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中小企業を取り巻く時流と取るべき5つの財務対策

2023.03.28
2020年のコロナショック、2022年のウクライナ侵攻、そして直近では欧米銀行の破綻や破綻懸念などの金融不安と経営のかじ取りが難しい状況の中、ますます重要度が高まっているのが、財務戦略です。そこで今回は、中小企業を取り巻く環境と今やるべき5つの財務対策、ならびに財務対策の実行力を上げる方法についてご紹介します。

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中小企業を取り巻く時流

従来からの大きな社会トレンドと直近で経済ショックが起きています。

■従来からの大きな社会トレンドとは

①人手不足、②高齢化社会、③人口減少、④地方創生、⑤M&Aの活性化でしょう。これに加え10年後くらいには⑥WEB3.0の拡大、⑦SDGsの本格化、⑧カーボンニュートラル(脱炭素)です。

■直近での経済ショックは

①2020年のコロナショック 我々の価値観、働き方、産業構造、デジタル化など大きな変化をもたらしました。

②さらに、2022年のウクライナ危機 インフレ(原材料・エネルギー・人件費の高騰)、通貨不安(円安、ドル一強)、グローバル経済からブロック経済への変化になっています。

③欧米を中心とした金融不安 コロナバブル&インフレトレンドをおさえるため金利高によって、今度は米国の地銀の破綻やクレディスイスの破綻懸念など欧米を中心とした金融不安となっています。 わずか3年の出来事で大きな変化をしており、今後もさらなる課題が発生するでしょう。

もう少しかみ砕いてみると、総務省「未来をつかむTECH戦略」では、企業数の減少は、2015年402万社が2040年295万社と顕著です。地域の人口も大きく減ります。地方圏人口2010年6,260万人が2040年4,950万人です。

このような状況のため、今までの有効だったビジネスモデルが通用しなくなってきています。

外需産業では、輸出商品を軸として経営安定していたが、プライチェーンの崩壊や国際紛争などを起点に輸出の不安定化しています。

内需産業では、狭属性業態(専門店化)やデフレ対応事業で地域一番化だったが、インフレトレンド、国内の人口減トレンドより成長の鈍化が進んでいます。

デジタルを活用して属人性を無くして経営の安定性や労務費用を圧縮して高収益性を実現する企業の台頭してきています。

また、雇用状況や賃金も海外に合わせて変化していくことは明白でしょう。今年のファーストリテイリングさんの年収アップや日立さんや富士通さんジョブ型雇用などが記憶新しいです。生産性向上⇒賃金向上⇒ジョブ型採用と拡がっていくはずです。2023年はグローバルカンパニー、その後ドメスティックカンパニー、中堅中小企業といった流れで国内に浸透していくはず。従来からの人手不足やジョブ型採用による転職活性化によって、人材獲得競争はより激化していきます。

画像提供:PIXTA

中小企業が取るべき5つの財務対策

こうした厳しい時流の中で中小企業は、どのような財務戦略を取っていくべきなのか、大きく5つあります。

1つ目は、「現預金は引き続き厚めに持つこと」です。コロナ発生後、ゼロゼロ融資などの無利子・無担保・融資が多くあり、通常時よりも現預金を多く蓄えている会社は増えているかもしれません。

現預金残高を厚めに持っている状態の目安は、最低でも月商2カ月分です。標準で月商3カ月分を蓄えておくことが、1つの指標になっています。さらに、月商6カ月分を持っておくと安心でしょう。この数値に届いていない会社は、様々な制度などを活用し、借り入れして、対策しておくことをオススメします。

2つ目は、「戦略的に投資を進めること」です。投資をしなければ、企業の成長はありません。積極的にやっていくべきですが、その際に財務的にある程度の安全性を確保した上で進めることが重要です。

