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「スタバ風のオフィス」を作りたがる会社が伸びない理由

2026.06.15
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「スタバ風のオフィス」を作りたがる会社が伸びない理由

「オフィスをおしゃれにすれば、採用がうまくいくはずだ」「社員の満足度を高めるため、まずはカフェのような空間を作ろう」オフィス移転やリニューアルを検討する際、経営陣やプロジェクトチームからこうした声が挙がることは少なくありません。

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しかし、もしそう計画されているのであれば、一度立ち止まって、再考すべきです。表面的な「おしゃれさ」だけを追い求めても、業績や生産性の向上には直結しないからです。

今回は、業績を伸ばす企業はオフィスをどう考えているのか、そしてそうした事例を見てきた船井総研ではどのようなプロセスでオフィスに投資したかを、詳しく解説します。

解説:株式会社船井総合研究所 細井 錦平

なぜ「スタバ風」がうまくいかないか


画像提供:PIXTA

「資金に余裕があれば、スターバックスのような、おしゃれなオフィスにしたい」。経営者が一度は考えることではないでしょうか。

確かに、洗練されたカフェのような空間は魅力的です。しかし、スタバのようなオフィスが、業績向上につながるでしょうか。多くの場合、答えは「NO」です。

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スタバの内装のコンセプトは「サードプレイス」と言われています。つまり「自宅でも職場でもない、第3のリラックスできる場所」ということです。業績を上げる、生産性を高めるという観点に立った場合、職場のデザインとして、決して正解と言えないのです。

また、「スタバ風」というのは、あくまでデザインのコンセプトです。おしゃれなオフィス自体は否定しませんが、それ単体では会社の方向性と一致しない「見かけ倒しのオフィス」になってしまい、業績向上に結びつく可能性は低くなります。

では、オフィス移転や改装を成功させる企業は、具体的にどのようなアプローチをとっているのでしょうか。

オフィス改装後に業績が上がる会社の傾向


画像提供:PIXTA

ここでは3つの例をお伝えします。

①オフィス改装の優先順位が明確である

オフィス改装がうまい会社は、「何のためにオフィスを変えるのか」「経営課題の何を解決するために投資するのか」というコンセプトを、経営戦略レベルで策定し、それをオフィスに反映しています。

まず会社のPMVV(パーパス・ミッション・ビジョン・バリュー)に立ち返り、そこからオフィスコンセプト→オフィスプランの順で構築しています。


画像:生成AI

理念から逆算してコンセプトを決めれば、見栄えではなく、コンセプトの実現という判断基準で、家具や什器などを決められます。優先順位もハッキリします。

例えば「アートを導入したい」という提案だけでは、そもそも会社に必要なのか、どのような作品を選定すべきかの基準が定まりません。
しかし、「地球環境に配慮した企業」という理念があれば、「それを社内外に発信する」というコンセプトが生まれ、植物や廃材アート、あるいは地球をモチーフにした絵画といった具体的なアイデアが出てきますよね。

結果的に、単なるおしゃれなオフィスから、企業理念を体現・浸透させる場へと進化するのです。

オフィス改装には多額のお金が動きますから、もちろん反対意見も出るでしょう。しかし、「会社の理念はこうで、実現するためには、これが不可欠だ」というロジックがしっかりしていれば、プロジェクトは円滑に進みやすくなるのです。

②全員でオフィスを良くする体制がある


画像提供:PIXTA

次に、現場のスタッフを巻き込む姿勢が重要です。経営者の関与はもちろんですが、それに加えて各部署の「キーマン」をメンバーに加えましょう。現場の意見を吸い上げる効果があります。

社員アンケートの実施も有効な手段です。アンケートをもとに現状を深掘りすると、男女間、部署間、年代間でオフィスに対する満足度にギャップがあることがよく分かります。このギャップこそが、課題です。改装時の重要な参考資料になります。

そして、オフィス改装は自社だけで完結できるものではありません。デザイン会社などのパートナー選びはもちろん、ビルオーナーとも良好な関係を築くことがプロジェクト成功の鍵を握ります。

③ハードとソフトをセットで変える

オフィスというハード(箱)だけを変えても、中身であるソフト(働き方・カルチャー)が変わらなければ効果は半減します。ハードの刷新を機に、働き方のルールや仕組みも見直すことが不可欠です。

