100億円企業創出の秘訣:インフォマート中島社長
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2025.06.06
- 年商100億円を超えて成長し続けるインフォマートの中島社長にインタビューしました。100億円企業づくりの要因を探ります。
■株式会社インフォマートについて
BtoB(企業間電子商取引)プラットフォームを主事業とし、東証プライム上場。サービス利用社数は118万社以上となり、国内の法人の3割強となります。1998年に会社を設立し、2022年12月期の決算で年商100億円を超えました。2024年12月期の決算では年商156億円と持続的に成長しています。インフォマートのサービス一覧はこちらよりご覧ください。

株式会社インフォマートの直近5年間の年商推移。千万円未満は切り捨て

2010年にインフォマート入社。 取締役兼経営企画本部長に就任し、「BtoBプラットフォーム 請求書」の立ち上げや、戦略人事等を担当。2022年より代表取締役社長に就任。
インフォマート中島社長へのインタビュー
取材者:本日はお忙しいところお時間いただきまして大変ありがとうございます。100億企業創造に向けたキードライバーを研究させていただいております。初めに、中島社長のこれまでのキャリアをぜひお伺いしたいです。
中島:私は大学卒業後に三和銀行(現在の三菱UFJ銀行)へ入行し、22年勤務した後、2010年、43歳の時にインフォマートに入社しました。インフォマートに出会ったのは入社をする10年前、2000年のことでした。世の中にものすごく大きな変革があり、BtoBのネットバブルが起きていた頃です。当時、私は三和銀行で、支店の営業担当ではなく、事業開発という、新たなビジネスを生み出す仕事をしていました。300社程度、類似業種をみてまわった中の1社が、当時は創業して1年半しか経っておらず、マンションの一室で業務を行っていたインフォマートでした。現在では類似業種の企業の大半がなくなり、今でも残っているのは3社程度です。
私は当時、インフォマートはすごい会社だと思いながら、決済の仕組みの立ち上げに関するものなど様々な仕事を一緒にしていました。今は亡くなってしまった創業者である村上社長と同い年なのですが、私は彼のことが大好きで、尊敬していました。一方で、彼も私のことを好意的に見てくれていたようで、お互いの気が合って、2000年に出会ってから年に1回ぐらいのペースで一緒に飲んでいました。その中で、ありがたいことにインフォマートへの入社のお誘いを受けたため、妻を説得して、2010年にインフォマートに転職することができました。
転職をした最大の理由は、世の中を変えるという、ものすごく素晴らしい達成感、感動を味わえるチャンスが銀行にいるよりも100倍ぐらい大きいのではないかと感じたからです。
インフォマートへの入社後は、組織をさらに拡大させるために人事面の業務を行った後、現在の主力サービスになる請求書システム事業を立ち上げました。
118万社以上が利用する「BtoBプラットフォーム 請求書」は、請求書の発行から受取、支払金額の通知など、請求業務全体をデータ化する電子請求書(WEB請求書)サービス。中島社長が事業を推進した。サービスの詳細はこちらです。
取材者:ありがとうございます。インフォマートさんが非常に優れていると思われたところを教えてください。
中島:ロジカルではないのですが、「創業者の村上社長の本気」です。1日中インフォマートのことばかりを考えていて、人間がここまで本気になれるのかと驚くほど、何に対してもものすごく本気で取り組む人でした。
三和銀行でも本気の人をいっぱい見てきたし、私自身も誰にも負けないくらい本気なのですが、それを優に超えるぐらいの本気な人だったんです。本気で世の中を変えるという気持ちがあったのです。 それが、今でも生きているインフォマートイズムであり、そしてインフォマートがうまくいっている最大の理由に繋がっています。
「世の中を良くすることを目的にする」ことが大事です。我々は営利企業ですし、東証プライム上場企業なので収益を上げること、つまり売上や利益を上げることが目的となるのですが、それ以上に大事なことがあります。
村上社長が若くして気づいた素晴らしいことがあるので、ぜひ紹介させてください。彼は高卒です。山口県宇部商業高校で野球部に所属し、セカンドで甲子園にも出ていました。高校を卒業したらビジネスをやるぞと言って、山口でビジネスを始めたのです。ビジネスと言っても最初は県信連に入って3年くらい経って、20歳を超えた際に儲けるぞと様々な事業を1人で立ち上げました。 大失敗を繰り返し、全然うまくいかない・全然儲からない、何十万円も借金がたまった頃が27~28歳だったと聞いています。 そのときに、「儲けることを目的にしたら儲からない。 では何を目的にしたら儲かるのか。世の中を良くすることを目的にしたら、結果的に儲かる」と悟ったそうです。 そのときに世の中を良くするには、一体何をやったらいいのか考えてみようと言って立ちあげたのがインフォマートだったんです。「世の中に喜んでもらえて良くすること」、かつ「誰もやっていないこと」の2つが重要でした。
