経営者と哲学「ショーペンハウアーに学ぶ本の読み方」
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2026.09.24
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- 情報が氾濫する現代、経営者ほど「本の選び方」と「読み方」が問われます。 19世紀の哲学者ショーペンハウアー。 彼は、現代の経営者にこそ必要な本質を鋭く見抜きました。 時間と集中力を浪費しないための正しい指針は、実は19世紀に示されていたのです。
執筆:社長online編集部 佐藤大介
INDEX
哲学を少しかじった人間からすれば、ショーペンハウアーというと「厭世的哲学者」あるいは「毒舌哲学者」という印象を抱くのではないでしょうか。 実際、彼は若き頃は哲学者ヘーゲルほど人気を博すことはなく、どちらかといえば「変わった人物」という位置づけでした。
しかし、在野に身を置いてから、その思想の深さと実用性は晩年になって評価され、文学や自然史の分野にも影響を与えています。 とりわけ、彼の哲学が記された光文社古典新訳文庫の『読書について』には、本をよく読む人にこそ立ち返ってもらいたい言葉が示されています。
経営者よ、「新書に惑わされるな」
書店に平積みされている本には「〇〇万部突破」「大ヒット」「xxx先生の新作」という言葉が並んでいます。 こうした本自体がまったくの悪とまでは言えませんが、単純にもったいないとショーペンハウアー氏は言います。
曰く、
「毎年無数にふ化するハエの有象無象を読むようなもの」なのです。

「無差別に本を読むことは、他人の思考に頭を占拠されることだ」
つまり、情報をただ受け入れるだけでは、独立した判断力が失われるということです。 経営者にとっても、これは重大な示唆です。 ビジネスの意思決定は、外部からの情報に基づくことが多いですが、その情報を鵜呑みにさせては独自性を持った戦略は生まれません。
ショーペンハウアーは「多読はむしろ有害になりうる」とも述べています。 ここでいう「多読」とは、量的な読書自体を否定するものではなく、質を伴わない読み方のことです。 表面的にページをめくるだけでは、知識は自分の血肉になりません。 経営の世界でも同じです。 最新のビジネス書を流行に合わせて次々に読むよりも、一冊の本を徹底的に掘り下げ、そこから自社の戦略に応用できる洞察を引き出すほうが、実利は大きいのです。
熟読と再読を重視する
あなたが読んだ本を「いい本だったな」と感じた時、何をしますか?
ショーペンハウアーは、一度読んだだけではその本の核心にたどり着けないことが多いとし、重要な書籍は繰り返し読むべきだと説きました。経営戦略に関しても、同じ理論や事例を時間を置いて再度検討することで、新しい気づきや異なる視点が得られると忠告しています。
事実、最初は文字を追うだけだった本であっても、2回目に読むと作者の視点がそこにあり、それに沿ってより高い視座で物事を見ることができます。 たとえば、経営者が読むビジネス書は、エッセンスを学ぶことは簡単です。 しかし、エッセンスを得ても実践に至らないのはなぜでしょうか。 それは「忘れてしまっている」か、「実現のための視点が1回読むだけでは身につかないから」ではないでしょうか。
彼の考える正しい読書とは?
「私は50冊本を読んでいる」
「いやいや、200冊ぐらい読まなければだめだ」
年間に読んだ本の数を誇るべきではありません。
むしろ、読むべき本はごくわずかです。
経営者にとって、それは自社の事業や戦略に直接関わる分野、もしくは視野を広げる分野に限られます。 すべてを読む必要はなく、むしろ情報を選び抜く力こそが成果を左右します。
ショーペンハウアーは
「読書は他人の思考を追うことにすぎない。真の知恵は、自分で考えることで生まれる」と述べています。 本を読んだらそのままにせず、自分なりに要約や感想を書き残すことが大切です。 それが経営の意思決定の際に「本を読んでおいてよかった」と感じる瞬間を増やしてくれるのです。現代は19世紀とは比べものにならないほど情報があふれ、ニュースやSNS、AIによる要約までが日常的に流れ込みます。 だからこそ、自分の頭で考える習慣が何よりも重要なのです。
また、「本を読む時間は限られている」ともショーペンハウアーは強調しています。
時間は経営者にとって最も貴重な資源です。 限られた時間で成果を最大化するためには、何を読むか、どう読むかを明確にしなければなりません。 誤った情報や浅い理解は大きな損失を招きますが、一冊の本から得た深い洞察が企業を飛躍させることもあります。 情報過多の時代だからこそ、ショーペンハウアーの読書哲学は、知識を資本に変えるための基本原則となるのです。
冊数を誇るな、経営に生かしたことを誇れ
ショーペンハウアーの読書論は、経営者に「量より質」「他人の思考を鵜呑みにしない」という、読書沼にはまっている人が忘れがちな「本を読むことの鉄則」を伝えてくれます。
単に本を読むことを褒めるのではなく、価値ある良書にしっかりと時間をかけて向き合う。 そうすることで、読んで忘れることの繰り返しではない「本質的な読書」を実現できるのではないでしょうか。
新書に惑わされることなく、経営者として真に必要な情報や示唆を得るために本を選び、深く読む。 必ず自分の言葉で消化し、仕事という場でアウトプットを繰り返していく。
この姿勢こそが、情報社会において経営判断の精度を高め、企業の未来を切り拓く力になるのです。
