突然訴訟!?成功する社長のリスクマネジメント
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2026.09.26
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- 当たり前のように「業界の慣習」として行っていることが、実は深刻な経営リスクを生み出す可能性があります。時代の変化に伴って、業界の常識が企業を揺るがす危機に変わることがあるからです。本記事では、船井総合研究所の三村信明氏が、物流業界の事例を基に、成功する社長に必要な「リスクマネジメント」について解説します。
解説:船井総合研究所 三村信明
執筆:社長online編集部 平田賢司
INDEX
攻めだけでなく、マイナスをゼロにするのも成功の条件
「成功する社長」と聞くと、画期的な営業手法や緻密なマーケティング、あるいは新規事業の立ち上げといった「攻め」の戦略をイメージされる方が多いのではないでしょうか。もちろん事業を拡大する上でそれらは欠かせません。
しかし、足元に潜在的なリスクを抱えたままでは、経営の安定は望めません。成果を出し続ける社長は、攻めと同等以上に、自社のリスクを排除して「ゼロ(健全な状態)」に戻すリスクマネジメントを徹底しています。
その一つが、業界の常識や慣行です。「業界の当たり前」になじみすぎるあまり、それがグレー・ブラックで致命的なリスクをはらんでいる事実を見落としてしまっているケースがあります。
この無自覚なリスクを放置した結果、ある日突然、労務問題や採用難となって顕在化し、会社を揺るがすことになりかねません。そうならないよう、自社では気づきにくい「潜在的リスク」の例を基に、マイナスをゼロに戻すための具体的なアプローチを解説します。
「業界の当たり前」に潜む、無自覚なリスクの正体
その一つの例が、多くの物流・運送会社のドライバーの賃金で導入されている「歩合給」をめぐる給与体系です。「歩合給」は「固定給(基本給や月単位の手当など)」とは残業代の計算方法が異なり、同じ労働時間数、同じ賃金額でも、固定(割増率1.25)より出来高払い(割増率0.25)の方が残業代が低くなる仕組みになっています。
「仕事量を直接賃金に反映し、長時間労働になりがちなドライバーの残業代を低く抑え、経営状況に応じた対応がしやすい合理的な給与」に見えますが、ここには思わぬ落とし穴がありました。
企業側は「業界ではこれが通例だ」と考えて長年導入し続けてきましたが、外部(求職者や司法)の目から見れば「不当な人件費の抑制だ」と捉えられてしまうリスクを抱えていたのです。
実際、こうした給与体系に対して、大手引っ越し会社でドライバー側から未払い残業代を求める訴訟が相次ぎ、業界の慣行が裁判で認められず、会社側が敗訴して過去に遡り多額の支払いを命じられる例が出ています(一審・二審ともに会社側が敗訴、最高裁判断へ)。
社内や業界の中にいると、長年の慣行は空気のように「当たり前」となり、ときとしてリスクとして疑問を持つことすら難しくなります。だからこそ、外部の視点を入れて「世間の常識」とずれていないかを確認する、客観的なリスクマネジメントが必要になるのです。
▼ 記事の後半では、こちらについて紹介しています。
☑ 3つの経営リスクと有効な対策
☑ 脱・業界の非常識のための2つのステップ
☑ 時代にそぐわない慣習から脱却する第一歩
「世間の非常識」に潜む3つの経営リスク
物流業界の事例は、決して他人事ではありません。あなたの業界にも、当たり前とされている慣行の中に、同様のリスクが潜んでいる可能性があります。こうした「業界の常識」が引き起こす経営リスクは、大きく3つに分類できます。それぞれのリスクの本質を理解することが、有効な対策を打つための第一歩となります。
【「世間の非常識」に潜む3つの経営リスク】
- リスク1:採用力の低下
- リスク2:潜在的な訴訟リスク
- リスク3:社員の意欲と生産性の低下
リスク1:採用力の低下
求職者や若い世代は、業界の「常識」を冷静な目で見ています。「業界では当たり前」という言い分は通用せず、不透明な環境と判断されれば即座に選択肢から外されます。人材獲得競争から脱落し、事業継続すら危うくなるリスクです。
リスク2:潜在的な訴訟リスク
「今まで問題なかった」という考えは危険です。法改正や新たな判例により、かつての慣行が一転して違法となる可能性があります。今回の事例では、未払い賃金の請求権は、5年に延長(当面は3年)されており、顕在化したときには過去に遡って多額の支払いを命じられる致命的な打撃となります。
リスク3:社員の意欲と生産性の低下
不合理な制度はモチベーションをそぎます。例えば、歩合給を単純に固定給へ変更すると「ダラダラ働いた人が得をし、真面目な人が損をする」という歪みを生みかねません。制度の見直しは、現場のマネジメント改革とセットで進める必要があります。
成長し続ける「成功する社長」ほど、こうした自社の違和感に対する感度(アンテナ)が高いのが特徴だと私は考えています。
「脱・業界の非常識」のための2つのステップ
自らが率先して業界の常識を疑い、アップデートしていくために、次の2ステップを意識してみてはいかがでしょうか。
【「脱・業界の非常識」のための2つのステップ】
- 自社の慣行を客観視する(リスクに気づく)
- 世間から支持される制度へアップデートする
ステップ1:自社の慣行を客観視する(リスクに気づく)

まずは自社のルールを「異業種の経営者ならどう見るか?」という視点で見直してみます。また、労務などの外部の専門家を入れて客観的にチェックしてもらうことも有効です。他業種の経営者に自社のやり方を説明してみたり、第三者の目を入れたりすることで、社内では当たり前になっていた不合理さに初めて気づくことができます。
ステップ2:世間から支持される制度へアップデートする(実際に行動する際の注意点)

リスクを把握した後に目指すべきゴールは、社会から「クリーンで魅力的だ」と評価される会社を作ることです。ただし、ここで焦って給料の計算ルールだけを変えても意味がありません。例えば歩合給をやめて固定給にする際、作業の管理や評価の仕組みを一緒に変えないと、「ダラダラ働く人が得をして、効率よく働く真面目な人が損をする」という逆効果を生んでしまいます。制度の変更は、現場のマネジメント改革とセットで進めることが不可欠です。
現状を疑い、よい形を模索し続ける
成功する社長に共通するのは、「現状を疑い、常によりよい形を模索し続ける姿勢」です。物流業界の事例は氷山の一角にすぎません。「業界の常識」で思考を止めれば、さまざまなリスクに直結します。
時代にそぐわない慣習から脱却する第一歩は、「自社の常識を外の目で一度見直す」こと。その決断が、会社の未来を大きく変えるかもしれません。
