社長に向いてない?社長の性格や能力で不向きはあるのか
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2023.07.29
- 社長の向き不向きというのはなかなかにビジネス書や講演会のネタになる話です。性格的に向いていたり、素養がある人が社長になるとやっぱり向いていたからかと思われがちです。しかしながら、いわゆる素養がないとされている人であったとしても境遇や立場の変化により社長職を任されることもあります。今回は、そんな社長について「不向きとされる性格」や「遺伝子的な社長の要素」について解説していきたいと思います。
社長に向いていないとされる性格
社長というと「リーダーシップ」や「率先して動ける」、「独立自尊」などの性格性が求められます。では、社長に向いていないとされる性格や人柄というのはどういったものがありますでしょうか?
自己中心的な性格
社長として成功するためには、自己中心的な性格は適していません。社長は組織全体を考え、従業員や顧客のニーズを満たすための判断をする必要があります。自己中心的な人は、リーダーシップと異なる思考で自分自身の利益や欲望を優先し、他人の気持ちや意見を軽視する傾向があるとされています。時に自分のやりたい世界観や、パワープレイともよべるマネージメントも必要なこともありますが、それをずっと行っていくとチームの結束力が低下し、組織が正しく運営されないまま、社員や部下たちとの間にひずみを生んでしまう形となります。会社として、組織としての目標達成は一時的には可能となるかもしれませんが、継続的に実現することは困難となるでしょう。
不安定性や不満が多い性格
多くの責任負い、賞罰を一身に浴びる存在こそが「社長」と言えます。欲求不満や精神的に何かが起きたときに不安定になりがちな人であったり、不平不満を持ちやすい性格であると、満足感を得ることが難しくなりがちです。常に何かに不満を抱き、周囲に当たり散らしてしまうとしたらそれは社長ではなく不満業といったとことでしょう。社長は組織のトップとして、問題解決能力や冷静な判断力を持つ必要があります。
もちろん、トラブルに弱かったり、常に不満を持ち高見を目指すタイプの社長もごく少数ですがいるはずです。しかし、不平不満を多く持つとどうしても感情的になりがちです。その結果、カーっと頭に血が上ったときに行う経営判断は正常とは程遠く、論理的に最適解を導き出せません。むしろ、冷静さを欠いた意思決定をする可能性が高くなります。
意思決定が苦手
社長は組織の中で重要な意思決定を行います。しかし、意思決定が苦手な性格の持ち主は、迷いや悩みが多く、逡巡したり、他人に頼り過ぎる傾向があります。社長は多くの情報や意見を総合的に考慮し、迅速かつ正確な意思決定をする必要があるため、意思決定が苦手な性格の人は、組織の成果を遅延させる可能性が高くなります。
リーダーシップに欠ける性格
社長は組織のリーダーとしての役割を果たす必要があります。しかし、リーダーシップに欠ける性格の持ち主は、組織の方向性を示すことが難しく、他者を鼓舞する力やチームをまとめる力が不足している傾向があります。(あくまで内向的なタイプだからといって、社長はできないという訳ではありません。アーティスト集団などの長は内向的な働き手に寄り添う必要があり、陽キャと呼ばれるガツガツしたタイプの下では仕事がしにくいと良く言われています。)
組織のメンバーはリーダーの指示やビジョンに基づいて行動するため、そもそも社長が組織運営にアグレッシブに携わり、あるべき姿の会社を求めなければ、働き手たちは成果を上げることができません。
社長の役割は単なる役職名ではありません。実は中間管理職以上に、組織の成果を上げるために、組織全体を思いやり、冷静な判断力とリーダーシップを発揮することが求められます。
スキルとして求められる「たった1つ」のコト
社長に向いていない性格による影響は、なかなかに経営に影響をあたえがちです。ですが、それ以上に重視しなければいけないことは社長としてのスキルです。財務能力、投資能力、経営能力など社長は常にスキルアップしなければいけない職業です。しかし、一番大事なのは「コミュニケーション」スキルではないかと私は思います。
というのも、経営陣や部下とのコミュニケーションには、マネージメントや意思疎通があり、指示を出すということがすべてであったりします。円滑なコミュニケーションと有能な部下さえいれば、たとえパソコンが使えなくても、会計スキルがなかったとしても会社は運営できてしまいます。(極論かもしれませんが)
社長は組織のトップであり、部下と円滑なコミュニケーションを取ることは非常に重要です。しかし、性格が向かない場合、部下とのコミュニケーションがスムーズに行えず、情報共有や指示の伝達が適切に行われません。これにより、チームの士気が下がったり、競争力が低下します。
