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業界トップレベル 3人の社長が実践した「仕組み化」「こだわり」「従業員ファースト」

2024.11.13
歯科医院に特化したコンサルティングに従事する私が「成功する社長」として思い浮かんだ3人の経営者を紹介します。性格は全く違う3人ですが、それぞれ「仕組み化」「こだわり」「従業員ファースト」で会社を急成長させてきました。あなたに近いのはどのタイプの経営者でしょうか?

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今回紹介するのは3つの医療法人です。

柔軟な考えで組織を仕組み化、人をつなぐ

医療法人A 業界二番手レベルの規模を誇り、10年弱で急激に成長した法人です。7、8年ほど前、6~7億円だった医療収入は直近では50億円に達しています。

医療法人Aは業界では非常に珍しいM&Aも取り入れながら多店舗展開をして成長を続けています。

経営者A氏は50代半ばで物腰の柔らかい方です。 A氏の特性は柔軟性です。多様な考え方や仕組みを柔軟に受け入れていくスタイルで経営しています。

異業種企業のメンターをしたり、大手企業の社長とのつながりを持ったりしながら業界の常識に捉われない「考え方」を吸収しています。柔軟性を持っているからこそ学ぶ角度が広いと感じます。

A法人は各医院の規模が大きく、数も増えています。そのため、どの医院でも応用可能で、人が介在しなくても再現性が高くなるような仕組み作りを徹底して行ってきました。仕組み化に関して、A氏は型にはまったものを採用するのではなく、コストを度外視しても自社にとって最善のものを柔軟に取り入れてきました。

また、A氏は信じるものが一つではありません。

この数年、法人は仕組み化に大きなコストをかけて成長してきましたが、「仕組み化が完成した次は『ヒト』である」と、昨今では仕組み化から人へと投資をシフトさせています。

A氏はこのような「振り戻し」も非常に上手で、バランスのよい経営をしていると感じます。人も柔軟に受け入れるため、自然に人と人とを繋いでいます。いつのまにか従業員や関連する業者などさまざまな人達とチームを作っており、周りの力を上手に引き出しています。

業界史上最も急成長したカリスマ経営者

医療法人B 医療収入は5、6年前の1億円から直近40億円ほどに伸びています。業界では「普通」だった病院が、今ではトップ10に入るまでに急成長しています。

B法人はおそらく業界史上、最も早く成長した企業で、歯科のベンチャー企業とも言えます。経営者のB氏は業界では非常に若い30代半ば、カリスマ性とリーダーシップのある方です。

B氏はドクターの技術が大きく関係する歯科の「商品」に対して非常にこだわりを持っています。その一つにマウスピース型矯正があります。通常複数の医師が監修する商品ですが、B氏は基本的に一人で監修しています。国内の医院全体でみてもB法人はこの商品を扱うトップレベルの医院ですが、監修しているのは歯科医一人となると、一人が扱う数では世界ナンバーワンかもしれません。

法人では、B氏が強いリーダーシップを発揮しながら、単一商品で攻める「専門特化業態」に近い「機能型」の組織作りが行われています。

通常の歯科診療では膨大な工程があるため、従業員に多くの知識が求められますが、こちらの診療の中心は保険が適用されない自由診療です。作業が限られているため、単一教育を行うことができ、従業員のクオリティを伸ばしやすいのも特徴です。

ニッチナンバーワン分野を持ち、業態として専門特化し、それに紐づいて人材育成も専門特化していく。このようにして生まれた組織が急成長の原動力となっています。

その一方、B法人には一時期、従業員の離職率が非常に高かった時期もありました。

どの企業にも成長フェーズに応じて人が入れ替わる時期があるかと思います。全体のラインを上げていくためにも一度は組織の入れ替わりが必要だからです。一定数が揃ったところで組織は固定化されていきます。

そこでナンバーワンを目指すならば、チームメンバーもナンバーワンにしていく必要があります。共通の理念だけでなく、高い意識を持ったメンバーが揃っていなければなりません。当然、同じ船に乗れないメンバーも出てくることになります。

B法人はまさにそれを二巡ほど繰り返し、今では優秀なメンバーが集まった盤石な組織を形成しています。

超異例!9年連続離職者ゼロを達成した医療法人

医療法人C 医療収入は約5年で5億円から15億円に成長しています。採用はほぼ新卒メインで行っていますが、何より驚くべき実績は「9年連続離職者ゼロ」を実現していることです。

