、中小規模の建設会社は、大手ゼネコンとは違いコストを武器として新市場に入り込むことができると考えられます。近隣の事情に詳しく、独自のノウハウを培ってきた地域の工務店などは、その点を活かし、木造の低コスト効果を極大化することが可能です。

規制の解除や緩和により新たな市場が開放されることはブルーオーシャン開拓の代表的な例です。新市場開拓には常に新たな情報から目を離さないでいることが重要です。

②新市場での中小企業の勝ち方

しかし、地域の工務店・住宅会社では、資材単価などを理由に積極的に木造採用を進められず、設計者も木造化をあまり提案していないのが現状です。

木造建築は基本的に鉄骨を用いた建築に比べ、資材単価を約23%削減することが可能で、工期も約30%短縮できます。
また、木造建築は「イニシャルコスト」だけでなく「ランニングコスト」も非木造建築物に比べるとかなり低いのです。RCと比較すると、減価償却が25年早く、固定資産税率も45%以上低いです。建築物を運営する際に必要となるコスト削減を望む企業・法人の需要は高いでしょう。

中小規模の非住宅分野建築が将来性のあるブルーオーシャンであると考えられます。

市場が開放されたとはいえ、全ての既存業者が新市場開拓に挑戦するわけではありません。ブルーオーシャンに飛び込むには、市場の可能性を信じ、不安や課題を克服する覚悟が必要です。

ターゲットとすべき商品

しかしながら、中小規模非住宅木造建築物という範囲は広いです。建築基準法の4階以下、高さ16m未満という制限に掛からない非住宅民家施設には、
ⅰ.幼稚園・保育園
ⅱ.店舗・事務所
ⅲ.クリニック
ⅳ.介護・福祉施設
などが挙げられます。

粗利率からブルーオーシャンの探し方

これら施設の共通点は、約1,000㎡前後で、多数の人が同時に使用できる点です。また、コスト削減のための木造化の需要が高く、数が少なくないということも挙げられます。同棟数の住宅に比べ、これら施設は約5倍の売り上げ・粗利が狙える強力なメリットがあります。

「大手ゼネコンが参画するには規模が小さく」、「中小事業者は参画する決断ができず迷っている」一方、「確実な需要は存在している」ニッチ市場をノウハウ・情報力を用いて認識し、攻略することは、建築に限らずブルーオーシャン開拓において必須です。
営業と受注

①BtoB営業

非住宅木造建築の受注は、個人からの受注が主となる住宅建設とは異なり、企業・法人からが多いです。法人から受注を受けるには、BtoB(Business to Business)営業を積極的に行っていく必要があります。

一般的にBtoB営業の場合、顧客となる法人のリストは決まっているため、紙媒体やWEBに誘導し反響を得ることが重要です。中小規模の建設会社が行うことできるBtoBマーケティングの手段としては、新聞の広告や小冊子型DMなどが挙げられます。

BtoB営業が個人顧客(BtoC)営業と異なる点は「決まっている予算」の存在です。そのため、住宅建設のノウハウをできる限り活かしつつコストを抑制しなければなりません。これは木造建築の大きなメリットである「低いコスト」という点とも通じています。
また、コストをただ抑制するだけでなく、削減したコストで、どの程度の規模の建築物を施工ができるか明示できれば、予算を考慮しつつ早い意思決定を必要とする法人相手の営業ではかなり効果的です。

SEO及びMEOを活用することも必要です。SEO(Search Engine Optimization・検索エンジン最適化)、MEO(Map Engine Optimization・地図エンジン最適化)とはGoogle、Yahooなど検索エンジン、もしくはグーグルマップなどの地図サイトに特定キーワードを検索した際、自社の情報がより上段に位置するようにするWEBマーケティングの手法です。

このキーワードが上の方に表示されるだけで、いままでの競合だった相手から抜け出しブルーオーシャンと呼ばれる選ばれる形になるのです。(それこそ、業界知名度が高かったとしても検索ランキングの上位取得ができれば、先んじて相談される事業となるわけです)

これらを通じ、自社のHPへの顧客の誘導を意図的に行うことが望ましいです。また、HPには「専門の分野」、「無料カタログ」、「木造のメリット」といったより詳しい文言を記載しておくと、より多くの顧客が流入してくれるようになります。

②専門ブランド化・差別化

「全部できます」という漠然とした言葉では、他の建設会社と差別化はできず法人側にも見流されかねません。BtoB営業で顧客の興味を引くためには、「得意な分野の明示」が必須です。自社どの分野に特化しており、なぜ選ばれるべきか明確に説明できなければなりません。ブルーオーシャンは大きな海という意味ではなく、そのエリア部分を取る(取れることができる)と自信を持って言える場所の方が良いでしょう。

「なんでもできます」より「木造非住宅物建設専門」・「建売・分譲専門」といった顧客毎の専門分野を明確にした方が法人からの受注率は上がるでしょう。全ての分野に触れている場合でも、ブランド毎に「専門化」を行うことができます。

専門分野の明示とブランド化への方式

この「専門ブランド化」戦略の目的は「なぜうちの会社が選ばれるべきであるか」を説明する過程であり、より多くの反響を得、集客数を増大させることができます。

実際、北陸のT工務店は、専門ブランド化戦略を採用してから社員数はそのままで売り上げは約3倍も増えました。木造非住宅建築に取り組み、マーケティング戦略の修正による成果です。

③KPI(目標値)

BtoB営業でのKPI配分は、「営業」と「木造のコストメリット」に分けて考えるのが望ましいです。

「営業」に3割、そのうち“営業マン”による営業の信頼が1割+会社の信用が2割「木造コストメリット」は7割を配分すると、即効性のある集客や効果的なマーケティングを行っていくことができるでしょう。ブルーオーシャンを獲得するためには、単にがむしゃらに全方位に行けばよいという訳ではなく、KPI(目標値)を設定し、その実現に向けてリソースを配分することからはじまります。

まとめ

ブルーオーシャンとなる市場を見極め、開拓することは大変ですが、しかし、これまで培ってきた経験を活かし、新たな営業の手法で顧客を確保することができれば、本業と並行できる確固たる事業モデルとなるはずです。

最近は、技術の発展及び規制の緩和が世界的な流れです。規制緩和の隙間にある未開拓市場がブルーオーシャンとして開かれる可能性が高いです。既存事業にこだわらず情報を素早く察知し、市場の変化を感知しましょう。そして、新たな市場での「自社の事業から得られたノウハウを活かせる分野」を見出せる「マインドセットの変化」が大事です。

また、既存の個人顧客対象営業(BtoC営業)から一歩進み、専門分野と強みを強調するWEBマーケティングやMEO、SEO対策行い、効率的なBtoB営業の方法を理解し、導入することも重要です。

常に企業と業界の流れを理解し、強みを伸ばし弱点を克服しようとする経営者こそが、荒波にのまれず新たな活路を開拓できるのではないでしょうか。