竹田忠嗣のスポーツ経営最前線①人口4万人の街で戦うバレーボールチーム

2026.02.02
元Jリーガーの経営コンサルタント、竹田忠嗣がプロスポーツビジネスの現場に行き、話を聞く「竹田忠嗣のスポーツ経営最前線」今回ご紹介するのは、富山県黒部市で活動しているバレーボールチーム、『KUROBEアクアフェアリーズ』です。(※2022年10月取材内容)

KUROBEアクアフェアリーズ(以後、アクアフェアリーズ)はバレーボールチームでは全国初となる、特定の企業をスポンサーとしない、市民クラブとして活動を開始したクラブです。

富山県の中でも黒部市という人口4万人の小さな街を拠点としているチームで「バレーボールを通じて地域を活性化させる」というコンセプトのもと、さまざまなチャレンジを行っています。ちなみに富山県の県庁所在地である富山市の人口は41万人、人口4万人の黒部市の規模は10分の1程度です。

そんなアクアフェアリーズが設立された経緯と取り組みや集客効果、スポンサー企業のブランディング効果などをご紹介します。

後半では飯田耕一ゼネラルマネージャーにお話をお聞きした内容をお届けします。

クラブの成り立ち

アクアフェアリーズは、2000年にとやま国体の強化チームとして富山県黒部市を本拠地として1998年に結成され、全国初の市民クラブのバレーボールチームとして活動を開始しました。

国体に出場するためには、大会が終わった後も2年間はチームを継続させなければいけないというルールがあり、国体後もチームは活動していましたが2002年にその期間を終えました。そのタイミングで「せっかくつくったチームなので、私たちの会社が選手を雇用するから、クラブを継続させませんか」という声がかかりました。

するといくつかの黒部市の地元企業の方々が選手を雇用し、選手がプレーできる環境をつくる形が整えられ、クラブの存続が決まったのです。

それ以来アクアフェアリーズはV1(チャレンジ)リーグに加入して、とやま国体以降も地域密着型のバレーボールチームとして活動を続けています。

富山県を元気にする!スマイルビジョン

アクアフェアリーズが掲げるビジョンで印象的なのが、「富山県を元気にするスマイルビジョン」です。黒部市を中心に富山県の「企業」「お住まいの方」「子供たち」の3つの笑顔をつくるという取り組みです。

具体的には「夢プロジェクト」と称し、選手が幼稚園から保育所、小学校、中学校を訪問し、一緒に遊んだり、昼食をとったり、講演で子供たちに夢を伝える活動や、選手自身の経験を生徒の前で話したりしています。

また、バレーボール教室なども活動の一環として実施しています。試合会場以外では企業訪問を行い、近年特に重要視しているポイントは、チームとして如何に地域に、地元企業に貢献できるか、です。

地域への貢献ということで、私も現役プロサッカー選手の時代は学校訪問をし、子供たちと交流する機会がありました。

子供たち全員がスポーツ好きなわけではありませんが、一緒に給食を食べたり、体育の授業でサッカーをしたりといった交流を通して子供たちが笑顔になっていく。そんな子供たちが実際にスタジアムに親子で応援に来てくれるといった経験は、地域に密着しているスポーツクラブならではの取り組みではないでしょうか。

アクアフェアリーズがスポンサー企業に期待する効果として提示したものに、以下のようなものがあります。


黒部市という小さい街を軸に地域貢献を推進していることもあり、スポンサー企業との取り組みも柔軟性が高く、企業のブランディングや採用、売上に繋がる部分まで貢献しようとチャレンジしています。

「黒部に夢のアリーナを創りたい」バレーボール初の市民クラブが目指すもの

KUROBEアクアフェアリーズゼネラルマネージャー 飯田耕一氏

竹田:KUROBEアクアフェアリーズの飯田耕一ゼネラルマネージャーにお話を伺います。飯田さんよろしくお願いいたします。

飯田:こちらこそ、よろしくお願いします。

竹田:さっそくですが、飯田さんがアクアフェアリーズのGMに就任されたきっかけを教えてください。

飯田:アクアフェアリーズが2002年に国体チームとしての活動期間を終えたあとも市民クラブとして活動を続けてきましたが、2017年にトップリーグに参画するライセンスを取得しました。

ライセンスにはチームの運営母体が法人格である必要があり、一般社団法人KUROBEアクアフェアリーズを設立しました。

その当時、私は地元企業であり、選手雇用企業の1つであるYKKのドイツ駐在でしたが「あいつがいいんじゃないか」と声がかかって、GMをやることになったんです。

竹田:そうなんですか、飯田さんにとっても意外な展開だったんですね。いろいろご苦労もあったんではないでしょうか?

