インフレ・賃金上昇の動向と対策 2024年8月
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2024.08.28
- 物価・賃金の上昇が加速しています。
データやニュースなどから今後の見込みと対策について考えることは経営者にとって必須です
。インフレ・賃金上昇の動向と対策を考えていきます。
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加速する賃金上昇
結論から申し上げると、賃金は今後も上昇していきます。
3年後の2027年には東京の最低賃金は1,300円越え、全国平均でも1,200円になる可能性が高いです。
また、東京では大卒の初任給が30万円という企業が数多く存在していることでしょう。
私がこの結論にたどり着いたソースは以下です。
2023年の全国平均最低賃金は1,004円でした。これは2022年と比べると4.5%上がっています。(2022年の全国平均最低賃金は961円)
2024年7月25日、今年度の最低賃金額改定について議論している厚生労働省の審議会は物価の上昇が続いていることなどを踏まえ、過去最大となる時給50円(昨年度は43円)引き上げの目安を示し、全国平均は時給1,054円とすることで決着しました。23年度から約4.9%もの伸び率となっています。
このほど退任を表明した岸田首相ですが、2023年8月31日、最低賃金について2030年代半ばまでに1,500円に引き上げることを目標にすると表明したことが、一時期話題になったかと思います。
(※参照:岸田首相 最低賃金2030年代半ばまでに1500円に 新たな目標表明)
2023年の全国平均最低賃金は1,004円でしたが、これが毎年4%ずつ上昇していくと仮定すると2030年半ばに1,500円に達するため、このような目標を表明したと推測されます。
経済学では適正なインフレ率(物価上昇)は2%と言われています。
そのため、アメリカは様々な経済施策を講じてこの率が2%に下がるようにしています。
インフレ率が2%の場合は、賃金が4%程度上がると実質賃金がプラスとなるのです(社会保険料や所得税の税金を考慮するため)。
総務省統計局が2024年7月19日に公表した消費者物価指数全国2024年6月分の総合指数は、前年同月比2.8%の上昇でした。
実質賃金が長らく下がり続けていることも問題視されています。賃金を引き上げ、実質賃金をプラスにしていきたいとの政府の意向が働いているかと思います。
(※参照:2020年基準 消費者物価指数 全国 2024年(令和6年)6月分)
また、過去10年間の最低賃金の上昇率をまとめました。
2016年以降はコロナショックの2020年を除いて3%以上上昇している傾向です。
インフレ動向から考える
インフレ動向からも考えていきます。
以下は、IMF(国際通貨基金)が日本のインフレ率を推測した数値です。(インフレ率=平均消費者物価指数)
2023年10月版と2024年4月版を比べても日本のインフレ率は高まっているのがわかります。諸外国の動向や円安・円高によっても物価指数は変動しますが、今後も2%程度のインフレが進むと考えるならば、最低賃金は4%程度上がっていく可能性が高いと言えるでしょう。
また、「新入社員初任給、過去最高」「〇万円アップ」といったニュースを皆さんよく聞かれたかと思います。
その中で特に注目すべきは地方銀行の動きです。 ・
西日本シティ銀行(本社福岡県)は、初任給26万円(4.5万円増)
・宮崎銀行(本社宮崎県)は、初任給26万円(5.5万円増)
・京都銀行(本社京都府)は、初任給26万円(3.5万円増)
このように大卒初任給を大幅アップさせた地銀がありました。地銀の初任給アップは地域の企業へ与える影響が非常に大きいのが特徴です。影響を受け、自社も給与を引き上げたという企業も少なからず存在していると思います。
以上の点をまとめると、
①2024年は過去最大の最低賃金の上げ幅、増加率は4.9%
②政府の意向として最低賃金4%程度上げ続けることを示唆している
③過去においては少なくとも3%程度は最低賃金が上がっている
④IMF試算のインフレ率から鑑みても最低賃金は4%程度上がっていく可能性が高い
⑤大卒の初任給を上げる動きが都市部だけでなく地銀も活発化している
インフレ・賃金上昇の対策は2つ
インフレや賃金上昇への対策については2つが挙げられます。
1) 社員1人あたりの粗利を上げる
2) 経費コントロール 社員1人あたりの粗利を上げた分と経費をコントロールできた分が賃金上昇の原資となるからです。
社員の1人あたりの粗利を上げるには様々な手段が考えられますが、
以下のような経営施策を講じている企業は多いです。
・デジタル化による生産性向上
・価格の見直し
・クロスセル(既存顧客に異なる商材を販売する)
・収益性の高い新規事業に取り組む
・同業者をM&Aをしてスケールメリットによる生産性向上
・1人あたり粗利の可視化および全社員への意識浸透
・無償サービスの有償化
・パッケージ商品化による単価アップ
・アライアンスによる高付加価値商材の販売
これらは一例です。
続きは。。。