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経営者の1日を26時間にする方法

2026.06.27
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経営者の1日を26時間にする方法

経営者の仕事は、会社の成長と価値の最大化を「やり続ける」ことです。そのために、経営方針の決定から、人材採用と育成、財務管理など、やるべきことは山積みのはずです。しかし現実には、雑務に追われて本来の仕事である「意思決定や、事業構想にかける時間が圧倒的に足りない」という経営者は多いです。

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DXが進み、AIも登場しているのに、なぜこれほど時間に追われているのでしょうか。その原因をコーチングの専門家・吉田幸弘さんは「形式上の会議・面談に時間をかけすぎている」と言い、組織づくりのプロ・安斎勇樹さんは「社員の能力を活かしきれていない組織構造にある」と指摘します。そこで本記事では、経営者個人が行うこと、そして組織づくりという2つの方向から「未来を創るための2時間」を確実に捻出し、経営者の1日を26時間にする方法を紹介していきます。

執筆者:フリーライター 前川亜紀

まずは会議と参加人数を減らそう

「時間が足りないと嘆く経営者も、2時間程度の余裕はすぐにできるようになります」とコーチングのプロ・吉田幸弘さんは話します。

吉田さんによると、経営者に「時間がない」原因は3つあります。
・不要な会議
・社内の情報伝達スピードが遅い
・現場仕事を手放せない

1つは、「不要な会議」です。会議に役員や管理層のエネルギーと時間が取られていると、回りまわって経営者の負担増につながっていくといいます。

吉田さん「成長が停滞している会社に共通するのは、会議が多いという点。役員や管理職の中には、自らの不安を解消するために会議を開く人も少なくありません。情報共有することで、リスク対策や新しいプランが出る可能性に期待する気持ちもわかりますが、実際はそうでないことが多いです」

そこでまず着手したいのは、会議の実態を調べ、出席人数が多いものや、出席者が重複しているものを削減することです。

吉田さん「会議を整理すると、それぞれが自分の仕事に集中できるようになります。効率的に仕事が回り、会社全体の負担も軽くなります。管理職や役員から有意義なプランや、精度の高いデータが上がってくることも増えていき、経営に集中することができるはずです」

そのほか、売り上げに直結しない日報作成、報告書作成、打ち合せもできるだけ減らしていきたいものです。

吉田さん「特に1on1(1対1のミーティング)のやり方は見直したほうがいいです。上司と部下が本音で話す可能性は少ない。形式的な1on1よりも日頃からの声がけや、15分程度の相談時間を頻繁に設定したほうが、有意義な話ができます」

「社長の威厳」は百害あって一利なし

次に意識したいのは「威厳を持たない」こと。経営者というのは、どっしりとかまえ、凛としていたほうがいいと思ってしまいがちですが、組織運営においては、百害あって一利なしだといいます。

吉田さん「経営者や役員、管理層に威厳があると、部下は都合が悪いことを隠すようになります。人は怒られたくありませんし、恥をかきたくない生き物です。上層部が話しかけやすく、明るくチャーミングな雰囲気をまとっていたほうが、不正や隠蔽が起こりにくいです」

社内ではできるだけ笑顔を保って話しかけやすい雰囲気をつくったほうが、トラブルが減り、人も情報も動いていきます。これは単なる親しみやすさの演出ではなく、トラブル対応コストを減らすための自己プロデュースです。良い情報も悪い情報も、いち早く入手することで、経営者の負担が減り、事業構想に充てられる時間が増えていきます。

また、経営者だけでなく管理職以上の役職者についても同じだと言います。

吉田さん「今の20〜30代は「相手が怒っているかどうか」を過度に気にする傾向があります。最近は、管理職の『メールの文面が怒っているような気がして怖い』という理由で、心の病になり休職したり、退職したりするケースが増えてきています。管理職全体に、文章で意思疎通する「テキストコミュニケーション」のアップデートをさせた方がいいと思います。絵文字を使わせるだけでも大きく変わるので、やってみてください」

人が辞めない会社は、結果として経営者の採用負担も軽くなります。

吉田さん「さらに、チャットやメールではなく、管理層から部下に直接話したり、電話をかけるようにさせると部下の心理的安全性を確保できます。口頭の方が、人となりがわかり、安心するようです」

「俺(私)がやらなければダメだ」を脱する

最後に、時間がない経営者の共通点は、現場で仕事をしていることだそうです。

吉田さん「なかには『社長なのだから頑張らないと、社長は忙しくて当たり前だ』と思い現場仕事をしている人がいますが、それは経営者の仕事ではありません。経営者がやるべきことは、未来を想定して事業を創出し、会社の価値を高め続けることです」

経営者が陥りがちなのは、部下だけでもできる仕事への関与や、「自分が好きだから」という理由で現場に入ってしまうことだといいます。

吉田さん「経営者が現場に入ると、周囲は気遣い、生産性が下がる場合もあります。任せたら関与せずに、経営に専念する。これが、次のリーダーを育てることにもつながっていくのです」

時間がないと嘆いている方は、まずこの3つを始めてみましょう。時間を生むだけでなく、社内の風通しもかなり良くなるはずです。

こうして物理的な「2時間」を確保できても、従業員が社長に依存する構造のままでは、またすぐに時間は奪われてしまいます。確保した時間を一時的なものではなく、「永続的な未来への投資時間」にするには、組織そのものの在り方を変える必要があります。

