「なんじゃこの会社は」からの改革。年商2倍 / 生産性3倍 / 粗利4倍にした経営と人材育成
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2026.08.05
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- 13年間で年商が2倍、1人当たりの生産性が3倍、粗利は4倍…。そんな業績を叩き出す浜島防災システム(愛知県豊川市)の強さは、「粗利ファースト経営」と、それを支える人材育成にあります。いかにして高粗利体質への転換を遂げ、若手を即戦力へと育て上げているのか。社内で交わされる「2つの合言葉」とともに、浜島豊博社長に聞きました。
浜島防災システム株式会社 浜島豊博社長
執筆:船井総合研究所社長online編集部 山内淳史
INDEX
「粗利ファースト」で年商2倍、生産性3倍、粗利4倍

浜島防災システム 営業企画本部(筆者撮影)
京都の伏見稲荷、茨城の笠間稲荷とともに「日本三大稲荷」とされる豊川稲荷。そのすぐ近くに、浜島防災システムは拠点を構えています。
同社は建物の消防設備の設計・施工とメンテナンスを行う会社です。設計から施工、消防署対応、定期点検、改修工事に至るまでを一括対応。自社工場での資材加工も行い、顧客のニーズに応えています。
近年では、節電機器「ecomo」の導入支援や、AIシステム「業績覚醒AI」の外販など、新規事業にも注力しています。
そんな同社の業績は極めて順調です。この13年間で年商と粗利率は約2倍、1人当たりの粗利(付加価値労働生産性)は約3倍、そして全社の粗利は約4倍に達しています。
この状態を実現した背景には「粗利ファースト経営」と「若手育成」という同社の2つの戦略があります。詳しく見ていきます。
- 2012年: 売上:19億7200万円 / 粗利:4億4300万円 / 粗利率:23% / 1人当たり粗利:763万円
- 2025年: 売上:37億3300万円(約2倍) / 粗利:18億9000万円(約4倍) / 粗利率:50.6%(約2倍) / 1人当たり粗利:2172万円(約3倍)

※1人当たりの生産性は13年で3倍近くまで成長。特に2021年以降が伸びている
浜島防災システムの粗利ファースト経営
同社も、かつては利益率の低さに苦しんでいました。
「なんじゃ、この会社は。売上のことしか言わないじゃないか」
これは、1990年に浜島豊博氏(現社長)が家業である浜島防災システムに入社した際に抱いた感想です。
当時の財務はどんぶり勘定そのものでした。売上こそあったものの、原価管理の概念がなく、バブル真っ只中にもかかわらず、利益が残らない体質に陥っていたのです。
そこで浜島氏は、自ら営業に奔走しながら社内改革を手掛けることになります。
①施工のプレハブ化
まず手を付けたのは、生産体制の効率化でした。
一般的な消防設備の施工現場では、職人がその場で調整しながら作業を進めます。しかし、これが効率化を阻むボトルネックでもありました。
この課題を解消するために、常務時代の浜島氏が実施したのが、施工プロセスのプレハブ化です。
「職人さんって、現場で『どう施工するか』を考えると、必ず手が止まるんです。だったら、職人が現場で考えなくても施工できる仕組みを作ってしまえばいいと考えました」
あらかじめ工場側で加工を済ませたパイプにすべて番号を振り、現場に持ち込む。職人はそれを指示通りに繋ぎ合わせていくだけで済み、迅速に施工が進む仕組みとしました。

同社HPより
これを実現するために必要だったのが、新たなパイプ加工工場の設立でした。父親である先代社長からは猛反対されましたが、浜島氏は「返すときは俺が返すんだから!」と説得し、資金を調達したといいます。
同時に、原価管理も徹底しました。約500品目にのぼる資材の価格交渉を行い、なあなあで済ませていた仕入れ先を見直し、最も安い仕入れルートへと抜本的に刷新したのです。
▼ 記事の後半では、こちらについて紹介しています。
☑ ゲーム感覚で粗利を競い合う仕組み
☑ 若手を即戦力にする「2つの合言葉」
☑ 引退後も「AIになって若手育てる」未来構想
②ゲーム感覚で粗利を競う
2004年以降、同社には徐々に新卒社員が入社するようになりました。全社員に「粗利」を意識してもらうべく導入したのが、各社員の受注粗利が閲覧できるシステムです。
特にこだわったのは、リアルタイムで業績を反映すること。
「翌月になってから『先月はダメでした』というデータが出ても、もう手の打ちようがありません。リアルタイムで可視化することで、その月の改善がすぐにできます」

