元歌舞伎町ホストが、創業10年で10億円の経営者に 「攻めの薬局」で熊本県シェアナンバー1になった理由
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2026.06.05
熊本県で今注目を集める「アルファルマ株式会社」。熊本市内を中心に14店舗の調剤薬局を展開し、訪問医療(調剤)市場では熊本県内シェアナンバー1を誇っています。同社を創業した代表の佐藤拓司氏は、元歌舞伎町ホストで薬剤師という異色の経歴の持ち主ですが、創業10年目にして売上10億円を達成。その経営哲学には定評があり、県内の経営者などを対象に100回以上の講演会を行っています。
INDEX
薬剤師の人手不足が厳しい薬局業界において、人材を確保しながら急拡大を実現している、アルファルマの経営戦略とはー?

アルファルマ株式会社 代表取締役 佐藤拓司氏
歌舞伎町で学んだ攻めの姿勢 「届ける薬局」で熊本県シェアナンバー1
アルファルマ株式会社は、調剤薬局である「共生薬局」を熊本県内に14店舗、居宅介護支援事業所を2店舗展開しています。そのうち14店舗は2020年以降に新設されており、まさに急拡大している企業です。
創業した2013年から共生薬局を運営していましたが、患者さんが高齢化していくにつれ、来店が難しくなる人が増えていったのだと言います。
佐藤氏「『先生、もう病院に通えなくなるかもしれない』ーー患者さんから、そう相談を受けたんです。歩くのがしんどい、車の免許も返納した、家族もいない。それを聞いて、社員で話し合った結果、在宅医療のシステムに辿り着きました」
薬局に訪れる患者さんからのこうした声を聞き、佐藤氏は「訪問医療事業」への進出を決めます。調剤薬局における「訪問医療」とは、病院から処方箋を薬局が直接受け取り、調剤したお薬を自宅に配達するというもの。
業績を伸ばすきっかけとなったのは、2020年のコロナ禍。緊急事態宣言が発令され世間が外出を控える中、日常的に薬を必要としている患者さんが在宅での受け取りを希望したことにより、今では「在宅なら共生薬局」と言われるほど、熊本県内でもナンバー1のシェアを誇る事業へと成長していきました。
佐藤氏は苦学生時代に歌舞伎町でホストを経験しており、その時に学んだのが「相手の要望を汲み取る」そして「待ちの姿勢ではなく、こちらから営業することが大事」ということ。こうした価値観から、「薬局も待っているだけではダメ。患者さんや医療機関の要望を聞き、叶えることが成長への道」だと思ったのだと話します。
非効率だからこそ競合がいない
この事業が成功した大きな理由の一つに、「競合の不在」があります。薬局における訪問医療には次のような制限と課題があり、参入障壁が非常に高くなっています。
- お薬を患者さんに手渡せるのは薬剤師のみ
- 一人の薬剤師が移動できる物理的距離の限界がある
- 処方箋を発行する医者や病院側からの認知度、そして信頼関係が重要
つまり、最も大きな障壁となっているのは「人材の確保」です。患者の自宅を一軒一軒訪ね、薬の説明をして、必要があれば「お薬カレンダー」に薬を入れていく…。有資格者が必要な割に非効率なビジネスモデルであり、一般的には採算が取りにくいとされています。
しかしアルファルマが訪問医療に参入できたのは、代表である佐藤氏本人が薬剤師免許を持っており「社員を稼働させると赤字になる。それなら自分が配達すればいい」という考えからでした。
こうして、佐藤氏の手弁当から始まったお薬の配達サービスですが、想定以上に需要が高かったことから、損益分岐点を割らない形を模索。2022年には、「在宅調剤センター南店」を立ち上げます。ここに患者さんが来店することはありません。処方箋を1か所に集約させ、調剤したお薬を配送担当の薬剤師に渡す、という機能に特化しています。

