変化する「集客」と9つの成功事例【2024年更新版】
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2024.01.06
- 社長online11月の特集は「集客」です。昔から店舗などにおいては必要なものですが、時代の変化に伴い、求められる役割も、内容も変化してきています。最新のトレンドと、それに合わせうまくいっている例をご紹介します。
「集客の重要性」が上がっている
なぜ集客の重要性が増しているのか?それは「集客が変化したから」と言うことができます。
まず言えるのは、近隣市場が人口の減少により縮小し、商圏が変化している、ということです。
そのため、これまで行っていたのと同じ集客をしても、得られる成果は小さくなっています。
次に、既存の商圏人口は小さくなりましたが、商圏自体は新しくなっているのが、今の時代の特筆すべき点です。
道路の建設や鉄道の開通など交通網の発達により、昔に比べて店を訪れられる範囲は拡大しています。
以前であれば車で2時間かけなければ来られなかったのが、1時間もかからなくなったために、そのエリアの住民も顧客になる、そのような可能性が広がっているのです。
さらに、インターネットやSNSの普及により、以前であれば決して知られることのない遠方の潜在顧客にも、お店や扱う商品の情報を届けられるようになりました。
通信販売も普及しているので、商圏から大きく離れた遠方の人も顧客にできる可能性が高まっています。
潜在顧客は今や日本全国、いえ全世界と言えるようになったのです。
そのように重要性と可能性の高まっている集客ですが、可能性が高まっているとは、同時に危険性も増していることを意味します。
鉄道や道路が整備されると、その地域の人は「多くの人が来てくれる」と考えますが、実際には「多くの人が出ていく」危険も得たわけです。
また同様に「遠くから攻めてくる」可能性が高まっているとも言えます。
近隣や大手のライバルが、貴社の店舗がある商圏を狙って進出する可能性があります。
また、インターネットで情報を得たことで「近所のお店ではなくて、遠くの店から通販で買おう」となることも、十分に考えられます。
ライバルの進出を阻止し、遠方の顧客を増やして成長を実現するための集客を、ぜひ実現いただければと思います。
そのための方法をお伝えしていきます。
店してもらうことで、高単価になる
また、今の時代は通販で手軽に安くものを購入できるからこそ、わざわざお店に来てもらうことの重要性が上がっています。
昨今のマーケティングで「O2Oマーケティング」というものがあります。これは「Online to Offline」の略で、消費者をお店に誘導する施策のことです。
顧客が買いたい商品について、ネット上で必要な情報は得られて、価格についてもだいたいわかるようになっています。
大切なのはそこでショッピングを終わらせず、店舗に来てもらうための取り組みです。
店舗に来てもらえさえすれば、できることの幅はかなり広がります。
「本を買う」行為で考えると非常にわかりやすいのですが、もう購入する本が決まってるならば、アマゾンなどネット書店での購入が便利です。書名を入れて「購入」を押すだけで、翌日や早ければその日に届きます。
書店を訪れる楽しみは、買いたい本を買うだけでなく、知らなかった本に出合うことです。そのときの気分や目的に応じて、思いもよらなかった本を手に取る、購入する。それにより新たな知識や体験を得る。
オンラインの強みが「目的買い」ならば、店舗の強みは「ついで買い(お店で見かけた、知ったから買う)」です。
ECよりも店舗のほうが、客単価が高いというデータがあります。あるBtoB企業は、ECと店頭の販売の両方を行っていましたが、ECと店舗で顧客がそれぞれ分かれていて、通販の顧客は通販のみを利用し、逆もまた然りという形になっていました。
O2Oマーケティングにより、ECの顧客が実店舗を訪れるよう働きかけを行ったところ、ECのみ利用に比べて店舗も利用した人の平均客単価は通販飲みに比べて1.7倍~2.5倍に上がったのです。
「店に呼ぶ」戦略をぜひ構築いただければと思います。
店舗に呼ぶ、ユニーク集客事例
1.通販にできない商品の魅力を伝える接客に力を入れる
東京の合羽橋にある料理道具店「飯田屋」は「アマゾンで買う人が増えるほど、店は繁盛する」と言います。「ネット通販を利用するほど、それに不満や不便を感じる人は増えている。だからこそ、店頭で説明し、ネット通販の不満や不便を解消することで、来店が増えている」のです。
