営業/マーケ採用/人材社長経営戦略経営用語集財務/資金調達

「採用ブランディング」こそ人材が集まらない会社はするべき

2023.12.05
「採用ブランディング」という言葉を知っているでしょうか?今回は「採用ブランディング」という長期的な戦略を実践したことによって、採用実績を向上させ、選ばれる企業になった成功事例を紹介します。

以下テキストは、経営者向け優良情報サービス『社長online』の情報テキストになります。月々1,650円で成功事例や新たなビジネスフレームを学べるので、是非加入を検討してみてください。

採用ブランディングは戦略化、人材の定着化にもつながる

「採用ブランディング」とは、自社の持つ理念や強みを整理し、自社にとって魅力的な人材に向けてそれを伝えていく長期的な採用戦略です。

長期的な採用戦略とは、自社の企業理念や価値観に基づくブランドを構築し、そのブランドを軸とした採用コンセプトを求職者に伝える施策を打つことです。ブランド、会社の世界観を固めた上で採用戦略を行うので、そのブランドに惹かれた人材が集まるようになります。

また、集まった人材の戦力化や定着化が容易で、早期の業績アップにも繋がります。業績が上がることで、さらに採用を増やすことができ、「よい人材が集まることで会社がよりよくなる」サイクルが回り、応募者にとっての自社の魅力も上がっていきます。

そのサイクルの繰り返しで、人が持続的に集まる企業へと成長することができるのです。

一方、長期的な採用戦略と対を成す「短期的な採用戦略」とは、企業理念を整理せず、自社のブランドやコンセプトもない状態で、それでは応募者にしても応募の強い動機となるものがなく、自社に深くフィットする人材が集まりません。

仮に人材を採用できたとしても深いところでつながっていないため、戦力化、定着化に時間がかかる、戦力化の前に早期離職してしまうこともありえます。人が定着しないので社内の雰囲気が悪くなり、離職が増加し業績不振へと繋がります。

短期的な採用戦略では、採用がうまくいかないどころか人手不足が悪化する一方です。

以下の図に、長期的採用戦略と短期的採用戦略の具体的な違いをまとめました。このような短期的な採用戦略を行っている企業は多いのではないでしょうか?

さらに、これからの採用活動では以下のような問題点があります。問題を一言で言うと、採用がより困難になる、その場しのぎの採用は通用しなくなるということです。

・生産年齢人口の減少は、働き手の減少であり、採用活動における求職者の母数の減少を表しています。

・副業人材の増加は「会社雇用にとらわれない労働が普及しつつある」ことを示しています。中小企業では副業を禁止している企業が多いため、世の中に普及している働き方とのギャップが生まれつつあります。

・リモートワークの普及は、勤務地に縛られない働き方が可能になったことを示しています。リモートワークが可能な職種にはよい影響を与えていますが、製造業や接客業、介護福祉業、営業といったリモートワークが難しい職種にとっては痛手となっています。副業人材の増加と同様に、世の中に普及している働き方とのギャップが生まれつつあると言えます。

時代の変化により、これまでに比べ、中小企業で正社員として働くことを求める人材を確保することが困難になっていくのです。

ブランディングのない短期的な採用戦略のみを行っている企業は、これらの問題点に対処できず、「選ばれない企業」になってしまう恐れがあります。

では、自社が「選ばれる企業」になるためには、何をしていけばよいのでしょうか?

その答えが、冒頭でもお伝えした「採用ブランディング」なのです。

ブランディングで行うことは3点

「採用ブランディング」には、インナーブランディングとアウターブランディングの2種類があります。

インナーブランディングは社内の人間に向けたブランディングです。主に社員の定着率の向上や社員への経営理念の浸透、企業の本質を磨きこんでいくことを目的としています。

アウターブランディングは社外の人間、採用における求職者に向けたブランディングであり、主に採用者数の増加や自社の経営理念を外部に発信していくことを目的としています。

アウターブランディングを実施することで、よい求職者が集まり、現職の社員が自社の魅力を再確認することができ、インナーブランディングにつながります。

そして、インナーブランディングを実施することで、自社の魅力(福利厚生・社風・満足度)が高まり、アウターブランディングで打ち出せる要素が増えます。この一連の流れを繰り返していくことで、ブランディング力を向上させることができるのです。

具体的なブランディング方法は以下の3点です。

1.ターゲットの選定。自社が欲しいのはどのような人材か、またその人材は自社のどのような部分に魅力を感じて入社し、働いているのかを、社員へのアンケートやヒアリングを通じて把握します。

2.自社のポジションの把握。他社と比較して自社はどのポジションにいるのか、差別化要素はどこにあるのかを、採用を前提とした3C分析や4P分析を通じて把握します。

3.コンセプトの作成。採用において、誰に何をどうやって伝えるかを明確にし、一貫性を重視した採用コンテンツをつくることが大切です。自社が求める人材が興味を持つための一貫したコンセプトを、ホームページやSNS、チラシ、説明会資料などのコンテンツに表現していきます。

