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時給1,500円超時代に備えて押さえるべき数字と計算式

2023.04.19
飲食店の経営を考えていくうえで、押さえておきたい数字があります。(飲食店以外にも適用できる考えです)人手不足を前に時給を1500円、2000円と上げていく将来が間近になってきているなか、その重要性が増してきています。

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外食産業は「労働集約型産業」であり、売上高に占める人件費率の割合が大きい産業です。少子高齢化が進む日本において、今後より一層人手不足に悩まされる飲食店は増えていきます。

人手不足が進むということは、「人が少なくてもよい形を整える」言い換えれば「一人当たりの生産性」を高めていかなければ飲食店経営の存続、持続的な事業成長は難しくなっていきます。

また人手不足が進むと時間あたりの給与相場が高まりやすくなりますので、生産性を高められなければ売上高に占める人件費率が上昇していき、収益性が低下してしまうのです。

人手不足、賃金上昇という時流に対応すべく、オペレーション構造を変えていくことが今後より重要になってきます。

飲食店経営において押さえておきたいのは「人時売上高」

画像提供:PIXTA

そのような前提を見越して注目したいのが「人時売上高(にんじうりあげだか)」です。

人時売上高とは売上高を総労働時間で割った数値(労働1時間あたりの売上高)です。

例えば、30万円の売上高を創出した日の全従業員の労働時間(社員、パート・アルバイト)の合計が75時間であった場合、人時売上高は4000円となります。

計算式・・・【30万円÷75時間=4000円/H】

同じ30万円の売上高を総労働時間60時間で創出できると、人時売上高は5000円となります。

人時売上高は、労働1時間当たりの売上創出パフォーマンスを見る指標ですが、同じような観点で用いられる「人時生産性」は、

計算式・・・【売上総利益÷総労働時間】 

です。 売上総利益(=粗利高)の労働1時間当たりの創出パフォーマンスを見る指標ですが、飲食店経営においては、業種や業態によって粗利益率は異なりますので、人時売上高を比較指標として使用することが一般的です。

飲食店経営において二大変動費である原価率と人件費の管理・コントロールは利益創出に直結する重要なマネジメントすべき点です。適切な人件費率に収めるためには「時間帯別売上高の予測」に基づいて必要なシフト人数を割り出し、従業員の出退勤時間を設定します。

しかしながら、人件費の管理・コントロールにはそのお店の時給や社員の給与総額によっても差が生まれるため、「売上高を効率よい労働時間投入で運営できたかどうか?」を正確に把握するためには、人時売上高を見ないと、見えてきません。

人時売上高の高いお店は従業員1人ひとりの働きに無駄がない状態と言えるため、コスト的な観点でもよい状態であり、店長のマネジメント力が高い状態として評価することができます。

一方で同じ業態を多店舗展開しているのにもかかわらず低い人時売上高の店舗は、労働のパフォーマンスが悪い状態ということになります。

「飲食店経営における目指すべき人時売上高の目安は4000円」と長らくいわれてきました。平均時給が1000円だとすると、人時売上高4000円になる人件費率は25%となります。

しかしながら、人手不足が深刻化する中で、魅力的な労働環境の整備や、最低賃金の上昇など、時給単価そのものが上昇するなかで、人時売上高4000円を目指す時代は終わったと言えるでしょう。

平均時給1500円、2000円時代に備えて、人時売上高を6000円、7000円、8000円に上げていき、生産性向上を実現していくことが、これからの時代に必要な重要な経営テーマと言えます。

生産性を高める方法 ~成功事例に基づくノウハウ解説~

画像提供:PIXTA

飲食店経営において人時売上高を高めるためには、2つの観点でのアプローチが必要です。

1つ目は、全従業員(社員、アルバイト・パート)のスキルアップです。

キッチン業務、ホール業務、オープン前の仕込み、閉店後作業など飲食店の運営には非常に多岐にわたる仕事がありますが、それら1つひとつの作業や仕事をこなすスピードや質をスタッフ1人ひとりが高めていくことで、多能化が進みますので、従業員の「労働時間中にやることがない……」という状態をなくすことができます。

