忙しい経営者のための「体臭予防」と「皮膚ガスマネジメント」【今日からできる】
-
2026.07.22
-
- 夏になると特に気をつかう「自分の体臭・ニオイ」。今回、皮膚ガス研究の第一人者である東海大学の関根教授に取材を実施。気になる体臭のメカニズムから、今日からできる科学的な対策まで詳しくお話を伺いました。
監修:関根 嘉香(せきね よしか) 東海大学 理学部 教授 / 博士(理学)
INDEX
「自分では案外気づかない」厄介なニオイ対策

まもなく夏本番。ビジネスパーソンにとって「ニオイ対策」がエチケットとして欠かせない季節となりました。
関根先生によると、換気の良いオフィスでも、中年男性特有のニオイは「25cm」近づくだけで周囲に伝わり、換気の悪い会議室などでは、本人が気づかないうちにニオイが充満している可能性があると指摘します。
特に、人間の鼻は「一番身近にある自分のニオイ」にすぐ慣れてしまう特性があり、「自分は大丈夫だろう」と思っていても、周囲の人が気にしているケースは少なくありません。
このような状況を防ぐため、制汗剤などで汗のケアを徹底する人も多いでしょう。しかし、「体臭対策=汗のケア」という認識ではニオイ対策として十分ではありません。実は、汗のニオイは数ある体臭の原因のほんの一部に過ぎないためです。
ニオイの根本的な対策を講じるためには、汗臭や口臭だけでなく、体臭の真の原因を知る必要があります。それが、全身の皮膚から発せられる目に見えない微量なガス「皮膚ガス」です。
ニオイの原因「皮膚ガス」とは

関根先生が研究する皮膚ガスとは「皮膚の表面から発生している目に見えない微量なガス」のことを指し、現在判明しているだけでも、実に800種類以上のガスが存在しているといいます。
「一昔前は『体臭=汗のニオイ』というイメージでしたが、皮膚ガスという観点から見ると、汗のニオイは数ある原因の一つに過ぎません。様々なガスが、様々な原因によって皮膚から放出されています」(関根先生)
皮膚ガスの発生ルートは、大きく分けて3つあります。皮膚表面の皮脂や汗が常在菌によって分解される「表面反応由来」、血液中の成分が直接皮膚から揮発する「血液由来」、そして汗とともに現れる「皮膚腺(汗腺)由来」です。
これらのガスが混ざり合った状態で、常に私たちの皮膚から蒸発しています。例えば、お酒やニンニクを摂取した翌日、いくら念入りに口臭ケアをしてもニオイが防ぎきれないのはこれが原因です。代謝物が血液に移行し、「血液由来」の皮膚ガスとして全身から放散され続けているため、口の中だけをケアしても万事解決にはならないのです。
ビジネスパーソンを悩ませる「3大・皮膚ガス」の特徴

特に40代以上のビジネスパーソンを悩ませる代表的なニオイが3つあります。それぞれ発生する原因やメカニズムが異なるため、自分の年代やライフスタイルと照らし合わせてケアすることが大切だと関根先生は言います。
加齢臭(40代後半〜)
主に皮脂が酸化することで発生するニオイです。個人差はあるものの、男性の場合は35歳頃から発生が始まり、40代後半から他人に気付かれやすくなる傾向があります。男性ホルモンの働きが強い人や、肉類などの動物性脂肪を好んで食べる人は、皮脂の分泌が多くなるため発生しやすいという特徴があります。
ミドル脂臭(30代〜40代でピーク)
若い頃や50代以降には少なく、なぜか30代〜40代で発生のピークを迎えるのが「ミドル脂臭」です。主成分は「ジアセチル」という、チーズやヨーグルトなどの乳製品にも含まれる成分です。
「発生メカニズムとしては、体内で作られた『乳酸』が汗と一緒に出てきて、常在菌に分解されることでできると言われています。慌てて行動したり、呼吸が浅くなったりすると体内の酸素が不足し、乳酸が蓄積しやすくなります」(関根先生)
日々時間に追われ、せかせかと行動しがちなビジネスパーソン特有のニオイと言えるかもしれません。
疲労臭(全世代)
意外と知られていないものの、多くのビジネスパーソンから発生しているのが「疲労臭」です。ツーンとした尿のようなアンモニア臭が特徴です。
タンパク質(肉や魚)の過剰摂取や、お酒の飲みすぎによる肝機能の低下、肉体的な疲労の蓄積によって、体内のアンモニアが分解しきれずに血液へ移行し、皮膚から放散されます。さらに近年では、「心理的ストレス」も疲労臭の発生に直結することが分かってきました。
「加齢臭やミドル脂臭と異なり、疲労臭のアンモニアは『血液由来』です。そのため、お風呂で体をゴシゴシ洗ってもニオイが落ちないのが厄介な点です。お風呂で足をよく洗ったにもかかわらず、まだツーンとするニオイがする場合は、疲労臭の可能性があります」(関根先生)
今日から実践できる!行動別の「皮膚ガス」マネジメント術
ニオイの原因が分かれば、あとは正しい対策を日常に落とし込むだけです。関根先生のアドバイスをもとに、忙しいビジネスパーソンでも取り入れやすい具体的な対策を行動軸でまとめました。
①習慣ケア:ゴシゴシ洗いはNG、「朝の1分シャワー」を

