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社長の「入るお金」と「出るお金」

2023.06.14

社長の”入る”お金

多くの経営者にとって気になるのが、自身の給与、役員報酬の決め方ではないでしょうか。世の中の社長は一体いくら年収があるのか、社長onlineでもたびたび取り上げてきました。 「株式会社労務行政」による上場企業など3857社(※1)を対象に行った「2022年役員報酬・賞与等の最新実態」では、 社長の年収は平均5039万円でした。 5000万円以上は36.0%で、社長の年収を会社の規模別に見ると1000人以上の企業では平均7502万円▽300~999人では4619万円▽300人未満で3501万円となっています。会社の規模が大きくなるほど、年収が高くなっているのがわかります。

また、上場企業の社長以外の役位の年収はどうなっているのでしょうか。 他の役位の年収の平均を見ると、会長4641万円▽副社長4179万円と4000万円を超える水準となっています。次いで専務が3055万円▽常務2307万円▽取締役(兼務は除く)2009万円という結果でした。 さらに、社員の年収について見てみます。 「22年度モデル賃金・年収調査」(※2)によると社員の平均年収は、497万円でした。

(平均年齢38.5歳・平均勤続12.7年)役職別にみると、部長が1047万円▽課長828万円▽係長593万円となっています。 以上は主に上場企業やそれに匹敵する規模の会社の社長や役員、従業員らの年収です。

中小企業の社長の年収は……

それでは中小企業の社長の年収の平均は一体いくらなのでしょうか。 中小企業を対象に調査した従業員規模別でみる社長の役員報酬(※3)を基に年収を計算した結果、 従業員規模101~300人の規模の会社で平均額2266万円、中位額1850万円となっていますが、従業員規模1~20人規模の会社の平均額は961万円、中位額は840万円です。 この数字をみると、中小企業の場合も社長の年収は従業員数といった会社の規模が大きくなるほど高くなる傾向が見えますが、従業員規模が1~20人といった小規模企業の社長の年収は平均値、中央値ともに1000万円台に届いていません。

国税庁が毎年発表している「民間給与実態統計調査結果」による令和3年の「役員の年収の平均」では、 資本金2000万円以上 922.3万円▽資本金2000万円未満 614.5万円▽資本金5000万円以上 826.0万円となっています。 こちらは、調査対象を社長だけでなく役員も含んだ数字になりますが、資本金1億円以上で年収平均1043.0万円と1000万円台に届いていますがが、株式会社合計の役員の年収平均は763.0万円という結果でした。 上場企業の社長の年収と比較をするにしても「社長」という職業にしては「思っていたよりも低い」と感じるかもしれません。

しかし、このような役員報酬とは別に社長は会社の経費を使うことができます。 よく、社長は経費を使うことができるので年収が少なくても、実際にはより多くのお金を使うことができると言われています。 例えば社長の節税対策として代表的なものに保険▽車▽家を買うといったものがあります。

会社のお金で保険の支払いをしたり、社長の乗る車を社用車として購入したり、法人で住宅を借りて、役員社宅として社長に提供しているケースもあるでしょう。 ある社長は自身の収入は一切使わず「生活費はほぼ全て経費で賄う」というような極端なケースもあるといいます。

画像提供:PIXTA

社長が多くのお金を持つのは「リスクヘッジ」のため

このように役員報酬とは別に社長が会社の経費を自由に使えるのは一見、天国のようにも見えます。 しかし、社長には背負っている「大きなリスク」があります。 会社の経営が困難に陥ってしまった場合、自分のお金で会社を立て直さないといけません。 ここで考えておきたいのは、「社長がお金をしっかり持っておく」=「会社の健全な経営のために欠かせない」ということです。

特に中小企業の場合は、会社の借入金に社長が個人保証や担保提供をしているケースも多いです。その場合は社長が借りているのと同様になり、中小企業は会社と社長がほぼ一体となっているとも言えます。 会社のお金が足りなくなったら社長のお金で補填する、すなわちオーナー社長にとっては会社のお金=自分のお金であり、自分のお金=会社のお金なのです。 会社と社長のお金に関しては「これは公でこの部分は私」と単純に割り切れない部分がたくさんあります。そのため、社長が多くのお金を持っておくのは、会社経営の安定ならびにリスクヘッジのためにも欠かせないと言えるでしょう。