話を元に戻しますと、私がインフォマートをすごいと思う理由の一つ目が、村上社長の本気かつ儲けることが目的じゃない発想です。2つ目がビジネスモデルです。「BtoBプラットフォーム」は、広がりのあるプラットフォーム型のビジネスモデルで、システムを導入したユーザーが、新たなユーザー(取引先)を呼び、広がりを実現する仕組みとなっています。BtoCではなく、BtoBの世界は泥臭い部分がないと広がらないという考えをもとに徹底的にやっていたことが良かったです。他のSaaS企業が絶対やらない、手間隙がかかる施策をやり続けたということがプラットフォーム拡大の最大のポイントだと思っています。

インフォマートのビジネスモデル。IR資料より活用
取材者:ビジネスモデルが年々進化していく中で2010年に入社されました。その段階で村上社長が中島社長を招聘された、当時の理由としては新しく事業を作りたいということかと思います。具体的に、企業としてどのような状況にあって、なぜ新しい事業が必要だったのかっていうことについて教えてください。
中島:事業を広げることだけが招聘された理由ではなく、インフォマートが大きく成長する中で、「大企業の運営方法がよくわからない」という課題がありました。そこで、大企業での経験を持つ私ならそのノウハウを活かせるだろうと考え、ぜひ来てほしいと声をかけてもらったのです。
また、村上社長自身も「組織とは何か」「組織力を向上させるとはどういうことか」について深く理解していたわけではありません。しかし、多くの経営者仲間から「社員が100人を超えたら、組織のことをしっかり考えなければいけない。外部から組織運営に詳しい人を招くべきだ」と助言されていました。村上社長の知り合いには、組織運営ができる人がたくさんいたのですが、その中で選ばれたのが私でした。その理由は、単に組織運営の知識を持っていたからではなく、私が村上社長と同じ、あるいはそれ以上にインフォマートを愛していることを彼が知っていたからです。インフォマートは熱意のある企業であり、物事を本気で前に進める姿勢があります。私はその点に共感し、インフォマートが好きだったことも、選ばれた理由の1つだったと思います。
こうして「大きな組織を知る人をインフォマートに迎えるべきではないか」という考えのもと、能力的にもインフォマートへの理解や愛着の面でも、私が最適だと判断されました。ただし、参画当初から「人事をやってほしい」と思われていたわけではありません。あくまで「事業を大きくすること」が最初のミッションでした。当時、村上社長は「今までフード業界に特化してきたが、これからは他業界や海外にも進出したい」と考えており、その新規事業を一緒に広げていくことを期待されていました。
また、私は銀行出身であり、外部とのパイプを多く持っていたため、そのネットワークを活かして新たな市場への展開を支援してほしいという意図もありました。つまり、「事業を大きくしてほしい」というのは、単に会社の規模を拡大するという意味ではなく、新たな市場へ進出し、インフォマートの可能性を広げる役割を担ってほしいという意味だったのです。
取材者:組織を改革していくことによってどういった変化が生まれたのでしょうか。
中島:社員各自で考えて行動ができるようになってきました。私は組織を良くするための具体的なこととして「仕事が面白いと思える環境」を作ったのです。
私が入社した当時、社員に仕事観を聞いたところ、「仕方なくやっていること」「お金を稼ぐため」という答えが返ってきました。村上社長と一緒に世の中を変えるために取り組んでいるのに、これでは組織が永続しないと感じていました。
私は、組織が永続するためには社員一人ひとりが「仕事が楽しい」と感じられないといけないと考えています。そこで、社員に仕事を楽しいと思ってもらうために、報酬感の変革を実施しました。仕事をして得られる報酬は実は3つあります。1つ目はお金、2つ目は成長、3つ目は達成感です。
この3つを得られると社員も仕事が楽しくなってきて、エンゲージメントが上がっていきます。社員満足度向上ではなく「エンゲージメント向上」です。
エンゲージメントが高いと、能動的に自分から仕事を取りにいきたくなったり、仕事が好きで、楽しくて、やりがいを感じられて自分が成長できるから仕事をやりたくなったりするような状態になります。このようなマインドセットを含めて、リーダー研修を徹底的にやりました。結果的に社員の目が生き生きしてきたのです。
また、本当に組織を良くするためには、社長自身が何をやっているのかを理解し、関与することが重要です。例えば、「研修で10個のポイントを伝えているうちの1つだけでもいいから覚えて、トイレで社員に会ったときにその言葉をかけてください」といった具体的な支援を促すことで、社長の言葉が社員に響くようになります。こうした側面を支援するかしないかで、組織の成長や効果が大きく変わるのだと実感しました。これが、私が学んだ大きな教訓のひとつです。
取材者:お話を伺っていると、村上社長が先頭をきって意思決定をされていた印象ですが、村上社長が権限委譲をして、他の方に任せていくようになったということで合っていますでしょうか?