ここで、ハードとソフトをセットで変革した具体例として、先日移転を完了した船井総研の大阪オフィスでの事例をご紹介します。

・ロッカーレス&ペーパーレス化


画像提供:PIXTA

新オフィスでは、数百名の社員がいるにもかかわらず、個人ロッカーを設けませんでした。2024年に移転した東京オフィスも同様です。

「収納場所があるからこそ、モノが増えてしまう」という観点で、物理的にモノを置けない環境を作ったのです。結果、強制的にペーパーレス化が進みました。プリンターの利用頻度が激減し、DXと経費削減を同時に実現できたのです。

倉庫やロッカーなどの「利益を生まない場所に高い家賃を払わない」という考え方で、働き方改革も視野に入れた図面を引くことが重要です。

・フリーアドレスの導入と固定電話の廃止


船井総合研究所 大阪オフィス(サステナグローススクエア OSAKA)

「フリーアドレスは定着しない」との懸念も聞かれますが、失敗の主な原因は環境整備の不足にあります。特に固定電話と紙書類が残っていると、社員はどうしても席に縛り付けられてしまいます。

船井総研では、全社員にスマートフォンを支給し、固定回線から携帯回線にやり取りを移すことで、フリーアドレスを実現しました。会社宛ての固定電話にかかってくる電話も、ネットワーク経由でPCにより受信・発信できる環境を整えています。

・AIの実装

オフィス内にAI搭載のシステムを複数導入しました。
まず、会議室の予約システムにAIを導入し、会議室が予約されているにもかかわらず、実際には利用されていない(誰も来ていない)状態をAIが検知すると、自動的にその予約を解除します。
また、オフィス内のどこに社員が固まっているかをAIが感知し、人が多い場所に重点的にWi-Fiの電波を飛ばすように調整します。こうして生産性を高めています。


画像:生成AI

さらに、Web会議用のモニターやカメラシステムにもAI機能を実装。カメラを見ていなくても、相手と目線が合っているようにAIが自動補正し、会話した内容は高精度でテキスト化してくれます。これによりコミュニケーションの質を高めています。

こうしたハード・ソフト両面からのオフィス投資は、社内の生産性向上だけでなく、社外からの評価、特に採用活動においても大きなインパクトをもたらします。

船井総研では「新卒採用」に効果が

船井総研のオフィス移転で大きな成果として表れたのが、新卒採用における内定承諾率の上昇です。

まだ新オフィスの詳細が決まっていなかった2025年卒の選考において、新卒内定者の内定承諾率は約70%でした。これに対し、「2026年にはこんな良いオフィスになる」と面接に合格した方に伝えた結果、2026年卒の内定承諾率は、約80%に上昇しました。


画像提供:PIXTA

出来立ての綺麗なオフィスという物理的な魅力に加え、「従業員へこれだけ投資する会社である」という姿勢が学生に評価され、採用競争力に直結した結果だと分析しています。
参考:船井総研グループ統合レポート2025

ここまで、業績を上げるオフィスの考え方や事例を見てきました。では、自社で実践する場合、何から始めればよいのでしょうか。

リニューアルを成功させるための具体的手順

オフィスリニューアルを成功させ、業績アップにつなげるための具体的な手順は、次の5ステップです。

ステップ1:PMVVとロードマップによる目的の明確化

いきなりレイアウトや内装を考えず、まずは「なぜオフィスを変えるのか」という経営的な根拠を固めます。

ステップ2:プロジェクトチーム結成とコンセプト策定

誰が主導するか、そしてどのようなコンセプトにするかを決定します。
経営戦略やトップの想い、アンケート等による社員の声をインプットした上で、ブレインストーミングを行います。
ブレストで出たアイデアを「会社の未来」「働く場所」「働き方」などのカテゴリに分け、重要度と緊急度で分類し、最も重要な要素からコンセプトを言語化します。

ここで注意すべきは、「カフェ風の内装」や「フリーアドレスの導入」はあくまで手段であり、コンセプトそのものではないということです。
「業界イメージを刷新する」「イノベーションが生まれる」といった「目的」をコンセプトに据える必要があります。

ステップ3:デジタル化・働き方の変革(ソフト面の整備)

新しいオフィス(ハード)に移る前に、働き方(ソフト)を変革する準備を行います。
例えばフリーアドレスにするなら、全員にノートパソコンとスマホを貸与し、十分な速度のWi-Fiネットワークを整備します。
ペーパーレス化を推進する場合は、紙を残す基準と廃棄基準を明確にし、外部保管も検討します。そして改装後に書類をリバウンドさせないために、運用ルールも事前に策定しておきます。

