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会社の未来を担う「経営幹部」の育て方

2026.09.10
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会社の未来を担う「経営幹部」の育て方
「優秀なプレイヤーはいるのに、経営を任せられる人材がいない」――特に、推進力と実行力を兼ね備えた経営者ほど、右腕となり得る従業員が育っていないことに肩を落としていますが、幹部が育たない原因は本人の能力不足だけではありません。

解説:船井総合研究所 井手聡

INDEX

「経営幹部不足」が企業の成長を止めている

まずは、経営者の右腕である幹部社員の存在が、企業の成長にどれほど影響するのか、データで確認しておきましょう。

中小企業庁が発表している「中小企業白書」では、信頼できる幹部社員の有無と企業の成長の相関関係を分析しています。それによると、幹部社員が「いる」と回答した企業は、「いなかった」と回答した企業に比べて、売上高増加率の水準が高い傾向にありました。

つまり、幹部社員がいる企業とそうでない企業では、成長速度に差が出るということです。

一方で、幹部をはじめとする人材育成は、経営戦略上、後回しになりがちです。

2024年に行われた、ある調査※によると、「従業員の育成・定着のための施策を行っていない」と答えた中小企業経営者が約7割(68.2%)にのぼっています。
施策を行っていない理由としては、1位「費用を捻出できない(24.8%)」、2位「育成や定着のための施策は不要だと考えている(23.1%)」、3位「何をしたら良いかがわからない(20.4%)」となりました。出典:「従業員の育成・定着」に関する実態調査/合同会社tri 2024年調査

そうは言っても、会社の規模が大きくなるにつれて、幹部の必要性は切実なものになっていきます。

成長企業の支援を多く手掛ける、船井総合研究所のコンサルタント・井手聡は、幹部が必要になるタイミングについて、以下のように話します。

「業界にもよりますが、早い会社では売上2億円を超えたあたりから、経営者に『自分一人では社員全員を管理できない』という感覚が芽生え始めます。そして10億円を超える頃には、拠点や部門を任せられる人材が不可欠になり、30億円~100億円ともなると、各組織や機能を任せる幹部人材が不足しがちになるのが現実です」

業種にもよりますが、売上20億円~25億円あたりに対して幹部人材が1人は必要だと考えていいでしょう。となると、売上100億円規模の企業であれば、社長1名+幹部が3~4名は必要になります。

事業をまるごと任せられる幹部人材を早めに育てておくことは、成長スピードを落とさないためにも必要な経営戦略なのです。

幹部育成を成功に導く、5つの鉄則

幹部を育成するにあたって、まず前提として押さえておきたいのは、「一般社員と経営幹部では、求められている成果が異なる」という点。

営業として高い数字を出せることと、財務・人事・法務なども含めて会社全体のバランスを管理できることは、まったく別の能力です。そのため、経営幹部を育成するには、一般の社員とはまた別のプロセスが必要になります。

では、どのような点を意識して教育すれば良いのでしょうか。

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▼ 記事の後半では、こちらについて紹介しています。

☑ 幹部育成を成功に導く、5つの鉄則
☑ 幹部育成を始める前に、経営者が考えておくべきこと
☑ 幹部育成は、経営者自身の「覚悟」でもある

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鉄則① ジョブローテーションで視野を広げる

まず一つ目は、職種をまたいだ経験を積ませることです。

「たとえば、営業力は群を抜いているが事務作業はからっきしダメ。または、ある職種だけを優遇し、他の職種を下に見るようなスタンスでは、経営幹部は務まりません」(井手)

営業からバックオフィスまで、社内の全部門を把握した上で物事を判断できるような経営のバランス感覚を身につけてもらうために、あえて従来の部署とは違う、別部署に配属することが必要です。

鉄則② 責任と権限を与えて任せる

新規事業にしろ既存事業にしろ、事業を任せることで、幹部力や経営力を鍛えることができます。

「ここで重要なのは、責任を明確にするとともに、権限も渡すということ。『責任は持たせるが権限は与えない』では、主体的に動いて成果を出すことは難しいものです。逆に、何年も任せているのに成果が出せないのであれば、責任者の交代や降格という手を打つべきです」(井手)

鉄則③ 権限移譲後は絶対に口を出さない

一度事業を任せたら、経営者は手も口も出してはいけません。経験豊富で権力もある経営者が口を出すと、幹部候補の社員は遠慮して伸び伸びと意思決定ができなくなり、成長機会が奪われてしまいます。

