人口減少時代のマーケティング課題を解決!CRMとインバウンドマーケティング
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2025.07.28
- 人口減少時代においては、何もしなければ顧客数は減少し、売上も減少の一途をたどります。
この状況を改善し、成長を続けるためには、大きく2つの手段があります。一つは、CRM(顧客関係管理)を活用して既存顧客の購買頻度を高め、顧客生涯価値(LTV)を増やすこと。もう一つは、訪日外国人観光客を新たなお客様として取り込むことです。この2点を軸に、人口減少時代に効果的なマーケティング戦略をご紹介します。
経営者が知るべきCRMの力
避けられない人口減少。中堅・中小企業にとって新規顧客の獲得は、喫緊の課題となっています。ですが、インフレで原価や経費が高まっているなか、大きなマーケティング投資をすることが難しい状況です。まずは、少ない投資額から収益性を高めるマーケティング手法をCRMと言えます。(CRM=Customer Relationship Management)
CRMとは、日本語に訳すと「顧客管理」。自社と顧客の関係性を可視化し、顧客生涯価値(LTV)を最大化できる手段のひとつです。
事例としては、某士業事務所がCRMを導入。定期的にメルマガの配信を行い常時お客様とコミュニケーションを取り、SFAも活用することで受任率を高め、売上は2倍に増えました。(SFA=Sales Force Automation、日本語に訳すと”営業支援システム”)
他には、ソリューションサイト(商品特化HP)にチャットボットを導入したケースで反響率が1.7倍に向上した事例もあります。チャットボットやメルマガ運用、BIといった様々な施策を講じることで、着実に成果を生み出します。(BI=Business Intelligence、経営データを集約・分析するシステム)
CRMでさらに大きな成果を出す施策としては、従来の商品単価とは一桁ほど大きい高単価商品を作り、それを既存顧客にプロモーションして顧客が購入したその商品と同種で「より上位のもの」を提案し購入してもらうことや、関連する別の商品を一度に購入してもらうことです。既存顧客は自社に対する信頼感もあり、高単価商品を一定数販売することができ、企業としてもう一段階成長します。
現在のマーケティングステージに合わせた戦略を構築し、まずは少額から投資していくことが大切ではないでしょうか。
WEBマーケティングの構造
ソリューションサイトの構築を主軸としたWebマーケティングの展開はここ数年飛躍的に効率化しました。ちなみに、ソリューションサイトとは、商品やサービスに特化したHPのことを指します。
まずは、サイトに一般検索やPPC広告を活用し、効率的に流入を高めます。魅力的な資料ダウンロードなどで、メールアドレスや電話番号などの顧客情報を入手。その顧客情報(見込客)はハウスリストとして蓄積し、メルマガを配信してナーチャリング(育成)して温度感を高めます。
新規顧客の可能性のある人を、取り込み、育て、受注につなげていく仕組みにより、顧客がサービスを必要とするタイミングで適切な情報を提供し、関係性を深めていくことが可能となります。
さらに、お問い合わせ後の反響管理や営業管理、案件の進捗管理といったSFAに取り組むことで見込案件を高確率で受注します。
これらの活動から得られる数値データはBIを元に分析し、PDCAサイクルを回すことで、Webマーケティングの効果が最大化となるのです。
Webによって新規のお客様を定期的に作ることが可能となり、売上を大きく成長させ、人口減少時代であっても収益性を向上できます。このようなWEBマーケティング構造を構築することはマストと言えるでしょう。
インバウンドマーケティングで顧客数を増やす
国内の人口減少が進む中、新たな成長エンジンとして注目されているのがインバウンドマーケティング、つまり海外からの顧客獲得です。
日本政府は2030年までに訪日外国人観光客数を約3,600万人(2024年時)から6,000万人へ、消費額も15兆円に拡大するという高い目標を掲げています。このように伸びしろの大きい市場は、日本国内では他に類を見ません。
インバウンドマーケティングの成功には、「旅前の集客」と「旅前での決済」が重要なポイントとなります。お客様が日本への旅行を計画する段階で、いかに魅力を伝え、情報を提供し、スムーズな来店予約・決済まで導けるかが鍵です。
その中核となるのが、多言語対応したInstagramの運用です。Instagramは視覚的な訴求力が高く、世界中の旅行者にリーチできる強力なマーケティングツールと言えます。
多言語Instagramの運用にはハードルがあるため、まずは旅前の検索行動に合わせたコンテンツ配信や、旅中の体験を促し、それをInstagramに投稿してもらう施策が効果的です。これにより、投稿が拡散されて新たな顧客の獲得に繋がるといった好循環が生まれます。

※画像提供:PIXTA
東京都内にある小売店はインバウンドマーケティングによって売上を大きく伸ばされています。同社は元々文房具販売が本業ですが、現在はオリジナルインクやノートブックの知名度を高めていきました。
その裏側では、お客様の旅を「旅前」「旅中」「旅後」の3つのフェーズに分け、それぞれの段階で緻密なカスタマージャーニーを設計し、実践しております。
まず、旅前の段階では、お客様が特別な体験を期待できるよう、オリジナルインクやノートブックの制作体験に関する情報を積極的に発信します。この情報に触れたお客様が興味を抱き、実際に店舗の「インクスタンド」へ足を運び、世界に一つだけのオリジナルインクを制作する体験へと繋がります。
旅中に体験されたこの感動は、お客様自身によってInstagramなどのSNSに投稿され、それが自然な形で拡散されることで、新たな顧客を惹きつける強力な集客効果を生み出しております。
そして、旅後もお客様との関係が途切れることはありません。制作されたオリジナルインクやノートブックにはシリアルナンバーが付与されており、お客様は帰国された後でも、この番号を用いて簡単に再注文できる仕組みを構築しております。この継続的な関係性こそが、お客様のリピート購入へと繋がり、長期的な顧客ロイヤルティを育む上で重要な要素となっております。
越境ECとサービスマーケティングの可能性
インバウンドマーケティングは小売りだけではありません。サービス分野も大きく伸ばせる可能性があります。中でも、越境ECとサービス分野での事前決済の推進があります。
ECはこれまで物販のイメージが強かったですが、近年では飲食店のコース料理の事前決済、民泊、医療ツーリズムなど、サービス分野への応用が急速に広がっています。これにより、リスクを抑えながら海外からの需要を取り込むことが可能になります。
例えば、海外のお客様が日本のWebサイトを閲覧する際に、自動的に多言語に変換され、自国にいながら日本の情報にシームレスにアクセスし、そのまま決済まで完了できるようなサービスも存在します。従来では数千万円かかっていたサイト開発も、旅前の情報収集を円滑にし、旅中の体験の質を高め、さらには旅後のリピート購入など、継続的な関係構築が安価に実現できるのようになったのです。
また、日本での滞在経験があるお客様は、ECや物販を利用する傾向が高いというデータも存在します。繰り返しますが、人口減少時代においては、何もしなければ顧客数は減少し、売上も減少の一途をたどります。
そうしたなかで、訪日体験や訪日予定の顧客を軸としたインバウンドマーケティングは、効率的な集客を実現し、人口減少時代にも長期的な成長モデルを作れる可能性があるのです。

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