【ストレス対策】メンタルを病まない経営者・病む経営者
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2026.10.03
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- 従業員のメンタルヘルスが注目される一方、孤独な決断や資金繰りなど、特有の重圧から密かに心身の不調を抱える経営者は少なくありません。そこで今回は、数多くの中小企業と向き合ってきた株式会社TAYORIの奥野実羽心氏に、経営者の「ストレスの正体」と「対策」を聞きました。日々闘う経営者が心身ともに健やかでいるための方法をお届けします。
執筆:社長online編集部 山内淳史
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<プロフィール>
株式会社TAYORI 奥野実羽心社長
画像提供:TAYORI
(おくの・みわこ)思考整理秘書 / 離職防止コンサルタント。看護師・保健師経験10年を経て、出産を機に転職。 営業職で自分の才能に気付き、勧められて起業。SNSを使った営業や広報戦略を経営者にアドバイス・研修をしていたが、新型コロナウイルスを機に自分の進路を再検討。医療職の経験と営業・広報の経験もフルに発揮できる健康経営のエキスパートになることを決意。企業向けにストレスチェック実施・健康経営サポートを行い、地元の女性活躍のために女性活躍推進研究会を立ち上げ、倉敷女性起業情報交換会の主宰も行う。
経営者のストレスは3つの領域に分解できる
企業経営で心身の健康を語る場合、主語は「従業員」であり、経営者のメンタルヘルスが正面から語られる機会はほとんどないのが現状です。
その反面、心理的な悩みを抱えた経験が全くないという経営者はほとんどいないのではないでしょうか。実際、ヘルスケアアプリ運営のAwarefyが2023年に実施した調査では、経営者の64.8%が「心の不調により夜眠れなくなった」経験があるとしています(n=142)。
経営者のストレス源は、大きく3つに分類できます。
- 人間関係(社内、取引先、家庭など、他人との関わり):経営者という立場上、社内・経営者仲間・家族のいずれにも弱音を吐きにくく、自分の意図や苦労が周囲に理解されにくい傾向にあります。陰口を言われやすいことによる孤独や、周囲とのギャップによるストレスが生じます。
- 体の回復不足(不規則な生活に伴う慢性疲労):睡眠不足や運動不足、多忙、年齢による不調、出張続きによる休養不足など、日常的なケアが追いついていないことによるストレスが生じます。
- 将来への不安(経営の重圧、資金繰りなどの経営課題):資金繰りや売上といった経営課題、膨大な仕事量、将来への不安、失敗できない・休めないというプレッシャーによるストレスが生じます。
奥野氏は、いずれの場合も「回復方法」を持っていることが重要だといいます。
「ほとんどの方が、日々ストレスを感じています。その際、回復のタイミングや選択肢が多いかどうかが、度合いを決める要素になります」(奥野氏)
ここからは、奥野氏の知見をもとに、各ストレスの解消法について具体的に解説します。
▼ 記事の後半では、こちらについて紹介しています。
☑ 人間関係のストレスを癒やす「第三の居場所」
☑ 「忙しい」で思考を止めない、将来への不安を減らす業務の棚卸し
☑ 心のトリセツを作る「ジャーナリング」の実践法
人間関係のストレスには「第三の居場所」が大切

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人間関係のストレスを最小化する基本はコミュニケーションです。社内であれ、家庭内であれ、自分の意図をわかりやすく説明し、相手の主張もしっかり聞く。コミュニケーションにおいては、これが土台となります。
しかし、会社と家庭の往復になると、「トップとして志を示す経営者の自分」と「経営者の立場を理解して、支えてくれている家族のための自分」の間での往復となり、気軽に自分の気持ちや悩みを言える場所がないことも多く見られます。「行きつけの店の主人やAIには悩みを打ち明けやすいのでよく利用している」という方も多いのではないでしょうか。
そうならないためにも「第三の居場所」を作ることが大切だと、奥野氏は指摘します。社長という肩書を離れ、ひとりの人としてフラットにコミュニティに関わり、しっかり話ができる相手を持つのが理想です。
奥野氏自身も、子育てが一段落したタイミングで語学教室に通い始め、フランス語を共に学ぶ、年齢も立場も超えた仲間がいると言います。
「時間ができてからコミュニティを探しに行くよりは、思いついたときに家と仕事以外の仲間を見つけたり、作ったりしながら、ゆるくつながるのもおすすめです」(奥野氏)
体の回復不足は、鍛えるより「ほぐす」
ゴルフ、釣り、マラソンなどを楽しむことは、ストレス解消の一つの手です。基本的には何らかの運動習慣を持つ方が有利に働きます。
ただし盲点もあります。「マラソンやゴルフのコンペは交感神経を刺激し、アドレナリンが出る活動です。普段頑張っている社長さんが、更に頑張ることになる」(奥野氏)。結果として、平日も休日も、心が戦闘モードのままになってしまうのです。
より大切にしたいのは、副交感神経を優位にするアクションです。
- 「ぼーっとする」時間を作る:深呼吸・瞑想、あるいは景色を眺めるといった、ぼーっとする時間を作ることで脳疲労を軽減し、交感神経をなだめて副交感神経を刺激できます。5~10分程度のわずかな時間でも有効です。
- 体を鍛えるのではなく「緩める・ほぐす」:ストレッチポールの上でゴロゴロしたり、ストレッチなどで体の緊張やこりをほぐし、弛緩させます。
将来への不安が付きまとうなら自分の負荷を減らせ