「飯田屋」6代目の飯田結太氏は言います。「わざわざ足を運んでやってきてくださるお客様はたいへんありがたい存在です。ですから、買物そのものが1つのエンターテインメントとなるよう心掛けています。実店舗で勝負をするなら、毎日1つの『ショー』を興行するくらいの熱意で挑まなければ生き残りは難しいでしょう。
飯田屋は『地球上で最も目の前にいるお客様を大切にする』と誓っています。また、料理道具に関してはアマゾン以上にお客様を喜ばせられると自負しています。
アマゾンで購入したほうが早くて安いことを知っていながら、わざわざ飛行機に乗って飯田屋にご来店くださるお客様もいます。その方々は、飯田屋でしか味わえないお買い物体験を求めていらっしゃいます。
実店舗で勝負をする僕たちが、アマゾンのサービスに対抗する必要はありません。アマゾンには決して真似できない飯田屋の強みは、目の前のお客様に寄り添える人間味のある接客です」
2. 通販よりも「店頭取り置きサービス」などで「店に来てもらう」を重視
日本全国で作業服などを販売するワークマンは、ロードサイドに1000店以上出店し、消費者の生活圏に張り巡らされている店舗網の強みを活かして「ECで購入した商品を店舗で受け取れるサービス」に注力しています。
生活者にとって「自宅に配送してもらうよりも、店舗で受け取った方が楽で早い」という状況をつくり、利益を圧迫する配送費を抑えると同時に、店頭に来るからこそのついで買いなどにつなげています。来店をきっかけに、約6~7割が固定客になるといいます。
3. デジタルの力で来店時の顧客をサポート
ビックカメラは、自社アプリをインストールした顧客に位置情報と組み合わせたクーポンやキャンペーンの案内をプッシュ通知するシステムを取り入れています。
また顧客が実際に店舗で商品を見ているときに、NFC(デバイスをかざして通信する技術)が組み込まれた電子プライスカードにタッチすれば、口コミや在庫チェックができる「アプリでタッチ」の運用を行っています。気になる情報をその場ですぐにチェックすることが可能なため、比較検討を行いたいユーザー心理を損なわないまま、店頭での購買を促すことができるのです。
4. 来店時にプレゼント、イベント
GAPの原宿店と銀座店が2012年に行ったのが「ハイタッチ!でいいね!」企画です。
具体的にはFacebookで事前登録した来店客が、店舗にてNFCが搭載されたリストバンドを受け取ります。そして店内でお気に入りのTシャツコーデを着たスタッフとハイタッチすると、自身のウォールに「いいね!」が出現するイベントでした。
ハイタッチをした顧客にプレゼントを贈ったこと、思い出に残る斬新な施策を打つことで、来店を促した先行事例です。
5. チャットボットで「HPでの問い合わせハードルを下げ、来店を促す」
自動車販売店や住宅販売会社など、高いものを売るための集客に効果があるのが「チャットボットです。これは、自社のHPを訪問した人が知りたいことをチャットに入力すると、自動で回答する機能です。
顧客も返信が機械による自動で行われるものとわかっているので「人に対してならばしにくい」と思うような問い合わせもあります。問い合わせに対して回答が得られ、興味を持っている商品への理解が深まるのに合わせて「お問い合わせのもの以外にも多々ご案内できるものがございます。よろしければお店にお越しになりませんか?」と来店を促すのです。
ある軽自動車専門店では、問い合わせ率が低い状態が続いていた販売サイトに顧客管理システムと連携したチャットボットを導入したところ、問い合わせ率が220%アップ、来店率は127%アップ、販売台数も昨年対比で261%に増やすことに成功しました。
6. スウェーデンの小規模工具店「Malmö Hardware Store(マルメハードウェアストア)」:売らない。貸す
海外の事例です。スウェーデンの小さな工具店は、街の郊外に大きなホームセンターができたことで客足が減少してしまいました。
どうにか顧客を取り戻さなければと考えながら、まずは自社の売上比率を調べてみたところ、自社の売上ほとんどはペンキや釘・修繕用品といった消耗品から成り立っていて、電動のこぎりや釘打ちなどの専門工具のそれは少ないことがわかりました。
専門工具は、そのときには必要なものの、顧客にしてみれば常に持っている必要はないものです。そこで、それらの専門工具を無料で貸し出す施策を実行しました。
専門工具を借りたいユーザーが店のホームページから工具・日付を選ぶだけでそれを借りられるサービスです。借りに来店した顧客が合わせて消耗品も購入してくれるので、貸し出しを行う前に比べて、売上が25%増加しました。
