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17年連続赤字から売上100億円に! 「シャボン玉石けん」好調の理由とは

2026.08.13
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17年連続赤字から売上100億円に! 「シャボン玉石けん」好調の理由とは
福岡県北九州市に本社を構える無添加石けん専業メーカー「シャボン玉石けん株式会社」。2024年は無添加石けんの製造・販売へ完全移行してから50年目という節目の年であり、創業以来初の売上100億円を達成する予定です。近年ますます好調を維持するシャボン玉石けん。その好調の理由を森田隼人社長に伺いました。

執筆:船井総合研究所 吉嶺菜穂

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シャボン玉石けん株式会社 代表取締役社長 森田隼人氏

無添加石けんのパイオニアとして、売上100億円達成へ

―2024年はシャボン玉石けん株式会社(以下、シャボン玉石けん)が、無添加石けんのみの製造に切り替えられてからちょうど50年目だと伺いました。この節目の年に、売上100億円達成が目前となっていますが、今どのようなお気持ちでしょうか

森田隼人社長(以下、森田社長):50年前から無添加石けんの製造・販売に取り組んできて、ようやくここまで来れたなと嬉しく思います。

―近年の売上増は、何がきっかけなのでしょうか

森田社長:ひとつの転機になったのはコロナ禍です。ハンドソープの需要が急激に伸びたんですね。もともとの売上がそんなに多くなかったこともありますが、以前の5~6倍ほどに伸びました。

(画像:シャボン玉石けん株式会社)

 

―ハンドソープ以外はいかがでしょうか?

森田社長:コロナ禍をきっかけに、シャンプーや食器洗い、洗濯、歯磨き、ボディソープなど、コロナ対策とはあまり関係がないように見えるカテゴリも軒並み売上が上がりました。こうして、堅調に業績が伸びたというのがここ数年で起こったことです。

昨今の健康志向も含めて、さまざまな外部要因はありますが、皆さん「安心安全な商品」や「品質の良い商品」を求めていたことが、当社の売上増の大きな理由です。我々はずっと「健康と環境に優しい『無添加石けん』」の良さを伝えることに力を入れていて、コロナ禍で在宅時間が増え、皆さんが調べものをする時間が増えたことで、当社の良さを知ってもらう機会が増えたのではないでしょうか。

また、SDGsをはじめとした環境意識の高まりが、世間で広がっていますよね。その時代の流れがちょうど、今までの地道な無添加石けんの周知活動と、追い風として重なってきたのではないかと考えています。

無添加石けんの開発・販売直後は、17年間連続の赤字経営に

―2024年は創業から114年。無添加石けんに完全移行してからは、50年だとお聞きしました。創業当初から無添加石けんを製造していたわけではないのですね。

森田社長:1910年に、先々代の森田範次郎が「森田範次郎商店」を創業したのが当社の始まりです。当時は雑貨商で日用品や雑貨品などを扱っており、その中の一つに石けんがありました。その後、息子である光德が二代目社長として会社を引き継ぎました。

転機となったのはーー、

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▼ 記事の後半では、こちらについて紹介しています。

☑ 17年間の赤字を乗り越え黒字転換させた「起爆剤」
☑ 若年層へのアプローチと今後の課題
☑ 徹底した理念経営と社員が同じ方向を向くための組織づくり

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国鉄からの「機関車を洗うための無添加の粉せっけんが欲しい」という依頼です。当時は“無添加”という言葉もない時代で、そんな商品はありませんでした。そこで先代社長は、自ら工場に泊まり込んで開発に着手しました。

試作を進めながら、試作品を自宅でも洗濯や風呂で使っているうちに、長年悩まされていた肌荒れやかゆみが起きていないことに気が付いて、無添加石けんが体に優しいということが分かったんですね。一方で、合成洗剤は体に負担があると。「体に悪いと分かっているものは売るわけにはいかない」と、経営のことを考えて悩んだ末、開発開始から1年後の1974年には全面的に無添加石けんのみの製造販売に転換しました。

―無添加石けんは、すぐに売れたのでしょうか?

