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従業員とのトラブル防止のために経営者が知っておきたい労務の話

2023.08.30
多様な働き方が進む中、就業規則やハラスメント問題などについて悩みを抱えている経営者もいらっしゃるでしょう。『職場問題グレーゾーンのトリセツ』を出版した社会保険労務士で村井社会保険労務士事務所の代表を務める村井真子氏に、昨今増えている職場でのトラブルや職場で問題が起きた場合の解決策など経営者が押さえておくべきポイントをうかがいました。

村井真子(むらい・まさこ)



社会保険労務士/キャリアコンサルタント。総合士業事務所で経験を積み、愛知県豊橋市にて2014年に独立開業。中小企業庁、労働局、年金事務所などでの行政協力業務を経験し、あいち産業振興機構外部専門家を務めた。地方中小企業における企業理念を人事育成に落とし込んだ人事評価制度の構築・組織設計が強み。著書に『職場問題グレーゾーンのトリセツ』(アルク)がある。

働き方が多様化する中で増えている相談とは

ここ数年、副業・兼業に関する相談が一気に増えました。 働き方が多様化しており、企業は自社だけでそのように多様化する働き方に合わせて人を育成していくのは難しくなっています。

しかし「外に出て見聞を広めてほしい、それを会社にプラスの形でもたらしてほしい」という企業がある一方「外で働くなど会社の仕事に差し障る。

わが社の仕事を100%やってほしい」と考える企業も存在します。一方で従業員は「自分の市場価値を知りたい」「もう少し収入が欲しいから副業したい」といったさまざまな動機で副業・兼業を行っています。

副業・兼業の問題は両者が一方的に「だめです」「やらせてください」になりがちで、折り合いがつかず、問題化しやすいのだと感じます。

画像提供:PIXTA

副業・兼業に関しては、受け入れる企業側の体制もまだまだ整っていません。副業は本来、地方企業にとってはリソース拡張となる大きなチャンスのはずです。採用コストをかけて自社で人材育成をしなくても、ある程度育ったスキルのある人材を即戦力として使っていけるのです。

しかし、どんな人が来るかわからない・規則がない・社員からの反発が心配など、実際には起こるかどうかわからない問題を経営者の方が懸念し敬遠しているケースも多いです。

そんな中、初めて副業人材を受け入れて成功させた企業も多く存在しています。例えばECサイトやクラウドファンディングに関して、知見を持った副業・兼業人材を使うことで、企業のインスタグラムがフォロワー0人から何万人になったというような、爆発的効果を得られた事例もあります。

副業以外にも、コロナ禍で働き方が変わったことによるトラブルの相談も増えています。いきなりの感染拡大で、明確なガイドラインがない状態でコロナ禍に突入しました。体制が何もないとところに、間引き出勤やテレワークといった制度だけが一気に推進されたため、トラブルも起こりやすかったと思います。

労働基準法は、こうした時代の流れによる変化が起こることをまったく想定せずに作られた法律です。働き方が多様化する中、当然法律の穴は出てくるでしょう。

従業員とのトラブルを避けるために知っておくべきこと

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女性の育児休業に関しては、基本的には問題なく取得できる社会になってきていると思います。しかしその後のライフプランは、個別・具体的に全員違います。
例えば「子どもが産まれても休まず働き続けたい」と望むキャリア志向の方もいれば、「働き続けたいしそれに見合うキャリア欲しいけれど、残業は週10時間以内に収めたい」といった方。あるいは「残業を伴う仕事はせず、子どもとの時間を大事にしたい」という価値観の方もいます。
これを十把一絡げに「出産後はゆっくり復帰したい、仕事も出産前よりもセーブしたいだろう」と考えてしまうと、食い違ってくるでしょう。私の著書の「第1章 就業規則・社内ルール」で最初に挙げたのも、育休に関する事例ですが、一律に「女性はこうだ」という見方がトラブルの元になりますので、経営者の方は注意が必要です。
男性の育休に関しては、いま新入社員の男性の6、7割が取得したいと希望しています。しかし、彼らは協調性を重んじて育っているため他者への影響を考慮し、申し出る前に「取得できない」と思い込んでしまう可能性があります。会社として男性の育休には、取得が可能なのだと強めにプッシュしてあげるとよいでしょう。
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