ミューラル広告とは?壁画を活用した企業ブランディングと地域活性化の成功事例
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2026.06.24
消費者に情報が届きにくくなった現代、多くの経営者が新しいPRやブランディングの手法を模索しています。その解決策の一つとして、『壁』が広告の新たなフロンティアとして注目されています。 それが『ミューラル』です。企業がアーティストおよびプロモーション企業を通じて、街をアートで彩りつつPRを行う事例が増えています。なかには10以上のマスコミに取り上げられた事例も。 本稿では、単なる広告の枠を超え、不動産活用、さらには地域貢献までを実現するミューラル広告のビジネスモデルを構造的に分析します。街と会社の評判をアートで高めている仕掛け人、WALL SHARE株式会社の川添孝信社長に話を聞きました。
INDEX
執筆者:株式会社船井総合研究所 山内淳史
ミューラルとは?
『ミューラル』とは、建物の壁面に、所有者の許可を得て直接描かれるアート作品を指します。無許可で行われる『グラフィティ』(いわゆる落書き)とは対極にあるものです。
街の景観の一部となるほどの大きなサイズが特徴で、近年では企業のブランディングや地域活性化のメッセージを伝える、力強いコミュニケーションメディアとしても注目されています。
このミューラルを専門にプロデュースする企業の1つが、WALL SHARE株式会社です。ビジネスとアートの掛け合わせにより、これまで200以上の作品を国内外で手掛けています。連携するアーティストは国内外で300名以上を数えます。
ビルの「壁」が新たな収益を生む
WALL SHAREは、不動産を所有する企業にとって、新たな資産活用につながる可能性があります。
同社が運営するサービスの一つに、不動産所有者、広告主、アーティストの三者をつなぐ広告サービス『WALL SHARE・AD(広告)』があります。企業や法人が所有する建物の壁を『WALL owner(壁主)』として登録すれば、未活用の壁が広告媒体となり、新たな収益源に変わります。
人通りや交通量の多い場所であれば月間数万円の収入に繋がるケースもあります。掲載期間終了後の原状復帰にも対応しており、壁主の費用負担は発生しません。
ただし、ミューラルを実現するにはいくつかのハードルも存在します。屋外広告物条例や地域の景観ガイドラインとの調整、近隣住民との合意形成は不可欠です。道路に面した壁の場合、足場を組む際に許可を得る必要も出てきます。
また、広告主、アーティスト、オーナー全ての意向を汲んだデザイン調整が必要で、屋外作業であるため天候に工期が左右されるリスクもあります。WALL SHAREはこれらの調整作業を一貫して行い、壁活用のニーズに応えています。
神戸で大反響を呼んだアディダスのミューラル

神港学園高校のミューラル。アーティスト:KAC氏
「WALL SHARE・AD」の事例として、2024年夏に神戸で実施されたプロジェクトが挙げられます。
パリオリンピックにあわせ、神戸出身の柔道選手・阿部一二三さんと詩さんの姿を描いたミューラルを、アディダス・ジャパンの企画で制作しました。
一二三さんのミューラルは母校の神港学園高校に、詩さんのミューラルは幼少期に通った水道筋商店街の近くに。建物3階相当の大きさが話題となりました。地元紙など15以上のメディアがこぞって取り上げたほか、InstagramなどのSNSでも大きな反響を呼びました。
川添社長は「ミューラルは、1970年の大阪万博にあった太陽の塔のように、大きいだけでインパクトになる」と話します。また、「阿部選手のミューラルは神戸のローカルエリアで実施しましたが、アディダスさんが渋谷スクランブル交差点で同様の宣伝をした際よりもニュースに取りあげられました」と説明し、地方でミューラルが新しい広告や話題づくりのチャンスを生み出していることを強調しました。