森田社長:いえ、ほとんど売れなかったですし、合成洗剤の取り扱いをやめたので、売上は100分の1以下まで落ち込みました。店頭に並ぶと無添加石けんは他の商品よりも価格が高く、知名度もない。無添加石けんに完全に切り替えてから、17年間は赤字でした。業績が悪いのでどんどん人が辞めていき、一番少ない時には社員が5名まで減少しています。

先代は、自身が無添加石けんの良さを体感しているため、数年は赤字が続く覚悟をしながらも、良さを知ってもらえれば必ず売れるはずだ、と考えていたようです。

その良さを世間にどう伝えていくか。他社製品と何が違うのかをお伝えしない限りは、なかなか手に取ってもらえないですから。無添加石けんを選ぶ理由をお伝えするのは、啓発活動に近いものだと思っています。それを始めからずっと、長年やってきたわけです。

―17年赤字ですか…どのようにして経営を維持していたのですか? また、無添加石けんをやめようとは思わなかったのでしょうか

森田社長:当時は景気が良かったので、銀行の貸し渋りや貸し剥がしがなかったことでしょうか。また、合成洗剤を売っていた頃の蓄えでなんとか。最も苦しかった時代といえば、100年以上の歴史の中でその頃でしょうね。

会社の規模もどんどん小さくなっていて、社員が入っては辞めるという、入れ代わり立ち代わりでした。これでは良くないということで、即戦力である中途採用を止め、新卒採用を始めました。最初に採用したのは大卒5人でしょうか。ちなみにそのメンバーのうち1人は、今も役員として働いてくれています。

これを乗り越えられたのは、やはりお客様の声があったからです。黒字ではないながらも徐々にユーザーは広がっていて、お使いいただいた方から嬉しいお声がたくさん届いていたんですね。

「うちの子どもが掻きむしる姿を見るのがいたたまれなかったのが、石けんを変えたら良くなりました」「人前に出られないほどの肌荒れが良くなってきました、ありがとうございます」

……お金もいただいて感謝してもらって。そんな方々の声を見るにつれて、使命感のようなものが芽生えてきて、「無添加石けんを必要とする方のために、お届けし続けなきゃいかん」と、先代は思ったようです。「薬ではないが、シャボン玉じゃないと使えないという人がいる」と。

黒字転換の起爆剤、『自然流「せっけん」読本』の発売

―17年間の赤字期間の後、何がきっかけで黒字に?

森田社長:1991年、ペルシャ湾で起こった湾岸戦争で、原油が海に流れ出し、水鳥が油にまみれているセンセーショナルな映像がメディアで何度も取り上げられました。それがきっかけで当時、世間的な環境意識が非常に高まっていたんですよね。

ちょうどそのタイミングで、前社長(光德氏)が『自然流「せっけん」読本:洗たく、食器洗い、入浴、シャンプー、住いのそうじ』(1991年、農山漁村文化協会)という書籍を出版したんです。

無添加石けんを開発する中で培った知識、合成洗剤の体と環境への影響や、石けんの良さについてまとめた本です。この書籍がベストセラーになったことで、当社の売上も上昇。無添加石けんに完全移行して18年目、ようやく黒字になりました。書籍が全国で売れたので、多くの人にシャボン玉石けんを手に取っていただきやすくなったのだと思います。


1991年4月に刊行した『自然流「せっけん」読本(農山漁村文化協会)』 現在は、文庫版の同著(サンマーク出版)が新刊で購入可能

ちなみに、この本を読んで「シャボン玉石けんを使いたい」と思っても、読者の住んでいる場所では売っていないかもしれない。そう考えた先代は、巻末に石けんを作っている全国の会社を一覧でずらっと電話番号付きで載せました。いわゆるライバル企業の連絡先もこの本で紹介したのです。当社の商品ではなくてもいいから、なるべく多くの人に石けんを届けたい、という想いがあったのだと。

また、全国から多くの問い合わせがあったことで、当社はかなり早い段階で通信販売をスタートしています。2000年頃には、いち早く通信販売のシステムを導入し、当時は珍しかったので、多くの会社が見学に来られました。ただ技術革新が速すぎて、あっという間に古いシステムになってしまったのですが(笑)

―あくまでも「無添加石けん」を広めたかったのですね。

森田社長:そうですね。売れないと思ったこともあるのかもしれませんが、私が知っている限り、合成洗剤に戻ろうと思ったことは一度もありません。やはり企業理念である「健康な体ときれいな水を守る。」という強い思いで進んできた結果が、今につながっているのではないでしょうか。

啓発を重視する姿勢は、社員にも求めています。当社の営業担当には、目標はありますがノルマはありません。数字を追いかけるのではなく、しっかり啓発をすることを重視してもらいたいので、工場見学の誘致を目標にする形も取っています。工場見学に来てくださったバイヤーの方が「やっぱりこういう良い商品を売らなくちゃ」と思っていただけるケースが多いからです。

シャボン玉石けんの現在の課題

―ひとつの大台である売上100億円が目前となっていますが、今後のビジョンなどはありますか?

