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社員が次々辞めていく会社と、辞めずに成長を続ける会社の違い

2023.07.09
人が辞めずに企業が成長していくためには「ビジネスモデル」と「マネジメント」を磨くことが欠かせません。実際に多くの人が辞めて成長が止まった会社と、成長を続ける会社の違いについてお伝えします。

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社員が次々と辞めていく

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2020年4月当時、3店舗を展開していたリフォーム会社X社での出来事です。22名いた全社員のうち、12名が1年間で退職してしまうという異常事態が起こりました。さらに1名が産休に入ったため、戦力としては13名ダウン。一気に人がいなくなってしまいました。

社長は、思い切って1店舗の閉鎖を決断しました。3店舗が2店舗になった結果、背に腹は変えられず、社長と幹部2人で受注活動と採用活動に奔走することになったのです。

すでに退職を決めた社員は、引き継ぎと称して受注をセーブし、なかなか業務に力が入らないものです。また、当人は有給を消化するので、会社としては無労働・無成果の中で人件費だけが出ていくことになります。

社員を甘やかした店長の存在

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そもそものきっかけは、社内のNo.3であった人物です。この人は3店舗のうちの1店舗の店長も兼任していました。創業して間もない頃からの功労者でもあり、実績もあって会社に貢献してきた人物です。

ただ、いろいろとあって、この店長を降格・異動せざるを得ない状況になり、その結果として依願退職するに至りました。このことがきっかけで、社員がわずかな期間で次々と辞めていってしまいました。

こうした事態が明るみに出てからわかったことですが、この店長が管轄していたこの店舗では、以前からいわゆる「仲良しクラブ化」が進んでいたようです。例えば、出勤時間が適当で、苦手で面倒なジャンルの反響が来た場合の対応も適当。

会社のポリシーに大いに反することが、この店舗ではまかり通っていたというわけです。嫌われたくないとか、辞めてほしくないという思いがあったのでしょうが、この店長が社員の顔色を窺って大いに甘やかしていたのです。やはりリーダーとしては失格でしょう。

つまり、社員たちの仲はいい。しかし、仕事上のチームワークは皆無でした。後に社長と幹部がこのことに気づき、全部是正させたのです。

この幹部が店長兼任として店舗に入りました。「ダメだ、ぜんぶこう直せ」という形で、緊張感を持ったマネジメントを実行しました。

このことは、今までのぬるま湯状態に慣れきった社員にとっては、急に居心地が悪くなることを意味します。その店舗にいた社員は耐えきれず退職していき、結局、誰も残ることはありませんでした。そして、この悪い流れは続き、別店舗の社員も1人、また1人と去っていったということです。

この会社は、ほとんど下請け工事で年商2億円という状況から順調に増収を続け、ほぼ元請けとなり、8億2000万円までに到達していました。先のようなことがあった翌年には、年商が5億5000万円へと急降下。社長と幹部にとっては、辛酸をなめる1年となってしまいました。

当たり前を実行し、仲良しクラブを回避

「仲良しクラブ化」だけは何としても回避しなくてはならない。この社長と幹部は今回の事態を反省し、真剣に対策を講じて実行に移しました。

何をやっても許されるような甘い雰囲気を正すには、まず当たり前のことをきちんとやる。職場にある程度の緊張感を持たせることが必須です。

掃除が行き届いていない、机の上が乱雑。さらに、店舗の会議に必ず1~2人は欠けていたり、遅刻してくる。つまり、重要行事だという意識がまったくない。あるいは、契約率の低下傾向。こうした仲良しクラブ化の兆候に気がつけば、すぐに手を打つ態勢が整っていきました。

そして、社長と幹部による全社員向けの個人面談。これまで一切やっていなかったわけですが、3カ月に1回、パート社員も含めた全社員に対して実施し、今も継続しています。

こうした仲良しクラブ化回避の対策、あるいは必死の採用活動といった努力のかいもあり、前期5億5000万円だった売上は危機を脱して6億4000万円まで回復し、黒字も確保しました。

プレーヤーとマネージャーの能力は別物

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一言で言うと、この会社にはマネジメントの仕組みがなかったことに尽きるのではないかと考えられます。