まず、自己資本比率を最低10%維持することが1つの指標です。自己資本比率が10%を割ってしまうと、資金調達の面で銀行から融資が受けにくい状態に陥るなど、資金繰りなどに大きな影響が出てきます。

投資規模で考えると、一般的な成長企業は、自己資本比率20~30%で投資を行っています。つまり、20%台を維持しながら、投資を繰り返すことが一番効率の良い状態です。自己資本比率が10%に満たない、積極的に投資して成長していきたいけれども、20%に満たないという企業は、政策公庫などから出ている資本性ローンで、借入でありながら自己資本として見なせるものを活用してください。

3つ目は、「金融機関取引を見直すこと」です。多くの経営者は、好条件で貸してくれる金融機関から借り入れを続けていることが多いですが、金融機関の取引には、経営方針や企業ステージ、年商規模によって、適正値があります。

年商3億までは、2~3行。3億を超えて10億までになると3~4行。10億超えて30億になってくると6~8行。30億超えて100億になってくると4~6行といったように、取引行数を変化させていく必要があるのです。 取引先の金融機関が多過ぎると、資金調達に大きなプラスがないにも関わらず、無駄な工数が発生してしまうことがよくあります。また、分散し過ぎて、効率的な資金調達ができないことも起こってきます。

そのため、30億ほどまでは、金融機関の数を増やしながら、資金をしっかりと借り、好条件で借りられるようにしていくことが必要になります。しかし、30億を超えて100億を目指すステージになった際に、あまりにも金融機関の取引数が多過ぎると、1行あたりの融資額(1億~3億)に上限が来てしまいます。そこから取引先を多くして、やりくりしていく方法もありますが、それでは資金調達が困難になります。

画像提供:PIXTA

そのため、年商30億を超えるぐらいからメインバンクを定め、資金調達をしやすい形を作ることやサブ銀行の中でメイン銀行を作り、金融機関の取引を絞りながら、トータルの借入額を増やしていくことが求められます。4つ目は、「経営管理力を高めること」です。原材料の価格高騰やコロナなどに対応するためにも、これまで以上に業績や資金繰りをスピーディーに精度高く、把握していく必要があります。

そのため、勘頼みのアナログな経営管理からデータによるデジタルな経営管理に移行していくことが大きなポイントです。まずは、月次の試算表が毎月10日以内に出せる形を構築しましょう。

多くの企業では、20日~1カ月、2カ月もかかっています。このような状態に陥ると、業績が正確に把握できないため、次の投資や資金調達なども含めて、対策を打つのが遅くなってしまいます。

10日以上かかっている企業の場合、クラウド会計の導入などによって月次決算の早期化や経営の効率化に取り組みましょう。

5つ目は、「デジタルツールを企業の経営に上手に取り込んでいくこと」です。クラウド会計や経営管理ツールの導入などのために補助金や助成金を活用しましょう。

例えば、事業再構築補助金は中小企業の場合、最大1億円が受け取れ、中堅企業になると1.5億にもなります。また、事業復活支援金は最大250万円、IT導入補助金は最大350万円、ものづくり補助金は最大2000万円、持続化補助金は最大200万を受け取ることが出来ます。

デジタルツールの導入だけでなく、新規事業への投資やコロナなどで受けたダメージをカバーするために、これらの補助金を上手に活用していくことが財務対策上で重要です。

経営者の「財務の基本スキル」の向上が不可欠

こうした課題を解決していくためにも、経営者自身がいくつかの財務の基本スキルを身につけて、財務対策の実行力を上げていく必要があります。

1つ目は、「決算書が読める」こと。2つ目は、「事業計画が作成できる」こと。3つ目は、「資金繰り表が作成できる」こと、4つ目は、「キャッシュフロー強化の手法を知っている」ことです。

これらを身につけることが財務対策を実行していく上で必要になってきます。そうすることで、記載されている内容が読め、自社の財務状況が把握できるだけでなく、財務状況を踏まえた次のアクションを決めることができるようになります。

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