森田社長:基本的には変わらず「石けん」の良さを伝えていくことです。合成洗剤と石けんの違いって、まだあまりご理解いただけていませんよね。例えば最近だと、バターとマーガリン、ビールと発泡酒は違うものだという認識の方がほとんどだと思います。ビールを飲みたい人に、発泡酒を飲ませたら嫌じゃないですか?

それと一緒で、体に優しいもので身体を洗いたい人に、合成洗剤を渡すのは違うんですよ。使いやすいとか、香りが好きとか、そういう理由で合成洗剤を選ぶのはいいんです。病弱な人にカップラーメンを食べさせるのは違いますよね。そういう感覚で、石けんを選んで欲しい。せめて妊娠から授乳期間ぐらいは、石けん成分の商品を使うのが当たり前の世の中になって欲しいです。

事業的な面でいうと、10代~20代の若年層へのアプローチですね。30代以上の方には、ある程度認知度があるのですが、若い世代の使用率はそれほど高くない。ですので、若年層へのアプローチを含めて、2024年4月には新スキンヘルスケアブランド「Our SHABON」を立ち上げ、洗顔石けんを新発売しました。

あとは販路です。まだまだ全国的な配荷率は低いので、やはり都心部への展開ですね。都心は売り場面積が狭いこともあって、置ける商品の数が限られていますが、その中でシャボン玉石けんが選ばれるようにしなくてはいけません。とはいえ、どのお店にいっても同じような売り場ばかりで、それはそれであまり面白みもない。

それよりは、地場で活躍していて「地域の方の安心と健康」を意識した棚づくりをしている小売店さんなどと協力して、我々の理念を理解してもらったうえで、展開してもらいたいと思っています。そのような小売店さんは接客もしっかりしていることが多いので、お客様から商品のことを聞かれたら、きちんと答えてくださるんですよ。北海道や東北、北陸では、こうした小売店さんとの繋がりが増えてきて、売上も上がっています。

徹底した理念経営が、売上100億円への道をひらいた

―最後に、経営者として「これだけは気を付けている」というポイントがあれば教えてください。

森田社長:そうですね、企業理念をしっかり社内に浸透させるということでしょうか。採用の際にも、「健康な体ときれいな水を守る。」という当社の理念に共感して、長く働いてくれる人を採用したいと考えています。「社員全員が同じ方向を向いている」という組織をいかに作るか。

同じ方向を向いている仲間がいると、ブレずに仕事を続けやすいのだと思います。当社の商品に石けんを使った消火剤があるのですが、想定よりも売れていません。ただ、消火性能が高く、環境にもやさしいので、諦めずに広げていこうという意識が社内にあります。こちらも徐々に認知は広まってきていて、国内外から問い合わせを頂くことも増えてきました。仲間がいると心強くもあるんですよね。

逆にやらない方がいいと思うのは、理念からブレた行動をすること。理念から外れた行動をすると求心力が失われてしまうと思います。伝えるべき理念をしっかりと行動でも示していくこと、それが大切なんじゃないでしょうか。

先代社長が提唱した「好信楽」という言葉がありますが、これは「1つのものに打ち込むには、まず好きでなければならない。そして自分が信じて、楽しまないと長続きしない」という意味です。

それを体現するためには、無添加石けんが好きで(好)、無添加石けんの良さを信じている(信)こと。そして、楽しみながら働いてもらえるような職場環境や雰囲気づくり(楽)も意識しています。

やはり一日の大半は職場で過ごしますから、部署を超えて話しやすい空気であるとか、風通しのいい会社でありたいですね。(※本記事は2024年当時の取材内容をもとに構成しています。)