自費出版とは? 本を出したい社長が知っておくべき基本を解説!
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2024.07.30
「社史を作りたい」「創業からの苦難と成長を本にしたい」「ビジネスで培ってきた知見をご子息・ご息女に向けてまとめたい」このように考えている社長におすすめなのが、自費出版です。
出版社が主導となって制作する商業出版と比べると、あらゆる面で自由度が高く、著者が伝えたい内容を存分に盛り込むことができるのが特徴です。
自費出版にはどんなメリットがあるのか、デメリットは何なのか、どれぐらいの費用や手間がかかるのか……本記事では、自費出版の基礎知識や商業出版との違いについて解説していきます。
そもそも「自費出版」とは?
「自費出版」とは、書籍を制作するのに必要な費用を、著者自身が負担する形式の出版方法を指しています。
制作費用は著者が負担しているわけですから、出版社から内容に対して口出しされることは、ほとんどありません。法律に触れない範囲であればどんなテーマでも基本的には出版が可能で、例えば自叙伝や社史、趣味で書き溜めた小説や詩、自作マンガなども、自費出版なら本にすることができます。
自費出版と商業出版の違い
一方、書籍制作費を出版社側が全額負担するのが「商業出版」です。商業出版で世に出る本は「出版社の商品」となりますので、出版社が主導となって書籍の制作をすすめます。企画の立案から目次構成、デザイン面、マーケティング戦略など、あらゆる側面で出版社の意向が反映されます。それこそ社長が書きたいと思っていた本から脱線してしまい、せっかく時間をかけても会社にとって良いものになるとは限りません。
また、出版に至るには、出版社内での企画会議を通過する必要があります。出版社から「この企画は売れる」「この著者は有名だからお金になる」というシビアな判断されなければ、そもそも発行されません。企画会議に乗ったとしても実際に本となるのは全体の数%という場合もあります。
自費出版と共同出版の違い
もう一つの出版方法として「共同出版」があります。共同出版は、自費出版と商業出版の中間に位置しており、費用は著者と出版社で分担、マーケティングも両者が行います。商業出版ほどではありませんが、内容やプロセスの決定権も共有されるため、自分の思う通りに進められないことも出てきます。
「制作費を負担するのが誰なのか」「誰が主導となって内容を決めるのか」、自費出版と商業(共同)出版の違いは、大きくこの2点で説明できます。
自費出版の費用はどれくらい?
自費出版にかかる費用は、一般的には数百万円だと言われています。内容やページ数、カラーページの有無や紙の品質、原稿執筆をライターに依頼するかどうかなど、さまざまな要素で費用は変動しますが、おおむねこの範囲内だと考えていいでしょう。
全国の書店に本が並ぶことを目標にするのであれば、450~500万円は必要です。出版社の流通ルートを使わなければならないので、出版社との契約が必須、そのための費用がかかるからです。一部、自費出版を請け負っている大手出版社などでは、ブランド料も込みで1,000万円以上の制作費がかかることもあります。
もちろん、制作費100万円でも本を作ることは可能です。ただし、印刷費を除けばほとんど費用が残らないので、プロのライターやデザイナーへの依頼は難しくなります。その結果、どうしても書店で売られている本より品質が落ちますし、流通ルートも確保できないので書店で購入することはできません。
出版費用の内訳
自費出版の費用は、おおまかに以下のように分類されます。
- 原稿制作・編集費
- 印刷・製本費
- デザイン費
- 流通・販売費
「原稿作成・編集費」は、ライターや編集者に依頼する場合に発生する費用です。ライターに原稿執筆を依頼すると、著者は取材に応じる形でコンテンツを提供し、それをライターが文章にまとめてくれます。費用は高くなりますが、自ら執筆することなく高品質な原稿が完成します。
書籍の品質管理・スケジュール管理・関係各所との調整などを一手に担うのが、編集者です。編集者に制作管理を依頼する場合も、費用が発生します。書籍制作は工程が多く、関わる人も多いので、こうした各種調整を行う人が一人いるだけで、スムーズに制作を進めることができます。
「印刷・製本費」は、実際にモノとしての本をつくるのに必要な費用です。本のページ数や部数、紙やインクの品質によって、費用は変動します。また、大手印刷会社に依頼するのか、小さな印刷会社に依頼するのかによっても、印刷費用は変わってきます
また、「デザイン費」も考慮に入れる必要があります。表紙や本文のデザインをプロに依頼する場合、その費用が発生します。
