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「顧客満足」を高める秘訣:経営戦略と実践事例。

2025.06.17
顧客満足度向上は経営戦略そのもの。現場を安定させ価値を届ける方法を解説します。

総括

顧客満足度は、「価値/価格」で決まります。

お客様にとっての価値を高め、それを適切に伝えることが重要です。しかし、期待値を上げすぎると現場に負荷がかかるため、コントロールも肝心です。特に購入頻度の高いサービスでは、「当たり前のことを当たり前にできるか」が顧客満足度を左右します。

また、顧客満足は顧客のみならず、現場が安定して品質を回せる状態であることも不可欠です。昨今では、商品やサービスそのものだけでなく、それらを体験する「場の環境」が新たな価値となり、顧客満足に大きく影響しています。

人がすべきこととデジタルツールで代替すべきことを見極め、過剰なサービスを避け、本質的な顧客の期待に応える経営戦略が、持続的な顧客満足度向上につながります。これは単なる現場レベルの話ではなく、経営戦略そのものです。

顧客満足の鍵は「価格分の価値」と「伝え方」

顧客満足度を高める上で、私たちが最も重要視しているキーワードは「価値/価格」です。これは、お客様が支払う価格(分母)に対し、得られる価値(分子)がどれだけ大きいかという考え方です。価値が価格を上回れば顧客満足度は高まり、逆に下回ればクレームにつながる可能性もあります。

この「価値」をどのように創造し、お客様に伝えるかが、顧客満足を向上させる上で極めて重要になります。

価値の伝え方には、企業側の深い理解と準備が必要です。商品やサービスを開発する段階で、自社の強みや提供したい価値を明確に定め、それをどれだけ深くお客様に伝えきれるかが、最終的な顧客満足を生み出します。

つまり、商品設計やサービス戦略の時点で、競合との差別化要素を盛り込み、独自の価値を生み出すことが肝心です。

お客様が求めるであろう価値を提供し、さらに新たな価値に気づけば積極的に伝えていく姿勢も、顧客満足を高めるために不可欠です。このプロセスを日常の営業活動の中で磨き上げることで、顧客満足度はさらに向上します。

顧客満足度を維持する「期待値」と「現場安定経営」

顧客満足を考える上で、価値の伝え方と同様に重要なのが「期待値コントロール」です。

お客様の期待値を上げすぎないことも、実は顧客満足度を維持する上で非常に重要になります。期待値が上がりすぎると、お客様はその高い水準に慣れてしまい、それを超えるサービスを提供し続けることが現場に大きな負荷をかける原因となります。

「ここまで期待してほしい」という範囲を、お客様に早い段階で明確に伝えることが、持続的な顧客満足につながります。 特に購入頻度の高い業態において、顧客満足度を下げる最大の要因は「当たり前のことが当たり前にできない」ことです。

例えば、飲食店で主力商品が欠品しているような状況は、お客様の期待を裏切り、満足度を著しく低下させます。そのため、その業界や商品、サービスで求められる「当たり前のレベル」を徹底することが、顧客満足向上の基本となります。

お客様だけが満足するのではなく、現場が安定して高品質なサービスを提供し続けられるような体制を構築することが、真の顧客満足を実現するための経営戦略の要点になります。

経営を安定させる顧客満足:飲食店事例

飲食店における顧客満足度向上は、単に「お客様が喜ぶこと」を追求するだけでは達成できません。

多くのオーナーは商品への強いこだわりを持ち、それを全てお客様に提供しようとしますが、これが顧客満足度を下げる原因になることがあります。

例えば、ランチタイムに夜のグランドメニューと同じ豊富なラインナップを提供しても、お客様は限られた時間で早く食事を済ませたいと考えています。メニュー選びに時間がかかり、料理の提供が遅れることは、結果的に顧客の期待値を裏切り、満足度を低下させてしまうのです。

本当に必要なのは、お客様がその時、その場所で何を最も期待しているかを本質的に見極め、そこに過不足なく応えることです。過剰なサービスは、かえって裏目に出ることが飲食店業界では頻繁に起こります。

ランチであれば、早く提供できるオペレーションを組むことが最優先であり、メニュー数を絞ることも有効な戦略です。これにより、お客様は商品を早く決められ、早く提供され、早く食事ができます。同時に、現場のオペレーション負荷が軽減され、商品ロスも減少し、品質が安定します。

顧客満足は、お客様だけでなく、現場が安定して品質を回せる状態があってこそ実現できる経営戦略になります。

新時代の顧客満足:環境とデジタル経営戦略

近年、顧客満足度を左右する大きな変化として、商品やサービスを購入・体験する「場の環境」そのものが価値になる傾向が強まっています。

例えば、壮大な景色を望めるカフェや、アニメの世界観のような内装を持つパン屋のように、特別な「世界観」を提供することが、お客様を惹きつけ、顧客満足を高めています。

これは、単に商品が良いだけでなく、「こんな場所で買った・食べた」という体験が、お客様にとっての付加価値になるためです。

特にSNSでの拡散を考慮したフォトスポットの設置なども、この「場の環境」を価値に変える戦略の一環です。

また、デジタルツールの活用も顧客満足度向上の重要な要素です。これまで人に頼りすぎていたサービスは品質にばらつきが生じやすく、ミスも起こりがちでした。人がすべきことは人が行い、代替可能な業務はデジタルツールに任せることで、品質の安定と効率化が図れます。デジタルツール導入により空いた時間で、スタッフがお客様一人ひとりと深くコミュニケーションを取るなど、人にしかできない付加価値サービスに注力できます。

顧客満足は、デジタルと人の役割を融合させた統合的なサービス提供によって、競合との差別化を図り、持続的な成長を可能にする経営戦略の根幹をなします