加齢臭を気にするあまり、お風呂で体をゴシゴシと強く洗う人もいるかもしれませんが、実はこれは逆効果。
「皮脂は体にとって大事な成分なので、過剰に洗い落とすと体が補おうとしてさらに皮脂を分泌させます。結果として、時間が経つと加齢臭がより強くなってしまうのです。体は優しく洗いましょう」(関根先生)
おすすめは、夜に体を優しく洗った上で、「朝に1分間シャワーを浴びる」こと。これだけで夕方頃まで加齢臭を抑えることができます。また、紫外線は皮脂を酸化させてニオイを強めるため、夏場は日陰を歩いたり、日傘を活用したりすることも効果的です。
ミドル脂臭対策としては、日中に汗をかいたらこまめに拭き取るよう心がけることが大切です。
②食事ケア:「抗酸化」と「腸内環境」を意識する

皮膚ガスは体内の代謝と密接に関わっているため、口にするものにも注意が必要です。
加齢臭に効果的なのが「抗酸化作用」のある食品です。関根先生の実験では、ポリフェノールの一種であるアントシアニンを豊富に含む「カシス」や、「梅」の抽出物などを摂取することで加齢臭の数値が低下することが確認されています。手軽に対策したい方は、カシス由来のサプリメントなどを活用するのも一つの手です。
一方、アンモニア由来の疲労臭には「腸内環境の改善」が効果的です。肉や魚などのタンパク質に偏った食事を避け、ビフィズス菌などの善玉菌を増やしてお腹の環境を整えることで、疲労臭の軽減に繋がります。
③環境ケア:会議の合間に「緑」に触れる

プレッシャーや緊張といった「心理的ストレス」は、疲労臭(アンモニア)の発生を即座に高めてしまいます。このストレスによるニオイを緩和する有効な手段が、自然の「緑」に触れることです。
「実験で、会議室に留まったグループと、緑地で1時間過ごしたグループを比較したところ、緑地に行ったグループは疲労臭が有意に下がりました。植物の葉から出る『アルファピネン』などの良い香り成分を吸い込むことで、血液を巡って皮膚から放出され、アンモニアの放散量が低下するのです」(関根先生)
朝から会議が続く日などは、お昼休みや休憩時間に外に出て、緑のある場所で深呼吸をするだけでも立派なニオイ対策になるでしょう。
④アイテム活用:香水の「混ぜるな危険」を知る
手っ取り早くニオイをごまかそうと香水をつける方もいますが、ニオイの種類によっては「混ぜるな危険」の相性があるため要注意です。
- 加齢臭の場合:レモンやライムなどの「シトラス系」とは相性が良いですが、昔ながらのポマードのような「ウッディ・パウダリー系」の香りは、加齢臭を悪目立ちさせてしまうためNGです。
- ミドル脂臭の場合:乳製品系のニオイであるため、マンゴーやバナナなどの「フルーツ系」の香りを合わせると、逆に美味しそうな良い香りになります。一方で、加齢臭とは異なり「シトラス系」は相性が悪いため避けるのが無難です。
最後に、体臭は誰もが持つ生きている証であり、心と体の状態を反映するメッセージ(生体信号)です。皮膚ガスには良い香りもあり、これらが発する情報を自身の健康や生活習慣の見直しに活用していくことが大切です。そうした生体情報の活用こそが、自身とコミュニティのウェルビーイングへと繋がるはずです。
監修:関根 嘉香(せきね よしか)
東海大学 理学部 教授 / 博士(理学)
人間の皮膚から放出される微量な生体ガス「皮膚ガス」研究の第一人者。体臭の発生メカニズムや、皮膚ガスからストレス状態・健康状態を読み解く研究を牽引する。「世界一受けたい授業」などメディア出演・解説も多数。
関連記事一覧

