財務のプロが語る、「会社のお金を減らす8つのNG」
-
2026.07.17
-
- 「売上は順調に伸びているのに、なぜかいつも資金繰りに追われている」「利益は出ているはずなのに、手元に現金が残っていない」——そんな悩みを抱える経営者の多くは、日々の経営判断の中で無意識のうちに「お金を減らす選択」をしてしまっています。今回は、数多くの中小企業を見てきた財務コンサルタントが明かす、手元資金を奪う「8つのNG行動」と、その解決策を詳しくご紹介します。
解説:船井総合研究所 石田武裕&大田哲弥
INDEX
①キャッシュ不足を加速させる「短期借入金による長期投資」
例えば10年で償却する設備の資金調達を3年返済で行うケースです。
本来、10年かけて収益を生み出し、会社に貢献しながら投資資金を回収していくはずの設備投資に対して、3年という短期間で返済を求められる状況を想像してみてください。
この場合、その設備が収益を生み出すスピードの3倍の速さで、手元から現金が出ていくことになります。いくら帳簿上で利益が出ていても資金繰りが苦しくなるのは明白です。
なぜこのようなミスマッチが起きるのでしょうか。
最も目立つのは、経営者側が金利負担を回避したいがゆえに、無理をして短期で借り入れをしてしまうケースです。
融資期間は短くなるほど金利が安くなります。「例えば、10年で借りると金利は5%だが、3年で借りるなら2%で済む」。このとき、多くの経営者は目先の金利の安さに惹かれ、「他で儲けて返せばいい」と安易に3年という短期を選んでしまいます。
また、銀行側からしても、長期間貸しっぱなしにするより、短期で定期的に返済してもらったほうがリスクヘッジになり、逃げ道を確保しやすいという事情があります。
結果として銀行側もストップをかけにくく、短期借入金で投資をしてしまい、キャッシュ不足に苦しむ経営者が後を絶ちません。利益が出ているのに資金繰りが苦しくなる「勘定合って銭足らず」の典型的な罠になります。
解決策:投資回収期間と借入期間を一致させる
投資回収期間と借入期間をマッチングさせ、ミスマッチの解消を図りましょう。よほど自己資金が潤沢でキャッシュリッチな会社でない限り、「金利を払ってでもキャッシュフロー(出て行くお金)を抑制する」のが財務の原理原則です。
収益を生み出す投資回収ペースと返済期間を一致させ、事業のビジネススキームや設備の耐用年数に見合った借入期間をしっかりと銀行と交渉し、お金が常に手元に残り続ける状態を作りましょう。設備投資の耐用年数よりはるかに短い期間で融資を受けてよいのは、自己資金だけで賄えるほどの余裕がある会社だけです。
②銀行の信頼を落す、根拠のない売上目標に基づく事業計画
きちんとした数値目標や裏付けのある事業計画が存在しないと、「今年自社にいくらお金が必要になるのか」という全体像が経営者自身にも見えません。
根拠のない経営をする最大のデメリットは、銀行からの信頼を完全に失うことです。いざ銀行にお金を借りに行こうとしても、説得力のある交渉ができません。銀行の担当者から「いくら必要なんですか?」「なぜその金額が必要なのですか?」と問われた際、それを証明する裏付け資料がないためです。
事業の見通しが不透明であると判断されれば、銀行は足元の財務状況から判断できる最小限でしか融資を行えません。金利が高く設定されてしまうリスクすら生じます。
将来の計画を論理的に示せれば、必要資金を好条件で借り入れできるはずなのに、無計画がゆえにそのチャンスを自ら手放してしまっているケースと言えます。財務の観点からは非常にもったいない状況です。
▼ 記事の後半では、こちらについて紹介しています。
☑ 銀行から信頼を得るための「3年先の事業計画」の作り方
☑ 資金調達のタイミングと「メインバンク一極集中」の落とし穴
☑ どんぶり勘定・過度な節税など、会社を潰す致命的なNG行動 ほか多数
解決策:まず向こう3年の計画を
銀行から信頼を得るためには、実態を伴う数値目標の計画を作り、銀行と真っ当な対話ができる状態にすることが重要です。
どのような業種であっても、最低3年先を見据えた事業計画を作成し、資金ニーズを可視化しておくことで、銀行とのやり取りのレベルはグッと高まります。

