社長の4割が引退後も個人保証?資産を残す事業承継の秘訣
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2026.07.27
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- 「社長のお金」シリーズ、今回は「引退後の社長のお金の悩み」に関する調査結果とその解決策について、お届けします。
執筆者:船井総合研究所 中野 宏俊
INDEX
社長の悩みの1つに「いつ引退するか」があります。
後継者がいない、まだまだ自分がいないと会社はおぼつかない、そのような理由から引退は遠い先のことと考えている社長も多いでしょう。
その一方で、息子や娘、優秀な従業員を後継者にでき、会社も軌道に乗っているにもかかわらず、経営から離れられない社長もたくさんいます。
一体どのような理由から、社長は経営から離れられないのでしょうか。その理由を見ていきましょう。
引退の足かせは社長の「収入の減少」への不安
みずほ情報総研株式会社が発表した「平成30年度中小企業・小規模事業者の次世代への承継及び経営者の引退に関する調査に係る委託事業」報告書に、興味深いデータがあります。
同報告書は、中小企業・小規模事業者の経営者を引退した人へアンケートを行い、有効回収数4,984件の回答をもとに作成したものです。
その報告書によると、経営者が引退を決断した際に懸念したこととしてもっとも大きいものが「自身の収入の減少」でした。
その割合は、事業が継続していない状態の会社ほど高く、継続していない会社の社長が回答した割合は54.4%に及びました。
その数値は、事業が継続されている会社では下がりますが、事業すべてが継続しているところでも回答割合は40.4%に上ります。引退することでそれまで経営者として得ていた収入を得られなくなることに不安を覚える社長が多い実態が明らかになりました。
また、経営者を引退するからといって、会社に関するお金の問題から完全に解放されるわけではありません。
先ほどの報告書によると、多くの企業に金融機関からの借入金があります。借入金の保証について見てみると、総じて「経営者本人の個人保証」の回答割合が高い傾向にあると、結論付けられました。
また、借入金の担保はどこから出ているかというと「経営者本人の個人資産を担保提供」の回答割合が42.7%を占め、「会社のお金は社長のお金」の構図が明確になっています。
引退した後であっても、4割強の社長において個人資産の担保設定が残っているのが実態です。
このように、経営者のお金の問題は、自身が引退を決めたあともつきまといます。
会社が傾くまではいかなくとも、子どもに事業を承継したあとで、銀行からは「お父さんからの援助は期待できませんか?」というように、融資の際にアテにされるのはしょっちゅうです。
会社に後継者が見つかっても、そのようなお金の解決策がない以上、引退しようにもできない、という経営者がたくさんいます。
「サラリーマンと違って退職金もないし、辞めたあともいざとなったら金を出さないといけない」
引退してようやく楽になるかと思いきや、そのようなお金の不安を抱え続けることになる、それが多くの経営者の姿です。
▼ 記事の後半では、こちらについて紹介しています。
☑ 「社長の引退後問題」を解決するためできること
☑ 退職金の税制上の3つのメリット
☑ 株式譲渡を活用した手取り額の最大化
「社長の引退後問題」を解決するためのM&A

画像提供:PIXTA
ここから先は、そのような経営者の課題を解決する具体的な方法を見ていきたいと思います。
お金に不安を抱える社長が懸念している点
- 役員退職金のない社長は引退後、お金が足りるのか心配が残る
- 4割の社長は引退後も個人資産を借入の担保として提供している
これらの課題を解決するために、M&Aを活用する方も多くいらっしゃいます。
社長ご自身の引退のために、事業承継として当然に後継者や会社のことも考えますが、多くはご自身のセカンドライフが今まで通りの生活をしていけるのか不安があるというご相談も、実際に数多く寄せられています。
事業承継のためのM&Aでは、一般的には社長が保有している自社の株式を第三者に譲渡して、自身が退職金を受け取って引退するというスキームがあります。
ご自身が有望だと考える第三者を選び、経営権を委ねるため、専門家を活用しリスクヘッジさえしっかりと行っておけば、会社の株式がお金になるため、選択肢としては有効だと思われます。
M&Aによって役員退職金と株式譲渡の手法を両方活用することにより、一般的に役員報酬として受け取るよりも手残りも多くなるように進められるため、事業承継の際に一度はご検討いただければと思います。
役員退職金が経費(損金)として認められる計算方法
役員報酬額(月額)× 役員在任年数 × 功績倍率 = 役員退職金額
ここでの「功績倍率」とは、取締役の業務として、どの程度会社に貢献したのかに合わせて倍率を設定するものです。
一般的に代表取締役は2〜3倍とされることが多いですが、退職金額が業界平均と比べ極端に高い場合はこの限りにはなりません。役職によって倍率が決まっているわけではないため、顧問の税理士にご相談いただければと思います。
退職金は役員報酬と同様に所得税・復興特別所得税・住民税がかかりますが、税制上のメリットとして、次の3点が挙げられます。
1.退職金は退職所得として分離課税
退職金の場合、退職所得として扱われることから、他の給与所得や事業所得とは別枠で税金が計算されますので、所得合算をせずに所得税・復興特別所得税・住民税の計算を行います。
所得税は累進課税といって、所得が多ければ多いほど税率が高くなっていきますので、他の所得と合算しなくてもよいのはメリットが大きいと言えます。
2.退職金控除として所得控除
退職金からは次の所得控除枠があります。
(※国税庁HP「No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)」より社長online編集部が作成)
これにより課税対象となる所得額が減額されるメリットがあります。
3.退職金から退職金控除を差し引いた後の1/2に税金が課税される
(退職金額 ― 退職所得控除)× 1/2 = 退職所得
となります。よって、退職金から控除枠を差し引いたあとの1/2にのみ、所得税、復興特別所得税、住民税が課税されますので、通常役員報酬や清算配当金でもらうよりもメリットが多くあります。
ただし、退職金の額が多くなればなるほど、所得税率が上がっていき、税制上のメリットは薄くなっていくので、注意が必要です。
次に、株式譲渡の際の譲渡益については、以下の税率が適用されます。
(※国税庁HP「No.1463 株式等を譲渡したとき(申告分離課税)」より、社長online編集部が作成)
実質的には上記の税率に(注)の復興特別所得税を含めると20.315%の税率となり、こちらは他の所得と合算せず、固定の税率として発生するため、通常の役員報酬や清算配当金として受け取るよりも税制上のメリットが多くあります。
ご自身の引退を考えられた際は、M&Aで役員退職金と株式譲渡を上手に活用して、手取り額を最大化させつつ、事業承継を実行するのが、ご自身のセカンドライフも踏まえた効果的な方法となります。
個人資金を増やし、個人資産に対する借入金を完済し、担保設定を解除することで、その後の財産形成をより安全に価値あるものにしていくことがM&Aを活用することで達成できる可能性がありますので、ぜひご検討いただきたいと思います。
※本記事で述べている税金に関する内容は、一般的なケースに関するものであり、実際の税額計算や節税策については税理士にご相談ください。
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