離職率が1/2、人材難時代の勝ちパターンは「健康経営」
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2023.12.05
- 10月特集は「健康経営®」についてお届けします。働き方改革の流れなどもあり、現代の企業経営において重要性を増している「健康経営」人手不足が加速している現在、しっかり働いてくれる人材を確保する観点からも「働く人の健康を意識する」ことは重要性を増しています。
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社員の健康に取り組む会社は、離職率が1/2
「健康経営」とは何か、経済産業省によると「従業員等の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践すること」とされています。「企業理念に基づき、従業員等への健康投資を行うことは、従業員の活力向上や生産性の向上等の組織の活性化をもたらし、結果的に業績向上や株価向上につながると期待されます」(経済産業省ウェブサイトより)
大きな目的や目指すことはありますが、健康経営が企業経営にとってもっとも重要な理由は「人材の確保」です。
「健康経営に取り組む企業は離職率が低い」というデータが出ています。経済産業省の調査によると、全国平均の従業員の離職率が約10%なのに対し、健康経営銘柄2022、健康経営優良法人2022、健康経営度調査回答企業平均のそれは半分以下です。従業員の健康に関心を持ち、何かしらアクションを取っている企業は従業員の満足度が高まり、辞める可能性が低くなることが、データからも示されています。健康経営銘柄、健康経営優良法人等については、別記事で詳しく解説します。
企業経営における大きな課題のひとつに「人手不足」が挙げられる現在、それを解決するための手段として、健康経営の重要性が高まっているのです。
高まる「健康経営への関心」
経営者の健康経営への関心が高まっていることは、別の調査結果も証明しています。
大同生命保険が全国の中小企業経営者を対象に実施している「大同生命サーベイ」が2023年8月度調査で「中小企業の健康経営」を主要テーマに、中小企業の健康経営への取り組みの実態について調査を行いました。
同社が日本全国約7000社の企業経営者に、健康経営について聞いたところ「意味や内容を知っている」と答えた人が全体の36%となりました。
同調査が健康経営を初めて質問項目に加えたのは2017年3月時で、その際は健康経営の認知は10%程度でした。その時に比べると20%以上認知度が増加しており、前回調査から6年間で大きく上昇していることが示されています。
また、「経営者が自身の健康を意識している企業ほど、健康経営の認知度が高くなっている」ことにも同調査は触れています。
「経営者が自分自身の健康について意識しているか」という問いに対し、83%が「意識している」と回答(「強く意識している」21%「ある程度意識している」62%)。経営者の年齢が⾼まるほど、自身の健康を意識している傾向が見られました。
経営者自身の健康に関する内容は、後日の記事にてお届け予定です。
大同生命の調査によると、自社が健康経営を行うために具体的に取り組んでいることとして「従業員の健康診断の実施」(63%)が最も多く、次いで「長時間労働の抑制」(50%)が挙げられます。以下、「休暇取得の促進」(42%)、「感染症対策」(32%)、「人間ドックやがん検診などの費用補助」(14%)、「禁煙・受動喫煙防止対策の実施」(10%)となっています。
そのような健康経営に関する取り組みを行った経営者に「取り組みを行った効果」を尋ねたところ、「従業員の満足度向上」(36%)と「コミュニケーションの改善」(34%)が高い割合を占めました。健康経営に取り組むことで、経営者と従業員の対話も増えている様子が窺えると、その調査は述べています。
健康経営に関する課題として経営者が回答したものには「企業として従業員個人の健康にどの程度関与すべきかの判断が難しい」(33%)が最も多く挙げられました。「時間・人手がない」(23%)、「自社にノウハウがない」(19%)と続いています。
健康経営に関する2つのアプローチ
「健康経営に興味はあり、わが社でも実施したいと考えているけれど、具体的に何をしたらよいのかがわからない」
そうお考えの経営者も多いことと思います。
大同生命は「健康経営を導入する企業に必要な取り組みの例」として①従業員の健康状態の把握 ②健康づくりの促進 を掲げています。
すべての従業員に定期健康診断や二次健診の受診を勧奨し、健康診断を受診していない人には個別に受診をするよう連絡するなどのアクションを行います。
また、経営者や人事担当者は、その健診結果から従業員の健康状態を確認するようにします。
健診はすぐに行うことのできることですが、もっと大きな視野で求められているのが「健康づくり」の推進です。
例えば長時間労働など、健康悪化の原因となっている職場の課題を改善する。ほかにも、従業員自身が行っている日々の健康維持・増進の取り組みを支援するなどが挙げられます。
健康経営に取り組む多くの企業が行っていることの1つが「喫煙対策」です。健康経営に取り組んでいる企業の多くが「完全禁煙にする」「喫煙室を設けて完全分煙にする」などを行っています。社員にも禁煙を推奨し、禁煙外来を受診する際には補助を行っているところもあります。
「健康経営は行いたいが、時間もノウハウもない」
経営者から寄せられた健康経営ができない理由について、対応してくれるサービスが広がっています。
福島県では、作業療法士が事業所に出向き健康経営を支援する試みが始まりました。福島県内を中心に訪問介護などを展開する企業が、腰痛や肩こりなど「職業病」の原因を事業所ごとに分析し、業務の合間にできる運動や職業病を防ぐための業務環境の改善策を提案しています。
そのように専門家の協力を仰ぎ、従業員の健康づくりと生産性向上を後押しすることが可能になっているのです。
健康経営への補助が、実は手厚い
健康経営は国が重要課題と考えていることもあり、国や自治体から様々な補助や助成があります。超高齢社会を迎え、健康寿命を延ばすためには現役で働いている頃から健康を意識し、活動することが重要であると考えていることから、その性質に応じてもらえるお金があります。
厚生労働省は健康経営に関する補助金・助成金を多々発表しています。受動喫煙防止を目的に喫煙専用室を設置するなどした場合、それにかかる費用の一部を最大100万円まで助成されます。
健康経営に関して多い助成金は、やはり働き方改革に関するものです。労働時間を短くする、休みを取りやすくするなど、そもそもの働き方を変えるために環境を整える取り組みに対して、助成されるものが多々あります。自治体レベルになると、もう少し細部にわたる支援があります。メンタルヘルスの専門家による研修・相談を無料で受けられたり、従業員の健康づくりに必要な機器を購入するとその費用の一部が補助されたり、不妊治療のための休暇制度を導入するとお金が支給されたりします。
お金が支給されるだけでなく、本来は有料のものが無料で使用可能など、さまざまな支援制度がありますので、ぜひ会社の地域の制度をチェックいただきたいと思います。健康経営に関するデータや具体的な事例、受けられる支援策などについてお伝えしました。大同生命の資料でも、健康経営に必要なこととして「経営者の積極的な関与」を挙げています。
経営者が健康経営に取り組む意義やビジョンを明確にし、従業員に健康経営の考え方を浸透・定着させる。それが大事です。
「わが社も健康経営に取り組む」と言うだけでは機能しません。会社として本気で取り組むつもりであり、どのようなビジョンを持って行っていくかを打ち出すとともに、従業員にもしっかりその考えを理解し、行動してもらう。まず基本の部分としてそれが必要です。
次回記事では健康経営を高いレベルで実現している企業への「健康経営優良法人認定制度」やそれに認定されている企業の行っていることをお伝えします。
※「健康経営®」は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。