【事例】たとえば、固定資産を多く持つ製造業や旅館業などの企業であれば、「今年導入した機械Aの耐用年数は10年だから、10年後に買い替えが必要になる」「10年間でかかる修繕費は合計これくらい」といった予測が立つはずです。
こうした計画をしっかり銀行に伝えましょう。それを計画せず「壊れてから借りて直そう」というスタンスでは、金額も金利も高くなる悪循環に陥ります。
日常生活に置き換えると非常に分かりやすい話です。毎日飲む水を、Amazonや量販店で安くまとめ買いすれば1本あたり数十円で入手できますが、無計画に毎朝コンビニや自動販売機で買うと、1本100円以上かかります。
都度コンビニで水を買う方が楽なように、必要なタイミングで資金を調達する方が、考える手間は省けるかもしれません。しかし、あらかじめ投資計画を立てておくことで、金利を安く抑え、交渉も有利に進めることが可能になります。
考えてやれば、やっただけの成果が確実に得られるのが、財務の長所です。
③資金調達に「お金が足りなくなってから」動くから足元を見られる
銀行は「お金がある会社」に貸したががり、「お金がない会社」を警戒する性質を持っています。
資金繰りに困窮し、必要に駆られてから土壇場で融資の相談に行くとどうなるでしょうか。銀行側は当然、資金回収の安全性の観点から非常に厳しい見方をします。
結果、足元を見られて自社にとって不利な融資条件を飲まされるか、最悪の場合は融資自体が下りず、すべて自力で資金繰りをしなければならなくなります。
ここで注意すべきは、「お金が足りなくなる」という状況の解釈です。「お金が足りない会社の社長」と聞くと、資金繰りに行き詰まり、銀行に融資を断られてしまう、赤字会社の社長が思い浮かびます。
ちょうどドラマ「半沢直樹」で笑福亭鶴瓶さんが演じていた、半沢慎之助のようなイメージです。

しかし実際には、売上が順調に増えている会社であっても、お金が足りなくなることが多々あります。事業規模の拡大が続くと、仕入れ資金や人件費の負担など、前向きな運転資金が必ず増えていくためです。
お金が足りなくなってから慌てて動く経営者は、この「成長に伴う資金」のニーズを読み違えてしまっています。必要に駆られてから借りに行くと、足元を見られ、高い金利を押し付けられかねない絶対NGの行動です。近年は金利が上昇傾向にあるため、より一層の警戒が必要です。
解決策:経営の「折りたたみ傘」を持つ

「銀行家とは、日が照っている時に傘を貸してくれ、雨が降り出した途端に返せと言ってくる連中のことだ」
アメリカの著述家 マーク・トウェインが言ったとされる名言です。それならば、経営者ができることは「晴れた日に折りたたみ傘を持っていく」ことです。
財務に強い優秀な経営者は、向こう1年間で必要になる資金の目処を早い段階であらかじめつけてしまい、今すぐ必要でなくとも、事前に借り入れの枠を準備しています。
投資や出費が発生してから借りるのではなく、売上増大に伴う「前向きな出費」が発生することがわかっている段階で、先んじて借り入れておくのです。これにより金利を低く抑え、銀行とのやり取りも円滑に進めることができます。
④生殺与奪の権を銀行1つに握らせる「メインバンク一極集中」
画像:生成AI
銀行1行のみと付き合っている状態には、大きく分けて3つのリスクが存在します。
- ①他行と競争する環境にならず、金利や融資条件で足元を見られやすくなること。
- ②いざという時のリスクヘッジができないこと。
- ③銀行が持つ「得意・不得意」による機会損失。
①と②はイメージしやすいのではないでしょうか。相見積もりが生じず、もしその1行から融資を断られた瞬間、資金調達の手段が絶たれ、経営が行き詰まります。
③について補足しますと、例えば不動産融資が得意な銀行であれば100%の融資をしてくれる案件でも、不動産融資を得意としない銀行としか付き合いがないと、「融資は6割までしか出せません」と言われてしまいます。
また、「うちは毎月返済の融資しか扱いません」と、自社の資金回収のペースに合わない厳しい借り方を強要されることもあり、結果として「最適な借り方」ができなくなってしまう罠に陥るのです。
解決策:年商100億時点で取引20行を見据える
金融機関のポートフォリオ管理と、経営者自らの目による自社に合った銀行選びが必要です。
【ケーススタディ】例えば、現在年商10億円の会社が最短で100億円企業を目指すのであれば、1行だけで50億円などの巨額の融資を賄うことは不可能です。銀行側にもリスクヘッジの観点があり、シェアを分散させる必要があるためです。
船井総合研究所では、これまでの支援実績に基づく独自の指標として、金融機関が有する貸出金残高の「1万分の1」程度が、1社に対して出せる限界額と考えています。例えば、貸出金残高が10兆円の銀行であれば、10億円程度の借り入れが現実的という計算です。
年商100億円を目指すプロセスでは、最終的に20行程度の金融機関とお付き合いをするような構想が求められます。