社長は「自分の年収は自分で決める」できれば根拠も持って

会社の規模が年々拡大し、利益が増えていっているにも関わらず、自身の役員報酬を全く増やしていないという社長もいます。その社長は、会社を社員数数人からスタートさせて、現在は会社の規模や社員数も倍に増えていますが、年収はいまでもその当時のままにしていると言います。 また、別の社長は役員報酬を「社員の人数×100万円」に設定しているといいます。会社の規模が拡大し、社員の人数が増えると自身の年収も増えるという仕組みです。

さらに、中には自身が「年収1億円」と言いたいがために、そのような金額に役員報酬を設定している社長もいるそうです。 役員報酬の設定については、普段の生活費と同額にするのがよいという考え方あります。例えば生活費が1カ月50万円で足りるのなら、役員報酬もそれと同額に設定するのです。ここで倍の100万円にした場合、社会保障料など余計なお金がかかるため、トータルで残るお金が少なくなるという意見です(詳細は特集4回目にて)。

役員報酬は社長自身のモチベーションにもなりますが、高すぎる設定は会社の経営に響くなどの問題もあります。その金額設定に関する明確な決まりや参考となる指標はありません。会社にもしもの事があった場合のリスクを背負っていることを踏まえた上で、社長には「自分の年収は自分で決める」という意識が必要になります。 皆さんの会社では「自身の給与をいくらにするか」にどういった目安を設けているでしょうか? そして、社長である自身はお金に対してどのような考え方を持っているでしょうか?

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社長の”出る”お金

まず社長のお金の使い方には「段階」があります。 創業社長であれば、創業期をお金に余裕がない状態で何とか乗り切ります。 その後事業が軌道に乗ると、だんだんとお金の余裕が出てくるものです。「ずっと前からほしかったものをついに買う」「“これを手に入れたら一流の証”と思っていたものをついに手にする」そのような行動を取り始めます。 欲しいものを買えるように頑張ったのですから、その行為は悪いことではありません。

自分へのご褒美としても必要なものです。 社長という職業の人には、さまざまな富裕層向け情報も持ち込まれるようになります。そうして高価なものを次々に手にする。そのときが「成金期」服装ならば上から下まで、生活ならば朝から晩まですべてにお金を使う、そのような時期に入り、そしてその多くは没落していきます。 いくらお金があっても、それ以上に使えばなくなるのは当たり前です。 「買いたいものは買って、もう欲しいものもない」そう思えるレベルに達した「成熟期」を迎えた人たちのお金の使い方を見ていきます。

お金持ちほど「お金を使わない」

経営者の取材を多々こなし、自身も高級住宅地に住んでいるライターが、ある超有名ホテルで働く人に聞いた話です。いつもそのホテルを利用している、かなりのお金持ちの客がいました。その客はいつも、トヨタのカローラで乗りつけていたといいます。 「その方は『車は安全に走るものが一番』という考えだったようです。 確かに私の住んでいる街にはベンツやジャガーなどの高級車や外車もたくさん走っていますが、相当長い間乗っているのだろうと感じる車も少なくありません。 それらの車が選ばれるのは、運転が快適で安全だからでしょう。『いかにも』という感じの目立つ超高級車はほとんど見ません。先ほどの方のように国産車を愛用したり、中古車に乗っている人もたくさんいます。

本当にお金のある人ほど、ビックリするほど自分をよく見せようとか、見栄を張ろうという考えがないのだと思います。

その人たちは身なりも決して華美ではありません。これみよがしの流行のブランド物のバッグもほとんど見かけません。無駄に高いものは好まないのだと思います。一方でよいもの、長く使えるものには高いお金を払います」 お金持ち=高級ブランド品のイメージがありますが、お金持ちがそれらを好むのは、ブランドと呼ばれるくらい質のよいものだから、ということが言えます。 そのライターは、取材である経営者の大豪邸にお邪魔したときのことをこう語ります。 「ビックリするくらいものが少ないおうちでした。道具も調度品も、必要最低限という感じで。ただし、どれもとてもいいものでした。

年代は感じさせますが、古くなっている感じがしないのです。本当にいいものを買われたのだろうと思います。『本当のお金持ちの暮らしって、きっとこうなんだろうな』と感じました」

