企業の成長を加速させる「経営者ブランディング」の重要性
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2024.12.05
- 複雑化する市場環境の中、持続的に顧客から選ばれる企業になるためには、何が必要なのでしょうか? その答えのひとつとして、経営者個人のブランド力アップがあげられます。
「社長個人のブランド力」が再注目されている
中小企業が持続的な成長を遂げるため必要なのは、優れた商品やサービスを提供するだけではありません。モノが良ければ自然に売れるという時代ではなく、それをいかに市場に伝えるかが、その企業の成長のカギとなります。
松下幸之助氏や本田宗一郎氏、稲盛和夫氏といった稀代の経営者は、経営手腕はもちろんのこと、その哲学や思想に対するファンも多く、経営者のみならず顧客、そして従業員からも尊敬の念を持って親しまれています。
経営トップの人柄・考え方に共感できたとき、顧客はその企業に信頼感を持つようになります。つまり、顧客から選ばれる企業になるためにも、社長個人が積極的に情報を発信することが大切なのです。
現代においては、スティーブ・ジョブズ氏がその系譜をたどっていたと言えるでしょう。革新的な製品を生み出しただけでなく、卓越したプレゼン技術を駆使して、自らのビジョンを情熱的に語ることで知られていました。その結果、Apple信者とも呼ばれる熱狂的なユーザーが世界中にあふれ、Appleブランドを世界的なものにしたのです。
複雑化した現代の市場環境では、従来の営業やマーケティングだけで売上を上げるのが難しくなりました。顧客が会社や商品を選ぶとき「経営者の顔が見えること」「人物像が分かること」「理念やビジョンに共感できること」といった、情緒的な側面を重視することが増えてきているのです。
商品スペックやサービス品質だけではなく、経営者個人の発するメッセージによって売上が左右される時代になりました。SNSの登場で、その傾向はますます加速しています。
さらに、中小企業やスタートアップ企業では、社長の人物像が企業イメージに直結しやすい傾向があるので、「経営者個人のブランド力」が改めて注目されるようになってきたのです。
経営者の個人ブランディングは採用にも影響する
経営者個人がブランド化することのメリットは、売上向上だけではありません。従業員の採用にも非常に大きな効果をもたらします。
従業員が企業を選ぶ基準は、ここ数年で、「安心」「共感」「信頼」「社会的な価値」といった非価格競争的な要素にシフトしていることが分かっています。2023年卒の学生を対象にした調査によると、企業選びの際に求めるものは「安定性」が1位※となりました。(※参照:マイナビ 2023年卒 大学生 活動実態調査 3月)
調査によると、ここで言う安定性とは、「安心して働けること」「社風が自分と合っていること」を指しています。特に「社風が自分とあっているかどうか」を知るために応募者が参考ににするのが、経営者の人物像です。
経営者が何を考え、どう発言したか。どんな理想を持って事業運営をしているのか。人材に対する考え方はどうなのか。マネジメントで重視しているのはどこか。求職者は、あらゆるメディアから情報収集をしたうえで、応募する企業を選んでいます。
労働人口の減少により、ほとんどすべての業界において人手不足が問題となっている中、従業員から選ばれる会社であるためにも、経営者が積極的に情報発信をしていく必要があるのです。
書籍出版を通じたブランディング手法
そこで今回取り上げたいのが、書籍執筆を通じたブランディング方法です。
書籍というのは、その性質上、「盛り込める情報量が多い」「情報の受け手(読み手)の印象に残りやすい」「信頼性が高い媒体である」という特性を持っています。
・盛り込める情報量が多い
一般的なビジネス書であれば、1冊の書籍を作るのに、8万~10万字程度の文字数が必要だとされています。ページ数だと200ページ数前後ほど。事業に対する考えや、そのように考えるに至った理由、きっかけとなったエピソードなど、さまざまな情報を入れても問題なく成立します。
一方、パンフレットやWEBページでこれらを語るとなると、誌面の大きさの制限や、読みやすさの問題から、情報をシンプル化して表現することが多く、ニュアンスを適切に伝えることが難しいことがあります。
・読み手の印象に残りやすい
本を読むという動きは、能動的な情報収集です。どの本を読むかといった選択から始まり、文字を追って内容を理解し、場合によっては行間を読み取ったり、表現されているシーンを想像することもあるので、かなり高度に脳を活動させています。
一方で、動画の視聴は受け身になりがちで、読書ほど脳が活発に動かないので、印象に残りにくいと言われています。
読書を通じて得た知識は脳に定着しやすいのですが、それがストーリー形式であればなおさらです。ビジネス書においても、創業時や業績が苦しかった時のエピソードが記憶に残りやすいのですが、それは人の脳がストーリーを記憶しやすいからです。
・信頼性が高い媒体である
書籍出版をきっかけに、講演依頼が数多く舞い込むようになった、メディア露出が増えた、という話は珍しくありません。それは「書籍」の信頼性が、非常に高いことを表しています。
例えば、「佰食屋」という京都のローストビーフ店は、1日100食限定で営業するというビジネスモデルで成功していました。100食はランチで売りきってしまうため、夜の営業は行いません。そのため、飲食店では難しいと考えられていた、長時間労働の徹底排除を実現していました。
佰食屋の経営者である中村朱美氏は、そのビジネスモデルを解説した書籍『売上を、減らそう たどりついたのは業績至上主義からの解放』(ライツ社 2019年)を出版します。
その後、本の内容に関心を持ったメディアからの取材が殺到。また、飲食業界におけるワークライフバランスの先駆者として、商工会議所や教育機関からの講演依頼が増えました。
テレビや雑誌などのメディアは、その人物を取材する前に、必ず情報収集を行いますが、著作があれば必ず目を通しています。書籍には著者の価値観が詳細に記されていますし、文体や話す内容から、人物像も把握しやすいためです。
講演を依頼する側も、メディアの動きと同じです。講演者を選定する前には、著作を確認する人が多いでしょう。著作がある人とない人、どちらに講演を依頼するか迷った場合、出版経験のある方を選ぶケースがほとんどです。
原稿は自分で書かなくていい
書籍出版というと、何年もかけて原稿を書かなくてはいけない…と考える人もいますが、実はそうではないケースの方がほとんどです。著名な経営者の多くは、自分で原稿を書くことはありません。書籍のテーマが決まったら、その内容についてまとまった時間を確保し、プロのライターがインタビューを行います。そのインタビュー内容から、ライターが原稿を執筆するのです。
この手法であれば、1冊の本を書くのに経営者が確保するべき時間は、インタビューと原稿チェックも含めて20時間~、長くても40時間ほどになります。なかなか時間が割けない著名経営者は、こうして複数の本を執筆しているのです。
経営者は、得たい成果のために人とお金の使い方を決める仕事です。出版も同様で、注力する部分と、外部に依頼する部分を上手く使い分けることで、高品質な書籍をスケジュール通りに出版させることが出来るのです。
まとめ
顧客から選ばれ、採用においても選ばれる会社になるために、中小企業においても「トップである経営者の顔が見えること」が大切な時代になってきました。
むしろ中小企業やスタートアップ企業こそ、経営者個人のブランディングを重要視するべきです。中堅規模の企業と比べて、中小企業やスタートアップ企業では、社長の人物像が企業イメージに結び付きやすいからです。
経営者自身が、自らの口で理念やビジョンを語ることは、ブランディングにおいて有効ですし、それによって社内外でのファンを増やすことができれば、業績向上も採用活動も上手くいくようになるでしょう。
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