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船井総研の事例に学ぶ「生産性を上げる」最新オフィス戦略と3つの潮流

2026.06.20
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船井総研の事例に学ぶ「生産性を上げる」最新オフィス戦略と3つの潮流

今回は、船井総研の大阪オフィス移転事例を基に、オフィスでの生産性を高める仕掛けと、オフィスを構築する際に失敗しないための手法や考え方、そして令和のオフィスにおける「3つの新潮流」を紹介します。解説は、船井総研をはじめ数多くのオフィスデザインを手掛けてきた、株式会社MTUSの道本京子社長です。

INDEX

解説:株式会社MTUS 代表取締役 道本京子

「どうやったら社員がオフィスに来てくれるか」

道本社長は「オフィスデザインという概念は、20年前は一般的ではありませんでした」と言います。当時、空間デザインの主流は住宅や店舗であり、オフィスはあくまで店舗の一部として扱われる程度。オフィスデザインという領域は、まだ黎明期にありました。

昨今大きく変化が訪れたのはコロナ禍です。社会的にも働き方が大きく変化することで、業界にとっても、経営者にとっても、大きな転換点が訪れました。

「極端な言い方をすれば、コロナ前は『その会社らしい、おしゃれな雰囲気』があれば十分でした。機能性よりも、見た目のコンセプトやブランディングが重視される傾向にあったのです」(道本社長)

ところが、在宅勤務が浸透した社会において、企業は新たな課題に直面しました。どうすれば、社員がオフィスに来てくれるか?という問いです。

これは、以前には想定もしなかった課題であり、オフィスデザインに大きな変化をもたらしました。コロナ禍を経た現在、「このオフィスで何を実現し、何を生み出すのか」という、より本質的な問いが重視されています。

令和のオフィス 3つの傾向

道本社長によれば、現在のオフィスデザインには共通する3つの傾向が見られます。

①出社率ありきの設計

全社員の毎日出社を前提とせず、出社率を見越したスペース配分を行うこと。これにより、余剰スペースを別の機能へ転用可能になります。実際、船井総研ではオフィスの約半分をセミナーや打ち合わせスペースとし、執務エリアにあたる残り半分は、リモートワーク併用を前提とした弾力的な運用を行っています。

②コミュニケーションの質を高める作り

オンラインでは補いきれない「リアルな対話」を促進するため、費用をかける場所をイスや机といった「設備」から共創を行う「場」へシフトさせること

③Webミーティングへの適応

個室ブースの設置など、快適にWeb会議ができる環境を整備すること。

3つご紹介しましたが、これらはあくまで傾向の話です。「これを作れば正解」という画一的なモデルは通用しなくなっており、企業ごとの文化や課題に合わせた、オーダーメイドなオフィス作りが求められています。

船井総研が大阪で実現した「生産性UP」カギは健康

船井総研は2025年12月に大阪オフィスをそれまでの淀屋橋から梅田へ移転しました。
船井総研の大阪オフィスには、生産性を高めるための仕掛けが随所に施されています。そのポイントの1つは、正しい姿勢で仕事しつつ、時折体を動かすことができる「健康」への配慮にあります。

①昇降式デスクを配置


画像:船井総合研究所 大阪オフィス(サステナグローススクエア OSAKA)一部加工

生産性と健康は切っても切り離せない関わりがあります。例えば長時間のPC作業によって発生する肩こりや、座りすぎによる身体への悪影響は、周知の通りです。

そこで大阪オフィスでは、健康を維持しつつ生産性を高めるオフィス家具を入れています。代表例が「昇降式デスク」の導入。大阪オフィスでは、昇降式デスクをデスク全体の6分の1程度に導入しています。スイッチを押すことで天板が上下し、体型や立つ・座るなどの姿勢に応じた高さに調整できます。

その理由は、日本の標準的なオフィスデスクの高さと仕事道具にギャップが生じるようになったため。道本社長は「日本のオフィスデスクの標準的な高さは72センチなのですが、これはデスクトップパソコンを使用する前提で設計されたものなんです」と指摘します。


画像提供:PIXTA

72㎝が推奨されるようになったのは1999年(日本オフィス家具協会)。当時、PCの主流はデスクトップ型で、徐々にノートPCにシフトし始めた頃でした。現在、ノートPCが普及し、さらに薄型化が進んだことで、ディスプレイの位置に対してデスクの低さが目立つようになりました。船井総研でも、ノートパソコンの下に台を置き、高さを調整する社員の姿が見られます。

昇降式デスクを使えば、社員が最適な高さで作業できるようになり、姿勢改善や肩こりの軽減が期待できます。また、スタンディングワークによる集中力の持続や健康維持にも寄与します。

②デスク一体型フィットネスバイクを配置


画像:船井総合研究所 東京オフィス(サステナグローススクエア TOKYO)

ユニークな試みとして「バイク型のエクササイズ器具」も設置されました。デスクとフィットネスバイクが一体型になっており、ペダルを漕ぎながらデスクワークができるようになっています。