※一部加工
システムには遊び心のあるプロフィール画像やスタッフごとのニックネームを採用。社内のディスプレイや社用iPadなどからいつでも最新動向を確認できるようにし、ゲーム感覚で仕事を楽しめる工夫を施しました。
浜島社長自身も、ゲーム性を高めるために積極的に関わります。業績好調な社員にはどんどん電話を入れ、「新記録の月だな。どこまで行くの?」と聞き、成績トップと2位の社員が入れ替われば、すかさず「お前、抜かれたぞ!」と発破をかけ、上位陣の競争を促します。
③ボーナスはしっかり、1,000万プレイヤーも
もちろん、成果を上げた社員には、賞与という形でしっかりと報います。
同社の評価制度は8段階(SS・S・A・B+・B-・C・D・E)に分かれています。賞与は年2回支給され、課長クラスの上位評価者になると、1回の賞与は400万円超。年収1,000万円を突破する社員も複数存在するといいます。
高い賞与を出せるのには、理由があります。
同社は、あえて毎年30〜50%という高い成長目標を掲げています。
5%、10%程度の成長目標では、気合いと根性だけでカバーできてしまい、結果として社員が疲弊するだけです。なにより、頑張った成果が賞与に反映されなければ、仕事へのモチベーションも高まりません。
野心的な目標を設定することで、「今までのやり方では絶対に達成できない」と社員に気づかせ、仕事の仕組みそのものの変革を促すことが狙いです。
こうして毎年100万円規模で「1人当たりの生産性」を向上させ、賞与の元手の一部としているのです。
浜島防災システムの若手育成
浜島社長の人材育成の根底には「機械は性能通りにしか動かないが、人は教え方次第で劇的に生産性が変わる」という考えがあります。
そこで実行に移したのが、若手を徹底的に鍛え上げ、その成長を中堅・ベテランへのプレッシャーへと転換し、組織全体の業績を底上げしていく手法です。
①若手を育てる2つの合言葉
同社が若手を育成する際、軸としている合言葉は2つ。「値引きは罪悪」と「仕事はチョロい」です。
(1)「値引きは罪悪」
防災機器の設置やメンテナンスは、商品自体での差別化が難しく、価格競争に陥りやすい業態です。
だからこそ、全社員に次の合言葉を強く浸透させました。
「値引きは罪悪」
安易な値引きに頼るのではなく、「人で差別化する」ことを徹底するのです。例えば、若手には具体的な行動として次のことを教えます。
- 商談や名刺交換を終えたら、すぐに手書きのお礼状を送る。
- 見積もり対応やメールの返信速度を他社より早める。
- 見積書を提出したら、必ず電話を入れる。
- 話を聞く時は、きちんと頷く。

若手が作成した手書きのお礼状 ※一部加工
さらに、AIも積極的に活用します。商談前にAIへ相手企業のホームページ情報を読み込ませ、業界特有のニーズや、先方に掛けるべき「前向きな言葉」「決裁者が喜ぶ言葉」を提案してもらうのです。
こうした工夫の積み重ねにより、若手社員も値引きというカードを切ることなく、自らの「人間力」で仕事を取ってくるといいます。
(2)「仕事はチョロい」
若手には、とにかく成功体験を積ませることを重視しています。先述の手書きの手紙や素早い返信も、成功体験につなげるためのもの。だからこそ「実行すること」を重視します。
「最初から結果は求めません。まずやってみる。やってダメなのはいいが、やらないのは絶対にダメ」
ただやらせるだけでなく、結果責任は経営陣が持ち、実行責任は若手が持つという責任関係も明確に伝えています。これにより若手は「結果が出なかったらどうしよう」という恐怖やプレッシャーを感じることなく、積極的に行動を起こすことができます。
また、「仕事は難しい」「自分にはできない」といった勝手な思い込みを排除し、成長を引き出すために、2つ目の合言葉を設定しました。
「仕事はチョロい」
「値引きは罪悪」と同様、社員全員が条件反射的に答えられるほど、社内に深く浸透しています。