“高くても出す部分”と“少なくても出さない部分”のメリハリが利いている

本当にお金を持っている人のお金を払うときの基準は“金額”ではありません。“払う額に見合っているか”です。そのライターは続けます。 「東京の世田谷区、成城に、成城石井というスーパーマーケットがあります。今では日本の多くの都道府県にお店がありますが、1号店はその名の通り、成城にあります。以前取材のときに成城石井の社員の方から伺ったのが、『成城石井は、成城のお客様に育てていただいた』という言葉です。 成城の人たちは、いいものを求めている。それは本当においしいものであったり、もしくは安心・安全なものであったり。その質に妥協はしません。同時に、いいものでも価値よりも高ければ買わないのです。 一方で、価値に見合うと思ったら、支払う金額が大きくても買います。成城石井の商品は、安売りスーパーといわれるところよりは値段が張りますが、こだわり抜かれた商品がたくさんあります。それらの商品が『この品質でこの価格だったらむしろ安い』とお金持ちに支持され、非常によく売れているのです。 ただ、成城石井をよく使う人たちも、どこでも買えるビールやジュースなどは安く買える別のスーパーで買っていて、買い物先も使い分けている印象ですね。やはり基準は“払う額に見合うか”です。 成功者とは“稼ぎ続ける人”だと私は考えていますが、お金持ちもそうなのだと思います。お金が残り続ける人。お金が残るとはすなわち、簡単な話ですがある分よりも使わない。 お金はあってもお金に振り回されることもなく、普通でいられて、幸せを味わえる。本当のお金持ちな人たちは、それが自然とできているように思います」 < 画像提供:PIXTA

「使う」と「使わない」を徹底、社長のお金の使い方

もう少し会社経営の観点で見ていくと、船井総研のコンサルタントが多くの社長と接していて感じるのも、大きな会社を作り上げた社長の多くも、そのようなメリハリのついたお金の使い方をしているということです。 ある社長は、金額にして1000万円を超えるような設備投資を次々に行います。その豪快なお金の使い方は、さすが社長と感じるものです。 しかし、彼は決して浪費家ではありません。 出張の新幹線は「どこか空いてるから」と自由席にしか乗りません。愛車は大衆車といわれる車で、会社への行き帰りは路線バスです。

そのコンサルタントはよくその経営者と食事をしながら経営の話をします。立場上、社長がご馳走してくれるそうですが、食べるものはいつもチェーンのラーメン。「飯を食いながら話すだけならどこでもできる」と、こだわらないものへのこだわりは一切ありません。 別のコンサルタントは、カリスマ社長といわれる人の「二面性」に注目しています。その経営者は、目の前の数字に対しては非常に細かく、1円単位でチェックします。

お金に限らず、小さなところも見逃さず、1つひとつのことをしっかり見ているそうです。 では細かい人かというと、決してそれだけではありません。やはり、いざ投資をするとなったときは、思い切って何千万円という額を使います。 「そのお金の使い方は適切か」を常に見ていて、OKなものであれば、高額でもしっかり使い、不要であればどんなに安い額でも払わない。それを徹底しています。

社長の最近した大きな出費ベスト3

別の社長には「最近の大きな出費」について聞きました。教えてもらったのは3つです。

①M&A その社長は建設会社を経営しており、木材加工会社、大手の下請けの木材を確保している会社を買収しました。 「M&Aも、人を成長させるために必要だと思っている。 今後もいろんな会社のM&Aを、時間をかけながらも、将来的にやっていこうと思っている。その手始めの投資」だといいます。

②土地 その社長は「何か新しいことを始めるときは、会社のお金ではなく自分のお金でする」ことを決めています。「会社のお金を使って失敗すれば文句を言われるけれど、自分のお金を使うのなら文句も言われないでしょう」と語ります。 その購入した土地には、新たにグランピング施設をつくる計画です。

③4月から入社の新卒の給与を5万円アップ 賃上げが求められているご時世に合わせて、新人だけでなく会社全体の給与を20%ほど上げます。 「賃上げはなかなかできないところも多いと思うが、やはり人材を入れるには、そこにお金を投資しないといけない。日本人はみんな人がいいので『安くいいものを提供したい』と言うけれど、結局それは無理をしているので、必然的に変わっていき、今後は賃上げの風潮へと世の中変わっていくだろうと思う」

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