孤独なワンマン経営からの脱却。年商40億円企業を創った「最強のCOO」との出会いと共闘の軌跡
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2026.09.09
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- 頼れる経営幹部を得て、成長スピードを一気に加速させた企業があります。どのような取り組みを行い、その経営幹部がどのような役割を果たしたのかについてお伝えします。 経営者がどれだけ有能でも、1人の人間ができることにはどうしても限りがあります。組織を大きくしていくには、経営者と同じ志を持ち、経営者の代わりとなって動ける人が必要です。
ワンダーストレージホールディングス株式会社 佐藤肇祐社長
執筆:社長online編集部 吉田伸
INDEX
多くの経営者の悩みは共通しています。
「社員には自分で考えて動いてほしいのに、みんないちいち聞いてくる。社員だけでなく、経営幹部すらそうなのです」
社員が毎回社長のお伺いを立てている状態では、社長の忙しい状態は終わりません。今回は、創業者の社長が自分に業務が集中し、また経営幹部が自身と同じ視点を持たないことに苦しんでいた会社が、頼れる経営幹部を得て、その状況を脱した実例をお届けします。
北海道で介護・医療・障がい者就労支援など多彩な事業を展開し、年商40億円規模へと急成長を遂げたワンダーストレージホールディングス株式会社。この会社は、創業者である佐藤肇祐氏による強力なリーダーシップ、強いトップダウンの形で事業を大きくしてきましたが、その裏で経営者は深刻な孤独と組織の限界に直面していました。
同社がいかにして「最強の右腕(COO)」を見つけ出し、佐藤氏と共に痛みを伴う組織改革を断行して「サステナブルな成長企業」へと変貌を遂げたのかを紐解いていきます。
限界を迎えたワンマン経営。なぜ「COO」が必要だったのか
ワンダーストレージホールディングスの事業は、佐藤氏の「スピード」「覚悟」「ノリ」「想い」を原動力として、創業15年で40億円まで拡大してきました。しかし、事業が多角化し、規模が大きくなるにつれて、すべてを佐藤氏1人で抱え込む「全方位プレーヤー型」の経営は限界を迎えてしまいます。
当時の苛酷な状況を、佐藤氏はこう振り返っています。
「毎日、朝6時から働き、夜は2時まで。気持ちも心も限界を迎えていた。よくノイローゼにならなかったと思う。実はなっていたのかもしれない」
会社には経営幹部がもちろんいましたが、佐藤氏の思いと彼らのそれとは隔たりがありました。「もっと成長したい。会社が大きくなり、世の中をよくしたい」と佐藤氏は語りますが、役員たちは「成長が速すぎる。一度スピードを緩めて、私たちの役員報酬を上げましょう」と口にします。
そのような噛み合わない状況の中で、佐藤氏は密かに体調を崩してしまいます。会社は佐藤氏ですべて回っている状態でしたから、体調の悪い中で「もし自分が倒れたら、会社は、家族はどうなる!?」という恐怖と闘う日々を送っていました。
この孤立無援の状況を打破するために佐藤氏が必要と考えたのが「自分をいなし、時にぶつかり、調整を担い、覚悟を持って共に走り抜けるCOO(最高執行責任者)」です。
ワンダーストレージホールディングスは、佐藤氏が創業者として会社のあらゆることを担うことで成長してきました。会社のこれからのステージを考えて必要になるのは、高度な専門スキルや知識を持つなど「自分にできないことをする存在」ではなく「胆力と覚悟」を持つ人だったと佐藤氏は語ります。
「これをするべきだ!」と社長がつけた火に薪をくべ、さらに大きな炎にして一緒に楽しむ「清涼剤であり共犯者」であり、組織を動かし続ける「心臓の鼓動」となる存在。上からではなく、同じ目線で困難を乗り越え、手段を選ばず使命を遂行する熱量を持った人間、それが佐藤氏の切望していた人物です。