中島:いえ、村上社長は亡くなるまであまり権限委譲をしませんでした。 権限移譲とは違って、組織を良くするための研修は一旦私に任せて、最終的に何かを決めなければいけないところについては村上社長が決めていました。
もちろん社員が200人規模になって、ある程度のことは役員に任せなくてはいけないと村上社長も思われていて、一定量は権限委譲をしてくれてはいましたが、あるべき姿からは程遠い状況でした。
それを表すエピソードの1つとして、彼は社員数百名の日報を全て見て、それに対してたくさんのコメントをしていました。 会社にいらっしゃるお客様の声や1日1,000件から2,000件来る問い合わせメールを全部見るのです。全部を見たうえで、あの返答はしたか、と指摘があるほど、彼自身がくまなく確認していました。

主要サービスのBtoBプラットフォーム 請求書の概要
主要サービスの「BtoBプラットフォーム 請求書」は、請求書の「受取」「発行」のどちらにも対応できます。時間・コスト・手間のかかる経理業務を大幅に改善。電子帳簿保存法に対応しているためペーパーレス化、そして経理のテレワークを実現しています。 請求書データは社内システムとスムーズに連携するため、月次決算が早期化され、経営判断のスピードアップにつながります。現在紙やPDFで請求書をやり取りしているお客様にも、郵送代行サービスやAI-OCR等をご利用いただければ、電子請求書(WEB請求書)にて一元管理が可能です。詳細はこちらです。
取材者:2013年に新しく請求書関連の事業を作り始めたと聞きました。村上社長は、その事業に対してどういった関わり方をしながら、事業を作られていったのでしょうか?
中島: 村上社長からは「請求書事業を立ち上げるときは、中島がやってくれ」と言われていました。そのため、私は請求書事業の企画からずっと、村上社長と二人三脚で取り組んでいたので、ある意味、村上社長が作り上げたようなものです。
今でも覚えているのが2014年の春にあった出来事です。1年半ぐらいかけて商品設計がほとんど終わり、商品を作り始めるところまできていました。びっくりしたのが、2014年12月にローンチする予定のサービスを、半年以上前の4月に村上社長が営業部隊を作るぞと言い始めて、実際に営業部隊を作り、フード部門で営業していたエース3人を連れてきました。ものがないけれど売るんだと言い、売ったことはすごくいい思い出です。2014年に3人だった部隊がいきなり35人になって、村上社長の一声でフード部門の優秀な営業が全部こちらに異動してきて、2015年から本格的に請求書サービスを売り始めることができました。
取材者:請求書事業についてはどの領域から入られたのでしょうか。
中島:全ての業界です。請求書の電子化をしたい企業に向けてサービスの詳細をお伝えしていきました。大手から順番にお声がけしたため、大手が使っている割合がすごく多く、日本の従業員数別に階層化したピラミッドを見たときに、中堅~大手が使っている数が圧倒的に多いです。
ちなみに、面白い話なので利用社数の話をしますね。 創業から請求書事業をスタートする2015年までにフード業界向けの受発注サービスが伸びていき、フード業界ではデファクトスタンダードだと言えるようになったときの利用社数は4万社でした。その後、2015年に請求書事業を始めて、10年足らずで100万社を超えているわけですから、ものすごい勢いを感じます。請求書サービスを求めている企業はマーケットが広いってことなのです。