神戸市広報 公式アカウント(@my.sweet.kobe)
企業ブランディングとしての活用も
一般的な広告でなく、ブランディングツールとして取り入れる例もあります。
大阪市此花区:FUJIFILM instax™
大阪市此花区では、富士フイルム”instax™”の協賛のもと「FUJIFILM instax™ presents MURAL TOWN KONOHANA」と題したプロジェクトが進行中です。

FUJIFILM instax™ presents MURAL TOWN KONOHANA
世界中のアーティストが此花区内に集まり、さまざまな場所でミューラルを制作。街中に点在する30作品以上のミューラルを巡るツアーなどを通じて、新たな人の流れや交流を創出しています。また、アートを目的に訪れた人々が地域の商店を利用することで、地域経済の活性化にもつながります。
関西みらい銀行

関西みらい銀行 針中野支店のミューラル アーティスト:LANP(ランプ)氏
関西みらい銀行の事例では、「地域とみらい」をテーマに、天神橋筋支店、針中野支店それぞれの壁にミューラルを描きました。制作されるミューラルは「かんみらMURAL」と名付けられています。この取り組みを通じて、地域住民にアートに触れる機会を提供し、街の魅力創出にもつなげています。
岡山県真庭市:三菱鉛筆

久世河川公園スケートボード広場 アーティスト:SUIKO氏
壁だけでなく床面もキャンバスになります。岡山県真庭市では、三菱鉛筆が設立した一般社団法人表現革新振興財団の協賛を受け、「久世河川公園スケートボード広場」の地面約1,000平米に巨大なミューラルを制作。「地域や人に動きを生み出したい」とイメージして生み出されたデザインは、赤や黄、青色のペンキで丸、三角などの図形が効果的に組み合わせて描かれています。
パークには遠方からスケートボードファンが訪れるほか、ダンスなどを楽しむ地域住民の姿も見られるようになりました。
「街の広告看板をつけていても、『あのビル、イケてるな』とはならないと思いますが、ミューラルはかっこよく、クールなイメージを発信できます」(川添社長)。来訪する顧客や地域住民、そして社員に対し、ポジティブなメッセージを発信できるのです。
ミューラルは「四方良し」
自社物件にミューラルを施すメリットは、おおむね次の4点です。
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①広告主:広告としてのインパクト&イメージアップ
広告主は広告を展開しつつ、アーティスト支援によるイメージアップが可能に。インパクトのある広告は、その場の印象に加えて情報拡散効果(UGCの創出)も期待できる。 -
②建物のオーナー:壁を貸すことで収益化
壁のオーナーは建物を地域のランドマークにでき、立地によっては、冒頭で触れたように広告媒体として月数万円の収益化も可能。 -
③アーティスト:自身の大型作品を多くの人に長期間見てもらえる
アーティストは公共空間で、自身の大型作品を多くの人に見てもらえる。 -
④地域:景観が豊かになる
地域の景観を豊かにする。アート作品が目的地となることで新たな人の流れが生まれ、地域おこしにつながり、街が賑わう。
川添孝信社長
川添社長は「ミューラルが増えることによって、わざわざその街に来て、回遊して、ご飯を食べて帰るという動きも起きています」と話します。
「ミューラルは感想を言いやすいアートであることも強みだと思っています。アートは本来、自由に批評されるべきですが、美術館の絵の前で『この絵は嫌い』とはなかなか言えません。でも、ミューラルのある街では、『あの絵は好きやけど、こっちの絵は嫌いやねん』と気軽に批評してくれる。アートが身近な会話のきっかけになれば」
同社は今後、ミューラルのプロデュースをオーストラリアやセルビアなどの海外でもさらに拡大していく予定です。「日本のアーティストが世界で、また世界のアーティストが日本で描ける現場をもっと作りたい。2028年に、累計500のミューラルの完成を目指します」(川添社長)
会社情報
会社名:WALL SHARE株式会社
本社:大阪府大阪市此花区梅香2丁目12−2
代表:川添 孝信
設立:2020年4月15日
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