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将来への不安の原因は、会社のお金や人材の悩み、絶対的な仕事量の多さ、プレッシャー、自分が休みにくい(自由のない)環境などさまざまです。経営者である以上、経営面でのプレッシャーは避けられないため、ここでは「忙しさ・休みにくさ」の解決にフォーカスします。
基本は「忙しい」で思考を止めず、なぜこんなに時間がないのかを振り返ることが出発点です。
【業務の棚卸しと負荷軽減のステップ】
- ルーティン作業を定期的に見直し、本当に効果が出ているか考え直してみる
- いつもの取り組みをあえてやめてみたり、あえて付け加えたりしてみて、差分から必要性を判断する
- 自分が抱えすぎている業務を特定し、権限委譲を進める
このように日常業務の棚卸しをして、不要な仕事を見つけ、やめたり、部下に委譲したりします。
また、もっと簡単な方法として、選択肢をパターン化・固定化するというものがあります。今日からできる一例は、いつも同じメニューを頼むというもの。「うどん店では必ずかけうどん」「喫茶店では必ずカフェラテ」といった具合でしょうか。日々の判断を減らすことで、日常の負荷を楽にできます。
不安解消法の一つは自分のトリセツを持つこと
全体を通じて最も大切なのは、「モヤモヤや感情の揺れを漠然と放置しないこと」(奥野氏)です。ストレスの度合いや限界が分からないままだと、適切な対処法も見当たらなくなってしまいます。
最近、朝起きにくい。肩こりがひどい。感情のムラが激しい。そうした不調のサインを漠然と感じて終わらせず、書き出して整理するなど、自分の取扱説明書にしておくことで「あ、私は今しんどいと感じているんだ」と気付けるようになります。
気付けるようになれば、周りの人にも自分の調子を伝えやすくなり、協力を得られやすくなります。自分への解像度が上がるほど、限界になる前に自らブレーキをかけることができ、回復方法も見つかりやすくなるでしょう。
今日から試したい「ジャーナリング」
取扱説明書づくりの方法として奥野氏が勧めるのが「ジャーナリング」です。
ジャーナリングとは、感情の言語化をする行為を指します。日記に近いですが「今日あった出来事」を記録するのではなく、「今日、自分はどんな気持ちだったのか」という自分の感情を記録して客観視することです。
続けるコツは、ハードルを下げることです。毎日行う必要もありませんし、書くとしても2~3行だけで構いません。手帳などの紙媒体に書くのは見られるリスクが気になるという方には、スマートフォンのアプリという選択肢もあります。
奥野氏のおすすめは「muute」というアプリです。1日の終わりに気になったことを書き、その日の気分を選んで記録を付けていきます。その時々の感情やバイオリズムを視覚的に可視化できるのが特徴です。

仕事に没頭しがちな人ほど自分の変化に鈍感になりがちですが、ジャーナリングを行うことで「家族の何気ない一言がうれしかった」といった身近な出来事や感情に対する感度が上がり、日常の小さな変化や喜びに気付けるようになります。ぜひ、朝や夜の習慣にしてみてください。
提言:ストレスを減らす「シンデレラ作戦」
しかし、そもそも根本からストレスを減らす方法はないのでしょうか。これから何かと飲み会が増える季節に備えて、一つ提案したいのは、「飲み会は0時にきっちり帰る」ような、いわばシンデレラ作戦です。
その場の流れで飲み会に残っていると、翌日のパフォーマンスに悪影響を及ぼすことは、多くの皆様が既にご存じかと思います。そこで例えば、「家庭のルールで0時に帰ると決めている」など事前に周知し、飲み会のお誘いがあっても基本的に0時までに帰宅するようにします。
0時までに絶対帰ると決めて仲間や家族に宣言してしまえば、家族への弁明という悩みを減らし、睡眠時間を確保し、思考のコストも下げられます。これは、経営者の悩みトップ3をまとめて解消できる有効な手段といえます。
この例に限らず、セルフマネジメントの上手な経営者は、自分のテリトリーや、できること・できないことの範囲を設定し、無理のない範囲で客観的に自分を管理しています。
撤退ラインを明確にし、ウェルビーイングな経営者に
社内で弱音を吐けばリーダーシップが揺らぐ。経営者仲間のコミュニティでも、二次会、三次会の後、やっと本音が言える。結局、相談先がなくお酒で紛らわす。そんな解消方法では、ストレスが蓄積していってしまうでしょう。
経営者のメンタルヘルスを、気合と根性で乗り越えようとしないでください。ジャーナリングなどで自分の扱い方を知り、周囲の人への相談や頼り方を確立するなど、自分自身の回復の仕組みを設計してみてください。
自分の心の回復のために、どこまでは頑張り、どこで立ち止まるべきか。自分のなかで振り返り、自分自身の「心のトリセツ」を作ることで、撤退ラインは明らかになり、経営者として長く頑張ることができるのではないでしょうか。