「流通・販売費」は、書店やオンラインストアで書籍を販売するための費用です。出版物というのは、印刷するだけでは書店に並べることはできません。書店への流通ルートを持っている出版社と契約し、その出版社から刊行することで、ようやく書店に並べることができます。
自費出版のメリットとデメリット
ここからは、自費出版の具体的なメリットとデメリットについて解説します。
自費出版のメリット
自費出版というのは、制作費用を負担することで、「有名人でなくても著者になることができる」「書きたい内容を自由に表現できる」という特徴があります。
- 著者自身が発信したい内容で、執筆できる
- 書籍のデザイン、イメージカラーも自由に選ぶことができる
- 出版された書籍を、マーケティングやブランディングのツールとして活用できる
- スケジュールを自由に設定できる
- 原稿を執筆する段階で、自分の考えや経験を棚卸しできる
- ライターを起用することで、取材に答えるだけで原稿が完成する
書籍の内容やデザイン、出版のタイミングなど、自分の好きなようにコントロールすることができるのが自費出版の大きなメリットです。社長であれば、自社の利益につながるような内容で書籍を執筆し、マーケティングツールやブランディングツールとして書籍を活用することも可能です。
そのほか、原稿を執筆するためには、自身の経歴や持っているノウハウを整理しなくてはならないため、自分の人生を棚卸しする時間が必要になります。これまで日々の仕事に追われていた社長においては、書籍のために人生を振り返る時間を取ることで、新たな発見があるかもしれません。
また、プロのライターに原稿執筆を依頼するという方法もおすすめです。一から原稿を執筆する時間がない人でも、インタビューを受けるだけで1冊の本を完成させることができます。ライターは、原稿執筆のプロでもあり、質問のプロでもあります。彼らからインタビューを受けることで、自分でも気が付かなかった視点が得られる可能性もあります。
自費出版のデメリット
一方、自費出版にはデメリットもあります。最も大きなデメリットは「費用負担が発生する」という点でしょう。
- 出版費用の全額が著者負担である(数十万円~数百万円)
- 自分で原稿を執筆するのであれば、膨大な労力と時間がかかる
- 品質が安定しない可能性がある
また、出版社と契約し、流通ルートを確保して書店に並べられることがあったとしても、有名企業の経営者や、著名な作家でない限り、店頭で大々的に展開されることはほとんどありません。
自分で原稿を執筆するとなると、膨大な労力と時間がかかりますし、プロの手を入れずにすべてのこと(原稿執筆やデザインなど)を行うのであれば、品質への責任はすべて自分の肩にのしかかります。誤字や脱字も含めて、そのままの形で出版される可能性があるというのがデメリットになるでしょう。
自費出版がおすすめの人は?
内容やデザイン、スケジュールの自由度が高いというのが自費出版の大きなメリットです。商業出版や共同出版では、出版社がある程度の決定権を握っているため、思った通りのままの内容を貫くことは、ほぼ不可能だと考えてください。
出版のタイミングについても同様で、自費出版で好きなタイミングで執筆を進めていくことができますが、商業出版や共同出版の場合は、出版社の方針によって、出版のタイミングが決められてしまうことが多いです。
一方、プロの編集者、ライター、デザイナーを介することが多い商業出版・共同出版では、品質に一定の担保がされやすくなります。制作費用も出版社が100%(共同出版ではそれぞれ何割か)を負担するので、著者の費用負担はありません。ですが、ご存じの通り、有名企業の社長やタレントといった、名の知れている人ばかりが対象になるので、通常の人は、なかなか出版の機会を得ることは難しいでしょう。
このように考えてみると、自費出版がおすすめなのは次のような人です。
自費出版がおすすめな人
- 自分の考えや経験を世の中に伝えていきたいと考えている経営者、社長
- マーケティングツールやPRのツールとして書籍を作りたいという経営者、社長
- 身近な人にだけ、自分らしい本を作って届けたいという経営者、社長
- 社史や自叙伝を作りたい経営者、社長
まとめ
書籍は出版したいけれども自分で費用を捻出するのは負担だ、と思われるかもしれません。また、どんなテーマ・内容で本を出したらいいのか企画にお困りの方は、プロ編集者に相談することをおすすめします。船井総合研究所では、コンサルタントとプロ編集者が、経営者にとって最適な形での出版企画をご提案しています。
また、社長であれば一から原稿を書く時間を捻出するのが難しい方もいらっしゃるかと思います。原稿を執筆する時間がない、文章に自信がないという方は、一度「社長の書籍プロデュース」までご相談ください。