あなたはどっち?②人を基軸に未来を描く経営者
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2023.07.20
- 私が出会った印象的な社長2人のうち、もう1人の方を紹介します。この方は未来に向けて組織を作り、将来に渡り成果を出していこうという思いを持ったタイプです。「人を基軸に」どうやって利益を伸ばしていったのでしょうか。
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不動産業を営むB社のB社長は50代前半の2代目です。
この方は組織を作ったり、人のマネジメントをしたりするのが上手なタイプの社長です。前回ご紹介した少数精鋭で利益を追うタイプのA社長とは真逆のタイプと言えます。B社長は「仕組み」でおさえていくのではなく「人が全て」という考えの持ち主です。
10数年前、私が初めてB社のコンサルティングを担当した頃、社員数は30人ぐらいでした。管理戸数は約2000戸で売り上げは3~4億円ぐらいでした。現在は社員数が約150人、管理戸数は約7000戸、売り上げは約20億円までに成長しています。
利益よりもまずはシェア
B社の目指すところは利益を追うよりも地域でシェアを取るというところです。その地域に店舗を出店して雇用の場を作り、地域の人を活かして社員さんを増やしていくのです。一見効率が悪いように思う方もいるかもしれませんが、地域で自分たちのブランドを作っていこうという発想です。そうすることで最終的には利益がついてくるのです。その証拠にB社の成長は現在も続いており、未だに止まっていません。新卒の社員も毎年15人ほど採用しています。
B社長は人材の価値を最大限に引き出す「人的資本経営」という考え方を基にしています。
B社長の考え方を分かりやすく表現するとこうなります。
普通は会社があって、その上で社員がいると考えます。そして、会社の方向性の中で「こういう社員」が必要だと考えるのが一般的です。B社長の考え方は人(社員)がいて、その人の一部に会社があるという発想なのです。つまり、「1人1人の社員さんが将来どうなりたいか」を大切にしているのです。例えば、「独立して起業したい」「役職を上げて給料を増やしたい」「趣味の世界でこんなことをやりたい」など、人によって将来の夢や、やりたいと願っている事はいろいろありますよね。
そんなふうに1人1人が自分自身の人生を良くしていく中で、「一部でうちの会社を活用してもらえばいい」という思いがB社長の根底にあります。
そんなB社長は社内に社員のためのさまざまな制度を設けました。社員の趣味のクラブを作ったり、社員が宅地建物取引士の資格を取るために会社の費用で外部から講師を呼んだり、勤務時間中に資格を取得するための勉強時間を確保したりといったように。そんなB社長の思いが社員にも伝わるので、入社してくる社員の離職率は低いです。
人材を育てる制度と研修
もちろん会社なので、社員の評価制度も整っています。
「Up to you」という制度です。あなた次第という意味ですね。
この制度を作る際、私もお手伝いをしました。自分の頑張りで基本給や賞与が上がる歩合制ではなく、年間の中で会社側のこうしてほしいという流れを達成したら給料や賞与が上がる仕組みです。特別な制度に聞こえないと思いますが、社員の皆さんにどうしたら「もっと頑張りたい」と思ってもらえるか、辞めないでもらえるか、楽しいと思ってもらえるか、という基軸で考えて諸制度を設計しています。
また、これまでは新卒を中心に採用して育ててきましたが大分成長してきたので、最近はさまざまな業種からキャリア採用も行っています。そして研修を行って社員同士を切磋琢磨させています。
中でも私が成功したなと感じたのは、次世代キャビネットミーティングという階層別の研修です。
会社が成長していく中で社員数が3、40人から5、60人へと増えていったのですが、その時、係長まで昇格してもさらにその上を目指していく社員がなかなか現れなかったのです。B社長が会社として、彼らの能力をもっと引き上げる制度がないといけないと考えて試みた研修でした。
次世代キャビネットミーティングでは、当時の課長や係長級の前向きな社員の方を7、8人集めました。そして、その社員の方々にあえて権限を与えて「あなたならこの部門をどうしますか?」というのを全て考えてもらいました。その研修に参加した社員の中からは、子会社の社長が1人、役員が1人出ていますし、ほとんどの参加者が部長以上に昇格しました。
研修は「やりたいようにやってください」という言葉通りに行いました。要は境をなくしたのです。役員がいる中で、その課長や係長に「あなた賃貸部門・売買部門どうする?」と聞かれても、なかなか答えにくいところですが、それをあえて提案させたのです。そうすることで、参加した社員は1つ上・2つ上の役職として物事を考えられるようになっていきました。
また、毎回そこにあえてB社長自身も参加して会社の基軸を伝えました。そこで社員からの「私は〇〇というふうにしたいと思います」という意見に対して、B社長は決して否定はせず「うちの会社は〇〇なので〇〇したらもっといいよね」と意見を出し合っていくのです。そんな経験を積んでいくことで、社員は会社を成功させるための方策をその場を活かして出していけるようにもなっていきました。
時間はかかっても明確なビジョンが
B社長の方針は、人を基軸にするので会社が成長していくまでに時間がかかります。そして、人材育成にお金を掛けるので、生産性も利益も一気には上がりません。
しかし、B社長には2030年までの売り上げや利益、成長目標についての明確なビジョンがあります。そして、10年後以降も安定した経営を続けられるようにしっかりした事業戦略も行っています。さらに将来は社員数を1000人まで増やして上場したいというイメージも持っているのです。そういったB社長の計画があるので、社員は会社の方向性に納得しているのです。
B社長のような手法を続けていくと、売上規模、それからシェアが上がっていきます。そして、最終的には利益を少しずつ伸ばしていくことができます。そうすることで結果として永続的な会社を作っていくことにもつながっていくのです。
前回・今回紹介したのが、私が出合った社長の中で印象に残っているお二方です。私は経営者には2パターンいると考えるとお伝えしました。少数精鋭で利益を出そうという発想のタイプ、未来に向けて組織を作って将来成果を出していこうというタイプです。A 社長が前者、B社長が後者のタイプになります。
異なる手法で成功した2人の経営者ですが、ある1つの共通点がありました。
私はその1つの共通点が成功する社長にとって非常に大事なものだと考えています。それは一体なにかお伝えします。
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