予算不足でも応募90名!Z世代の心を動かす中小企業のための採用戦略
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2026.07.08
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- 本記事では、船井総合研究所の採用戦略セミナーをもとに、現代に適した採用のポイントをまとめました。Z世代特有の「エモ消費」や「承認欲求」に注目し、高い成果を上げている最新の採用事例を紹介します。
執筆者:船井総合研究所 平田賢司
INDEX
Z世代に選ばれる企業とは?
「大手採用媒体に掲載してエントリーを待つ」「他社より少しでも給与条件を上げる」といった、これまで「採用の王道」とされてきた施策を講じても、思うように人が集まらない、あるいは内定辞退が減らないと悩む企業は少なくありません。
背景には若手労働人口の減少という構造的な変化もありますが、就職活動の主役であるZ世代の価値観そのものが変化していることも大きな理由の一つです。
彼らの心を動かす鍵は、給与や福利厚生といった求人票に並ぶ「条件(スペック)」の提示だけではありません。もちろんこれらは依然として不可欠な要素ですが、情報が溢れる現代においては、単なる条件の比較だけでなく、「自分の価値観に合う企業かどうか」をより重視する求職者が増えています。
採用活動のポイントは「エモ消費」と「承認欲求」

こうした価値観の変化を示すのが、「エモ消費」と呼ばれるZ世代の消費行動です。
かつては、生活を豊かにする「モノ」を手に入れること自体に価値を見出す「モノ消費」の時代でした。しかし、あらゆるモノや情報が溢れる環境で育った現在の世代は、商品の機能や価格といった合理的な理由だけでなく、「心が動くか」「共感できるか」という感情的な価値を重視して選択するようになっています。
この価値観は仕事選びにも表れています。彼らににとって給与や休日などの条件はもちろん大切ですが、それだけで入社を決めることは少なくなっています。それ以上に、その会社にどれだけ「感動できるか」「ワクワクできるか」といった、求人票の数字には表れないストーリーに惹かれる傾向があります。
また、SNSとともに育ってきた彼らは、自分という人間をひとりの個人として見てほしいという「承認欲求」も持っています。
「目立ちたい」わけではなく、「数ある応募者のひとり」としてではなく、「あなただから声をかけた」と言われたいのです。一斉送信のメールやマニュアル通りの面接に熱が冷めてしまいやすい一方で、自身の経験や考えをしっかりと認めてくれる会社には、強い魅力を感じます。
つまり、Z世代にとって「感動」や「特別感」という視点が、会社選びの重要なポイントとなっているのです。
それでは具体的に、こうした価値観に寄り添った採用活動とはどのようなもの了解でしょうか。興味深いアプローチで成果を上げている企業の事例を紹介します。
▼ 記事の後半では、こちらについて紹介しています。
☑ 船井総研が見た、ユニークな採用成功事例6つ
☑ Z世代に刺さる「特別感」の演出方法
☑ これからの採用活動で勝ち抜くための鉄則
成功事例①:文化部採用

ある地方都市に拠点を置く、社員数20名ほどの企業。年間200万円の採用予算を投じても「応募が1件あるかないか」という深刻な状況にありました。給与などの「条件」だけでは、どうしても大手企業や都市部の企業に見劣りしていました。
そこで同社は、体育会系が優遇されがちな採用市場の逆を突き、「文化部だったあなたこそ評価したい」という強烈な特別感を打ち出しました。
「文化系サークルに本気で取り組んってきた人を、日本で一番歓迎する」
とスカウトメッセージを特化させ、選考も「文化部での経験」をプレゼンする内容へと刷新。
あえて対象を絞り込み、「あなただから声をかけた」という特別感を演出した結果、人口7万人ほどの商圏ながら90名以上のエントリー獲得に成功しました。
「誰にでもいい顔をする」求人ではなく、特定の層に「この会社しかない」と思わせる深い共感を生んだ好事例です。
成功事例②:ゴールドチケット採用

また別の地方企業では、自社が本当に欲しい優秀な層(Sランク学生)に、内定を承諾してもらえないという悩みを抱えていました。能力の高い学生ほど、大手企業との条件比較になると競り負けてしまう傾向があったのです。
そこで導入したのが、選ばれた学生だけが手にできる「ゴールドチケット」という仕組みです。
【事例】ゴールドチケットの特別な権利
- 選考フローのスキップ:一次選考などの通常プロセスをすべて免除。
- 最高意思決定者への直通:社長に直接プレゼンができる「完全招待制の特別選考会」への参加権。
具体的な流れとしては、インターンや説明会の段階で適性検査を実施し、自社が求める資質を高く備えていると判断した学生にのみ、その場でチケットを手渡します。
ここで最も重要なのは、その「渡し方」です。採用担当者が「あなたのこの資質を高く評価している。ぜひ社長に推薦したい」と、個別の評価ポイントを直接、熱意を持って伝えます。「大勢の中の一人」ではなく「あなただから来てほしい」という圧倒的な特別感の演出は、Z世代の「自分をひとりの個人として見てほしい」という心理に深く刺さりました。
結果、わずか30名の説明会参加者から、狙い通り8名の内定承諾を得ることに成功。説明会からの採用歩留まりが劇的に向上した好事例です。
成功事例③:宿泊型インターン