もちろん個々人の能力差は経験値などによりますが、個々人の「スキル習得状況を見える化」することで、「次にどんな仕事ができるようになればいいのか?」が明確になり、教育訓練が進めやすくなります。

ある飲食店チェーンでは毎月2回、全店舗全スタッフの教育の進捗状況をマネージャーと店長で確認し合う機会を設けていますが、このような取り組みをすることによって、漏れなく全従業員のスキルアップは進みやすくなります。

スタッフのスキルアップが進むと、15人必要だった店舗運営が12人で行うことが可能となり、結果として20%の生産性向上を実現することになります。

また、同じ15人での店舗運営だったとしても、席回転力を高めることによってより多くの売上高の創出が可能となり、その結果生産性向上が可能になります。

このように全従業員のスキルアップを進めることが、生産性を高める1つ目のアプローチになります。

2つ目は、運営構造そのものを変えてしまうアプローチです。

私たちのコンサルティングにおいても「省人化」というテーマは非常に重要視してきました。

わが国は少子高齢化が急速に進んでおり、あらゆる産業において人手不足は深刻です。コロナ前は有効求人倍率が高止まりし、中でも外食産業は特に人手不足が深刻でした。

採用活動を実施しても人員の充足が進まず、「既存社員が休みを取れない……」など労働環境が悪化するケースも散見されました。 少ない人員で店舗運営ができる新しい構造を作らなければ、売上の獲得がままならず、さらには出店などによる企業成長も停滞してしまう状態を招いてしまいます。

そのような状況を打破するためには、運営構造そのものを変えてしまうアプローチが効果的です。小売業やスーパーなどにおいてもここ数年で一気にセルフレジの導入が増えましたが、労働集約型産業である外食業界においても、省人化を目的とした設備投資が重要になってきています。

ご支援先のある焼肉店では、回転寿司などで広く普及した特急レーン(料理の配膳を機械で行うもの)を取り入れ、料理提供(運搬作業)を省人化しました。また下げ膳はロボットにテーブル巡回させ、洗い場までの運搬作業を担わせています。

画像提供:PIXTA

さらに待合コーナーには順番待ちの管理システムを導入。料理の注文はお客様のスマートフォンでセルフオーダーしてもらい、レジもセルフレジを導入することで、多くのホール業務の省人化を図っています。

また、飲み放題をセルフ化する(全卓にレモンサワーのサーバーを設置したり、ソフトドリンクはドリンクバー方式にする)ことでドリンクの製造工数と運搬工数を低減。

これらのアプローチによって省人化を図ることで、運営面における労働時間の削減を構造的アプローチによって実現しています。

また、高い人時売上高を実現するためには、集客力アップ、売上創出能力を高めるビジネスモデルにしておくことも重要です。

コロナによって多くの飲食店では、グループでの利用動機が低下しました。ご紹介した焼肉店では、カウンター席は1席に1台の焼き台を設置することで「1人焼肉」を可能とし、ランチやディナータイムにおける少人数での来店動機の獲得に成功しています。

また集客力を高めるためにも「高品質な牛肉をリーズナブルな価格で販売」することや「レモンサワー飲み放題500円(60分)」でコストパフォーマンスの高さをアピールしています。

さらにレジ横のスペースでは「精肉小売」も実施、自宅での焼肉需要の獲得にも着手しています。

このような「売上獲得力を高める要素」と「省人化要素」を組み合わせることによって、この焼肉店ではコロナによって売上に制限がかかる状況下でも、6500円を超える人時売上高を実現しています。コロナが収束して、人流が活発になってくると、さらに高い人時売上高の実現が可能になっていくと思われます。

ぜひ経営者の皆様には上記2つのアプローチに注目し、生産性の高い事業構造作りに着手していただければと思います。

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