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2022年版中小企業白書から、知っておきたい5つのポイント解説と経営への活かし方

2023.04.19
中小企業庁は2022年4月、中小企業の動向などについて取りまとめた「2022年版 中小企業白書」を公開しました。

中小企業白書は、毎年4月末頃に中小企業庁から発表される、中小企業の動向を調査・分析した報告書です。

今年の白書では、コロナ後の動向がはっきりと表れており、マクロな視点での中小企業の動向を知るために非常に役立つ内容になっています。「2022年版 中小企業白書」の中から、注目すべきポイントを紹介します。

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トレンド①中小企業を依然として取り巻く「不景気」

出典:中小企業庁・(独)中小企業基盤整備機構「中小企業景況調査」

中小企業の業況判断 DIによると、最初の緊急事態宣言が出た2020年4月~6月は、リーマンショックを下回るほどの水準まで急激に悪化しました。今は持ち直しの動きもあるものの依然として厳しい状況であるといいます。

東京商工リサーチ社よる「第20回新型コロナウイルスに関するアンケート調査」(2022年2月)では、「コロナの影響はない」及び「影響は出たがすでに収束した」と回答した企業は12.5%しかおらず、大半の企業がコロナの影響を未だに受けている状況です。(※資本金1億円未満の企業の集計結果)

トレンド②借入残高が異常なほどに増えている

出典:日本銀行「貸出先別貸出金」他より中小企業庁調べ(2021年12月末時点)

中小企業向け貸出残高(金融機関別)を見ると、コロナのゼロゼロ融資によって、貸出残高が非常に増えていることがわかります。金融機関を合計すると、33.5兆円もコロナ以降に貸出金額が増えています。計算を簡単にするために、借入の中央値が1億円だとして、コロナで1億円借り入れた企業が33万社超あることになるのです。

特に日本銀行政府系金融機関の貸出残高が52.2%増となっています(※日本政策投資銀行、日本政策金融公庫、商工組合中央金庫、住宅金融支援機構)

コロナ融資によって資金繰りはできているので、倒産件数は今時点では増加傾向はありません。しかし、返済が困難になり、5年~10年先に自主廃業や倒産などが増加する可能性があるため、中長期的に注意を払っていく必要があります。

トレンド③人手不足は今後も続き、激化する可能性が高い

■業種別に見た、従業員過不足DIの推移

出典:中小企業庁・(独)中小企業基盤整備機構「中小企業景況調査」(注)従業員数過不足数DIとは、従業員の今期の状況について、「過剰」と答えた企業の割合(%)から、「不足」と答えた企業の割合(%)を引いたもの。

中小企業の人手不足は、コロナの影響により一時的に弱まったものの、依然として厳しい状況が見られます。

また、コロナに関係なく長期的なトレンドとして労働人口の減少は続き、外国人労働者の増加についても目途はたっていないため、人手不足の傾向は続くことが不可避です。そのため、中小企業が考えるべきは今の人材が辞めない会社づくりと、人が少なくても回る、デジタル化で省人化構造を構築することです。

出典:(株)日本政策金融公庫「2022年の中小企業の景況見通し」(2021年12月)

実際にこうした人手不足への危機感は調査結果にも現れており、日本政策金融公庫によると、今後経営基盤の強化に向けて注力する分野において、「人材の確保・育成」が昨年と比べて大きく上がっており、全体で2番目に重視されています。

こうしたことからもわかるように人材獲得競争は今後より一層激しくなるでしょう。

トレンド④社員の給与所得は上がっていく

出典:厚生労働省「地域別最低賃金の全国一覧」

最低賃金は継続的に引き上げられており、2020年を除き、近年は引き上げ幅も大きくなっています。世界的なトレンドを鑑みても、インフレなどの影響から今後も上がっていくのは間違いないでしょう。

出典:財務省「法人企業統計調査年報」

また、労働分配率は、大企業のほうが中小企業よりも増加率が高い傾向です。つまり、大企業と中小企業で給与格差が進んでいます。そのため、優れた人材は大企業に集中してしまう可能性が高まっています。そのような全体の流れがありますので、中小企業はより意識して1人当たりの生産性を高め、給与を上げていかなければ、人手不足がさらに加速してしまう、それが起こりうる未来です。

トレンド⑤生産性向上はデジタル化と教育に取り組むべき

出典:OECD報告書 「New Sources of Growth: Knowledge-Based Capital」。(注)グラフは、複数のOECD諸国について、労働生産性の上昇率に対する無形資産投資と有形資産投資の寄与度を算出した上で、それぞれの寄与度と全要素生産性の上昇率の相関を取ったもの

OECDの調査でも挙げられていますが、人的資本・研究開発・IT 資本等への投資をはじめとする無形資産投資の増加も成長を促す方法の1つとわかっています。

そのため、デジタル投資や人的教育によって生産性を高めていくことが有効です。

■段階別に見た、デジタル化による取り組み効果

出典:(株)東京商工リサーチ「中小企業のデジタル化と情報資産の活用に関するアンケート」(2021年12月)

段階2:アナログな状況からデジタルツールを利用した業務環境に移行している (例)電子メールの利用や会計業務の電子処理業務でデジタルツールを利用 段階3:デジタル化による業務効率化やデータ分析に取り組んでいる状態 (例)売上・顧客情報や在庫情報などをシステムで管理し業務フローの見直し 段階4:デジタル化によるビジネスモデルの変革や競争力強化に取り組んでいる状態 (例)システム上で蓄積したデータを活用して販路拡大

新商品開発を実践 上記の図からもわかるように、デジタルによる取り組みの段階が進むにつれて、営業力・販売力の維持・強化をはじめとする個々の効果を実感する事業者の割合は高くなっています。

そのため、最初はあまり効果を感じなくてもデジタル化に取り組み続けることで、最終的にはしっかりと成果が出て、新たなビジネスモデルの確立につながるのです。

2022年版中小企業白書まとめ

2年以上に及ぶ新型コロナウイルス感染症の流行や原油・原材料価格の高騰、部材調達難、人材不足といった供給面の制約もあり、中小企業は引き続き厳しい状況にあります。

しかし、中小企業白書からは、コロナ禍の中でデジタル化の取り組みを進め、その重要性を認識する中小企業が増えてきていることがわかります。少ないながらもDXの取り組みを行っている先行企業においては、新商品・新サービス開発力の維持・強化などの取り組み効果が認識されつつあります。

今後、中小企業におけるデジタル化の取り組みを拡げていくためには、従業員のDXに関する知識・ノウハウの取得やデジタル人材の確保・育成が必要不可欠です。社長onlineでも多くのデジタルツール活用をお伝えしていきます。

経営指針の参考になれば幸いです。

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