成功する経営者は「やりたいこと」を追求している

2025.12.11
船井総研コンサルタントが見てきた「成功する社長」第62回。今回は住宅分野を軸に約20年の活躍をするベテラン、砂川正樹が伴走した経営者のエピソードをお届けします。

成功する社長は「やりたいこと」を追求している
★事業の最大の原動力は、「面白い」「ワクワクする」といった社長自身の知的好奇心である。
★さまざまな情報を仕入れ、独自の視点で編集することで独自のビジネスを思いつける。
★社長の意図を「翻訳」できる能力を持つ参謀役が支える組織こそ強い。

持続的に成功を収める経営者に共通する法則はシンプルです。

成功を収める経営者は、「儲かりそうだ」という動機ではなく、「楽しそうだ」「面白そうだ」という純粋な好奇心を原動力にしています。そしてその原動力を組織にうまく伝達する参謀役がいれば、組織は成功へと近づいていきます。

シンプルに「やりたいことをやる」

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成功の土台は、事業ドメインの成長性があることです。

その上で、成功をつかむ経営者には、共通項があります。

共通項の1つ目は「自分がやりたいことをやる」こと。

成功する経営者は、自身の「心が動くこと」を何よりも大切に追求しています。「楽しい」「面白そう」「ワクワクする」「興味がある」といった好奇心を事業の原動力にしている経営者が成功をつかみます。

市場の勢いという「上りのエスカレーター」に乗ることを大前提としつつも、儲かる・儲からないといった損得勘定とは別に、「なんか面白いんじゃないか」という視点で物事を捉える。これこそが、成功する経営者に見られる特徴の一つです。

以前お会いしたとある不動産業の経営者の1人は、人と同じことを面白がらず、むしろ、世の中の常識を覆し、新しい価値が皆に認識されて世の中が変わっていくことに強い興味を持っていました。

その方は、「家に何千万円もかけてローンまで組んで苦しい思いをするのではなく、家を徹底的に工業化してコストを下げ、リース契約に加え、太陽光パネルをつけて売電収入を得て、その浮いたお金でもっと楽しいことができる。そんな世の中に非常にワクワクする」という話をされていました。

こうした「ワクワク」を実践していった結果、その企業は急成長を遂げ、今では年商100億円を超えています。

やりたいことをやっていれば「失敗」はなくなる

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「社長、この新規事業は儲かりますよ!」という提言を鵜呑みにして実行に移した場合、そのほとんどが失敗に終わります。「儲かる」ことが唯一の成否の判断材料になっているからです。

収益を生めば成功、赤字なら失敗という、極めてシビアで短期的な基準だけで判断すると、挑戦の芽は芽生えません。

しかし、尺度が「楽しい」や「面白い」に変わると、状況は一変します。もちろん、全ての挑戦が計画通りに成功するわけではありませんが、新しいことに挑戦した際、「0点の挑戦は一つもない」という、より建設的な考え方ができるようになります。

みなさん、なにかご自身の「楽しいこと」や、若いころに「楽しかったこと」を想像してみてください。

★旅行が計画通りにいかなくても「自分の知らない世界を見ることができた」

★スポーツ、ゲームなどで結果が振るわなくても「仲間と楽しい時間を過ごせた」

★海外留学で言葉が全く通じなくても「人のやさしさに触れられた」「外国人と話そうというモチベーションが高まった」

尺度が「楽しい」「面白い」であれば、挑戦が単純な「失敗」ではなくなります。たとえ収益が上がらなかったとしても、少なくとも100点満点中15点、あるいは20点くらいの小さな成果は得られます。この小さな成果を70点、80点にしていく過程こそが、成功に繋がるのです。結果として次々と新しいことに挑戦する多動力を手にして、成功に近づいていきます。

エジソンの名言「私は失敗したことがない。ただ、1万通りの、うまく行かない方法を見つけただけだ」に通じる考え方です。

やりたいことを叶える、情報の「編集力」

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共通項の2つ目は、「やりたいことをひらめく編集力がある」こと。

人と違う発想、あるいはユニークな発想を生み出す経営者は、そもそも一般の人とは感覚が根本的に異なります。「普通の人と同じでは面白くない」という感覚が、彼らの思考の根底に深く根付いているのだと思います。

そのユニークな発想の源泉は何でしょうか?それは、常に様々なところから仕入れた情報を、独自の観点で「編集」しているからだと考えています。

料理に例えるなら、食材はみんな同じものを持っています。しかし、その食材の組み合わせ方や調理法が独特なのです。

焼きそばとオムレツを注文している人を見て、「なぜあんな頼み方をするのか?」と興味を持ち、実際に組み合わせて食べてみて、「オムそば」を思いつくようなものです。そしてオムそばで市場を席捲し、成功を収めます。

傍から見れば変わった人と思われるかもしれませんが、経営者にはこのようなタイプの人が多くいらっしゃいます。むしろユニークな感性を持っているからこそ、会社を創業したり、困難な経営の舵取りをしたりするのに向いていると言っても過言ではないでしょう。

桃太郎のように「参謀役」が成否を分ける

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しかしながら、経営者自身の「楽しい」「ワクワク」だけでむやみに挑戦し続けていては、お金や従業員といった大切な経営資源はついてきません。特に年商100億円規模の企業や上場企業を目指すのであれば、参謀役の存在が不可欠です。

そこで共通項の3つ目。「やりたいことを支える参謀役がいる」こと。

童話の「桃太郎」も、桃太郎一人では鬼退治はできなかったでしょう。鬼退治というビジョンに対し、桃太郎の苦手を補う、イヌ(攻撃)、サル(知恵)、キジ(情報収集)の存在があったからこそ、皆はハッピーエンドを迎えられたのです。

異なる能力を持つ仲間が協力し合って初めて、大きな課題に立ち向かい、乗り越えることができるのです。経営者の不足している部分を補い、全体のバランスを保つ役割を担う人材として「参謀役」がいるからこそ、企業は持続的に成長し、成功することができるのです。

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特に参謀役は、経営者が発案したアイデアを現場が実行可能な形に整える「緩衝材(バッファー)」として機能します。

感覚として、経営者の9割は、常識にとらわれない「異端児」です。

異端児だからこそ、独自の視点から生まれる話は面白く、夢があります。 参謀役は、経営者の熱意に満ちた言葉や、一見すると矛盾しているように見える発言の真意を汲み、それを組織全体に「翻訳」し、具体的に落とし込む役割を担います。

「ワクワクを実現するためには、〇〇という行動をさせて、△△という数値目標を設定して、その際の伝え方はこんな感じかな…」と、メンバーが理解でき、納得できるように、言葉を上手に変換するのです。

また、現場の状況や実現可能性を踏まえ、時には経営者を巧みに説得して、計画を軌道修正することもあります。

経営トップと現場との間で適切なバランスが取れ、コミュニケーションが円滑に進むことで、組織はより強固になり、大きく成長していくことができるのです。