値上げできない体質を脱出し、借金1億円→年商4倍を実現する方法
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2026.08.04
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- 給食調理委託や、お弁当給食の製造・提供を行う株式会社ロワール(埼玉県深谷市)。同社は2010年の債務超過危機から15年で売上高を4倍超に伸ばし、埼玉・群馬・千葉・茨城・山梨の関東5県へとエリアを展開しています。 現在では約300名のスタッフを擁する同社ですが、かつては価格競争に陥り、借入増による債務超過に直面したこともあると言います。どのようにブレイクスルーを実現したのか、四ツ井貴博社長に伺いました。
株式会社ロワール 四ツ井貴博社長
執筆:船井総合研究所社長online編集部 山内淳史
INDEX
お弁当ビジネスの「3つの壁」
父親がカレー店として創業し、1982年に設立された同社。
2010年に四ツ井貴博氏が入社した当時、経営はまさに崖っぷちでした。売上2.4億円に対して借入金が1億円あり、誰か1人が休めば工場が回らない状態に陥っていたのです。毎朝3時に起きて4時に出社し、10時まで調理、その後は配送や営業をこなす日々が続きました。
「土曜日も祝日も大型連休も休みなしでぶっ通しで働き、たまの日曜日に休めるかどうか。大晦日にはお蕎麦を作って、次の日にはおせちを作っていたんです。それでも、会社は赤字でした」
なぜ、当時のロワールはそこまで追い詰められていたのでしょうか。そこには、お弁当ビジネス特有の「壁」が存在していました。
①商圏の壁
お弁当は12時頃に召し上がられるため、早朝から仕込みを行い、昼の11時から11時半頃には現地へ届いている必要があります。そのため展開できる商圏は、工場から車で1時間圏内が限界となります。
②コストの壁
商圏が狭いゆえに少数の顧客に依存しやすくなり、値上げを打診すると顧客から「値上げするなら他社に変える」と契約を解除されやすくなってしまいます。結果として原材料の高騰分も自社で吸収せざるを得なくなり、利益が圧迫されます。
③大手の壁
競合となる大手給食会社は、高いネームバリューという強みを持っています。味と値段が同等であっても、中小企業は「名前の安心感」だけで競合に負けてしまうのが実情です。
①学校給食で「商圏の壁」を超える

画像提供: 株式会社ロワール
こうした3つの壁を打ち破る突破口となったのが、学校給食への参入でした。
同社が拠点とする深谷市の場合、委託給食は複数年契約であり、3年程度先までの売上に見通しが立ちます。また、現地施設にスタッフを派遣する形で業務が回るため、他市からの依頼にも対応でき、商圏外への展開が可能となりました。
その結果、四ツ井氏にも工場の従業員にも余裕が生まれます。会社に第二の事業の柱が確立されたことで、価格交渉を行う余地も生まれたといいます。
▼ 記事の後半では、こちらについて紹介しています。
☑ 高齢者施設向け3食提供で単価UPを実現した方法
☑ 手間をかけて大手給食会社と差別化する戦略
☑ M&Aと事業投資による関東5県へのエリア拡大
②高齢者施設向け3食提供で単価UPへ
その後、同社に飛び込んできたのは、高齢者施設からの「3食、お弁当を届けてもらえないか」という問い合わせでした。これは大きなチャンスでした。
【売上の比較シミュレーション】
- 社員25人の企業向けお弁当の場合:1ヶ月の売上は約19万円
(※お弁当1食 350円 × 25食 × 22日) - 40床の介護施設へ毎月3食を提供した場合:約109万円の売上を見込める
(※朝食250円×40人×30日+昼食330円×40人×30日+夕食330円×40人×30日)
しかし、この事業に取り組んだ場合、1日通しで業務を行う必要が生じます。現場の従業員のみならず、先代であるご両親からも「今の人員体制でそんなことができるわけがない」と猛反対を受けました。
とはいえ、消耗戦が続き、同社の周辺でも毎年1〜2社の弁当会社が廃業していく厳しい環境。「やらないという選択肢はなかった」と四ツ井社長は振り返ります。
③食へのこだわりで大手と差別化
さらに、介護施設の給食調理委託事業へ参入することとなりました。
そこでロワールが大手と差別化すべく取った戦略は、「技術的に可能であっても、非効率なために大手が手を出さない領域」に徹底して手間をかけることでした。
(1)「刻み食」「ミキサー食」を彩り鮮やかに
介護施設向けには、噛む力が弱くなった利用者のために食事を細かく刻んで提供する「きざみ食」や、ミキサーにかけるなどしてペースト状にして提供する「ペースト食」を出すことがあります。

