あなたの会社のBtoBマーケは時代遅れ? 「AI時代の最新マーケ手法と5つの落とし穴」
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2025.11.11

- 「従来の施策では、もう新規顧客は増えない…」
展示会やセミナー、代理店頼みのマーケティングに限界を感じ、売上の伸び悩みに課題を抱える経営者の声を最近よく耳にします。その閉塞感を打ち破る鍵は「AIの戦略的活用」にあります。
なぜ今BtoBマーケティングにAIが不可欠なのかを解き明かし、多くの企業が陥りがちな「5つの落とし穴」とその具体的な解決策をご提示します。
なぜ、今までのやり方では通用しないのか? 主戦場は「AI×デジタル」へ

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多くの企業で、これまで成果を上げてきた展示会や代理店網といった従来型の手法が、明確に効果を落としています 。一方で、業績好調な企業はWEB広告を中心としたデジタル施策で受注の過半数を獲得していることが見受けられます。
この差を生んでいるのが、AIの活用です。AIは、これまで人手に頼らざるを得なかった自社のWEBサイトに載せる記事の制作や問い合わせ対応を自動化し、生産性を劇的に向上させます 。さらに、CRM(顧客関係管理)に蓄積された膨大なデータを分析し、「本当に買う気のある顧客」を見つけ出し、成約率を高めることにも貢献します。
ただし、ここには大きな落とし穴があります。多くの企業では、顧客データが各デジタルツールに散在し、AIが分析できるかたちに整理・統合されていないことが多いのです 。この「データを整備し、AIを使いこなすスキル」こそが、今、企業間に圧倒的なマーケティング格差を生み出す最大の要因となっています。
【セルフチェック】やりがちだけど、やってはいけない!BtoBマーケティング「5つの落とし穴」

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BtoBデジタルマーケティングで陥りがちな失敗パターンがいくつかあります。ご自身の会社の取り組みと照らし合わせてみてください。
落とし穴1:ターゲットが不明瞭なWEBサイト
特徴がなく、一目で何を売っているかわからないようなサイトでは、ターゲットの目に留まらず新規リードが取れません。顧客層や商品に合わせた「カテゴリサイト(商品特化)」を作ることで、強みや独自性をもったWEBサイトになり、新規リードを獲得できます。
落とし穴2:オフラインの成果と連動しない広告運用
お客様はオンラインで問い合わせをして、オフライン上で営業・商談します。オンラインでの集客からオフラインでの受注まで、全体の成果を分析・改善しなければ、マーケティングの精度は上がりません。解決策はCRMデータに紐づけることで、受注になったお客様はどのような方でどのような経緯だったのかなど分かるようになり、マーケティングの質が高まっていきます。量が多く複雑なため、AIで分析することが有効です。