飯田:はい。黒部市は「市民1人1スポーツ」を宣言している、スポーツに力を入れている都市ですが、富山県の中でも人口4万人の小さな街なんです。

ですから、地元の皆さんに多大な協力をいただかないと成り立ちません。例えば、うちの選手は、みんな地元の企業で雇用していただいています。午前中は配属された会社で業務を行い、午後から練習に参加する形でバレーボールに取り組んでいます。

竹田:なるほど。選手は、地元の企業で働かれているんですね。まさに、地元に支えられているクラブですね。

観客数2000人の人気チームになるも、コロナで大ピンチに!

竹田:ところで、アクアフェアリーズは人口4万人の町にもかかわらず、観客数が2000人を超える人気チームと伺っています。観客数が2000人となると、凄く盛り上がりますよね!

飯田:はい。地元の支えがあって、2018年に念願のトップリーグ(V1)に昇格しました。そこで、観客数も2000人を超えるようになったのです。ところが、2020年の新型コロナウイルスの流行で、入場者数が1000人を割り込むようになり、大きな影響を受けました。

竹田:コロナはスポーツ界に本当に大きな影響を与えましたよね。経営的にも大変だったのではないですか?

飯田:はい。観客数が半減以下になりましたし、試合が中止になったこともありますので、収入の面でも大きなマイナスとなりました。現在は、国の制限も随分緩和されましたし、今季は期待しています。

コロナで観客数が減ったことを受けて、改めて「試合観戦の場を、ご来場くださる皆様にもっと快適に、楽しんでいただきたい」と考えました。

そんな思いから、観戦環境のアップデートをしたいと考え、クラウドファンディングを開始しました。

資金を集め、より近くで、よりリラックスして観戦できる席の設置や、よりチームで一体感を出すための内装の準備、わかりやすい会場のご案内などをし、熱量の高い観戦環境を作り出していきたいと思っています。

ご支援者には金額に応じてオリジナルグッズをプレゼントしたり、サイン入りの試合公式球を差し上げるなどのリターンを用意しています。

目標金額を300万円に設定し、10月17日現在、140万円を超えるご協力をいただいており、目標の半分近くに達しました。

残りの期間1カ月ほどで、目標とする金額を達成したいと考えています。

さまざまな取り組みを通して、このチームをもっともっと皆様に知っていただきたい、そしてホームゲームをもっと盛り上げて、地域に貢献していきたい、それが目指すところです。

小さな街の小さなチームが日本一を目指すためには、ほかのチームがやらないようなことも含めて、いろいろな面で努力する必要があると思っています。

竹田:今シーズンは、トルコ代表のイヴェギン・トゥーバ選手も加入しました。

飯田:はい。2021年に加入したタイ代表のコクラム選手と外国人選手2人体制です。

コクラム選手はVNL、世界バレーでのタイ躍進の立役者となった選手で、タイ国内で圧倒的な人気を集めています。SNSフォロワーも約40万人という人気選手です。

イヴェギン選手は身長185cmの高い打点からのスパイクと、何よりレシーブができることが持ち味の選手で、トルコ代表チームが展開している速いリズムの攻撃はきっとチームにもフィットしてくれると、攻守両面で期待しています。

イヴェギン選手もSNSフォロワーが約40万人の人気選手で、アクアフェアリーズはタイ、トルコ両国に注目されています。

当時に開幕する今季のリーグを前に、イヴェギンや主将の星加輝など6選手で武隈義一黒部市長を訪問するなどしました。

地域貢献の面では、11月5、6日のホーム開幕ゲームでは来年に控えた宇奈月温泉開湯百周年を迎える宇奈月温泉と黒部峡谷鉄道をPRするほか、選手の移動用バスに開湯百周年と2024年に始動する新たな観光ルート「黒部宇奈月キャニオンルート」(宇奈月温泉と黒部ダムを結ぶ新ルート)を示す装飾ラッピングを施し、黒部市を全国にアピールする予定です。

KUROBEアクアフェアリーズは、2023年で活動開始から25周年となります。

2022年のスローガンは“BRAVE”コロナ禍での活動の自粛や大会の中止など、経験したことのない制限にも臆することなく勇敢に立ち向かい、自信を持って戦っていきたい。誇りを持ったプレーで勝利に導きたい。そんな思いを込めた言葉です。

スマイルビジョンとアリーナ構想

竹田:素晴らしいですね。他に力を入れられていることはありますか?

飯田:はい。何と言っても、一番大きいのはアリーナ構想です。バレーボールはもちろん、さまざまなスポーツや文化を地元の方が楽しめる、夢のアリーナを創りたい、という夢があります。簡単なことではありませんが、成し遂げるためには地元の皆様からのより一層の応援が必要になります。

竹田:それは素晴らしいですね。是非、実現していただきたいと思います。

飯田:はい。応援よろしくお願いいたします。