ロワールの提供するミキサー食ときざみ食。素材ごとの色で分けることで見栄えの良い食事を提供する。「祝」の文字を飾り付ける工夫も。(画像提供: 株式会社ロワール)
多くの給食事業者は効率化を最優先し、すべての具材をミキサーにまとめて入れてしまいがちですが、これでは食欲をそそらない色合いになってしまいます。
そこでロワールは、あえて工程を増やしました。肉じゃが全体をミキサーにかければ1工程で済むところを、じゃがいも、にんじん、お肉と素材ごとに分けてペースト状にします。手間は3〜4工程増えますが、食材本来の色が鮮やかに出ることで「食べたい」と思える見栄えに仕上がります。
(2)「イベント食」ではマグロ刺身まで出す
さらにロワールでは、「イベント食」にも注力しました。毎月1回、見て楽しく食べて美味しい食事を、お正月や土用の丑の日といった季節のイベントに合わせて提供。イベント食を実施しない競合他社と同じ単価で提供しています。
特に挑戦的だったのが「まぐろづくし御膳」です。

画像提供: 株式会社ロワール
生ものの刺身は、給食業者が最も避けたい食材です。免疫力の低い高齢者にとって、食中毒のリスクは命に関わるためです。しかし「食べたいメニューは何ですか」と尋ねると、必ずと言っていいほど返ってくるのが「刺身・寿司」という声でした。
そこで、冬季限定での提供、真空パック柵での仕入れ、調理時の厨房暖房停止など、独自の厳格な衛生管理規定を設けて実現させました。
その結果、「久しぶりにまぐろを食べることができた」と利用者から大好評を獲得。納品先の介護施設からも「ここまでやってくれるのはロワールさんだけだ」と高い評価を得たといいます。
こうして大手との価格競争を回避できたことで価格交渉が円滑になり、利益率約10%の高利益体質へと改善。過去最高益を記録しています。
(3)「手間がかかってもやる」原体験は父親
手間をかけた食事を提供し続ける原点は、四ツ井氏の父親が生前に好んでいた中華料理にあります。
創業者であるお父様は、亡くなる前の3年間を高齢者施設で過ごしていました。コロナ禍の入居制限の中、なんとか受け入れてもらった施設で提供されていたのは、低予算の弁当給食だったのです。
そこで四ツ井氏は施設側と交渉し、父がかつて通い詰めた中華料理店へ連れ出す許可を得ました。ペースト加工ができる自前の機材を持ち込み、好物だった天津飯や餃子をその場でペースト食にして提供したところ、お父様は非常に喜ばれたといいます。

画像提供: 株式会社ロワール
この原体験から、通常の食事が難しくなった方々にも食事を楽しんでもらうという、現在のサービスが誕生しました。
「ミキサー食を素材ごとに個別調理して盛り付けることは、技術的にはどこでも可能です。ただ、面倒だから誰もやりたがらないだけなのです」
大手がコスト面から嫌がる領域に手間を掛けて差別化を図る。そこにこそ、中小企業の勝機が眠っています。
こうした工夫の積み重ねにより、同社は2025年8月期に9.8億円の売上高を計上し、2026年8月期には11.5億円の着地を見込んでいます。
④M&A+事業投資で関東5県へ
ロワールは今後も規模拡大を目指しています。
しかし、その壁となっているのが深刻な担い手不足です。国内の給食市場は2026年度に5兆円を突破する見込み(※矢野経済研究所調べ)とされる一方、調理師や栄養士の確保難、食材費・光熱費の高騰により、業界全体の供給体制そのものが崩れ始めています。
需要は増え続けているにもかかわらず、担い手が不足している。そこで現在、兄の四ツ井裕明氏がM&Aを推進し、ロワールを含めた5つの企業を「給食王グループ」として連携させています。
人材採用をグループ合同で行えるほか、グループ全体で食材を大量一括仕入れすることにより仕入れ単価を抑制し、物価高においても安定的な粗利率を維持することが可能です。