また、経営者が口を出し続けることで、事業部のメンバー社員たちの指揮系統が乱れ、現場に混乱をきたすのも大きなデメリットです。一時的に売上が下がったとしても、痛みを受け入れ任せきることが重要です。

鉄則④ 育成期間を「投資」と捉える

育成期間中に発生する一見マイナスとも思える状況は、「投資」として捉えましょう

例えば、①のようなジョブローテーションには痛みも伴います。優秀な営業マンをバックオフィスに移動させると、本人が作っていた大きな売上を維持することが一時的に難しくなるからです。また、権限移譲したことで売上が下がったときも同じです。

「そこをあえて受け入れ、育成のための『投資』と捉えて踏み切れるかどうかが、一つの分かれ目になります」(井手)

幹部育成のために、専門のカウンセラーをつけているという企業もあります。慣れない環境で大きなプレッシャーにさらされている幹部候補のメンタルケアを目的にしており、これも一つの投資です。

鉄則⑤「覚悟」を見極める

当人に経営幹部になる覚悟があるかどうかを見極めます。後継者の育成にも共通していますが、ここでいう「覚悟」とは経営能力ではなく、経営に携わる人材としての「心の在り方」「態度」を指しています。

「幹部ともなると、経営者と同じく仕事とプライベートの境目がなくなっていきます。そうした生活スタイルに、心と体が慣れていけるかどうか。不安を抱えながらも前に進める力が、覚悟の中身だといえます」(井手)

業務スキル以上に身につけにくいのが、この「覚悟」ですが、見極め方は単純です。「会社の未来をどう考えているか」「他の社員をどう思っているか」「これまで幹部になるために、どんな勉強をしてきたか」ーーこうした抽象的な問いに対しての回答に、自然と本気度がにじみ出てきます。

幹部育成を始める前に、経営者が考えておくべきこと

以上、5つの鉄則を踏まえて取り組めば、時間はかかっても着実に幹部人材は育っていきます。これからの未来を考え、いざ幹部育成を始めようと思ったのなら、実際に取り組む前にまず以下の2点を整理しておきましょう。

「未来の幹部」のイメージを、具体的に描く

まずは、「どんな人物が幹部であるべきか」という人物像を、できるだけ具体的にイメージしておくことです。ひとつの事業部を任せられる経営手腕はもちろんですが、「経営理念への共感度合い」「人柄」「実行力」「推進力」といった望む要素はすべて言語化しておくことが重要です。

これまで幹部育成に成功してきた経営者は、このステップを踏んでいることが多いです。というのも、このイメージが「幹部候補社員を選ぶときの基準」になっているからです。完璧な資料にする必要はありません。手元のメモ帳、携帯のメモ機能などに殴り書きでも良いので、未来の幹部がどんな人材かイメージしておきましょう。

事業計画と同時に、人材育成計画を立てる

多くの経営者は事業計画を立てていますが、人材育成計画はどうでしょうか?

「事業計画と人材育成計画の両方を立てている会社の方が、結果として着実に業績を伸ばしている傾向があります」(井手)

事業計画を立てた段階で、「それを誰が担うのか」という視点も同時に描くことが重要です。こうすることで、幹部育成が「必要に駆られて取り組むもの」から「計画的に進めるもの」になります。

幹部育成は、経営者自身の「覚悟」でもある

「幹部を育成するために、権限を委譲し、投資として教育を続ける。事業を任せた当初は組織が混乱するかもしれないし、優秀な営業を人事に異動させたら、その分の売上が下がるかもしれない――ですが、育成過程において起こりうるデメリットを『成長痛』として受け止める覚悟が重要です。こうした地道な積み重ねの先に、会社を次のフェーズへと押し上げていく、経営幹部が育つのだと考えています」(井手)

幹部に限らず人材育成は短期間で成果が見えづらく、思い通りにいかないことも多々あり、それに耐えられる胆力を経営者自身が試されていると言えます。

<取材協力> 株式会社船井総合研究所 ディレクター 井手聡
1996年、(株)船井総合研究所入社。以来、リフォーム会社をはじめ300社以上のコンサルティングに従事し、戦略立案から実務支援まで、社長を多面的にサポートする「社外参謀」として活動。2026年より地域コングロマリット支援部に移籍し、地域コングロマリット経営による企業成長、中堅企業化、100億企業化のためのコンサルティングに携わっている。