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【事例あり】「辞めたい」社員をつなぎ止める“1on1面談術”

2026.06.09
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【事例あり】「辞めたい」社員をつなぎ止める“1on1面談術”

なぜ、給与を上げても、残業を減らしても、社員は辞めてしまうのか?重要なのは、社員が「辞めます」と言うその前、「辞めようかな」の段階で気づけるかどうかです。本記事では、離職率を下げるための「1on1の技術」と「経営者の姿勢」について、実例を交えて紐解きます。

INDEX

なぜ社員は「突然」辞めるのか?


画像提供:PIXTA

昨日まで元気に働いていた社員から、突然「退職したい」という申し出があった。本人に話を聞いてみると、見切りをつけたという「報告」でしかない。引き留めようにも、もう次の職場が決まっているらしい。

「もっと早く言ってよ…」

経営者にとって、決して珍しくない光景ではないでしょうか。

なぜ、社員は急に退職すると言い出すのでしょうか。
実は、社員が退職を決断するまでには、水面下でいくつもの心理的フェーズが存在します。

「やろう!(意欲)」▼
「やらなきゃ(使命感)」▼
「やりたくない(拒絶)」▼
「辞めようかな(迷い)」▼
「辞めよう(決意)」▼
「辞めます(決断)」▼

入社直後のやる気に満ちた時期を過ぎ、日々の業務に追われ始めると、義務感が生じます。それ自体は問題ありませんが、ここで「このまま今の仕事を続けていいのだろうか」という迷いが生じると、心は会社から離れ始めます。

悩みながら過ごすなかで心に決着をつけ、転職活動を経て内定を得る。その段階で、社長に「〇〇が辞めるようだ」と報告が上がります。
そのため、社員が急に退職したような印象を持つのです。

辞める理由上位は報酬・居心地・将来性の不足

では、イマドキの社員はどういった理由で転職しているのでしょうか。
「転職サービスdoda」が2024年8月に実施した調査(n=1059)において、離職理由の上位には以下が挙げられています。


DODA 転職理由ランキング【最新版】 みんなの本音を調査!より引用
【実施期間】2024年8月5日~8月13日 【有効回答数】1,059件

このランキングでは多種多様な要因が挙げられていますが、離職理由の上位項目を分析すると、退職要因は大きく3種類しかないことが分かります。

  • 報酬の不満(自分の働きに対して対価が見合わない)
  • 居心地の悪さ(人間関係、社風、評価への不満)
  • 将来性のなさ(この会社にいても成長できない、先がない)

給与を適正水準に上げることは大前提ですが、人は「給与が高ければどんな苦痛にも耐えられる」わけではありません。
特に注意すべきは「つらさ」の質です。

肉体労働や夜勤といった目に見えるつらさは、社員も覚悟の上で入社します。しかし、人間関係の軋轢やパワハラ・セクハラ・不透明な評価といった「目に見えないつらさ」は、入社するまで分かりません。
そして、この目に見えないつらさこそが、ボディブローのように社員の心を削っていくのです。


画像:生成AI

離職対策においてコミュニケーションが重視される理由は、まさにこの時点でケアをしてあげる必要があるからなのです。

1on1が離職を減らす理由

そこで有効なケア策が「1on1」です。


画像提供:PIXTA

1on1は上司と部下、上司と社員で行われる、社員・部下の定期的な面談です。目的は単なる業務報告の場ではなく、職場の「居心地」を良くするための時間です。
1on1により実現できることは次の2つです。

  1. 居心地が悪い、希望が持てないなどの社員の不満のボトルネックを見つけ、それを解消する
  2. 一人の人間として関心を持ち、「認められたい」という承認欲求を満たす

これにより、社員にとっての会社の居心地が良くなり、離職率が適正化していくのです。
1on1の強みは、社員の生の声を組織の強みに変えられることです。1on1を通じて職場を変えていこうという経営者や上司の姿勢が見えることが大切です。

伝説の社長も実践していた1on1

1on1の本質を表すエピソードとして、任天堂の元社長・岩田聡氏の話があります。
彼が前職のHAL研究所の経営者だった頃、全社員約90人と半年に1回面談を行い、必ず「あなたはいまハッピーですか?」と問いかけていたといいます。


画像:生成AI

従業員の心の健康状態を知り、不安や不満があれば取り除く。そうした対話の積み重ねがあったからこそ、数々の名作ゲームを生み出す強い組織が作られたのでしょう。
(参考:「岩田さん 岩田聡はこんなことを話していた」ほぼ日刊イトイ新聞)

「そうはいっても、自分には岩田さんのようなカリスマ性はないし、任天堂のような給料は出せない」と思われるかもしれません。しかし「1on1」は技術であり、誰でも身につけることができます。
ここからは、誰でも実践可能な引き留め1on1の技術を解説します。

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▼ 記事の後半では、具体的な実践ノウハウを大公開!