また、部下と円滑なコミュニケーションが取れないと、ほうれんそう「報告・連絡・相談」のフェイズにまでいたりません。日々の情報共有で問題が生じます。部下たちは、業務に必要な情報を的確に把握する必要がありますが、社長の性格が向いていないために、適切に伝えられなかったり、伝わり方がわかりにくかったりします。あるいは、トラブルになったときに大炎上してから、その事象を知るということもあるでしょう。これにより、部下たちは業務において必要な情報を得ることができず、作業の効率が低下してしまいます。
コミュニケーション取りずらいと部下が感じてしまえば、チームの士気も下がりがちです。社長と部下とのコミュニケーションの不和は、段々と仕事に対する後ろ向きな気持ちを導き出してしまいます。部下たちは、上司である社長との関係がうまくいっていないと感じると、やる気が失われたり、モチベーションが低下したりします。これにより、チーム全体の士気が下がり、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
また、社長が部下とのコミュニケーションを十分に取れないと、競争力が低下する可能性もあります。競争力のあるビジネス環境において、迅速かつ正確な情報の共有が求められます。しかし、社長の性格が向かないために、情報が適切に伝えられず、意思決定や戦略の立案において遅れが生じる可能性があります。これにより、競争相手に対して劣勢に立たされたり、市場での存在感が薄れるのです。
以上のように、社長に向いていない性格は、部下とのコミュニケーションの円滑さに直結し、部下の士気やチームの競争力に影響を与えます。正しいコミュニケーションスキルを身につけるなど、社長として必要な能力を磨くことが求められます。
企業の成長は社長が働いてこそ
向いていない性格の人が社長になることの問題。一番は、企業の成長が妨げられることです。もっと厳しい言い方をすれば、社長が向いていない性格だと自身も理解せずに、行動してしまうと会社が倒産することすらありえます。
社長は組織の指導者であり、経営戦略を立てる役割を担います。大海原に船を乗り出したとき、社長という船長のもと船員たちは活躍します。しかし、向いていない性格の人が社長になれば、海原に乗り出すつもりか、大渦に突っ込んでしまったり、座礁してしまうこともありえます。
また、組織の信頼性も低下。頼りない人物であると、従業員や取引先からの信頼を失い、組織の信用が損なわれがちです。だからこそ、社長の多くは社長として向いているかではなく「向いていると思う」あるいは「たゆまぬ努力をする」人が多いです。でなければ、ここまで競合他社が切磋琢磨する事態において取り残されてしまう可能性もあります。競争が激しい市場では、適切な経営戦略と的確な意思決定が求められますから、慎重さと大胆さ両方が共存しなければビジネスとして成功しえません。
向いていない性格の人が社長になる理由は?
自己評価が過大な場合
社長に必要なのは自信と自己評価です。しかし、自己評価が過大である場合、周囲の意見を受け入れることができず、過剰な自信が災いしてしまうことがあります。ダニング=クルーガー効果とよばれる曲線があるのですが、経験年数や知識量が低いと、それに相対して自身を過大評価しがちといったものです。社長というのはトップだからこそ甘言を信じてしまい、苦言を無視しがちです。しかし、他人の意見やフィードバックを素直に受け入れる姿勢が必要です。
経験不足による自信の欠如
経験が必要不可欠ですが、経験不足であることが自信の欠如につながることがあります。自信がなければ、リーダーシップやビジネスの意思決定に不安を抱えることになります。経験を積んで自信をつけるために、様々な機会を積極的に探しましょう。また、不足しているものが漠然としている状態もまた不健全です。何に不足しているか、金融知識や税務が弱いのであれば税理士。今後のマーケットを読むのであればアナリストやコンサルタント。など情報取得先や相談先などを複数用意し、自身の知識武装を強化していきましょう。
周囲の期待に応えたいというプレッシャー
周囲からの期待やプレッシャーを背負うことでもあります。しかし、周囲の期待に応えようとするあまり、自分の本来の性格や意見を抑えてしまうことがあります。自分を偽り続けることは、心身の健康に悪影響を及ぼし、最悪の場合は組織全体にも悪影響を及ぼすことになります。社長を辞めた瞬間に安眠できるようになったという話や、社長早くやめたかったという愚痴を聞く機会は意外と多いと思います。周囲の期待に沿った結果はもちろん出したいところではありますが、プレッシャーに負けてしまうぐらいであれば不健全な状態だというまでもありません。
これらの理由が重なって向いていない性格の人が社長になることがあります。自己評価の客観的な見直しや経験を積むこと、自分自身の意見や性格を大切にする姿勢を持つことが必要です。それにより、社長としての自己成長を促し、組織やビジネスの成功に繋げることができるでしょう。
向いていない性格の人が社長になる前にするべきことは?
