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あなたはどっち?①少数精鋭で利益を追う経営者

2023.07.19
私が今まで出会った社長の中に印象的な方が2人います。2人とも会社を大きく成長させましたが、その手法は全く違いました。しかし、ある共通点がありました。今回は1人目の社長「少数精鋭で利益を出す」というタイプの方を紹介します。どんな「仕組み」を作って会社を成長に導いていったのでしょうか。

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画像:PIXTA

不動産管理、マンション管理、不動産・土地コンサルティングを営むA社長(60代)を紹介します。この方は今から10数年前に初めて「0賃貸」という物件を思いついた方です。「敷金礼金0」「初期費用0」といった物件は今では当たり前になりましたが、その仕組みを作って初めて売り出したのです。

どういった経験から思いついたのかをお伝えします。

競合する他社に勝っていこうとする場合、普通は他社との差別化を図っていくと思います。しかし、その方は差別化を自分の業界ではなく別の業界(例えば、お客さんが多く集まっている店舗や継続的に良い商品を販売しているブランドなど)を参考にして日々学んでいました。

不動産管理会社はアパートのオーナーやアパートの所有者から管理業やメンテナンス料、メンテナンスの仕事をいただきます。しかし、アパートのオーナー側から仕事を頼んでくることはなかなかありませんでした。オーナーから仕事をもらうためには、不動産管理会社側が訪問して営業し「うちはこんなやり方をしています」と提案をするのが一般的で、他には DM を出すくらいでした。

ルイ・ヴィトンから着想

そんな状況の中、A社長はやはり自分の会社に何かブランドや他所にないものがなければ仕事を頼んでもらえないのではないか、という考えに至りました。そこで参考にしたのが、ルイ・ヴィトンでした。

リーマンショック後の当時、フランスのパリに旅行へ行ったそうです。シャンゼリゼ通りを歩いていた時の事です、ある場所の周辺に多くの人だかりができていました。「何だろう?」とのぞいてみると、そこはルイ・ヴィトンの店舗の前でした。A社長は衝撃的な光景を目にしました。リーマンショック後の経済が低迷していた厳しい時代にも関わらず、店舗の前には多くの人々が行列を作っていたそうです。さらに入店するのに規制まで行っていたというのです。

A社長は思いました。

「鞄としては普通なのになぜ、こんなに人が集まるのだろう?」

「そうか、ここには特別なブランドがあるからだ」

「それは何だろう」。

単純に言えば、ルイ・ヴィトンへの憧れでしょうか。「あの鞄を一度は持ちたい」というような「憧れ」。そんなふうに思われるような「ブランド」、お客様がそこに行きたくなる「何か」を作らなければ「この指止まれ」と言ってもお客様に集まってもらえないと、気付いたそうです。

そして社長から、「それ(ブランドを作ること)はもしかしたら業界では非常識なことかもしれない」という言葉が出たのです。

ルイ・ヴィトンは鞄1つが数十万円、なかなか手に入らない限定品といったパターンを作っていたと思いますが、そのルイ・ヴィトンの手法を自らの会社に置き換えました。アパートのオーナーからルイ・ヴィトンのように「こんな管理会社なら頼みたい」と思ってもらえるには何をしたらいいのか考えた結果、「アパートの入居率を圧倒的に高くする」ことを思いついたのです。

リーマンショック後の当時、アパートの入居率は 80%ほどでアパートの空室がどんどん増えていた時代でした。10部屋のアパートに2部屋は空いているのが当たり前だったのです。それを「うちの会社に頼んでくれたら圧倒的に埋まります」という方策ができれば、これがブランドになるのではないかと、A社長は考えました。

非常識であり得ないことだからこそ

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そのやり方として考えたのが、「完全0賃貸」という入居者から「1円もいただきません」とうたった物件です。もちろんそんな物件は他にありません。かといって変な物件ではなく家賃を下げることはせず、手数料はしっかり受け取ります。その当時、初期費用が何もいらないという物件は、業界では非常識で普通はあり得ないことでしたが、その仕組みを作って売り出しました。

その結果、入居率は平均98%まで上昇しました。

そして「入居率98%」をブランドにして「うちは入居率98%。今部屋が足りません。〇カ月待ちです。」といった新聞広告やDMを出しました。

そうする内、やはりお客様が「何だろう」と集まり始めました。結果的にすごい勢いでアパートのオーナーから依頼をもらえるようになり、管理戸数はどんどん増えていき、年間千戸以上になりました。

A社長は口癖で「簡単や」と言います。私の提案や質問にもいつも「簡単や」と返されます。そうすると、一見難しそうに見えるものでも、よく調べてみれば簡単かもしれないという感覚になりますよね。

元は「ブランドを作ればいい」とういう発想から始まりました。それは「非常識なところにだいたい答えがある」その「非常識を難しいと思わずに簡単」だと思うことができたら、最初は完璧にはできなくても、やり始めるとお客様が増えていき、成果につながり、ブランドになっていきました。そして、今も成長を続けています。

これはいろいろな業界で事例があると思います。曖昧な部分を明朗にするのはその業界では、ご法度であり非常識だと思われることでしょう。しかし、そこにお客様が魅力を感じることがあります。

まず自分でやってみる

最近はDXやWebマーケティングといった分野が苦手な経営者の方も多いかと思います。結果的に分かる社員に調べてもらっているかもしれません。しかし、A社長は常に自分で調べていくという姿勢です。実はA社ではキントーンも取り入れています。A社長は DXに関しても、自分が分かるまで担当のコンサルタントに何度も質問をぶつけていました。細かい内容までは分からなくても、どんどん追求していくことで自分が納得しないことは頼まず、納得できたことは今後に繋げていっています。

そんなA社の社員は同じ業務量・同じ戸数を扱う他の管理会社と比べて半分しかいません。建物のメンテナンス、仲介店舗とのやり取りといった多岐にわたる会社の業務も、A社長自らが一通り把握して、改善点を見つけています。

1 つ面白いエピソードがあります。物件の清掃をシニアの方にお願いすることになったのですが、A社長は一度頼んでしまうとその人流に掃除してしまうからと、自ら一度その掃除を経験しました。そして、時間はどれくらいかかるか・どこから始めると効率的なのかなど自分なりに研究したり、専門の方に聞いたりして、清掃の仕組みに落とし込んでいきました。

会社の規模が大きくなっていく中、些細なことでも自ら経験しながら仕組みを作り、自らチェックすることで業務の効率化を図り高い生産性を保っているのです。

このA社長が、私が出会った社長の中で印象に残っている2人のうち1人目の方です。 社長自身の会社の「ブランド」になるものを作ることを目指し、仕組みを考えて成功に結び付いた事例となります。

私は経営者には2パターンいると考えます。少数精鋭で利益を出そうという発想のタイプ、未来に向けて組織を作り将来成果を出していこうというタイプです。A社長は前者のタイプでした。

次回は後者のタイプ、 未来に向けて組織を作っていき、将来に渡って成果を出していこうという思いを持った社長を紹介します。

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