データ活用は外注か、内製か?最適解は「作りながら育てる」伴走型アジャイル開発にあった
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2026.08.02
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- 中小企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)は、もはや一時的な「流行」ではなく、経営の成否を左右する「実務的な武器」へと進化を遂げました。すでに多くの企業が導入に踏み出していますが、依然として根深いのが「IT人材の不足」という課題です。 自社に専門人材を抱えることが難しい中、多くの企業が外部の専門家を頼りながらDXを推進しています。しかし、この外部委託の進め方を誤れば、期待した成果が得られないばかりか、かえって現場を混乱させるリスクもはらんでいます。 経済分野における日本のデータサイエンス研究を牽引する、滋賀大学データサイエンス学部の増田純也准教授は、外注時の「落とし穴」について警鐘を鳴らします。専門家へ発注する際、経営者が心得るべき注意点は何か。同氏に伺いました。
国立大学法人滋賀大学 データサイエンス学部准教授 増田純也氏
執筆:社長onlineパートナーライター 宮本さおり
INDEX
【プロフィール】増田純也氏
国立大学法人滋賀大学データサイエンス学部准教授。マーケティング・リサーチ会社での実務経験を経てアカデミアに転身。データ活用によるマーケティング支援(マーケティング・サイエンス)を専門とする。アンケート、購買、位置情報、テキストなど多様なデータ分析に従事してきた。現在は、企業および教育機関に向けたデータ活用教育にも力を注いでいる。
期待は「効率化」から「データ経営」へ
独立行政法人中小企業基盤整備機構の調査によると、経営者がDXに期待する成果のトップは「コスト削減、生産性の向上(38.8%)」でした。僅差で続いたのが「業務の自動化・効率化(38.6%)」で、現場の負担軽減が喫緊の課題であることが伺えます。そして、続く第3位に入ったのが「データの一元化、データに基づく意思決定(26.2%)」です。
経験や勘だけでなく、蓄積されたデータを経営判断に活かそうとする意欲が、多くの中小企業で高まっているのです。また、この傾向は企業規模が大きくなるほど顕著となっていることが分かりました。
従業員101人以上の企業では、既に7割以上がDXに向けた具体的なアクションを起こしていると回答。具体的な取り組み内容を見ていくと、「文書の電子化・ペーパーレス化」、個別の業務プロセスをデジタル化する「デジタライゼーション」、ビジネスモデルや企業文化そのものを変革する「DX」への挑戦が進みつつあります。
DXに取り組んだ企業の81.6%が、既に何らかの「成果が出ている」と回答しています。業務の自動化や生産性の向上を実感する企業が圧倒的に多く、一歩踏み出した企業は着実にその成果を手にしています。
一方で、DXに踏み出せない企業の約3割が「何から始めてよいかわからない」と悩み、さらに「取り組む予定はない」とする層では、共通して「経営者の意識・理解が足りない」とする割合が高くなっていました。
(独立行政法人 中小企業基盤整備機構『中小企業のDX推進に関する調査(2024年)アンケート調査報告書』より)
取り組みを始めた企業では一定の成果が出ているのですから、後手に回ればそれだけ先行企業に後れをとることになりかねません。こうした中、IT人材の不足を補うために、外部のリソースを頼る会社は増えていますが、ここに大きな落とし穴があります。
「システム構築などを丸投げの状態で外注に出すのは気をつけてほしいです」と話すのは、滋賀大学データサイエンス学部准教授の増田純也氏です。
▼ 記事の後半では、こちらについて紹介しています。
☑ 事務の効率化における内製の重要性と進め方
☑ 「作りながら育てる」アジャイル方式の実践法
☑ 高度なデータ活用で経営判断の精度を高める外注の見極め
外部に依頼して構築されたシステムは、導入初期こそ順調に機能するかもしれません。しかし、ビジネス環境が激しく変化する中で、システムの修正や機能追加が必要になった際、社内にそのノウハウが蓄積されていなければ、再び外部に頼らざるを得なくなります。結果的に継続的な外注コストが発生し続けるだけでなく、変化への対応が遅れるという経営上のリスクも高まることになると言います。
「システムは作れば終わりではなく、活用しなくてはいけません。メンテナンスも必要になりますから、実際に運用を担う自社の社員の方ができないと、後々困ることになります」(増田氏)
高額なシステムだけを構築し、導入しても宝の持ち腐れになってしまうということです。導入する場合はシステム導入の目的を明確にしたうえで、担当者が扱えるものであるかどうかも見極める必要が出てきます。
事務の効率化は内製がベスト

外注する場合は発注の仕方が重要になってきます。どのような作業を効率化させたいのか、また、何のために効率化させたいのかという目的がはっきりしていれば、システム開発者に頼んだ時に使いやすいものが出来上がりやすくなります。外注にする場合は内部の事情をよく分かっている人がパイプ役として立つことが大切です。
しかし、簡単な事務の効率化については外注しなくても、社内でできる場合もあります。
「今は生成AIなども出てきているので、そういったものをうまく使っていくと、エンジニアでなくともある程度のシステムは作れるようになっています」と増田氏。
AIに具体的な指示を出すことで、コードを生成したり、簡単なアプリケーションを作成したりできるようになってきたことが大きいと話します。
ただし、内部にしっかりと入り込み伴走してくれる場合はより早く実装できるため、専門家に頼むのもよいと言います。
例えば、単純な事務作業の効率化の場合は「アジャイル方式」が有効なため、内部の人間とすり合わせながら進めることが必要となります。アジャイル方式とは、最初から完璧なシステムを目指して一気に導入するのではなく、まずは基本機能だけを作り、現場で使いながら仕様を改善していく手法です。
「自社の業務を理解している社員がAIなどの最新ツールを武器に『作りながら育てる』ことができる場合もあります。また、全く知識が無い場合や、『安定的に運用したい』、『領域を広げたい』といった価値を高める発展をさせる場合であれば外注先として伴走型の支援をしてくれるものを選ぶとよいです」(増田氏)
高度なデータ活用で、経営判断の精度を高める

一方で、膨大なデータから高度な戦略判断が求められる局面では、外部の専門家を頼る方が賢明であると言われています。例えば、新規店舗の出店場所を検討する際に、人流に関する「ビッグデータ」を活用する場合がこれに該当します。こうしたデータは膨大な情報量を持つため、一般的な企業が保有する標準的なパソコンの処理能力では、解析自体が困難なケースが多いためです。
携帯電話会社は、スマートフォンなどのユーザーの位置情報をデータとして蓄積し、統計情報として外部へ販売しています。こうしたデータは企業の出店計画の判断材料などに活用されています。膨大なデータを経営に活かす場合は、買い取った膨大なローデータ(生のデータ)の中から、自社に必要な情報を的確に抽出し、分析可能な形に整理し直す高度な技術が必要となります。
このような専門性の高い領域については、データサイエンスの知見を持つ専門家へ外注する方が、結果として迅速かつ的確な情報を手にすることができ、投資対効果の高い意思決定へとつながります。
自社で取り組むべき「事務の効率化」と、外部の力を借りるべき「高度なデータ活用」を冷静に見極めることが、これからの経営者に求められています。