ステップ4:パートナー選定とコストコントロール

具現化してくれるパートナーを選びます。デザイン力だけでなく、経営者の想いやビジョンを理解する力やコストダウン提案力を持つ会社を選びます。
予算規模は隠さずに早期段階で共有し、パートナーとの共通目標として設定すべきです。


画像提供:PIXTA

ただし、昨今は資材価格や工賃の上昇もあり、オフィス投資は想定予算を上回るのが常です。
機能や見た目を保ったままコストを下げる提案や、家具の一括入札、メリハリ(来客エリアは豪華に、バックヤードは実用的に)などで調整します。
ビル側の指定工事(B工事)区分を、自社発注(C工事)に変更できないか交渉することも視野に入れておきましょう。完全にC工事化するのは断られるケースが多いですが、部分的なC工事への変更や減額交渉などが可能な場合もあります。

ステップ5:直後からフル稼働する体制づくり

改装初日から社員が迷わず働き、顧客を招いて営業活動ができる状態を作り上げることで、投資回収のスタートを早めます。

例えば、新オフィスへの改装当日に、突如として「本日からフリーアドレス化」「紙の使用禁止」を通達しても、現場は混乱するばかりです。
スタートダッシュを成功させるために、改装の数ヶ月前から社内への周知・教育を徹底しましょう。
手段の1つは、社内報です。経営者のメッセージ、プロジェクトの進捗、新オフィスの使い方、守るべきルールなどを定期的に全社員向けメールで配信します。ちなみに、船井総研の大阪オフィス移転時は延べ36回配信しました。


画像提供:PIXTA

また、オフィスを移転する場合、取引先に住所変更のお知らせを出すと思いますが、ただの業務連絡で終わらせないようにしたいところです。
例えば、移転案内をフックに連絡を取り、休眠顧客との商談機会の創出も考えてみましょう。
オフィスは一度作って終わりではありません。

少なくとも「10年周期」でオフィスを見直すべし

会社を成長させ続けたいなら、自家用車を買い替えるように「10年に1回」はオフィス改装の可能性を模索すべきでしょう。

クルマをイメージしてみてください。独身時代にアルトやミラだった車が、結婚してシビックやカローラになり、家族が増えればセレナになり、子育てを終えればベンツでも買おうか…と、家庭や資産の状況に合わせて買い替えますよね。
オフィスも全く同じです。

まず、成長している企業は人員が増加します。10年前のレイアウトが今の組織構造に合っていることは、ほぼあり得ません。


船井総合研究所 八重洲オフィス(サステナグローススクエア TOKYO)

設備面の変化もあります。10年前には不要だったウェブ会議用ブースが、今や必須インフラとなっている会社もあります。
逆に10年前に比べ、ファックスやコピー機、固定電話を使う頻度は少なくなっているのではないでしょうか。

次に、採用トレンドの変化です。10年ほど前は、ITベンチャーを中心に、オフィスに卓球台などの遊び道具を置くことがおしゃれとされた時代がありました。しかし現在は「柔軟な働き方」や「メンタルヘルスへの配慮」が重視されるようになっています。

思い返せば、10年前の話題と言えば「君の名は」「ポケモンGO」「SMAP解散」など。
「ついこの間じゃん」と感じるかもしれませんが、18~22歳の新卒にとっては、小学生時代の昔話です。
10年前のおしゃれは、今の求職者には響かないのです。定期的な見直しこそが、オフィスの価値を保ち続ける秘訣と言えます。

オフィスは「失敗しにくい」投資

DXや採用の失敗事例は良く聞きますが、「オフィスを改装して後悔した」という事例は、実は滅多にありません。最低限、環境が良くなったことによる社員定着や採用といったリターンが見込めるからです。

しかし、会社のビジョンがあり、社員がコンセプトを練り上げ、機能やデザインを決めていくことで、その投資対効果は何倍にも高まります。


画像提供:PIXTA

計画的にオフィス改装を行った企業のなかには、「社員の視座が高まった」「取引先からの評価が変わった」といったプラスの効果を最大化し、業績を倍増させた企業も存在します。
利益が出たから改装するのではなく、利益を創出するための投資という考え方で、一度職場の未来を見つめなおしてみてはいかがでしょうか。