このようなマーケティング営業活用に以下のようにAIを取り入れることで、広告配信・リスト・コンテンツ・サイト導線・トークスクリプトの改善ができるようになります。

落とし穴3:物量と頻度だけを頼りにしたコンテンツ配信
大量のコラムやメルマガ配信が、逆に会社のブランド価値を毀損してしまうことがあります。CRM蓄積データから成約見込の高い顧客が検索するキーワードやコンテンツをAIで分析して配信することで、ターゲットとなるお客様が必要とする情報を、最適なタイミングで提供することができます。
顧客の温度感(検討フェーズ)に合わせて提供コンテンツを分けるのも効果的です。
例①:認知段階の顧客には、課題を掘り下げるコラムや小冊子を提供。
例②:比較検討段階の顧客には「導入事例集」や「顧客の声」を提供。
落とし穴4:マンパワーに依存したコンテンツ制作体制
コンテンツ(コラムやメルマガ原稿等)作成をAI活用して効率的に取り組んでいる企業は増えているかと思います。作業時間が1/4になったという声もあります。反響率などのデータを見ながら改善を行うこともできます。
落とし穴5:営業マン任せの追客、プル型の依存
多忙な営業マンにとって顧客とアポイントを取る作業は負担です。連絡が遅れれば失注する可能性もあります。そこで活用したいのが、AIエージェントの自動応対とインサイドセールスを組みあわせる手法です。
WEB経由の反響に対し、AIエージェントが自動で応対し、アポイント成立まで誘導することが可能です。例えば、賃貸不動産のサイトでは、チャットボットのやりとりを全てAIが対応できる仕組みも登場しています。これにより、AIがお客様の質問に答え、ご来店日時まで自動で決定できるのです。
属人的な対応からの脱却、部分的なプッシュアプローチ(見込客のみ)をすることで生産性の高いマーケティング活動を実現しています。
【船井総研の実践例】AI×デジタルマーケティングで成果を最大化した「6つの改革」
実際に船井総合研究所がBtoBデジタルマーケティングを本格化させ、新規顧客獲得数を218%増加させた具体的な取り組みをご紹介します 。
①サイト改革:ターゲット別にサイトを設計し、顧客のジャーニーに寄り添う
業界別、商品別などで専門サイトを作りました。お客様がサイトを発見するきっかけから問い合わせ、商談、受注までの流れをつくり、各工程の精度が上がるように改善を続けたのです。
②コンテンツ改革:目的別にコンテンツを型化・計画化し、資産として積み上げる
大きくは、「ダウンロードできるコンテンツ(無料小冊子)」、「商品紹介ページの充実」、「コラム」の3つを作りこみました。月単位でどのようなコンテンツを作るかを計画しました。コンテンツが作りやすいように型(フォーマット)も作っています。例えば、無料小冊子の目次構成やデザインフォームなどです。
③新規リード改革:CRMとWEB広告を連動させ、獲得単価を54%削減
CRMデータを活用し、受注実績のある顧客層や商材にターゲットを絞り込んでいます。この的確な対象者設定により、広告の精度を大幅に高めることができたのです。

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④ナーチャリング改革:メルマガ配信を標準化・半自動化し、セミナー集客数を3年で223%増
部署単位で、メルマガの配信を週1回以上実施、セミナーあたり4回はメルマガを送るといった下限品質を決め、それが徹底できるように管理やサポートをするようにしました。また、当たったメルマガをマネできるように全社共有することも有効でした。
※ナーチャリング=見込み客の購買意欲を高めるための顧客育成
⑤CRM・SFA改革:顧客情報を一元管理し、商談数を172%増加させる
CRMによって顧客属性に合わせたメルマガを配信し、過去の履歴・WEB上の動きなどを全て顧客カルテ(CRM)で一元管理することで、お客様情報の理解が深まり受注が増えていきました。
■顧客カルテに入っている情報
・基本情報(会社概要等)
・お付き合い履歴(ご購入履歴等)
・問い合わせ履歴
・セミナー参加履歴
・商談履歴
・開封メルマガ一覧
・DLレポート一覧
・各媒体ごとのアクティビティ
⑥AIエージェント改革:コンテンツ制作やLP作成をAIで自動化する
主に以下の4つのコンテンツ作成にAIを活用して効率化しました。

【まとめ】AI時代を勝ち抜く経営者が持つべき「3つの視点」
BtoBマーケティングの手法はAIによって劇的に変化します。しかし、いつの時代もビジネスの成功の鍵は「顧客を理解すること」にあります。これからの時代、経営者は以下の3つの視点を持つことが不可欠です。
①判断軸を常に「顧客」に置く
AIは、あくまで顧客を深く理解し、顧客との関係性を最適化するためのツールです 。「今、顧客は何を求めているのか?」「その顧客とどこで、どのように接点を持つべきか?」という問いを常に投げかけ、事業活動の全てを顧客起点で考えることが、成長への道です。
②売上に近い指標から施策の優先順位を決める
WEBサイトのセッション数やユーザー数だけを追う時代は終わりました。最終的な売上やLTV(顧客生涯価値)といった経営指標から逆算し、施策の優先順位を決定する必要があるでしょう。まずは既存顧客、次に見込み客、そして新規顧客へと、成果に近いところから着手するのが成功の鉄則です。
③AIの「効率」と人間の「創造性」を掛け合わせる
AIはあくまでツールであり、人間の創造性と組み合わせることで真価を発揮します。例えば、AIエージェントによる迅速な自動応対と、人間にしかできないインサイドセールスの丁寧なヒアリングを掛け合わせる。こうしたAIの効率と人間の戦略性の融合こそが、これからの時代を勝ち抜く鍵となるでしょう。
この記事が、貴社のマーケティングを次のステージへ進める一助となれば幸いです。まずは、自社の顧客データがAIにとって最高の「材料」となるよう、顧客の一元管理することから始めてみてはいかがでしょうか。