さらに事業拡大にあわせ、工場への設備投資も進めています。お弁当製造をグループ会社の才武給食(埼玉県本庄市)に委託し、自社工場を完全調理済みパック対応の「セントラルキッチン」へと転換を進めています。
【調理済みパック導入のメリット】
- 働き方改革:翌々日の分まで計画的に製造でき、工場スタッフは朝4時出勤から朝8時出勤へ移行できます。
- 配送コスト削減:高齢者施設へ1日3回行っていた配送も1回に集約し、配送効率を向上できるとみています。
- 新規開拓:これまで対応が難しかった小規模事業所への給食提供が可能になり、商圏内の市場開拓につなげます。
- 人手不足対策:工場から届いたパックを温めて封を切って出すだけで、一定品質の食事が提供できるようになり、プロの調理技術者に依存せず品質を維持できます。
子ども時代の思い出も「食のインフラ」あってこそ

2026年4月には、ふかや幼稚園で初めての給食を提供した(画像提供: 株式会社ロワール)
給食は、電気やガス、水道と同じように「当たり前にあるもの」です。だからこそ感謝されにくく、髪の毛1本の混入で大きなクレームに発展してしまう。しかも朝は早く、褒められる機会も少ない。新卒の就職先としても、華やかなホテルやレストランの滑り止めとして選ばれがちな業界です。
しかし給食は、あらゆる人の思い出に残る仕事であると四ツ井社長は指摘します。
「子どもたちにとって、給食って栄養補給だけじゃなく、思い出作りでもあると思っています。揚げパンやソフト麺、あるいは高校の学食のうどんや、友達と買って食べたセブンティーンアイスの味って、一生覚えているじゃないですか。子ども達に、自分の提案でひとつ、人生を変える良い思い出を作れているのは、うれしいことですね」
みんなで集まって楽しく食べるという空間そのものが、子どもたちにとってかけがえのない思い出の場になります。
日本人なら誰もが経験している給食。現在、四ツ井社長はその裏側に光を当てるべく、業界の魅力を各種メディアやYouTubeなどを通じて発信しています。
新たな事業領域への挑戦
現在の主軸事業である介護給食市場は拡大傾向にあるものの、20年から30年後には高齢者人口の減少に伴い、需要縮小が予測されています。
そうした将来の変化を見据え、同社が参入を目指しているのが、スポーツ関連ネットワークを活かした「スポーツ強豪校における寮食事業」です。全体的な子どもの数が減少したとしても、強豪校には全国から優秀な選手が集まり続けるため、需要は底堅いとみています。その第一歩として、2027年1月には埼玉県内の野球関連企業を子会社化する予定です。

四ツ井貴博社長(画像提供: 株式会社ロワール)
参入の決め手となったのは、四ツ井氏自身が春日部共栄高校野球部時代に入寮しており、スポーツにおける寮食の意義を肌で実感していたことでした。寮食事業を通じて、次世代を担うアスリートの成長と地域のスポーツ文化を食の面から支え、地域産業と地域スポーツ双方の活性化を目指しています。
【取材協力】
社名:株式会社ロワール(給食王グループ)
屋号:埼北給食センター
代表:代表取締役 四ツ井貴博
本社:埼玉県深谷市樫合903-2
設立:昭和57(1982)年9月1日
事業内容:幼稚園・小中学校・高校学食・社員食堂・介護施設等の給食調理委託事業、弁当給食事業、完全調理済みパック(チルド製品)給食事業
公式HP:https://rowal.co.jp/
給食王グループ:
・ロワール(埼玉県深谷市)
・才武給食(埼玉県本庄市)
・スプラウト・フーズ(東京都瑞穂町)
・上むら(埼玉県川越市)
・ウェルフェアプラス千葉(千葉県佐倉市)
【社長プロフィール】
四ツ井 貴博(よつい・たかひろ)
1984年9月14日生まれ、埼玉県本庄市出身。2007年に城西大学経済学部を卒業後、地元の印刷会社にて新規開拓営業の経験を積む。2010年、株式会社ロワール(当時・株式会社ロワール通商)へ転職。2011年常務取締役、2015年専務取締役を経て、2025年9月に代表取締役社長に就任。「給食は命と笑顔を支える食のインフラ」という信念のもと、持続可能な給食業界の構築と地位向上に向けて挑戦を続けている。趣味はゴルフ、野球、育児。
