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生産性向上のカギ

2024.01.04
社長onlineの新たな動画コンテンツとして「コンサルタント座談会」。
船井総研の各分野のコンサルタントが、コンサルティングの現場で得た情報から、中小企業経営の課題とその解決方法についてお伝えしていきます。
初回のテーマは「生産性向上」。前後編に分けて全業種、飲食、住宅業界の3分野の現状や課題を議論しました。
動画のテキストを公開いたします。

以下の記事は、経営者向け有料情報サービス『社長online』の一部になります。月々1,650円で成功事例や新たなビジネスフレームを学べるので、是非加入を検討してみてください。

【座談会参加コンサルタント】

外食グループ・石本泰崇

住宅グループ・西村茂和

社長オンライングループ・小梢健二

Q【中小企業が抱える生産性を向上させる上での課題や構造上の困難について】

小梢:私からは幅広い観点からお答えします。

生産性を向上させようとする意識を強く持っていない中小企業経営者が多くみられます。経営者自身が生産性を意識しなければ、社員に浸透させることは難しいため、意識の転換が必要です。

業績が好調の企業ほど生産性を意識しており、一人当たりの売上や粗利額、人時生産性は年々上がっています。生産性が上がると従業員の給与に反映させたり、投資額を上げたり、良い成長ができる好循環が生まれます

多くの生産性の低い企業にみられるのが、お金を稼ぐ部門「ライン」と経理などのお金を生まないバックオフィス部門「スタッフ」の割合のアンバランスです。

生産性の高い企業は主に「ライン7:スタッフ3」の構造ですが、低い企業では「ライン5:スタッフ5」といったようにバックオフィス部門が半数以上を占めるケースが多いです。

これでは高い収益性が確保できず、損益の差し引きがゼロになってしまうのです。お金を稼ぐ人材の比率を全体の中で上げる意識は必要です。

石本:外食産業は接客を最重要視しているため、生産性の部分に着手することが難しかった業界です。

飲食業では生産性を人時売上高(従業員1人が1時間で生み出す売上)の指標で図るケースが多いです。現在、人時売上高は5000円を超えていますが、最低賃金が上昇することを考慮すると、今後8000円ほどに上げる必要があります。そのためにはどのようなオペレーションや準備を行わなければならないのかという視点で、外食産業でもようやく生産性向上について考え始めるようになりました。

解決策の1つとして挙がられるのが機械に頼ることです。調理に携わったり、配膳などを担ったりするロボットなどの機械導入によって、人手を削減することが可能になります。さらに、アナログで行っていた帳票関連のデジタル化など、いかに効率的に作業時間を減らしていくかを課題として取り組んでいます。

西村:住宅業界も外食業界と同様、生産性への意識が低い業界です。それよりも、いかに売上を上げるかに主幹が置かれてきていました。

しかし、住宅業界は現在、ウッドショックの影響を受けて大きく風潮が変わりました。一棟当たりの販売額は300万円ほど高騰しています。販売価格が300万円変われば住宅ローンの月々の返済額が変わるため客層も変わると言われています。業界全体で資材価格・販売価格・客層が大きく変化したため、資材価格が上がった分だけ販売価格に転嫁できていません。

以前は一棟当たりの利益は25%で充分でしたが、現在では一棟当たり30%以上利益を出さなければ、もうけが出ない状況です。

いかに利益を最大化させていくかが課題となっています。それには、一人当たり生産性(年間で一人当たりどのくらいの利益を出しているか)が非営業部門・営業部門の両方で5000万円以上にする必要があります。5000万円を下回ると、売上が低いか社員数と売上のバランスが悪い状況です。さらに、集客にかかる費用も上昇しています。私たちの契約単価の目安は50万円ですが、この単価が100万円を超えてくると儲けが出ていない傾向にあります。契約率を上げたり契約日数を短くしたりする取り組みも必要です。

生産性の面では現場環境も変化しています。現場監督が現地に赴かなくても状況を把握できるよう、工事現場にカメラを設置するなどの取り組みが近年ようやく見られるようになりました。

Q【生産性向上の意識が低い傾向がある中小企業が、生産性の観点が必要な理由】

小梢:住宅業界の西村さんのお話しにもあった新規顧客を獲得するコストは、他の業界でも上がっている傾向です。例えば、弁護士業界ではネット検索の競争が激化しており、リスティング広告の価格が上昇しています。

人口減少により多くの業界で市場が縮小しています。しかし、競争相手は増加しているので、今後も新規を獲得するコストが上がっていくと予想されます。どのように生産性を上げて、収益性を担保するか、多くの業界が求められていると考えます。

Q【人時売上高を上げる必要性について】

石本:外食業界の場合、大きくかかるコストが原材料費と人件費です。

原材料費に関しては、物価上昇に対して各社が売価に置き換える前に努力はしているものの、それでも追いつけない状況です。さらに同時に、最低賃金の上昇による賃金高騰と人手不足も起こっています。

Food のFとLaborのLを取った「FLコスト」が売上の何%になるのか考えますが、60%を超えると利益率が下がってきます。50%台を目指すためにも、原価をどう下げ、人件費をどこまで抑えるのかにかかっていますが、いかにお客様の満足度を下げずに工夫をしていけるのかが重要です。

現在の延長線上で経営を考えていては何も生まれない可能性があります。限られた時間の中で準備工程を熟考していく必要があります。

Q【住宅関係の業界における人手不足や賃金問題について】

西村:住宅業界は家を建て、引き渡して初めて入金が完了するシステムです。そのため、契約から工事着工をいかに短くするかが重要です。この期間が長くなれば長くなるほど入金が遅くなりまます。

着工が長引く原因として、請け負う大工がいない問題も起きています。受注しても工事ができないことは、昨今の住宅業界で最も深刻な課題です。

さらに、現場監督や設計士などの資格者の数も減少しています。中途採用を実施してもなかなか人材が集まらないのが現状です。これは、新卒採用を強化することで、採用コストを抑える取り組みも行われています。

一方、真逆の状況にあるのが営業担当です。住宅営業では、経験者を採用する方がコストがかかります。また、前の会社で高い売上実績を残していたとはいえ、自社でも同様に高い実績を残せるとは限りません。このような不確実性もあり、経験者ではなくて未経験者を採用していこうという流れがあります。未経験者でも実績を出すことができる仕組みを整えていこうという企業努力も見られます。

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