事業が伸びない経営者が見落としている、成長のための「発見力」
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2025.08.22
- 「優れた経営者が持つ素質の1つに『発見力』がある」。そう話すのは、船井総合研究所 マーケティングイノベーション支援部の沖山佑樹氏です。
成長志向の経営者は時流を読む能力に長け、先見の明があります。そのため、マーケットの中から自社が輝くポジションを「発見」する力や、ビジネスチャンスを「発見」する観察眼に優れています。
今回は沖山氏が「今でも忘れられない」と語る経営者の事例をもとに、「発見力」に優れた経営者がどのような人物であるか、そして自分自身が発見力を高めるために今日からできることについて、お伝えいたします。
発見力の定義
「発見力」という言葉は、厳密にいえば、辞書に存在しない言葉です。
「発見力」を定義するならば、自分やその周囲にとって役に立つ情報にいち早く気づき、自社の事業に応用できる能力です。
業界を問わず、機先を制することで誰よりも早くチャンスをつかみ、課題や解決策を修正していくことで、ビジネスを有利に進めています。
近い言葉で言えば「探求心」「観察眼」「情報収集力」などでしょうか。発見力は、こうした能力を総合したものとしてご理解いただければと思います。

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高い「発見力」を持つ人とは
経営者の中でも「発見力」が高い人には特徴があります。
発見力が高い人の傾向を、4つご紹介します。
①将来のあるべき姿を見つけている

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大前提として、「発見力」の高い経営者は成長志向です。その原動力になっているのは経営者が持つビッグピクチャー(大局観)や、会社の掲げるPMVV(パーパス・ミッション・ビジョン・バリュー)などの価値観であることがほとんど。
こうした将来のあるべき姿が具体的であればあるほど、常に自社を成長させる情報を探そうとします。
成長意欲が高い経営者は、例えば現在の年商が1億円でも3億円になった時のことを考えていますし、3億円になったら10億円になった時のことを考えます。
その目標に向け、現在不足している課題の解決策を常に探しています。だからこそ、発見力もおのずと磨かれていくのです。
②新しい情報を常に探し、検討する

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できる経営者は、忙しい中でも情報収集を行っています。
例えば地元で業績を上げている企業があれば、異業種であっても定期的に情報収集し、自社に活かせる取り組みはないか調べています。
セミナーや勉強会などに定期的に出席し、日経新聞や、事業に関連するビジネスメディアに目を通しています。
耳が痛い情報でも、ためになると感じれば、素直に聞き入れます。その上で、常に自社に置き換えてシミュレーションしているため、高い解像度で情報を理解しています。
半面、自身で一次情報を収集しているからこそ、情報のノイズはきっぱりと排除できる割り切りの良さも持っています。
③チャンス発見後の行動が速い

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チャンスを発見した後の行動も一味違います。ここでは2つ事例をお伝えします。
1つ目は、名古屋のとある経営者のエピソードです。
「このようなビジネスはどうか」という提案をしたところ、即、資金を投入し、新入社員を迎え入れ、こうおっしゃいました。
「まずは人を採用しました。これから、この人たちのために仕事を作りましょう」
自分のビジョンと、それを実現するための私たちの提案を確信し、スピード感を持って未来に先行投資するという、経営者としての強い覚悟の表れです。
また東京のある企業は、他社に先駆けてバックオフィスのDXサービスを立ち上げました。
今こそ「DX」というワードはだいぶ定着してきましたが、同社は言葉が認知されていた段階で、事業を始めていました。結果として安定的な成長を実現し、大手企業からのアワードも受賞しています。

参考:「デジタルトランスフォーメーション」の人気度推移(Googleトレンド)
人は何かを学んでも、何もしなければ、学んだことは急速に忘れていきます。ドイツの心理学者ヘルマン・エビングハウスが提唱した「忘却曲線」によると、人は物事を記憶した直後から急激に忘却が始まるとされています。
だからこそ、何かチャンスを発見したあと、成功する社長はみんな、迅速なアウトプットを心がけているのでしょう。
④成功確率を高める行動に余念がない

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「走りながら考える」という表現がありますが、発見力が高い人は行動を始めた後も、常に改善点を発見し、徐々に成功確率を高めています。
1つ質問をします。自社で新商品を開発したあと、SNS広告を出稿したい場合、下記どちらの企業に発注をしますか。
①SNS広告の運用実績はないが、付き合いが長い代理店
②SNS広告の運用実績は多いが、遠方にあり、取引実績もない代理店
発見力の高い経営者は、迷わず②を選びます。
SNS広告の成功を目標とするなら、さまざまな成功実績を積み上げている企業のほうが成功確率は高まります。
自社のまわりでうまくやっている企業があれば、その企業に話を聞きに行くことも厭いません。そしてうまく行かなければ、次にどのように修正すべきか、ボトルネックとなる箇所を発見し、改善します。
こうして成功確率を高め、事業を成長させている企業が数多くあります。
『発見力』を高める4つのステップ

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まで、発見力の高い人が持つ4つの資質を見てきました。
それらをまとめると、次のようになります。
①明確な将来像を描く。何年後にどうなっているかを明言する。
②新しい情報を常に探す。
③自社に応用できないかを考える。
④行動に起こし、失敗したらその要因を洗い出す。
これを①、②、③、④の順にすべて満たしています。
例えば①で明確な将来像を持っているからこそ、②の情報収集段階で本当に自分が必要な情報を集め、いらない情報を捨てる判断ができます。
そして質の高い情報が集まるからこそ、③的確で精度の高い検討につながります。そして④実行、軌道修正まで素早く行います。
「発見力」は経営者の基礎的な要素です。基礎だからこそ、徹底することで強い事業の推進力につながります。
経営者自らが進むべき道や戦うべき場所を的確に「発見」していることが、成功のベースと言ってよいでしょう。