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感謝と信頼が成長の鍵!「応援力」こそ成功する経営者の思考術

2025.07.22
会社が成長できるかどうかは、ビジネスモデルや時流にあっているかもさることながら、経営者の持つ思考や価値観に大きく関わっています。
私がこれまで見てきた成長企業の経営者に共通するのは、従業員を心から応援する気持ちがあり、行動に表せる「応援力」が高いことでした。
応援力とは何なのか、成長企業に真に必要な考え方について解説していきます。

成長企業がたどる3つのフェーズ

画像:PIXTA


業績を伸ばしている企業は、3つの段階を経て成長していると考えています。

・第1フェーズ(売上3~5億円)
創業後、順調に業績を伸ばしている企業に多いのがこの段階です。私がコンサルティングをしている塗装業界では、売上3億~5億円規模の会社が目安になるでしょう。従業員数5~6人程度で到達できますが、中には3人でこの売上を達成している例もあります。

・第2フェーズ(売上10~30億円)
売上が10億~30億円に達し、地域でもそこそこ名が知れている段階です。
だいたい売上5億円規模になってくると、第1フェーズに留まる企業と第2フェーズに進む企業とで道が分かれ始めます。現状に満足せず「目標をアップデートできるかどうか」が、第2フェーズに進める経営者の特徴です。

・第3フェーズ(売上100億円以上)
売上が100億以上になっており、地域経済をけん引する企業として社会的にも認知されている段階です。この規模になると、雇用の創出や地域貢献活動にも積極的で、経営者自身も「世のため人のため」という感覚で経営を行っています。

第1から第2フェーズへの決定的な分岐点

第1フェーズもしくは第2フェーズが目標になると仮定してご紹介します。

第1フェーズに到達する経営者に共通しているのは、成長志向・スピード感・意思決定力が高いことです。「売上5億円を達成する!」といった明確な目標があり、それを達成するために多くの意思決定を、驚くほどスピーディに行います。例えば新規事業への参入など、やると決めたことはとにかく着手までが早く、やめる決断も早いのが特徴です。

そこから売上10億円規模の第2フェーズへ移行していくには、これまでより高い目標へとアップデートする必要があります。ただ、第1フェーズに到達した時点で、経済的にも精神的にも満足し、新しい目標が描けないという経営者も多く、成長が足踏みしてしまう原因になっています。

なぜ新しい目標が描けなくなってしまうのか? この理由は、マズローの5段階欲求説で説明すると分かりやすいでしょう。経営基盤が安定し、従業員への給与支払いも安心して行え、経営者自身の生活も一定水準以上に豊かになってきている…この状態は「生存欲求」「安全欲求」が満たされていて、「このままの状態で満足だ」と思いやすいのだと考えられます。

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もちろん、積極的に第1フェーズに留まる選択をする方も多いので、どちらが良い・悪いといった話ではありません。ただ、売上10億~30億円の第2フェーズに到達した経営者に共通しているのは、自分を満足させるという意識を超えて「これからは従業員に還元していきたい」と発言される方が多いのも事実です

どのように還元するか、その形はさまざまです。給与・報酬はもちろん、福利厚生、時間的余裕、働きがい、多様な働き方…などがありますが、第2フェーズの経営者は、自社の従業員が何を求めているのかを理解しようとしています。

「従業員のニーズを満たすためには、企業規模を拡大して生産性を上げる必要がある。だからより大きな目標が必要だ」こう考えられるかどうかが、5億円の壁を突破する肝となっているのだと思います。

経営者の「応援力」が、会社を成長へ導く!

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飲食店や美容室など、職人さんが起業するのが一般的な業界だと、創業したばかりの頃の経営者というのは、現場仕事と経営実務を兼務しています。その後、5億、10億、30億…と規模が大きくなるにつれ、経営実務やマネジメントの仕事がメインとなり、現場仕事は従業員が担当するようになります。

ところが中には、任せたはずの仕事でも「自分の目でチェックしないと気が済まない」と言う経営者もいらっしゃいます。「あれはやったのか?」「この件の進め方はこうしろ」とマイクロマネジメントを始める方もいて、それでは従業員が育たず、事業の成長も必ずどこかで停滞します。

一方、事業を伸ばせる経営者というのは、従業員の成長を心から願い、ある程度信頼感を持って仕事を任せています。「成長する会社の経営者には【応援力】がある」と表現した理由はここにあります。

応援力とは、まさしく「君ならできる!」と応援する気持ち、そしてそれを態度に表すことです。

応援力の高い経営者は、仕事の進捗は確認しますが、監視しているのではありません。任せた以上は、一時的に数字が上がらなくても仕方がないと腹を括っています。たとえ失敗したとしても、成長の糧になると信じて、許容できる器の広さがあるのです。進め方の相談をされた場合も、あまり細かく口は出さずに「自分で考えなさい」と、従業員に差し戻す姿も見かけます。

「応援力」を感じるのは、従業員への声かけや態度だけではありません。システムや営業ツール、社員研修を積極的に取り入れており、従業員それぞれが成果を出しやすい環境を整えている傾向にあります。

このように日々の言動や社内制度を通じて、応援されていることを感じた従業員は、当然、モチベーション高く仕事をしてくれますし、会社との絆を感じてくれます。10億円を突破できる企業というのは、高確率でこのような好循環の中にいます。

感謝の気持ちと精神的余裕が大切

成功した経営者というのは、自分に関わる周囲の人間すべてに対して、強い感謝の気持ちを持っています。従業員へも感謝しているからこそ、「より満足した暮らしを送ってほしい」「より成長して欲しい」という気持ちが生まれるのだと思います。そしてそれが、応援という形で表現されているのです。

こう言うと「その人が持つ生来の性格によって、感謝を持ちやすい人・そうでない人がいるのでは?」と聞かれることがあります。たしかに、性格によって左右される側面はあるでしょうが、「経営者自身の余裕のあるなし」が影響しているように感じています。

日々の業務に追われ、精神的、経済的、時間的な余裕がない状態では、なかなか心から他者を応援するのは難しいものです。

まずは自分自身が余裕を持てるように、周囲の環境を整えていくこと。そして感謝の気持ちを忘れずにいれば、見守りながら成長を願う「応援力」を持てるのではないでしょうか。