▼ 記事の後半では、こちらについて紹介しています。
☑ 200人の空振りと、運命を変えた「3時間のZoom」
☑ ジョイン後の快進撃:バカを演じる劇薬と「骨の組み替え」
☑ 理想の幹部は「見つかるまで探す」
200人の空振りと、運命を変えた「3時間のZoom」
佐藤氏は「世の中に必要だからこれをやる!」と決めたら突っ走る自身を「幼児性が高い」と言っています。そのような様子を「おバカ」であると評し、またCOOには「私に匹敵するおバカ」を求め、佐藤氏の孤独な人材探しの旅が始まりました。
佐藤氏が求める人材は、北海道にはいない。全国レベルで探さなければ出会えない。そう考え、人材紹介会社から延べ200人以上を紹介され、東京や大阪へ何度も足を運びました。「出張費だけで500万円は超えていただろう」と語ります。思いを共有できない役員は陰で「無駄な金を使っている」とささやいていましたが、佐藤氏は人材探しに妥協しませんでした。
しかし、東京や大阪で会う候補者が開口一番に言うのは給与や待遇の話や、自身のキャリアに関することばかりで、会社のビジョンに関心を示しません。佐藤氏同様「社会をよくしたい」という志を持つ人には、一向に出会えませんでした。
人材選びが難航し、1年ほど経った後、佐藤氏の東京の知人から「面白い人材が仕事を探しています!」と1本の電話が入ります。Zoomで面談をすると、当初1時間の予定だったのが「3時間が経っていた」と振り返ります。事業の話から始まり、お互いの生い立ちや失敗談、心の傷跡までを語り合うほど意気投合し、相手は画面越しに「来週、僕札幌に行きます!」と即答したのです。
その人物のキャリアは異色にして圧倒的でした。金融業界・証券会社のど真ん中で末端から叩き上げ、上場の立役者として取締役を務めた後、MBO(経営陣による買収)というハードな経営を経験し、自身の役目を終えて退任したばかりの人物でした。そのような人物が「社会に役立つ仕事をしたい」と縁もゆかりもない北海道の会社と接点ができたことに、佐藤氏は直感的に「運命だ」と感じたといいます。
翌週、札幌にやってきた彼のために、佐藤氏はすべてのアポイントをキャンセルし、夜は毎晩飲み歩き、自分の想いをぶつけました。
「子どもが大きくなったときに俺たちの姿を見てさ、見えない壁や社会課題に戦わず屈した大人だったと思われたくないんだよね」
この佐藤氏の熱い言葉に、彼は「佐藤社長、この会社で一緒にやりたいです」と力強く答えたのです。
しかし、それに既存の役員たちは猛反対しました。「来なくていい」「困っていない」「おかしいのは佐藤肇祐だ」という反応を示したのです。しかし、この逆境が彼の闘志に火をつけました。「佐藤肇祐と一緒にぶっ壊してやる!」と心に誓った彼は、数週間後、札幌に降り立ちました。
なお、その人物は自身の給与交渉をしていなかったと言います。候補者の誰もがまず報酬の話をしてきた中で、異色ともいえる形でした。損得勘定ではなく、完全に「想い」で動く、佐藤氏が求め続けた本物の「共犯者」が誕生した瞬間でした。
ジョイン後の快進撃:バカを演じる劇薬と「骨の組み替え」

晴れてジョインした新COOは、役員候補であることを伏せ、「現場を知らなければ、この会社の血は流せない」と、まずは介護の現場にどっぷりと入り込みました。
新COOは組織の状況を冷静に分析し、「能力ではなく会社愛の最もある人間を上層に据える。それが社長を走らせる条件だ」と定義します。逆に、能力はあっても会社をよくしようというより自分のために会社を利用しようという人には、厳しく処することにしました。
彼の最大の武器は、「バカを演じられること」だったと佐藤氏は言います。肩の力を抜いてあちこちで笑いながら語り歩き、組織の上下関係を溶かして安心感を生み出していきました。しかしその一方で、会社に仇なす者に対しては、一切の躊躇なく激しい怒りをぶつけ、徹底的に切り捨てました。
「私が怒れば、恐怖で会社は萎縮する。彼が怒れば、場は浄化される。」