自社の成長フェーズに合わせることも重要です。売上が1億円になったからといって、いきなり数十兆円規模のメガバンクにアプローチしても、良い顧客として扱ってもらうことは困難です。
まずは地域の信用金庫をメインにし、借入総額が10億円を超えてくるタイミングで地方銀行へメインの比重を移していくなど、戦略的にシフトチェンジしていくのが定石です。
⑤「なぜかお金がない」会社をつぶすどんぶり勘定
先ほども軽く触れましたが、中小企業のお金が足りなくなる時は、売上が減る時だけではなく「急拡大して資金がショートする時」が非常に多いのが現実です。
売上が伸びることで取引先や取引の総数が増加し、これまで経営者の頭の中だけでざっくりと把握できていた「どんぶり勘定」が限界を迎え、気づいた時にはお金がない事態に陥ります。黒字倒産の前触れです。
帳簿上の売上(利益)が上がっても、P/L(損益計算書)と実際のキャッシュフローには必ずズレが生じます。
売上が立ったからといって、即座に現金が入ってくるわけではありません。事業が多角化して資金の流れが複雑化したり、忘れた頃にまとまった出費が降りかかってきたりと、規模が大きくなるほど、通常は現金の流出ペースが早まります。
例えば、A社に対して売上の大部分を依存している場合を考えてみましょう。A社の支払いサイトが半年後など極端に長かった場合、売上は順調に立っていても半年間ずっと現金が入らない状態で事業を回すことになります。
こうした事態に陥ってから銀行に駆け込んで泣きついても、やはり足元を見られるばかりです。どんぶり勘定は、利益が出てもお金が増えない会社の典型例と言えます。
解決策:まずキャッシュフローを意識せよ

どんぶり勘定の会社が成長するには、月次試算表を用いて、利益ではなく「キャッシュフローの予実管理」への移行をおすすめします。
【事例】多くの商売は「売上が上がったら即座にお金が入ってくる」という世界ではありません。A社のような特定の取引先への依存リスクを計算に入れ、手元資金が枯渇しないための客観的な財務体勢を構築してください。
And、必要であれば「月末締めの翌月末払い」にしてもらうなど、取引条件が自社に不利になっていないかを見直す交渉を行うことも、経営者の重要な役割です。
「会計ソフトを入れれば解決するのでは?」という質問もあります。
ただし、会計ソフトを導入しても、データに基づいた取引条件の見直しや経営判断を行わないままでは、会社のキャッシュがどこかで行き詰まり、いわゆる「勘定合って銭足らず」になる可能性が高まります。
システムを導入するだけで満足せず、実際に活用し、お金の流れを継続的に把握する仕組みを作りましょう。
⑥節税上手は融資下手?「節税対策」という名の浪費
「節税」という名目のもと、無駄なキャッシュを使ってしまっているケースが非常に多く見受けられます。
「利益が出たから税金を払いたくない」という理由で、社用車に高級外車などを買ってしまえば、たしかに税金は減りますが、同時に手元の現金も大きく流出してしまいます。
節約できる税金1に対し現金3を使って、結局のところキャッシュを大きく削っているという、本末転倒な罠です。これはネット通販で「1万円以上買うと10%オフのクーポンがあるから」と、無理していらないものまで買ってしまうのと同じ感覚です。
税金を抑えるということは最終利益を圧縮することに他ならず、結果として会社の「純資産」が全く積み上がっていきません。
純資産が増えなければ、銀行は「業績の割に純資産が積み上がっていませんね」とシビアに判断します。企業格付けが上がらないため、融資の限度額が厳しく制限されてしまいます。
また、本来なら長期で借りたい融資でも「3年ごとの見直しにさせてください」と短期に切り替えられたり、金利負担が増えたりと、将来の資金調達に悪影響を及ぼすのです。
事業のさらなる拡大を狙うなら、目先の節税よりも、キャッシュ最大化を優先する財務体質への転換を図りましょう。
解決策:キャッシュを厚くする財務戦略