画像:生成AI
外部研修への投資も積極的です。今期の研修費は約1億円。1人当たり約200万円を投じています。入社1年目の社員に対して研修費だけで1,000万円以上を投じるケースもあります。
福利厚生も手厚く整備しています。「一流が分からないと、仕事も三流になる」という信念のもと、社員が自由に使えるリゾートトラスト等の会員権を開放。さらに三河湾でのクルージング用の船、ジェットスキーなども会社で所有し、プライベートで「一流」に触れる環境を提供しています。
②内定すぐに「儲けの仕組み」を浸透
若手育成に並々ならぬこだわりを持つ同社。育成は、入社前からすでにスタートしています。内定から入社までの間に研修を6回実施し、「儲けの仕組み」を叩き込むのです。
説明に使うのは、次の資料。視覚的に儲けの仕組みがわかるようにしています。
画像をもとに、教えるのは主に次の3点です。
- 粗利の構造: 売上から、変動費(原価)を引いたものが粗利となる。
- 経費と利益: 粗利から必要経費を引いた残りが利益となる。
- 客平均粗利の向上: 粗利を増やすためには、購買頻度・買上点数・1点当たりの粗利を増やすことが重要。
研修を経た新入社員は、入社した時点で早期に稼げる人材になるための「粗利思考」が備わっており、いち早く戦力化できるのです。
③ルーキー伸ばす「ヒーローインタビュー」

画像提供:PIXTA
予算達成者に対しては、会議の場で「ヒーローインタビュー」を実施しています。個人の成功要因をナレッジとして抽出し、全社に展開するためです。
「成績が悪い人を責めるような会議は一切しません。できている人を称賛し、なぜうまくいったのか、そのプロセスを全員で共有するようにしています」
また、定期的に「若手勉強会」を開催。儲けの仕組みの落とし込みから、具体的な営業手法、顧客ニーズの洗い出しに至るまで、社長自体が直接教え込んでいます。
値引きは罪悪 / 仕事はチョロい / 若手を伸ばす / 一流を教える
こうした育成策が功を奏し、結果として「入社4年目で平均年収600万円以上」を実現。たとえば、以下のような人材が活躍しています。
【事例】若手社員の活躍
- 山河洋平さん(入社6年目): 業務の欠点を見直して提案力を高め、入社4年目には年収670万円に到達。現在は大規模案件も任されるリーダーとして活躍しています。
- 田崎凜太郎さん(入社6年目): 現場での判断力を磨き、入社以来目標未達はゼロ。55カ月連続達成を継続し、4年目で年収750万円を実現しました。
引退後も「AIになって若手育てる」

浜島豊博 社長
現在、浜島社長は将来的な事業承継を視野に入れ、eラーニングによる教育コンテンツの整備と、「AI浜島社長」の開発を進めています。自身の経営思想や判断基準をすべてAIにインプットし、社長が第一線を退いた後も、質の高い人材教育を継続できるようにする狙いです。
浜島防災システムの改革は、決して特別なウルトラCではありません。全社員に「儲けの仕組み」を理解させたうえで、粗利の可視化、原価管理、若手への投資、泥臭い営業、そして成果への報酬というサイクルを整え、循環させること。これこそが、同社を成長に導いた最大の原動力といえそうです。
【取材協力】
社名:浜島防災システム株式会社
本社:愛知県豊川市牛久保町常盤18-3
創業:1960年2月
設立:1967年2月
代表者:代表取締役 浜島 豊博
資本金:4,050万円
売上高:37億5,900万円 ※2025年6月期
従業員:75名 ※2026年6月時点
事業内容:
・防災事業(建物の用途に応じた消防設備の設計・施工)
・メンテナンス事業(消防設備の保守点検)
・営業企画事業(省エネ商材・AIシステムの提案など)
浜島豊博 社長
1963年愛知県生まれ。フルコミッション型の会社で営業を経験したのち、1990年に家業の浜島防災システムに入社。3カ月で社内2位の実績を上げ、年間1億円の粗利を稼ぎ出す。1993年、常務取締役。2000年、代表取締役。