在宅向けの調剤センターは全国的にも珍しい例(画像:アルファルマ株式会社WEBサイト)
このモデルは宅配物流業に着想を得ています。物流と調剤を切り分け「いかに効率的に処方箋を集められるか、効率的な配送ができるか」を考えた結果、この形にたどり着きました。実店舗から始まった中小企業の調剤薬局において、このビジネスモデル設計は全国でも稀。5年間の活動を経て、現在は100以上の医療機関と提携するまでに至りました。
「病院の隣にあるのが普通」とされる調剤薬局ですが、近接の病院に依存しない形で成功を収めた、珍しいケースと言えるでしょう。
人材不足を「距離」で解決する、絶妙なバランス設計

画像:生成AI
お薬の宅配サービスを成功させるのに、避けられないのが「人材」の問題です。
共生薬局のほとんどの店舗は熊本市内に集中しています。宅配をメインに活動する薬剤師も在籍していますが、欠員や急な対応を可能にするため、近い場所に店舗を集中させているのだといいます。
また、薬剤師一人当たりの活動量も点数化しており、一定のラインを超えると業務過多として調整が入る仕組みにしています。サービスの維持と利益が両立するラインを数値として把握することで、無理のないモデルを作り上げています。
このバランス感覚によって利益が保たれているのですが、一方で、少しでも偏ると赤字に転落してしまう危うさもありました。そのため、佐藤氏が最初に行ったのは、近隣1店舗だけでテスト運用をしてみることでした。
不採算が続いて改善できないようならすぐに撤退する——あらゆる数値を想定して計算し、最悪のケースと撤退ラインを数値化したうえで、宅配サービスを行っていたのだと言います。
佐藤氏「あらゆる最悪のケースをいつも想定しています。熊本は2016年に被災もしましたから、本当にいつ何があるか分からないという思いが強い。最高のパターンと最悪のパターン、そしてその中間点を想定しながら経営をしています」
このシミュレーション能力こそが、難しい市場への参入、そして成功へ導くことができた大きな要因なのでしょう。
一筋縄ではいかないが、「すべて善し」と考える
「苦学生として歌舞伎町で働き、3年遅れて薬剤師になった」と語る佐藤氏。当時は、同級生よりも後れを取っていることや、夜の街に足を入れたことに強烈なコンプレックスを抱えていたのだと言います。
それを払拭するように仕事に邁進し、ようやく経営を軌道に乗せたと思った矢先、信頼していた社員からの横領が発覚。また、事業所のトップが従業員を引き連れて一斉離脱するという経験もありました。
佐藤氏「業界的にはたまにある話ですが、ショックでしたね。半径1キロほどの近所に新しい事業所を作られてしまいました」
しかし今、佐藤氏はそれらを「すべて善し」と受け止めています。自身の性格を「ネガティブだけど究極のプラス思考」と話しますが、最悪のシナリオを想定できるネガティブさがあってこそ、正確なイメージが湧く。その上でプラスの発想ができる人が、経営をうまく運ぶのだという考えです。
2016年には熊本地震で、本社のある笛田地区も大きな被害を受けました。地域の人が大事にしてきた笛田神社では鳥居がほぼ全壊。佐藤氏は、私財を投げ打って鳥居を復元します。その理由は「地域への感謝があるから」だと話します。

鳥居を復旧させた2020年当時の従業員たちと(画像提供:アルファルマ)
2013年12月の創業から12年。売上は2020年の約2.9億円から、2026年には12億円規模に達する見込みです。薬局のほか、農業・不動産投資・訪問看護などの事業を傘下に持つホールディングスへと進化を遂げています。
次の12年で何を目指しているのでしょうか。
佐藤氏「熊本県の健康寿命を全国一位にしたい。薬という枠を超えて、健康インフラを作れるような企業になりたいと考えています」
ホスト、失業、倒産、横領、裏切り——すべての経験を「すべて善し」と受け止め、今後も成長を続けると語ります。
<取材協力>
アルファルマ株式会社
所在地:熊本県熊本市南区御幸笛田二丁目15番43号
設立:2013年
事業内容:調剤薬局、訪問看護ステーション、居宅介護支援事業所、コンサルティング、福祉活動
代表者:佐藤拓司
公式HP:http://www.alpharma.co.jp/
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