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マーケターが導く「売れない問題」を解決する方法

2023.04.19
自社の商品が売れないと悩む経営者の方は多いと思います。元関西学院大教授でマーケティング会社代表を務めるマーケター・理央 周氏に、中小企業経営者に向けてマーケティングの視点から売れない問題を解決するヒントを教えてもらいました。

中小企業の売れない問題に対する解決策を今回、理央氏に伺いました。

理央 周(りおう・めぐる)(本名・児玉洋典)
マーケティングアイズ株式会社代表取締役、元関西学院大学専門職大学院経営戦略研究科教授、一般社団法人最適経営学践協会代表理事

静岡大学人文学部経済学科卒。フィリップモリスなどを経て、インディアナ大学経営大学院にてMBA(経営学修士)を取得。アマゾンジャパン株式会社、マスターカードなどで、マーケティング・マネージャー後、起業。現在は、新規事業立ち上げ/ブランド構築のコンサルティング、および法人営業に顧客視点のマーケティングを注入する人財開発・社員研修を提供。
近著に売れない問題解決の公式」、「なぜ、サボる人ほど成果があがるのか? 仕事の速い人になる時間術101

「売れない問題」の本質を勘違いしていませんか?

マーケティングについて語る理央周氏

マーケティングについて語る理央周氏

私がマーケティング会社を起業した頃は「うちの会社は法人営業なのでマーケティングは関係ない」とおっしゃる経営者の方もいました。マーケティングとは「お客さまの立場に立って、自社の強みでお客さまが抱える問題を見つけて解決すること」です。そこで収益が上がるよう計画を立てて、それを実践していくのです。

売れない問題を解決するためには、会社全体でマーケティングの視点を持って問題点を捉えていく必要があります。


新型コロナによって、企業の「売る」手法が大きく変わりました。人の流れが激変したり、停滞したりしたことで、お客さまの心や行動が変わったため、これまで売れていたものが売れなくなっていきました。この変化にともなって、私の会社に相談に来る経営者の方はコロナ前よりも増えました。


そのような経営者に「あなたの会社では問題は何ですか?」と聞いてみると、「今まで上手くいっていた広告が効かなくなってきた」「今までの顧客が離れていくのです」とお答えになります。


しかしこれらは、「問題」ではありません。今の「状況」にすぎないのです。“問題”とは「今の状況」と「理想の姿」の「ギャップ」のことなのです。この状況を深掘りしていくと、広告が効かないのは「顧客に響かないから」、離れていくのは「顧客が価値を感じないから」だったりします。この辺りが真の問題なのです。


また、前者の主語は「うちの会社」ですが、後者の真の問題の主語は「顧客」です。すなわち、うちの会社が売れないのではなく「顧客が買わない」ことに多くの課題があります。そこを勘違いして対策をするとうまくいかないでしょう。

売れない状況が続くと、どうしてもインサイドセールスやSaaSやマーケティングオートメーション(MA)のような新しい手法を導入したくなります。それは間違ったことではありません。しかし、打ち手は非常に多くあるので、そもそもの問題認識を間違えてしまうと、一番適したものを選べません。


真面目に取り組んでいればいるほど、すぐに何か取り組まねばと焦りますが、まずは落ち着いて、周りで起きている問題を整理整頓してみるといいでしょう。そうすることで、本当の問題が「売れないこと」ではなく「お客様がなぜ買わないのか」というところにあると分かります。そこに視点を転換して、まずはお客さま目線になってみてください。

「何を」から計画し「どうやって」からチェックする

売れない問題について解説する理央周氏
では、どうやってこの売れない問題を解決していくのかを考えていきましょう。
まずは、マーケティングの計画を立てるときは、

①何を=プロダクト(Product)
②誰に=ターゲット(Target)
③どうやって=コミュニケーション(Communication)

の順番で考えていきます。
計画実施の段階で売れない問題に直面した際には、この順番の逆からチェックしていきます。なぜから、③広告やプロモーションの「どうやって」の部分がお客さまに“接している”部分だから間違えている可能性が高いのです。
無闇と検討するよりも、

C(コミュニケーション)→T(ターゲット)→P(プロダクト)

の順番で考えるとより問題の原因が見えてきます。

また、マーケティングでは、期待した効果が出ればそのままアクセルを踏み続けますが、間違っていたら、軌道修正することが非常に大事です。当たり前ですが、計画は全て仮説すなわち「仮の結論」で立てているためまず間違いなく計画通りにはいきません。なので実践した結果を素早くチェックして修正するのが重要です。

この考え方は、マーケティングや営業に携わる方はもちろん、開発や設計、財務や人事など組織として全員が意識して実践することをお勧めします。

事例1 マーケティングを理解していなければ成果は出ない

画像提供:PIXTA

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マーケティングを始めたある企業の事例をご紹介します。水道管の「継手」を作るベンカンさんというメーカーの事例です。ベンカンはもともと営業力がある企業です。製品の流れは、自社から問屋や商社に製品を卸し、ゼネコンなど工事をする会社が部品として購入する「BtoBtoB」になります。


社長は熱心な方で、売上は好調だった管理部長の頃から会社の将来を見据えて、マーケティングを学んでいました。商品の販売を問屋任せではなく「実際のユーザー」から指名買いしてもらえるようにしたいと考えるようになりました。そこで、営業兼任の担当者を決めて、マーケティングオートメーション(MA)を導入しました。この担当者は物覚えも早く、質の高いレポートを提出してくれるようになりましたが、売上には繋がらず、いったんMAを中止することになりました。


その後、社長になりうまくいかなかった理由を考えた結果、担当者は営業と兼務ではなく、マーケティングをきちんと理解している人材が担当しないと成果は出ないとの結論に至りました。


数年後、もう一度腰を据えて社内でマーケティングに取り組もうと、専任者を2人任命して、組織を作り、ゼロからマーケティングを始めました。原点に戻ってフィールド営業がしやすくなるためのMAを考えたのです。


最初は自社のホームページへの問い合わせを増やす戦略に集中し、1年でアクセス数を2倍近くに伸ばしました。また、コロナ禍でもユーチューブでの工場見学やセミナーを開催して顧客候補をスコアリングし、スコアの高い顧客候補から優先して営業をするようになりました。今後は、インサイドセールス部門を強化し、フィールド営業チームと連携して売上を伸ばす戦略を立てています。

事例2 引っ越しを「顧客視点」で考えた結果生まれた付加価値

画像提供:PIXTA

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次は「顧客視点」で売り物を考えた企業の事例です。自社の売り物を再定義してみるものいいでしょう。

引越一番という中堅の引越会社の事例を紹介します。引越業界はコロナ禍の間、人の動きが減ったことにより非常に厳しい状況に陥りました。引越の依頼がなくても人員とトラックを抱えているということは、繰越せない在庫を持っているのと同じです。

そうなると…。

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