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どんな事業も黒字化させる経営者が大切にしている考え

2024.01.03
どんな事業も黒字化させる手腕。
流通小売り専門のコンサルタントが、ショッピングセンターのリニューアルを手伝うことがきっかけで出会った経営者を紹介します。
その方の行動や決断力など圧倒的に素晴らしいと感じた事例を振り返ります。

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建材業からショッピングセンター経営に挑戦

画像提供:PIXTA

その社長は東北地方のある街で建材業を営む二代目経営者です。街では商店街の衰退が進む中、商工会が音頭を取って地域にショッピングセンターを作る計画が持ち上がりました。その方は仲間に押されて、まったくの畑違いであるショッピングセンターの社長に就任することになったのです。

地域にショッピングセンターを作るにあたり、当時は国による無利子の融資制度もありましたが、社長は国の制度に頼ると自由度が低くなると考え、自分たちで株式会社を作って事業を進める選択をしました。そして、懇意にしている別のショッピングセンターの社長の紹介で私のところにリニューアルの相談に訪れました。

「私たちから断ることはありません。受けていただけるのならお願いをします」と最初に社長から伝えられました。コンサルティングを行う費用も期間も聞かれなかったのです。私にとって初めての経験でしたが、それほどの覚悟を持って今回のリニューアルに挑戦したのだと感じました。

以来10数年間ショッピングセンターの運営を手伝ってきました。その中でみてきた社長の振る舞いから伸びる会社の経営者は圧倒的に行動力が違うと感じました。

10数年欠かさず、会議は一番に来て一番前の席

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ショッピングセンターでコンサルティング支援を行う場合、関係者が非常に多いため、基本的に役員や理事らと経営の方向性を決めて、それを現場の店長に伝えていきます。

そのショッピングセンターでもそのような形で支援を行ってきましたが、社長は毎回午前中の役員会議だけでなく、午後の店長会議にも出席していました。しかも常に最初に会議場に来て、一番前の席に座って話を聞くのです。

そのショッピングセンターでは全ての会議が開始時間よりも前に始まるようになりました。社長が必ず最初に来るからです。トップが一番早く会議室に来て、一番前の席に座るため、従業員に「早く来てください」とアナウンスする必要がなくなりました。

流通小売業界は「お客様第一主義」を掲げていますが、お客様優先を理由に会議を欠席したり、遅刻したり、抜けたりするケースが多く存在します。

社長の行動を間近でみていると、それは言い訳なのだと感じました。

会議には定刻通り出席するのが当たり前で、それまでにどれだけ事前の準備や引き続きをきちんと済ませておけるか。社長は常に見えないところで時間を作る工夫をしていたのです。

「どんな商売も一緒」赤字テナントが必ず黒字化

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ショッピングセンターの経営は順調に進んでいきましたが、中には当初の計画通り売上が上がらないテナントも出てきました。通常そういったテナントはどんどん撤退していくことが多いですが、このショッピングセンターでは社長が個人でテナントを赤字ごと引き受けたのです。

テナントを引き受けることが地元の雇用を守ることにつながると考えてのことでした。

それにより社長の建材会社には畑違いのラーメン店や雑貨店などが存在していました。しかし、不思議なことに、社長が経営に関わると赤字だった店舗が黒字化するのです。

父親から継いだ建材会社の業績を伸ばし、ショッピングセンターを健全化させ、引き受けた会社を黒字化させた社長。

なぜそのようなことが可能なのか尋ねると、「建材業もショッピングセンターもラーメン屋も経営は基本的には一緒」だと返されました。

もちろん社長は異業種の事業見通しや業界について詳細まではわかりません。

しかし、現場の従業員は、その業界が好きだったり向いていたりするので、選択してそこで働いています。社長は基本的には従業員に任せる方針で進めていき、結果的に黒字を作っていきました。

「どんな商売であれ人が行うこと。人がきちんと取り組めば、うまくいかないはずはない」社長からの言葉でした。

挨拶も雑談も自ら率先

この社長は従業員の姿を見るといつも自ら挨拶をして、自ら従業員に話しかけていました。何事も自ら率先して行動しており、自分がしないことを他人に要求することはありませんでした。

そんなトップの背中を見ている部下は、自然と社長が好きになり、社長についていくようになります。そのショッピングセンターでは従業員からの「社長のために頑張りたい」「社長を喜ばせたい」といった雰囲気が伝わってきました。

これは社長が意識的に行動しているのではなく感性の指導だと感じました。それが結果的に企業のカルチャーとして根付いていきました。

先を見る目も天才的

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2011年3月11日の東日本大震災で、ショッピングセンターも大きな被害を受けました。実はその3年前に大きな投資をしてリニューアルしたばかりでの出来事でした。

再投資するか・事業をやめるのか、重大な方針を社長は翌日に決めたのです。「再投資する」と各方面に報告し、エリア一番の建設会社に声をかけました。

この決断のスピードによってこのショッピングセンターはいち早く復興することができました。

震災後は東北各地で復興事業が始まりましたが、業者の数は限られており、業者側も声をかけられた順番に作業を進めました。結果的に復興に時間がかかった事業者も多く存在しました。

トップの圧倒的な決断力によって、全体がぶれず、動揺せず、覚悟が決まっていくショッピングセンターの復興の過程を目の当たりにしました。経営者として戦略的に先を見る目も天才的に素晴らしい方だと感じました。

震災を機に今後の災害のリスクを考えた社長は、事業承継はせず大手ディベロッパーにショッピングセンターを売却し、自分たちが店子として入店することを決断しました。そして売却益でこれまでの借金を清算させただけでなく、店舗の改装費や出店費も出せるような状況にして売却したのです。

社長にとっては、受け継いだ建材会社だけでなく、ショッピングセンター、さらには地元にいる方々も含めて皆が家族のような存在なのです。これまでの行動から社長の無償の愛を感じました。

従業員の潜在能力を顕在化させる力

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企業経営の目的は「社会性の追求」・「教育性の追求」・「利益性の追求」の大きく3つであると言われます。

「社会性の追求」とは、より多くの人を雇うこと。「教育制の追求」とは、雇った人たちの潜在能力を顕在化させること。それが「利益性の追求」につながるのです。社長は、人はそれぞれ役割を持って生まれてきており、その役割を見つけて適材適所で動かして伸ばすことが経営者の役割だと考えていました。

より多くの人を雇う環境を作り、潜在能力を顕在化させることができたならば、自ずと利益はついてくる。それが社長の考え方でした。

意識しているのは「永続性」

社長が常々話していたのが、企業経営で最も重要なのは「永続性」だということです。会社を永続させるために環境を整えて、人を雇い、人を育ててきました。それがどんな事業でも黒字化させることにつながっていったのだと感じています。

私たちコンサルタントは自分たちの専門の分野に関して豊富な知識を持っています。しかし、それ以外のこととなると経営者の方から教わることも多いです。今回紹介した社長からは一貫した経営のスタンスを含めて、教わったことも圧倒的に大きかったです。

私が今まで出会った中でこの方を超える経営者はいないと感じています。

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