取材者:ちなみにこの請求書に着目された理由は当時の背景を含めてどういったことがあったのでしょうか。
中島:当初は受発注を展開したかったのですが、それが難しかったので請求書を伸ばしていきました。
難しかった理由はこれからお話しします。 我々は受発注サービスをフード業界で成功させました。受発注サービスと請求書サービスの違いについてです。
受発注サービスは、売り手と買い手の全てのやり取りがセットです。見積もりから発注、受領、納品書などです。請求書サービスは、最後の請求のところだけをデジタル化するものです。
村上社長には、インフォマートがフード業界で受発注サービスを成功させたときに、他の業界でもこの受発注サービスを提供できるようにしていきたいという夢がありました。しかし、実は一度失敗しています。美容業界と動物病院業界に受発注サービスを作って提供したのですが、失敗しました。 当時まだまだ信用がなかったこと、各業界固有の慣習にあわせた開発が難しかったのが失敗要因です。
一旦撤退したものの、フード業界に喜んでもらえたことを他の業界にも広めていきたいと悩んでいた際に、フード業界以外のお客様から「この受発注を全部作ってくれなくても、請求のとこだけのデジタル化でも結構メリットがあるから作ってくれないか」という声が多かったのです。そこで、 村上社長が試しに作ってみたら爆発的に売れました。
成功要因は2つあります。1つ目は、請求書だけだと業界慣習の影響がそれほどなかったことです。2つ目は、インフォマートが東証一部に上場した後だったため信用があったからです。
ただ、今から言うことはすごく大事だから覚えておいてほしいんですが、村上社長はなぜ請求書をスタートしたかというと、目的が請求書のサービスを広げることではなく、他の業界で受発注を広げたいというのが村上社長の目的だったからです。そのための準備として請求書で一気に利用企業を増やしました。そうすると世の中の多くのお客様がインフォマートのIDを持っている状態になり、受発注サービスを利用していただきやすい状態になるのです。
インフォマートは、最近第3フェーズに入り始めました。第1フェーズは創業から2015年までのフード業界向けに「BtoBプラットフォーム 受発注」を提供している会社だった時代です。そして、第2フェーズは全業界向けに「BtoBプラットフォーム 請求書」を一気に拡販し110万社を突破した時期です。第3フェーズとして、今、全業界向けに業務をデジタル化し、クラウド上で一元管理できるサービスを「BtoBプラットフォーム TRADE」という名称で販売しています。
「BtoBプラットフォーム TRADE」は、見積・発注・受注・納品・検収・請求業務を、オンラインで一元管理できるプラットフォームです。紙やPDF、メールや電話で行うのが当たり前だった発注も、データで作成・送信・管理が可能に。従来の業務を抜本的に改善することで、二度手間や担当者に依存した作業がなくなり、すべての働く人が「人にしかできない仕事」に注力できる環境が実現します。詳細はこちらです。
取材者:ありがとうございます。 今回のインタビューの主旨になりますが、総じて、インフォマートさんがここまで大きくなられた理由はどのようにお考えでしょうか?