彼は自らが矢面に立ち、社長に手を下させることなく、組織の免疫反応として機能したのです。
新COOと佐藤氏、そして法務担当役員たちは、水面下で「静かなリストラクション」を進めました。新たな方針が合わないと判断する人を整理する行為です。このとき、感情のぶつかり合いを避け、法と手続きを盾にしながら、「去る者に未練を残させない」出口をきっちりと整えました。
とはいえ、人を切るのは痛みを伴います。夜な夜な二人で深酒をし「これでよかったのか?」「他に道はなかったのか?」と痛みを分かち合いながら、会社を前に進めるために不可欠な手術を断行していったのです。
そのような段階を経て膿を取り除いた後、佐藤氏はついに組織の「骨の組み替え」に着手します。
まず、事業が拡大することでその都度立ち上がり、統一の取れていなかった子会社のブランドを「ワンダーストレージ」という一つの旗の下に統一しました。さらに、「グループ役員の数は〇月末までに半数に縮小する」という通達を出しました。これは、「会社の大きな旗の下に行動できない、自分の考えが中心で動く人間は去るべきだ」という線引きであり、理念に共感できない幹部を炙り出すための踏み絵でした。
結果として、大量の役員が離反・辞任し、一部の子会社は離脱しましたが、これは「想定内の犠牲」でした。新COOが掲げた「ワンダーストレージホールディングスの上層部は、会社愛を持つ者でなければならない」という基準が明確になり、組織から不明瞭な空気が一掃されたのです。
この荒療治の効果は絶大でした。上層部の私心が消え去ったことで、残されたメンバーが次々と覚醒し始めます。
「危機が人を変える瞬間を、私は何度も目にした。自責という言葉がワンダーストレージホールディングスに根付いてきたのはこの時代からだと私は確信している」(佐藤氏)
飲み会の席でも単なる愚痴ではなく、「ワンダーストレージを面白くするにはどうするか」という未来の議論が飛び交うようになり、全社員がビジョンの「共犯者」となっていきました。
組織が「ワンチーム」として強固に結びついたことで、事業の成長スピードは劇的に加速しました。赤字産業と言われるデイサービス事業をわずか1年3ヶ月で7店舗(後に9店舗)展開し、すべてで高い稼働率と黒字化を達成。さらに、給食工場、不動産管理、医療クリニック、ホスピスなど、水平的シナジーを生む事業を次々と立ち上げ、プラットフォーム戦略を完成させていきました。
COOジョイン前の売上18億円は、わずか3年で41億円へと飛躍的に拡大しました。
理想の幹部は「見つかるまで探す」

ワンマン経営の孤独と限界から始まり、理想のCOOを探し求めた1年間。そして、運命の出会いから始まった「血と汗と涙の組織改革」。
佐藤氏と新COOが成し遂げたのは、単なる売上の拡大ではありません。社長個人の推進力に依存する組織から、社員一人ひとりが自律的に動き、会社愛を持って事業を牽引する「サステナブルな組織」への脱皮です。
このような改革を成し遂げ、社長の属人化を廃することにつながった経営幹部は、どこにいるのでしょうか。
まず「そう簡単には出会えない」ものです。佐藤氏も1年以上の時間を必要としました。また、人材紹介会社に登録しても、そこで紹介される人材にも当たりはありませんでした。最終的に縁となったのは、知人からの紹介でした。
佐藤氏が「このような人材を探している」ということを表明し、実際に行動もしていたからこそ、ドンピシャの人材を紹介してもらえたのです。
経営幹部のような重要な人材は、そう簡単には出会えません。経営への影響も大きい分「この人でいいや」と気軽には決められないものです。
だからこそよい人材を得たければ、以下の行動が不可欠です。
【理想の幹部を見つけるための実践手順】
- 本気で探す
- 探していることを周囲に表明する
- 見つかるまで探し続ける
この思いが重要です。また、本当に求める人材に出会えたとき、描いた未来が実現していきます。
参考文献
『不器用な経営』佐藤肇祐著・総合法令出版