C法人は「成長フェーズに応じて人の入れ替わりがある」とは真逆の事態が起きている非常に特殊な医療法人です。この法人では9年連続離職者ゼロを実現しています。

経営者C氏は40代後半。頭の切れる方ですが、従業員に対して柔らかい部分と芯のある部分の両面で接しており、人をまとめる力としっかりした自分の考えを持っています。

C氏には独自のビジョン・戦略・ストーリーがあり、「一緒に働く人」に関しても確固たる考えを持っています。そして、自身の理念や考え方に沿わない人物は受け入れない方針を掲げています。

法人が徹底しているのは「従業員ファースト」です。

通常、歯科業界は顧客にベクトルが向かいがちです。もちろん大前提として患者に対する思いはありますが、C氏はクリニックを経営する理由 をこのように考えています。

自らが面白いと思う事業を、一緒に働きたいと思える人たちと共に実行していくことで、世の中を変えていきたい。

ですので、自分たちがベクトルの主導権を握って成長していくからこそ、患者により良い医療を届けられるのだと言います。従業員を重視するC氏は思いを言葉にするのも上手です。従業員との信頼関係を築いていったことで、業界異例の「離職率ゼロ」を実現させたと感じます。

成功する社長の2つの共通点

特性の全く違う3人の成功する社長ですが、2つの共通点があります。

①重要なポストは外部から引っ張ってくる

医療業界の経営者では非常に珍しいですが、3法人とも異業種からの採用を行っています。良い人材を見つけると、伝手や紹介などを使って自社に呼び寄せています。

例えば、3法人の中の1つは地方銀行出身者を財務部長として採用しています。また、デジタル系ではエンジニアを採用し、自社ホームページの保守点検や外部システムを自社で管理できるようにしています。一般的に歯科では診療を行わないバックオフィス人材は少ないですが、その部分を異業種からの人材でしっかり固めています。

②投資感覚が優れている

3人とも投資感覚が非常に優れていると感じます。

歯科業界の投資にはヒト、モノ、ハコ、マーケティング、デジタル5つの投資があります。歯科医院経営がうまくいかない大きな原因の1つに「モノへの投資が多すぎる」点が挙げられます。機器などの設備にはお金をかけても、それ以外にはお金をかけない形です。逆に考えると、それ以外の投資ができる方が優れた経営者なのです。

細分化していくと、企業のビジネスモデルによって異なりますが、優れた経営者は投資効果の高いものに投資するのが非常に上手です。

たとえば、A法人では当初、ハコやヒトに投資をして店舗展開してきました。従業員数が増えてくると、今度はより投資効果の得られるデジタル投資にシフトして、仕組み化を進めてきました。B法人では、マーケティング投資に力を入れ、その何倍も単価の高い商材を結び付けることに繋げています。

投資とは未来の成長に対して、今の時間とお金をどれだけかけられるかのせめぎ合いだと思います。ヒトやマーケティング、デジタルなどの目に見えない投資は、明確な変化が表れるまで時間がかかります。しかし、3人のような投資感覚が優れた経営者は、短期的視点ではなく長期的視点でそれぞれの成長を見据え、思い切った決断をしています。

私が考える成功する社長

画像提供:PIXTA

私は成功する社長とは、成長に対するビジョンや貪欲さなどオープンなマインドを持っている方だと思います。

逆に成長に対するマインドが硬直していると、会社は一定以上伸びない傾向にあると感じます。一店舗で上げられる最も効率のよい売上(社長自身の生活が豊かになり、従業員間の問題もなく、皆が心地よい状態)でポンと止まるのです。これは、経営者が成長に対しての思い入れや執着がないことの表れでもあるのではないでしょうか。

紹介した3人の経営者は、県ではもちろんナンバーワンですが、地域ナンバーワン、日本でもトップ10に入っている方もいます。「誰かに勝ちたい」というモチベーションだけではやっていけない方々です。

しかし、自分たちの成長や事業の成長を「面白く」感じているからこそ、まだまだ車輪が回っており、さらに回そうとしています。

「一番企業」「100億企業」を目指すのは大事ですが、それはプロセスや手段です。成功する社長はゴールをして終わりではなく、それを超えた先にこそビジョンや事業の面白さを持っています。その結果、燃え尽きることなく成長曲線を描き続けることができるのだと感じます。

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