また、サービスを利用した顧客に他のユーザーへのシェアを依頼すると、口コミで利用ユーザーも増加したのです。
これは小さなお店だからこその強みを活かした、大手にはできないサービスと言えます。大量の商品を扱う大手の商品管理において「売る」以外の「貸す」が加わることはオペレーションを大いに複雑にします。ほかにも扱う商品が多々ある中で、わざわざ複雑なことを行うのはメリットが低いものです。
マルメハードウェアストアは、小さな店舗だからこその機動力を活かして「貸すサービス」を成功させました。
顧客との距離の近さをうまく活用して、口コミを依頼し広げていったのも成功ポイントと言えます。
「商品・ブランドを知ってもらう」ユニークなキャンペーン
店舗に来てもらうための、実際の施策を多々ご紹介しました。
最後に、昨今行われた中で注目を集めた「商品・ブランドを知ってもらう」ための施策をいくつかご紹介します。
7.森永製菓:ネガティブキャンペーンで話題づくりに
#ベイクを買わない理由100円買取
— 森永チョコレート (@MorinagaChoco) July 28, 2019
かつてのアイドル、焼きチョコ「ベイク」が何をしても売れず、絶望しています。。
1.当アカウントをフォロー
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3.ベイクを買わない理由を書いてください
4.Amazonギフト券100円で買取ります。
詳細はhttps://t.co/jVJDLIjbNn pic.twitter.com/SNa51O2sut
森永チョコレートは、X(旧Twitter)の公式アカウントで自社商品の「焼きチョコベイク」を「買わない理由を100円で買い取るキャンペーン」を行いました。このキャンペーンを開始した背景には、同商品が2012年に売上のピークを迎えてから、2019年度にはピークのおよそ1/3にまで低下した影響があります。
売上が伸び悩んだことが要因となり、コンビニなど顧客の手に取りやすい販売先が減少して「買いたくても売っていない」などの声もあったようです。
このキャンペーンの開始から2日足らずで予算が尽きるほどの反響で、寄せられた声をもとに商品のリニューアルを行うなどに役立てられています。「なぜ購入しないのか」を顕在顧客や休眠顧客に直接問いかける、面白い集客方法の1つです。
8. 匿名宝飾店(4℃):ブランディングで自社商品の価値を高める
2023年9月8日、東京・原宿のキャットストリートに、期間限定のジュエリーショップ「匿名宝飾店」が現れました。あえてブランド名を隠して営業するジュエリーショップです。9月20日、そのブランド名が「4℃(ヨンドシー)」であることが公表されました。
同社は50年にわたりブランドの名前を多くの人に知ってもらった今だからこそ、ブランド名によって蓄積されたイメージから離れ、今一度原点に帰ってジュエリーそのものを見てもらいたい、という思いでこの匿名宝飾店をオープンさせたといいます。
匿名宝飾店に行った人のSNSでは「ブランドとか値段に気を取られることなく、自分の感性のままに見ることができてなかなかに楽しかった」「気に入ったものを見つけたからクリスマスに買おうかな」「応援したいブランドになった」など、好意的な感想が並びました。
会場では、最後に来場者に対してブランド名を明かしています。そのうえで実施したアンケートでは、83%が「ブランドイメージが(好意的に)変わった」と回答したといいます。
4℃は「婚約指輪がこのブランドだと女性はがっかりする」という声もあるブランドです。そのような世間の評価は当然、当事者たちも気にしていることでしょう。それを覆すための「ブランド名にとらわれずに商品そのものを見てほしい」という取り組みは、リブランディングの意味からも効果がありそうです。
9.湖池屋:ゲームで顧客とつながる
ポテトチップスメーカーの湖池屋はECサイトの集客施策の一環として、箱庭型シミュレーションゲーム「湖池屋FARM 大豊作!」を開始しました。システム開発においては、セガ エックスディーが提供するゲーミフィケーションサービス「GameBox」を活用。それによりLINE公式アカウントの友だち登録者数が30%向上するなど、成果は既に表れているといいます。
集客の重要性や今の時代ならではの形、うまくいっている例をお届けしました。明日からは、さまざまな集客をより深掘りしてお届け予定です。