「仕事中に体を動かせる環境を整えることで、眠気を防ぎ、生産性を上げる狙いがあります」と道本社長。座りっぱなしではなく適度に体を動かすことで健康面でもメリットがあります。さらに、窓際などの一部の席にはヘッドレスト付きの椅子を配置し、快適に働ける環境としています。

③「体験の平均化」設備を散らして配置

大阪オフィスのもう一つの特徴は、その細長い形状です。全幅は最も広い場所で29メートルに対し、全長は約100メートル。オリンピック選手が全力疾走しても10秒弱かかる距離です。移動自体が負担になりかねません。

それを逆手にとり採用したのが「体験の平均化」です。Webブースや昇降デスクといった機能を一箇所に集約せず、オフィス全体へ分散配置しました。これは「半径十数メートルの範囲に必要な機能が揃っている状態が、最もストレスが少ない」という知見に基づいています。

設備を散らすことで、社員は用事のために短距離移動する必要性が生まれ、結果として健康的な動作や気分転換につながります。移動を促しつつ、どのエリアにいても不便を感じさせない工夫です。

最大の決め手は経営者に求められる「想い」

オフィスリニューアルを成功させるために最も重要なのは何か。道本社長の答えは「想いを持っていただくこと」

事業に対する情熱と同様に、オフィスに対しても「想い」があれば、明確なコンセプトが生まれます。コンセプトが固まれば、プロジェクトはブレることなく完結し、結果として費用対効果も高まります。


画像提供:PIXTA

次に大切なのは対話です。経営者、現場、そしてデザイナーが対話を重ね、その会社だけの「最適解」を見つけ出すプロセスこそが不可欠です。船井総研では大阪オフィスの移転に際し、52回に及ぶ打ち合わせを実施しました。

現場との対話を充実させる手法としては、大きく3つ挙げられます。

1. アンケートによる実態調査

最も基本的かつ重要な方法は、実際に働いている社員から不満や改善点を吸い上げるためにアンケートを実施することです。具体的なニーズは会社ごとに異なるため、一概に決めつけず現場の声を聞いてみましょう。

2. 変化に前向きな社員を「仲間」として巻き込む

オフィス改革を単に担当者に任せる、あるいは経営陣だけで決めるのではなく、最適な人員配置で進めるべきだと道本社長は話します。
変化に前向きな社員を見つけ、仲間として一緒にプロジェクトに取り組む体制を作ることが、会社が一つにまとまるチャンスにもなり、良いオフィス作りにつながります。

船井総研の大阪オフィス移転時は、約40名のメンバーがプロジェクトに参画しました。20代の若手から船井総研HD代表の中谷まで、役職も地位も異なるメンバーが様々な意思決定に関わっています。

3. 「思い」と「実務」の対話による役割分担

社長と現場社員では、視点が異なるため、役割分担が大切になってきます。

  • 社長の役割:オフィスに対する想い、実現したい未来、理想の会社像を描くこと。
  • 現場の役割:実務のプロとして、必要な設備や機能、適正数量などの具体的な意見を出し、経営陣と対話を重ねること。

社長の趣味だけで進めれば現場のモチベーション低下を招き、現場の声だけでは「機能」に偏り、未来への投資がおろそかになりがちです。また、デザイナー任せでは業務実態との不適合が生じるリスクがあります。

投資すべきはオフィスの「どこ」だ?


画像:船井総合研究所 大阪オフィス(サステナグローススクエア OSAKA)エントランス

オフィスにどれくらいお金をかけるべきか…という疑問を持つ方も多いと思います。オフィスへの適正予算に明確な正解はありません。坪10万円台に抑えることも、坪200万円をかけることも可能です。

しかし、より重要なのは「総額いくらか」よりも「どこに投資するか」であると道本社長は指摘します。

例えばコミュニケーションの活性化が目的であれば、500万円をオフィス全体に薄く使うより、200万円をかけて特定の箇所をこだわって改装するほうが、リニューアルの効果は高まります。質の高いコーヒーメーカーを設置し、いつでも飲めるようにする。周囲にソファを置き、壁の色を落ち着いた色にする。それだけで人の流れが変わり、会話が生まれます。

そのほかにも、

  • 採用を強化したいなら: エントランスや面談ルームを魅力的にする。
  • コミュニケーションを増やしたいなら: 人が集まる場所に投資する。

「かけられる金額」と「重点投資領域」、そしてそれが課題解決につながるか。このバランスを見極めることが肝要です。

数字に表れる効果、表れない効果


画像:船井総合研究所 大阪オフィス(サステナグローススクエア OSAKA)会議室「エンザリーナ」

オフィスリニューアルの効果は、売上などの数字には直結しにくい側面があります。しかし、採用率の向上や離職率の低下といった「人的資本」の面では、確実に効果が現れると道本社長は指摘します。

「会社が自分たちのために環境を整えてくれている」という実感が、社員のエンゲージメントを高め、組織への帰属意識を醸成します。

「こんなにお金をかけるならボーナスを増やしてほしかった」という声が一部から上がるかもしれませんが、長期的には生産性向上や理念浸透など、長期での効果が望めます。

オフィスリニューアルは単なるコストではなく、企業の未来を形作るための投資であり、会社が一つにまとまるチャンスなのです。

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