中島:インフォマートが世の中にこれだけ広がっている理由はいくつかありますが、1つ重要な理由を申し上げると、 お客様を徹底的に深掘りするということです。
「徹底的に」このスタンスはインフォマートが一気に広がるためにすごく大事だと思います。この深堀りの度合いは、3種類あります。
1種類目をちゃんとやっている企業は10社に1社ぐらいあると思います。 でも2種類目と3種類目は、1,000社に1社も10,000社に1社もないぐらいレアなことですが、それをやっていることがインフォマートの強みです。
1種類目は、お客様の声を聞きに行って、それをシステム開発に活かすことを徹底しています。村上社長時代から社長自身がいつもお客様の所に行って、膝をつき合わせて具体的に何がどう困っているのかを真剣に時間をかけて聞いています。私が銀行に勤めていたときにも様々な人を見ていますが、そこまでしなくてもうまく儲けることができるわけです。インフォマートは、10社に1社ぐらいしかやっていないぐらいの徹底ぶりなのです。
2種類目は、お客様の潜在ニーズを捉え、装備していくことです。「潜在ニーズ」とは、お客様自身も気づいていないニーズのことです。 気づいていないニーズってどういうことかっていうと、往々にしてあるのが請求書です。請求書の受け取りを電子化しましょうと提案した際に、お客様はぜひやろうとはならないです。それは「BtoBプラットフォーム」を導入したらどんなふうに良くなるかということを経験していないからです。私たちはセールストークで、「こういうメリットがあります」「ああいう利点があります」と説明します。でも、お客様自身が実際に経験していないので、本当の価値を理解しているわけではありません。なんとなく良さそうとは思っても、それが本当に費用や手間をかけても得られるメリットなのかどうか確信が持てないのです。だから、お客様は「やります」と簡単には言わないです。
日本全体の電子化を進めるためには、どうにかしてお客様にとりあえず1回使ってみようと思ってもらう必要があります。そこが最大の課題です。そのため、私たちは徹底的に「疑似体験をしてもらう」ことにこだわっています。例えば、車の運転が荒い人が実際に事故を起こしてしまったら、その後は絶対に安全運転をするでしょう。でも、事故を経験しない限り、いくら事故防止のためのビデオを見せても運転が荒い人は荒いままですよね。それと同じように、ただ言葉で説明するだけでは、お客様は実感を持てないのです。だからこそ、いかにリアルに疑似体験をしてもらうかが重要になります。いかに疑似的にお客様に伝えるかが重要です。お客様は「別に今の請求書の手続きをちゃんとやっているから困っていない」と思っています。しかし、実際に導入してみると、「すごくメリットがあった! 体験させてくれてありがとう!」と言ってくれるお客様もいます。こういう営業スタイルは、普通のサービスではあまり見られません。
3種類目は、最も難しい「お客様の潜在かつ将来的ニーズ」です。これは、導入するお客様だけではなく、その先のお客様のことを指しています。例えば、ある企業が「BtoBプラットフォーム 請求書」を導入したとします。その企業に約100社の仕入れ先があるとしたら、そのすべてに対して、「今まで紙で請求書をもらっていたけれど、来月からインフォマートのシステムを導入するから、今後はインフォマートを使って請求書を出してほしい」と依頼することになります。ここで問題なのは、その仕入れ先の100社には何のメリットもないことです。なぜなら、その企業に対してだけシステムを使う必要があり、他の500社には従来どおり紙で請求書を発行しているからです。つまり、「無料だから活用してください」と言っても、「そんな面倒くさいことはやりたくない」と断られてしまうわけです。しかし、インフォマートは、この「仕入れ先企業にシステムを使っていただく」ノウハウにおいて日本で突出している企業だと自負しています。
仕入れ先にシステムを利用してもらうために、営業担当と同じくらいの人数を割き、約150人の専任部隊を配置しています。彼らは丁寧に対応し、さまざまな仕掛けを使いながら仕入れ先にシステムを活用してもらう工夫をしているのです。最初のうちは、仕入れ先の企業にとってのメリットはほとんどありません。請求書を発行する先が1社だけだからです。しかし、導入企業が増えていくにつれて、「別の企業からもインフォマートで請求書を発行してくれないか」と言われるようになり、利用する機会が増えていきます。請求書の発行が100通のうち10通、20通と増えていけば、次第にシステムの利便性を実感し「いずれは全てインフォマートで処理しよう」と考えるようになります。この流れが、結果的に日本全体のDX(デジタルトランスフォーメーション)につながっていくのです。つまり、取引先にとっても長期的にはメリットがあるということになります。これは、「顕在ニーズ」「潜在ニーズ」だけでなく、「潜在かつ将来のニーズ」を発掘していく取り組みです。このような営業を行っている会社はほとんど存在しないのではないでしょうか。それこそがインフォマートの大きな特徴であり、事業が急速に広がっている理由の1つだと考えています。
この話はインフォマートのビジネスモデルだからこそ成り立つという特殊な事情ではありません。他の業界でも、自社のサービスを売る際に「目の前で欲しいと言っている人」だけに注目するのではなく、「導入すれば喜ぶはずなのに、まだ気づいていない人」をどう見つけるかが重要です。そして、見つけた後に、どう理解していただくか。さらに、導入した直後はメリットを感じにくいが、中長期的に大きな効果が出ると理解してもらうことも共通して考えるべきポイントだと思います。
取材者:お時間をいただきありがとうございました。規模を拡大していくための組織体制、「世の中を良くするということを目的にする」という価値観や壮大なビジョン、強いビジネスモデル、お客様を徹底的に深掘りする手法など学びになることが多かったです。