次の事例は「お互いの本音まで深く知る」ことを目的に、1泊2日の宿泊型インターンシップを企画した取り組みです。数時間の説明会や面接といった「点」の接触では見えてこない、社員と候補者の「素の顔」を共有する場として設計されました。
【事例】プログラムの内容
- 本音を引き出す交流:1日目の夜にバーベキューを開催。あえて仕事の話に限定せず、人生観や就活の悩みについて、社員と学生が対等な立場で語り合います。
- 「内省」による自分事化:2日目には、前夜の対話で得た気づきをもとに、自分自身の将来像を描くワークを実施します。
Z世代は、表面的な「きれい事」よりも、嘘のない「リアルな人間関係」に強い価値を感じる傾向があります。宿泊という非日常の環境で社員の素顔に触れる体験と、それを受けて自身の未来を真剣に考える特別な時間。このセットが、学生の心を強く動かしました。
「宿泊」というコストも手間もかかる手法へ振り切ったことで、他社には真似できない圧倒的な「ファン化」に成功。内定辞退の防止だけでなく、強固な信頼関係を築いた好事例です。
成功事例④:ゲーム型採用

企業の知名度や規模に関わらず、圧倒的な母集団を形成しているのが、説明会の入り口にエンターテインメント性を持ち込む手法です。
ある年商3億円規模の企業では、説明会の代わりに「人狼ゲーム採用」と銘打ったイベントを開催しました。
【事例】人狼ゲーム採用のポイント
- 参加のハードルを下げる:「お酒を飲みながら参加OK」「参加特典の配布」など、従来の堅苦しい説明会のイメージを払拭。
- 素の人間性が出る場:心理戦を展開する中で、学生は楽しみながら社員や企業の雰囲気を肌で感じ、企業側も学生の素のコミュニケーション能力を垣間見ることができます。
この取り組みの結果、なんと1,000名以上のエントリーが集まりました。
こうした「人狼」などを活用したゲーム型の選考は、一見すると遊びの延長に思えるかもしれません。しかし、学生の心理は「面白そうなことには自然と指が動く」というシンプルなものです。まずは「楽しい体験」を通じて接点を作り、そこから徐々に企業のビジョンを伝えていく。
「説明会=事業内容を真面目に聞く場」という固定観念を捨て、学生の関心空間に企業側が歩み寄ることで、圧倒的な集客力を生み出した事例です。
成功事例⑤:最終選考落ち学生の採用

ほかにも、採用活動の終盤戦において、すでに他社で高く評価された実績を持つ学生へ効率的にアプローチした事例があります。
とある福祉事業会社では、採用の追い込み時期に優秀な層を確保するため、「他社の最終選考まで残った実績」を評価の対象とする新しいサービスを活用しました。具体的には、大手企業などの最終選考で惜しくも縁がなかった学生が登録するデータベースから、直接スカウトを送るという手法です。
【事例】この施策が効果的だった理由
- 「証明された優秀さ」へのアプローチ:すでに他社の厳しい選考を勝ち抜いてきた、いわば「大手のお墨付き」があるポテンシャルの高い層をピンポイントに狙えます。
- 選考スキップによるスピード感:他社がすでに行ってきた評価を信頼することで、一次選考などの初期プロセスを大幅にカット。他社への流出を防ぎながら、最短距離で内定までつなげることが可能です。
この戦略的なルート開拓により、採用市場が終盤に差し掛かる時期でありながら、目標としていた30名の採用を見事に達成しました。
成功事例⑥:スポットワーク採用

最後の事例は欠員を埋めるための手段と思われがちな「スポットワーク(単発バイト)」を、あえて母集団形成の場として活用する逆転の発想です。学生の利用率が高いプラットフォームを、自社を知ってもらうための「入り口」として捉え直す戦略です。
この手法のポイントは、単なる労働力としてではなく、「未来の候補者」として迎え入れる姿勢にあります。
【事例】体験型流入のポイント
- 募集時の工夫:求人の中に「長期雇用も視野に入れた募集であること」を明記。さらに「仕事の合間に会社説明が聞ける」「終業後にカジュアル面談ができる」といった項目を盛り込み、相互理解の場であることを伝えます。
- 当日の受け入れ:いきなり現場に放り込むのではない、丁寧なオリエンテーションを実施。既存社員が積極的に声をかけることで、「ここでなら安心して働けそうだ」というポジティブな印象を醸成します。
「まずは体験してから応募を検討する」というフローは、履歴書を用意して面接に臨むというハードルを一気に下げます。また、実際の現場を自分の目で確かめているため、入社後のミスマッチを劇的に抑えられます。
実際に、この「体験型流入」によって、わずか1ヶ月で複数名の正社員採用に至ったケースや、新卒採用の有力な接点として活用している企業も増えています。「選考の前に、まず相性を確かめ合う」という、今の時代に即した極めて合理的な採用ルートと言えます。
これからの採用で勝ち抜くために

それぞれの事例に共通するのは、条件の提示だけではなく、Z世代の「感動」や「特別感」を刺激する工夫です。
条件比べから抜け出すには、求職者に「自分をちゃんと見てくれている」という納得感を持ってもらうことが欠かせません。
Z世代の次には「α(アルファ)世代」も控えています。一度の成功に安住せず、常に相手が何を求めているのかを想像し、工夫し続ける姿勢が大切です。
これからの採用は「数を集める」ことではなく、自社の魅力と学生の気持ちをうまく「マッチさせる」活動です。目の前の学生が何を大切にしているのかを一緒に考える。そんなちょっとした歩み寄りが、結局は一番の近道になるのかもしれません。
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