自己分析を行う
自己分析を行って、自身の長所や短所、性格の特徴を客観的に見つめ直しましょう。向いていない性格の人が社長になると、組織運営やチームマネジメントに支障をきたす可能性があります。自己分析を通じて、自身の強みや弱みを把握することで、必要な改善点や補完策を見つけることができます。さらに、仕事やビジネスにおける興味や価値観も見つめ直し、自身の事業や組織で適切な役割を果たすことができるでしょう。
リーダーシップ力を鍛える
リーダーシップ力の鍛錬は、社長になるために欠かせません。向いていない性格の人が社長になると、チームや従業員の指揮・管理が難しくなる可能性があります。リーダーシップ力の向上には、コミュニケーション能力や問題解決能力の強化、チームビルディングのスキルの習得などが重要です。さらに、自己啓発を通じてリーダーシップのスキルや知識を高めることも必要です。リーダーシップを鍛えることで、組織をしっかりと導くことができます。
メンターを見つける
向いていない性格の人が社長になると、孤立感や迷いが生じることがあります。そんなときには、経験豊富なメンターを見つけることが重要です。メンターは、自身の経験や知識を共有してくれる存在であり、アドバイスや指導を受けることで成長できます。また、メンターの存在は自信や安心感を与えてくれるため、社長になる前にメンターを見つけておくことは大切です。メンターの力を借りて、自身の不得意な部分を補い、より確かなリーダーシップを発揮することができるでしょう。
向いていない性格の人にとっての他の職種とは
1人の自営業
自営業は、自分自身を管理し、自分のビジネスを立ち上げるということです。このキャリアオプションは、自己起業家や自己管理能力のある人に向いています。自営業や小さなタイプの起業(会社としての多人数を雇用しないモデル)は、自由な働き方を実現することができますが、それには創造力、リーダーシップ、計画性、自己管理能力が必要です。自分自身でビジネスを立ち上げ、成長させることよりも、より手元で仕事をしたい環境やマネージメントはあまり好きではないという人には、おすすめな働き方の一つかもしれません。
専門職としてのキャリア
専門職としてのキャリアは、自分の専門知識やスキルを活かして仕事をすることです。医師、弁護士、エンジニアなどの専門職は、専門的な知識やスキルを持つことが求められます。このキャリアオプションは、専門分野で深く知識を積み重ねることに興味がある方や、自分の専門的な能力を活かして仕事をしたい方に向いています。一方で、狭い専門分野に特化するため、幅広い知識やスキルを持ちたい方には向いていないでしょう。
実務のポジション
管理職以外のポジションは、組織の中で特定の業務や役割を担当し、営業職、事務職、クリエイティブ職などが含まれます。このキャリアオプションは、特定の業務に専念したい方や、他の人との連携を重視しながらキャリアを築きたい方に向いています。社長という常にアップデートを求められる仕事と比較すると、「非常にストレスフルな仕事」から「言われたことだけやればいい仕事」まで広く存在しています。
これらのキャリアオプションは、それぞれに特徴やメリット・デメリットがあります。自分の性格や能力、興味に合ったキャリアを選ぶことが重要です。自営業や起業は、自由な働き方や成果を自分自身で得られる一方、自己管理能力やリーダーシップが求められます。専門職になることで、専門的な知識やスキルを活かした仕事に従事できますが、狭い専門分野に特化することになります。管理職以外のポジションでは、特定の業務に集中することができますが、自由な働き方や自己の意見を反映させることができないかもしれません。自分自身の長所や短所、将来のキャリア目標を考慮しながら、最適なキャリアオプションを選択していきましょう。
性格を改善するための方法は?
