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保守的な組織の動かし方。「焼き鳥店の法則」で製造業の売上が2倍に【年商27億円】

2026.09.10
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保守的な組織の動かし方。「焼き鳥店の法則」で製造業の売上が2倍に【年商27億円】
産業用ディーゼルエンジン部品の精密加工を手がける株式会社ミモト(石川県白山市)。同社を率いる池田賢治社長は入社前、ホテル、貿易、外食業界でキャリアを積んできた異色の経歴の持ち主です。ミモト入社後は組織改革を行い、売上を10年で2倍にあたる約27億円に引き上げました。いかにして工場を変革したのかに迫ります。

執筆:社長online編集部 山内淳史

INDEX

履歴書は「ホテル、貿易、居酒屋チェーン」

池田氏の経歴はユニークです。ホテルオークラ東京(東京都港区)に勤務していた時期には、オランダ・アムステルダムへ出向。コックとして腕を振るいながら、英語とオランダ語を習得しました。

その後、高い語学力と行動力を買われ、昭和貿易(大阪府大阪市)、次いで三光マーケティングフーズ(東京都新宿区)に入社しました。リーマン・ショック直後の居酒屋大変革期に、270円均一業態の居酒屋「金の蔵」「金の蔵Jr.」を拡大するなど実績を重ね、執行役員も経験しています。

給料4分の1でも「別の世界で挑戦する」と決めた


池田賢治社長(画像提供:株式会社ミモト)

そんな池田氏が「もう一回、別の世界で挑戦したい」と考えたタイミングで出会ったのがミモトでした。

経営を任せられる外部人材を探していた創業家からのラブコールを受け、石川で新たなキャリアを歩むことを決意しました。給料は、前職のおよそ4分の1。それでも、「全く違う工業の世界で、もう一回挑戦してみたい」という情熱が勝っていたのです。

ミモトの武器は、銑鉄鋳物というニッチな分野で、多品種少量生産ができること。中国やインドのように、規模が大きく価格も安い企業に対抗できる強みがありました。

飲食業でメニューや店舗、ヒット業態をゼロから立ち上げてきた経験から、「外食も工業も成功の本質は同じ」と捉えていました。だからこそ、ミモトの強みを活かしながら、飲食店のホスピタリティとES(従業員満足)の概念を取り入れることで、組織が化けるという仮説を持っていたのです。

空気と環境で人を育てる


画像提供:株式会社ミモト

池田社長の経営哲学やビジネスコンセプトの根底には、自身が「パッケージ」と呼ぶナポレオン・ヒル・プログラム(※)での学びがあります。

※米国のナポレオン・ヒル博士が、約20年かけて500余名の成功者を取材・調査して発見した成功法則を体系化したもの。骨子となる書籍『思考は現実化する』は自己啓発本の原点のひとつとして評価されている。

ナポレオン・ヒル・プログラムで紹介されている「人は環境の生き物である」という哲学に基づき、社内の空気と環境に、飲食業時代のノウハウを入れていきました。

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▼ 記事の後半では、こちらについて紹介しています。

☑ 保守的な組織を変える「空気をかき混ぜる」マネジメント
☑ 焼き鳥店の法則で実践した「製販分離」による売上拡大
☑ 「製造×商社化」で年商100億円を目指す次世代戦略

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空気をかき混ぜる

「環境」は設備投資で作れますが、「空気」はそこにいる人間が作る雰囲気です。

2014年、池田氏がミモトに入社して思い知ったのが、組織が非常に保守的であるということでした。創業以来40年以上にわたって大手メーカーと取引を続けてきた安定感が、変化を恐れる受動的組織を生んでいたのです。

改善を推進するため、まずは中間管理職の人数を4〜5倍に拡大。さらに、日報の電子化、RPAの導入、動画マニュアルによる技術継承と安全衛生教育、電子帳票によるペーパーレス化、提案制度、女性登用など、新しい刺激を投入して組織内の人材の意識を変えていきました。

池田社長はこれを「空気をかき混ぜる作業」と表現します。

「何もしなかったら、みんなずっとそのまま。でもかき混ぜ続けると、『私だけ動いてなかったら』という空気ができてくる。環境が人を育てるんです」

結果として、客先クレームは80%減少。資格取得者は2023年度対比で600%増加しました。

製販分離を推進


画像提供:株式会社ミモト

池田社長は、企業の成長が滞る原因の1つが「自分たちで勝手にキャパシティを決めてしまうこと」にあると指摘しています。

「小さな焼き鳥店を1人で切り盛りしていると、忙しくなったら『もう無理』と自分でキャパを決めてしまう。でもキッチンとホールが分かれていれば、ホールはどんどんお客さんを入れて、キッチンはそれに合わせて食事を作っていきます。工場もまったく同じです」