☑ 【本音の深掘り】退職をほのめかす社員から「真のウォンツ」を引き出す話法
☑ 【視点の転換】「会社にないもの」ではなく「あるもの」に気づかせる承認テクニック
☑ 【落とし穴の回避】面談の8割を自分が話してしまう「できてるつもり」を防ぐ方法

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1on1を成功させるコツ

①本音(ウォンツ)にアプローチする


画像提供:PIXTA

退職をほのめかす社員を引き留めるには、表面的な言葉ではなく、その奥にある本音(ウォンツ)へのアプローチが必要です。

ある、中古車売買業の会社の事例です。
30代の男性社員が「もっと安定した会社で働きたいので辞めます」と申し出てきたケースがありました。
通常の経営者なら「うちだって安定しているぞ」と説得するか、「そうか、残念だ」と諦めるでしょう。
しかし、大切なのは本質です。その社員に対して「あなたにとっての安定とは何か?」を深掘りしました。

「長く働けること」「給与が良いこと」……
会話を通じて、彼が真に求めているのは雇用の安定そのものではなく、仕事ができるようになって得られる「精神的な安心」であることが判明しました。
「今の仕事を続けてさらに高いスキルを身につければ、その安心は得られるのではないか?」そう問いかけることで、彼は現状から逃げていたことに気づき、「まだここで頑張ります」と翻意したのです。

②あるものを承認する

人は欠けている部分に目が行きがちです。完成したジグソーパズルの1ピースが欠けていればそこばかり気になるように、社員は「今の会社にないもの」ばかりを数えがちです。


画像:生成AI

年間127名の採用に対し、92名が離職していた、ある警備会社のケースです。
転職を考えているスタッフが「スーパーの正社員になりたい」と言い出しました。理由は「寒い警備の仕事ではなく、暖かい室内で働きたい」というものでした。
しかし、1on1で話を深掘りしていくと、その方が仕事で最も重視しているのは、室温ではなく人間関係だということが分かりました。前職も人間関係のトラブルで辞めていたのです。

「スーパーに転職して、人間関係が今より良くなるの?今の職場はどう?」
「今の職場は……人間関係はすごくいいです」
「じゃあ、寒い中でこれまで頑張れた理由は何?」
「仲間が良いからですかね?」
「そうだね。そして、君がいるからこそ、事故が起こっていないんだよ」


画像提供:PIXTA

このように「ないもの(室内の快適さ)」ではなく、「すでにあるもの(良好な人間関係)」に目を向けさせることで、今の環境を再認識したそのスタッフは、残留を決めました。
なお、この会社では、1on1導入後4ヶ月間、離職者がゼロになるという成果が出ています。

「できてるつもり」が一番危険

1on1の技術を学ぶ上で難しいのは「自分は部下の話をよく聞いているつもりだ」というバイアスが働きやすいことです。
1on1は密室で行われるため、経営者が自らのスキルを客観視するのは難しく、むしろ上司が一方的に話す「説教」になったり、単なる雑談で終わったりする失敗談も多く聞かれます。


画像提供:PIXTA

コツは「AIに添削してもらう」

そこで有効なのが、AIによる解析です。
船井総研では、実際の面談動画をAIが分析し、「上司の発話割合」「腕を組んでいる時間」「部下が笑顔になったタイミング」など100項目をデータ化、フィードバックする取り組みを行っています。

AIには忖度がありません。「あなたは面談時間の8割を自分で話しています」「何分何秒あたりから腕組みをして、威圧感を与えています」といった事実を突きつけます。
これにより、初めて人は自分の話し方の癖を自覚し、修正することができます。

あるマネージャーは、部下との1on1に自信を持っていましたが、実際の面談動画を分析すると、ほとんど部下の話を聞いていませんでした。
理想的な「聞く:話す」のバランスは「8:2」と言われます。テクノロジーの力を借りて、自分のコミュニケーションを指導してもらうことも、質の高い1on1への近道です。

最後に大事なのは「姿勢」

ここまで技術的な話をしてきましたが、社員が見ているのは、トークスキルの巧拙ではありません。最も重要なのは経営者の「姿勢」です。

「これまで話を聞いてくれなかった社長が、自分たちのために変わろうとしてくれている」「時間を割いて向き合おうとしてくれている」。その事実が、社員の心を動かします。


画像:生成AI

社員の気持ちを強引に変えようとする前に、まずは自分が変わる。その熱意と行動が伝わった時、社員は「もう少しこの会社で頑張ってみよう」「期待してみよう」と、思いとどまってくれるのではないでしょうか。

執筆者プロフィール

  • 中川 貴司(船井総研ホールディングス・グループカルチャー推進室エキスパート)
  • 金融機関、ファシリティサービス、コンサルタントとして20年以上にわたり中小企業支援・組織運営に従事。現在は企業・団体向け1on1、マネジメント研修、コーチング研修を手掛ける。また少林寺拳法道場を主宰し数多くの世界大会出場者を輩出するなど「人を育てること」に40年近く関わり続ける。

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