性格を改善するためには、自己啓発を行うことが重要です。自己啓発とは、自身の能力や知識を高めるための取り組みのことを指します。自己啓発をすることで、人間性やコミュニケーション能力の向上、ストレス管理の方法など、さまざまな面での成長が期待できます。具体的な自己啓発の方法としては、本を読む、セミナーに参加する、オンライン学習をするなどがあります。また、コーチングやカウンセリングを受けることも効果的です。コーチングやカウンセリングは、専門家のアドバイスや指導を受けながら自己成長を促す手法です。自身の性格の弱点や問題点を客観的に認識し、解決策を見つけることができます。
さらに、経験を積むことで自信をつけることも重要です。経験を通じて自己成長し、自身の能力や価値を実感することで、自信をもって行動することができます。さまざまな経験を積むためには、新しいことに挑戦することや、自分自身の限界に挑戦することも大切です。性格を改善するためには、自己啓発、コーチングやカウンセリングの受け入れ、経験を積むことが欠かせません。自分自身の性格や生活の中での改善点を見つけ、積極的に取り組んでいきましょう。
社長に向いていない性格は遺伝的要素がある?
社長への向き不向きには後天的要因が強いといえます。研究による社長になりやすい性格というのも実は存在しえていますが、「〇型が多い」「サイコパス系経営者が起業家に多い」「外れ値(社長に不向きな人)でも企業は成功する」など、眉唾な情報もまた多いです。
確かに遺伝的要素があることを完全否定する要素はありません。しかし科学的に証明されている要素は今のところ存在していないため、このことについて論ずることはあまり本質的ではないでしょう。良くある2代目社長や3代目社長が成功している、社長となりえている理由は、「親が社長をしていたので、早くから会社のことを考えていた」であったり「頭の片隅でいつも経営者になることを夢見ていた」といった事象から、他の人よりも前向きに取り組んでいた場合も少なくありません。これを親からの遺伝子的な遺伝的要素というよりかは後天的な影響と言えるでしょう。
それよりもむしろどのような環境に身を置くかによって社長として成功するかは決まります。それゆえ、もし自分が現時点で社長に向いていないと感じていても、これからの習慣や考え方の違いで社長として成功することができます。例えば以下のことを実践するとよいでしょう。
学習する習慣を身に着ける
常に新しいことに触れ、様々なことにまじめに取り組むことは社長の必須条件です。必ずしも学術書のような難しい内容を学ぶ必要はなく、身近な内容や自身の興味のある内容から始めて、毎日コツコツと学習する習慣を身に着けるとよいでしょう。
他の社長の真似をする
成功する社長にはそれぞれ様々な習慣があります。例えば、故スティーブ・ジョブズは毎日黒のタートルネックにジーンズという服装をしています。その理由は服を選ぶ際の無駄な時間をなくし、重要な決断に注力するためです。自分の目指す社長を真似することで自身もそのような人間に近づくことができるでしょう。
自身の自己承認欲求を高める
自己承認欲求とは、「自分で自分を認めたい」という欲求です。会社が成長し、社会全体に対してのインパクトが大きくなるにつれて、自分の仕事に対して誇りを持てるようになってきます。それが新たな仕事へのモチベーションとなり、成功につながります。このような考え方を取り入れることで、会社を成功に導ける社長となることができるでしょう。虚構の自身ではなく、自分の実績による承認欲求を高め、それを得るために頑張るという正のスパイラルを目指しましょう。
逆転の発想で考える
あらゆる欠点も発想によっては強みになります。例えば、「リーダーシップがない」という欠点があっても、「社員の気持ちに寄り添える」という風に考えることができます。「ネガティブ思考」ならば「リスクに対するアンテナが高い」と考えることができます。現段階の性格的な向き不向きで考えるのではなく、逆転の発想でそれをチャンスに変えることが社長に求められるでしょう。
今回要素として紹介した「社長に向いていない」という考え方。なかなかに、結論が出しずらい内容でありました。しかしながら、最後に補足するとすれば向いていないのであれば努力するのが社長という立場です。人の人生、あるいはいままでの事業を成長させてきた人々、もしくは業界や日本を背負って立つ存在なのが社長です。だからこそ向いている向いていないということにこだわり続けるのではなく、向いていないからこそ努力する。あるいは、向いていないのは知っているから、こういうところで差をつけるなど頭を切り替えていくことが必要なのではないでしょうか。