同社は、言わば「焼き鳥店の法則」に従って、製販分離を推進。営業を強化し、外部から積極的に新しい仕事を取ってくるようにしました。

仕事が増えれば、製造現場は自然と知恵を絞り、設備や工程を工夫して、生産性を高めようとします。

役割が明確に分かれているからこそ、製造と販売のあいだに健全な摩擦が生まれ、工夫を重ねるようになるのです。

この好循環が、結果として売上拡大へとつながりました。

製造業にサービス業の論理を入れる

池田社長は、外食産業でよく用いられる考え方の1つである「従業員満足(ES)が顧客満足(CS)を生む」という思想を製造業へ移植しました。

その具体的な第一歩が、電話対応の見直しです。

「それまでの工場の電話対応は『はい』だけで済まされていました。それを『お電話ありがとうございます。株式会社ミモト、○○でございます』と、感謝を伝える挨拶から始めるよう改めたのです」

かつては「言われたものをただ作るだけ」だった同社。しかし、挨拶をはじめとする日常対応から顧客を意識させることで、社員自身が作った部品がどのように役立ち、顧客が何を求めているのかを自発的に考える文化を醸成していきました。

顧客のニーズを理解できれば、仕事への取り組み方も自然と変化します。働く人や稼働する設備、工場の清潔さなどを定義し、職場が単なる作業の場ではなく「成長しよう」と切磋琢磨できる環境になるよう工夫を重ねました。

こうしたサービス業の論理が、現在の組織に浸透しているのです。

ニッチ製造×商社化で100億円企業を目指す


画像提供:PIXTA

2012年に13.6億円だった同社の売上は、2023年には27.4億円に到達。昨今もデータセンターのバックアップ用発電機を受注するなど業績は好調で、今年秋には、同社初となる完全自動ラインを導入予定です。年間10万個の部品生産を自動化し、自社工場の限界値である35億円規模の稼働を視野に入れています。

「焼き鳥店が潰れない」ロジックを工場へ

池田社長によると、ラーメン店や高級焼肉店などは時代によって浮き沈みがある一方、「鳥を扱っている店は統計的に失敗しにくい」といいます。

ミモトでも、「トレンドに左右されず、絶対になくならない需要」に注力しています。いわば「焼き鳥店の法則②」といったところでしょうか。

銑鉄鋳物の機械加工という競合が少なく需要が安定している領域において、海外企業がやりたがらない「多品種少量生産」に特化することで、安定した経営を実現しています。

今後の戦略は「商社化」

同社は今後、2047年の創業100周年にあわせて、年商100億円を目指す構えです。

売上拡大のカギは「商社化」。

エンジンや農業機械の製造には膨大な小部品が必要ですが、これらを何十社もの小さな町工場に個別に発注・管理することは、メーカーの調達部門にとって非常に煩雑です。

その一方、同社の位置する北陸エリアには、高い技術を持ちながらも高齢化や後継者不足、廃業の危機に直面している小規模な町工場や鉄工所が多数存在するといいます。

こうした工場と協業し、部品の調達から完成品の検査までをミモトが担うことで、大手メーカーのニーズに合った事業展開が可能になるといいます。

「製造」+「商社」+「新規事業」の3本柱で100億円化を掲げる同社。北陸地方を牽引する中核企業として、今後さらにその存在感を発揮していきそうです。

  • 【取材協力】
  • 社名:株式会社ミモト
  • 住所:石川県白山市旭丘1丁目13番地
  • 設立:1947年(美本鉄工所)
  • 代表取締役社長:池田 賢治
  • 業種:「製造 × 商社」
  • 売上高:26.2億円(2025年度)
  • 従業員:110名
  • Webサイト:https://www.mimoto.co.jp/

【社長プロフィール】
池田賢治(いけだ・けんじ)
1977年奈良県出身。ホテルオークラ東京、昭和貿易欧州を経て、三光マーケティングフーズにて飲食店チェーンの拡大を推進。テレビ番組「ガイアの夜明け」や「カンブリア宮殿」で取り上げられる。2014年、ミモト入社。2025年、代表取締役社長就任。趣味はゴルフ、釣り。