過度な節税に走るのではなく、しっかりと利益を出して適正に税金を払い、自己資本を手厚くしていく方針こそが、中長期的な企業の成長に繋がります。
上限の範囲内で全額が経費になりつつ、条件を満たせば現金として引き出せる「倒産防止共済」などの活用は有効ですが、事業に直結しない不要な車両や備品の購入といった「浪費」は直ちに控えるべきです。
⑦付き合い優先の「言い値」発注と相場リサーチの放棄
市場の適正価格から乖離したコストを無意識に支払い続けることで、確実に会社の利益と手元のキャッシュが削り取られていきます。
特に事業を引き継いだ二代目の社長などに多く見られるのが、「父がお世話になっていたと言っていたから」「ずっと長い付き合いだから」と条件を見直さず、自社にとって不利な条件のまま取引が続いてしまっているケースです。
見直しを切り出すと「俺らの友情や信頼を疑っているのか」と角が立つことを恐れ、「相見積もりを取るのが面倒くさい」という理由から放置してしまう経営者は少なくありません。
しかし、自社のコストを客観的に可視化・数値化してみると、不要な契約や、不自然な出費が放置されたままになっていることが多々あります。
地域共生の文脈で、価格が少し高くても地場の業者を意図的に使うこと自体は決して悪いことではありません。しかし、それはあくまで自社と相手先の経営が安定していてこそです。
自社の従業員にコストのツケを負わせてまで付き合いを優先するのは、自社の損失です。そしてぬるま湯商売で相手先のイノベーションを阻害するという意味では、取引先にとっても損失となる絶対NGの行動です。
解決策:見積もりを習慣化、若手に頼むも手

定期的な固定費の可視化と、一定金額以上の発注における「複数社からの相見積もり」のルール化を徹底してください。
銀行が企業に求める事業改善とは、多くの場合「コストカット」を指します。だからこそ、こうした細かな見直しを実行できる経営者は、銀行の目に非常にポジティブに映ります。
売上を無理に上げるよう要求するだけではなく、売上が今のままでもいかに利益が出る体質を作れるか、という点こそが銀行から高く評価されるポイントなのです。自社と従業員を守るために、常に適正価格での取引を追求してください。
「どうしても相手先の心象が…」という方は、思い切って若手社員に仕事を任せてみてください。業界のしがらみを知らない社員が全工程でドライに相見積もりを取ることで、コスト削減につながるケースがあります。
⑧決算書の「格」を落とす役員貸付金の放置
役員貸付金(会社が社長個人に貸したお金)という項目が決算書に載っている場合は最大限の注意が必要です。
オーナーの権限が強い中小企業では、例えば「子どもの学費のために、少し会社のお金を借りてしまおう」といった公私混同の資金移動が安易に行われてしまうことがあります。
しかし、役員貸付金が貸借対照表に載っているだけで、銀行は「そんな会社に貸したら社長に流れてしまう」と判断し、決算書は極めてネガティブに評価されます。
銀行が役員貸付金を強く警戒する理由は、大きく分けて2つあります。
- 1つ目は、融資した資金が社長個人の口座に入った後、何に使われているか全く追跡できない点です。極端な話、夜の街での遊興費に流れているのか、反社会的勢力に流れているのかさえ、銀行には見えません。
- 2つ目は、これらの勘定科目が「経理の調整弁」として悪用されるケースがある点です。 帳簿の数字が合わない、あるいは使途不明金がある際に、とりあえず仮払金や役員貸付金として処理してしまう会社が存在します。
これでは決算書の信憑性そのものが失われ、銀行としては、ガバナンスのきいていない不透明な会社に見えてしまいます。
解決策:貸付金は速やかに精算
銀行から見て疑問の余地がない、クリーンな決算書を作りましょう。
上場企業並みの厳格な基準にするのが難しくとも、貸付金を放置せず、速やかに清算するガバナンス体制を即座に導入しておきたいところです。
なお、逆のパターンとして、役員借入金(社長が個人の資金を会社に入れている状態)があります。これについては、「経営者が自社に対して本気でコミットしている」「社長が自腹を切って会社を支えている」と見なされるため、基本的には銀行からプラスに評価されます。
最後に、チェックリスト型の画像をご用意いたしました。ダウンロードしてご活用ください。

関連記事一覧
※ご注意:関連記事の閲覧には、社長onlineの有料会員(スタンダードプランまたはプレミアムプラン)登録が必要です。
▶ 登録はこちらから