大量離職の引き金となった店長は、社長や幹部と長らく苦楽を共にしてきた功労者でした。そして彼自身もプレーヤーとしては一流で、よく売っていたわけです。しかし、言うまでもなく、プレーヤーとしての能力とマネージャーとしての能力は別物です。

この会社には、マネジメントのセオリーや実践するための仕組みがありませんでした。その中で、ただプレーヤーとして優秀な功労者という理由で、店舗を任せきりにしていた。

この話から言えるのは「マネジメントの仕組みづくりは、離職対策にとどまらず、ひいては企業成長に直結する」ということです。

社員の離職率ゼロで伸び続けるリフォーム会社の特徴

マネージャーの資質を見込まれ、営業未経験で店長に抜擢

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マネジメントがうまくいかずに成長が止まった一方で、この5年間、驚くべきことに社員の離職ゼロで、業績を順調に伸ばし続けているリフォーム会社K社があります。

当初は下請けのみで9000万円の売上でした。その後は完全に元請けのみに転換し、売上5億円に到達。地域トップクラスのリフォーム会社へと成長しました。同社のユニークな点は、営業未経験の社員が本店の店長を務めていることです。

その店長は、マネジャーの資質があると社長に見込まれて任命されました。しかし、営業経験がまったくない本人の立場に立ってみれば、そんな自分が店長など務まるのかと不安で仕方がなかったそうです。ただ、任命された限りは一生懸命やるということで、店長キャリアがスタートしたようです。

会社としても、見込みがあるという理由だけで、手助けなしに店長を任せたわけではありません。取り組みの内容はこうです。

店長のあるべき姿を見える化したマニュアルを整備

店長任命に合わせ、店長はどうあるべきか、どう行動すべきかといったマネジメント理論をまとめ、「店長マニュアル」を整備したのです。

書店に行くと、マネジャーのための本はたくさんあります。しかし、特にリフォームというビジネス、そして店長というポジション、そしてK社の社員、あるいは社風、仕組みの中で、どういうマネジメントがベストなのかとは、本を読むだけではわからない部分もあるのです。

マニュアルの目次を開くと、第1章の「店長としての考え方」に続き、第2章「店長の役割」とあります。そして、第3章から第5章までを、「数字をつくる」「人をつくる」「店をつくる」と、3つの具体的な方法論にまとめています。

「数字をつくる」。極端な話ですが、店長1人が頑張って店舗予算を達成したとします。しかし、それで店長としての役割を果たしているでしょうか。それはスーパープレーヤーにすぎず、マネージャーとは言えません。

そこで、2つ目の「人をつくる」人材を育成し、次の店長を育てなくてはなりません。そして、3つ目の「店をつくる」同じ目標に向かっていくためには、チームワークでこなしていく必要があります。お互いに助け合い、役割分担するということです。チームワークを醸成するのは、組織の長の役割です。

このほかに「決算書・試算表の読み方」なども含め、マネジメントの具体的な方法、行動、考え方を網羅して145ページにまとめました。これに沿って、K社の店長は必死に勉強を始めました。店長だけではなく、社長や幹部も同席して、マネジメント理論を共有しています。

「契約とは何か」を定義づける

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マネジメント理論の1つに「ラップ管理」というものがあります。これは、目標粗利を達成するための案件管理や進捗管理の手法です。

これに基づいて運営をすると、マネジメントの精度が高まり、目標粗利達成の確率が上がります。これによって、離職の原因は生まれにくくなっていくと考えられます。

ラップ管理の理論を説明する際、そもそも「契約とは何か」という定義づけからスタートします。

契約とは「契約を阻害する阻む要因がすべて解消された状態」のこと。契約できないのは、お客様にとって契約を阻害する要因が存在するからであって、それらがすべて解消されたならば、すなわち「契約」ということになります。

「玉ねぎの芯のような感じ」と言うとおわかりでしょうか。営業、クロージングは玉ねぎの皮を1枚1枚めくっていく作業であって、最後に芯が現れます。取りにいくものというより、最後に残るものが契約のイメージなのです。

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