次はいよいよ経営者の理想でもある「自走する組織作り」に取り組んでいきましょう。ここからは、組織づくりのプロ・安斎勇樹さんに詳しく伺いました。

+2時間を維持するには、価値観のアップデートが必要

なぜ「自走する組織」が理想形なのでしょうか。

組織が停滞していると、経営者の負担は増えていきます。現場で完結すべき問題が次々と経営層まで上がってくるようになるからです。経営者は、自律的に動かない現場を回すために、細部まで指示を出さざるを得なくなり、結果として時間に追われるようになっていくのです。

このような状態から脱するには、組織に対する価値観をアップデートすることが重要です。

安斎さん「まず大切なのは、これからの組織運営は競争ではなく「冒険」だと意識を切り替えることです。かつては、兵力を率いて敵国に勝利する軍事的世界観でしたが、これからは、新しい価値を探求する「冒険的世界観」で運営することが必要なのです」

この背景には、価値観の多様化が進む社会と、不確実性が高いビジネス環境が加速していることがあります。

安斎さん「かつてビジネスは「領地の奪い合い」でしたが、今は「仲間と協力しながら、可能性を探求する活動」になりつつあります。例えばビール業界です。かつてはシェアの奪い合いをしていましたが、今は会社の垣根を超え、業界全体で『ドリンクがあるシーンを盛り上げていこう』という取り組みが行われています。これは、多くのユーザーに受け入れられ、新しい価値を生み出しています。ビール業界に限らず、このようなケースが増えていると感じています」

ライバル同士でありながら、互いの長所を生かして新しい事業を行い、価値を創造する。まさにこれは「共に冒険する仲間」だからこそ達成できることです。

これは会社内でも同じことがいえます。従業員がそれぞれ「冒険者」として仕事をすることができれば、組織は自発的に動き始めます。このように、柔軟な発想と行動ができる組織になっていくために、経営者は何をすればいいのでしょうか。

観察と面談で個人の力を引き出す

安斎さん「まず社員個人の特性を把握しましょう。社員の仕事ぶりを観察し、どの仕事を楽しそうに行っているか、どこにこだわりがあるのかを見極め、過去の評価と照合してください。すると、意外な一面が見えてくるはずです。例えば、かつて苦手だった仕事を克服し人並み以上にできるようになっていたり、上司が『これは好きで得意だろう』と任せていた仕事に飽きていたり……。こうした人と仕事のミスマッチは、離職という大きなリスクもはらんでいます」

なぜ今、あえて個人にフォーカスするのでしょうか。

それは今後、社員それぞれの好奇心や関心に基づいた「自己実現を探求すること」が、結果として組織全体に還元されていく時代だからです。個々のモチベーションや能力を高めることは、組織の大きな強みになります。

経営者は、この観察をもとに面談を行い「この仕事に興味はないか」「過去、最も充実していた仕事はどれで、それを再びやってみないか」などの、具体的な選択肢を用意しておくことが大切だといいます。

安斎さん「選択肢を用意するのは、社員は上層部になかなか本音を言わないからです。しかし、選択肢があると、意見も言いやすくなります。経営者にとっても、選択肢がフックとなり、社員の潜在能力ややる気に気づいたり、あるいは隠されていた問題点を発見するきっかけになるでしょう。 この社員面談は、これからの組織運営に必要な『社員の内側から湧き上がる興味や関心に従い、自発的に行動する原動力』を引き出します。これには時間も手間もかかりますが、費やした以上のリターンが得られます」

ここでいうリターンとは、経営者が指示を出さなくとも「自走し、イノベーションを生み出し続ける組織」に進化することです。とはいえ、ただ個人の力に任せるだけでは、その能力を生かしきることはできません。一方で、組織としての大きな方向性も必要です。

安斎さん「面談と同時に、自社の『事業ケイパビリティ(組織的な強みや他社にはない競争優位性)』と『組織アイデンティティ』を探求してください。会社の核となる部分に、個々が実現したいことを重ねていくのです。すると、どんなに厳しい環境でも冒険を続けることができる、強い組織になっていくでしょう」

こうした取り組みは、社員個人のキャリア構築にも有益であり、会社へのロイヤリティも高まる傾向があるといいます。

そのほか、大きな目標を設定し、社員全体と共有することも有効だそうです。

安斎さん「売上目標や、大きなオフィスビルに入居するといったわかりやすい目標もいいですが、『実際に社員が求めていることを実現する』という目標も素晴らしいと思います。例えば、『社内のルールを半分にする』『リモートワークを認める』など、目標になることは多々あるはずです。個人が未来への希望をもって働く組織は、可能性を拡大していきます。こうした組織づくりを続けていけば、経営者が現場に張り付く必要がなくなり、自ずと時間の余裕が生まれてくるはずです」

以上の「組織のシフトチェンジ」は、経営者にしかできない仕事です。

まずはこれに集中し、社員はもとより、社会全体が良い状態になる組織を目指していきたいものです。やがてその挑戦は、ニーズの拡大と売上の向上、そしてなにより経営者が「長期的な戦略設計」「未来への投資」に没頭できる、「価値ある時間」につながっていくはずです。

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