採用実績を向上させた地方のクリニック

「採用ブランディング」を実践したことによって採用実績を向上することができた、あるクリニックの事例を紹介します。

そのクリニックは人口5万人以下の離島で開業しています。地理的により広げた採用は難しいのですが、2022年10月からリブランディングと採用戦略をスタートし、インナーブランディングを5か月間、アウターブランディングを4か月間実施しました。

その結果、スタートから2ヶ月で看護師15名の応募と2名の採用に成功。加えて、医療事務10名の応募と1名の採用。採用難易度が極めて高い医師からの応募も1名獲得しています。

実践した3つのステップとポイント

実践したのは以下の3ステップです。

1.自社のコンセプトを整理するための3C分析。市場調査では、地域・職種別求職者動向や求職者の転職意識の調査を実施。競合調査では、競合他社のコンセプト調査や雇用条件の比較を実施。自社調査では、経営者へのヒアリングや全社員への意識調査を実施しました。このように「選ばれない原因」を客観的に分析することで、改善点を見つけていきました。

2.採用サイトのリブランディング。サイトのTOPページでは、クリニックのターゲットに向けたコンセプトを全面に押し出すようなデザインを作成しました。その他のページでは、経営理念や組織活性化への取り組みなどの経営者の想いを可視化・言語化したページや社員への個別インタビューページ、その地方での暮らし方を紹介したページを作成しました。

3.無料掲載型メディアやスカウト型メディアの活用を見直すことで、採用手段のアップデートも行いました。採用の狙い目を、転職が決まっており、希望職種と勤務希望地も決まっている転職顕在層とし、無料掲載型メディア・自社採用サイトへの掲載から始め、無料掲載型メディアへの課金をし、最後に成果報酬媒体やスカウトメディアを利用することで医療事務と看護師の採用に成功しました。

無料掲載型メディアを活用する際の主なポイントは以下の2点です。

・求人募集のPDCAサイクルを実行する

・最適な運用に向けた数値分析を徹底して行う。求人表示から採用に至るまでの全ての数値を計測して、ボトルネックとなる部分を見つけ出し、最適な運用を目指すことが大切です。スカウト型メディアを活用する際の主なポイントは以下の4点です。

1.移住者も含めたターゲットリスト作成。会社の所在地や近隣の都道府県はもちろんのこと、会社の所在地となる地域への移住者が多い都道府県もターゲットに含めることが重要です。

2.ターゲットに合わせたスカウト文の作成。求職者に向け自社の魅力を端的に表現し記載します。また、「まずは見学のみ、話を聞くだけでもOK」といった一文を記載することでマッチングのハードルを下げることも意識していきます。

3.マッチング後の面談で魅力をしっかりと伝えていく。面談は求職者を見極めるのではなく、惹きつけることが大切です。そのために、採用ピッチ資料を活用し、自社の魅力をわかりやすく説明していきます。また、資料をデータとして求職者に送付し、良い印象を与えます。

4.このほかにも行った重要なことが、インナーブランディングへの取り組みです。企業の課題を可視化するために、社員の満足度の対象となる、以下の図に記載されている①~⑧のエンゲージメント項目(課題になり得る可能性)に基づいて社員調査を行い、経営者と社員の間に生まれていた意識のギャップを埋めようとしました。図の右側に書かれているのが、各エンゲージメント項目の詳細になります。そのクリニックが行ったことを改めて整理すると、自社のコンセプト整理のための3C分析と採用サイトのリブランディング、採用手段のアップデートといったアウターブランディングと、社員に向けたインナーブランディングを実施したことによって、採用実績を向上させました。

この事例から、ブランディングで本質的な魅力を固めたうえで、マーケティングで人を集め続けるための基盤を整えることの重要性を理解していただけたでしょうか。

これからの時代も選ばれる企業になるために

「採用ブランディング」の詳細は以下です。

・「採用ブランディング」→自社の持つコンセプトを整理し、自社にとって魅力的な人材に向けてアウトプットしていく長期的な採用戦略

・ブランディングにはインナーブランディングとアウターブランディングの2種類が存在
インナーブランディング→“社内”の人間(社員)に向けたブランディング
アウターブランディング→“社外”の人間(自社が欲しい求職者)に向けたブランディング

・具体的なブランディング方法は、ターゲットの選定と自社のポジションの把握とコンセプトの作成の3つ

ターゲットの選定→“自社が求める人材”の特徴を社員にヒアリング
自社のポジションの把握→“3C分析”や“4P分析”を通じ、差別化要素を可視化
コンセプトの作成→求職者に対して“一貫性を重視したコンセプト”を作成

今後ますます、採用は難しくなっていきます。そんな中、「採用ブランディング」によって、医療事務と看護師の採用に成功し、医師からの応募も獲得することが出来たクリニックの事例を参考に、皆様も「採用ブランディング」を実践してみてはいかがでしょうか。